二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て16」 ( No.460 )
日時: 2016/09/03 13:39
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

ガルベリアス・ドラゴン 火文明 (6)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン 7000
スピードアタッカー
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手の自然のクリーチャーがあれば、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置く。
相手の水のクリーチャーがあれば、このクリーチャーはブロックされない。
相手の闇のクリーチャーがあれば、このクリーチャーに「スレイヤー」を与える。
相手の光のクリーチャーがあれば、自分のターンの終わりに、このクリーチャーをアンタップする。
※使用禁止カード



 《インフェルノ・サイン》から呼び出されたのは、裏面の赤いドラゴン、《ガルベリアス・ドラゴン》だ。
 使用禁止カードという、殿堂ゼロでも使えない規制を受けている数少ないクリーチャーだが、その理由は当然、裏面にある。裏面が赤い。その理由は、このカードは元々はゲームの付録であり、あくまでおまけとしてデザインされていたからなのだが、、最近ではジョークエキスパンションにて、裏面が普通のものが登場している。そちらは通常通りのレギュレーションでも使用可能だ。
「《ガルベリアス・ドラゴン》がバトルゾーンに出た時、相手の場に自然のクリーチャーがいるっすから、マナを一枚追加っすね」
「というか、カイの場には全部の文明が揃ってるわね」
「《アンドゥ・トロワ》の展開が仇になりましたかー。夢谷君もやりますねー」
 《ガルベリアス・ドラゴン》は、相手の場にいるクリーチャーの文明に応じて、その文明に応じた能力が付与される。
 自然ならマナ加速、水ならアンブロッカブル、闇ならスレイヤー、光ならターン終了時にアンタップ——浬の場には《ジルコン》と《ルキア・レックス》がおり、これだけで水、闇、光、自然とすべての文明が揃っている。
 つまり今の《ガルベリアス・ドラゴン》は、全能力を得て、フルパワーだ。
「まだっすよ! 3マナで《アクア操縦士 ニュートン》を召喚っす! マナ武装3で一枚ドローっすよ」
「こんな滅茶苦茶なマナでも、マナ武装3程度なら使えるんだな……」
「《ガルベリアス・ドラゴン》で攻撃! ブロックされないっすよ!」
 ブロック不能なWブレイクが、浬のシールドを叩き割る。肝心のブロッカーである《ジルコン》自身のせいで、《ガルベリアス》の攻撃が防げない。
「トリガーもないか……」
「ターン終了っす。光のクリーチャーがいるから、《ガルベリアス・ドラゴン》はアンタップするっすよ」
 アンタップし、殴り返しすらさせない《ガルベリアス》。攻防共に隙がない。
「まずいな、このままだと殴り切られる……!」
 浬の場に並んでいるのは小型クリーチャーばかり。数が多くても、相手の巨大な《ガルベリアス・ドラゴン》には太刀打ちできない。
 小さな雑兵は、巨大な一騎当千の兵には為す術がない。このまま、その大きさで叩き潰されるだけだ。
「とりあえず、《アルティメット・フォース》をチャージだ。2マナで《ソーラー・レイ》! 《ニュートン》をタップ! さらに《天真妖精オチャッピィ》を召喚! 墓地の《13》をマナに戻すぞ。そして《ルキア・レックス》で《ニュートン》を攻撃! 《ルキア・レックス》のパワーは、パワーアタッカーで攻撃中は4500だ。どうする?」
「うーん、《アンドゥ・トロワ》もいるっすし、その攻撃はブロックしないっす」
「なら《ニュートン》は破壊だ」
 浬の残りシールドは二枚。ブロックされないクリーチャーが二体もいると、S・トリガーが出ない限りとどめを刺されてしまう。
 《ガルベリアス》はどうにもならないが、せめて《ニュートン》だけでも破壊しておく。
 そして問題は、この後だ。
 残るクリーチャーは殴るべきか、殴らないべきか。
(どうする……互いにハンドはゼロ。《ガルベリアス》を除去できるカードを引くことに賭けて、殴らず安全運転で行くか。それとも、殴り切れる可能性を信じて、ここで全力で殴っておくか……)
 八の場にブロッカーは、《ルナ・ヘドウィック》が一体。こちらの残りアタッカーは、一度殴ったら終了する《ブルース・ガー》、死んでもマナになる《シャーマン・ブロッコリー》、《ヘドウィック》をギリギリ超えるパワーの《アンドゥ・トロワ》。
 戦力的には、非常に心もとなかった。
(なら、殴るべきではないか? 確率的に考えても、ここは殴らない方がいいはずだ。次に《ガルベリアス》を除去できるカードが来ることを願うしかない)
 どの道、次のターンには《ガルベリアス》にシールドをすべて持って行かれるのだ。猶予は残り1ターンのみ。ここで下手に戦力を削ぐよりも、一撃に賭けた方が良いという判断だ。八の手札を増やすのも怖い。
「ターン終了」
 そうして、浬はターンを終える。
「自分のターン! 7マナで《ツインキャノン・ワイバーン》を召喚っす! 《ガルベリアス・ドラゴン》でWブレイクっすよ!」
「一枚目……トリガーはなしか。二枚目……」
 浬はブレイクされた二枚目のシールドを捲る。
「! S・トリガー……」
 かなり追い込まれたこの状況においてS・トリガーは、かなり嬉しい。しかしそのカードを見た瞬間、浬の手が一瞬だけ止まった。
 S・トリガーとてたくさんの種類がある。《フェアリー・ライフ》のようなマナを増やすだけのカード、場に出るだけで他に能力のない準バニラクリーチャーなど、対してアドバンテージにならなかったり、局面を動かさないS・トリガーは多い。
 ならば浬が引いたのはそういったトリガーなのか。答えは、否。
 浬が手を止めたのは、そのカードが使えないからではない。
「……まさか、このカードを使う時が来るとはな」
 そのカードが——強すぎたからだ。

「呪文——《母なる大地》」



母なる大地 R 自然文明 (3)
呪文
S・トリガー
バトルゾーンにあるクリーチャーを1体選び、持ち主のマナゾーンに置いてもよい。そうした場合、そのマナゾーンにあるカードの枚数とコストが同じかそれ以下の、進化クリーチャーではないクリーチャーを1体、そのマナゾーンから選ぶ。そのプレイヤーはそのクリーチャーをバトルゾーンに出す。
※プレミアム殿堂



 最後のトリガーから捲られたのは、プレミアム殿堂呪文、《母なる大地》。
 《母なる》《大地》、二つの名前を冠する呪文の始祖であり、最も早くに殿堂の印を押されたカード。それゆえ、このカードも非常に強力な効果を秘めている。
「ここで母なる大地とは……この対戦、プレミアム殿堂の応酬ね」
「《母なる大地》は強力なカードだけど、効果は主に踏み倒し……踏み倒し先が強力でこそ、真価を発揮する」
 簡単に言えば、《母なる大地》は場のクリーチャーとマナのクリーチャーを入れ替える効果だ。登場時期的に本来なら逆だが、《父なる大地》を味方にも撃てるようになった呪文である。踏み倒しとして見るなら、《母なる星域》の踏み倒し対象が非進化クリーチャーになったようなものだ。
 この呪文がプレミアム殿堂になった由縁は、その軽さ、S・トリガーなどの特典に加えて、用意にマナからクリーチャーを踏み倒せること。マナからの踏み倒しの強さは、《獰猛なる大地》が殿堂入りしていることからも、理解できるはずだ。他にも、S・トリガーと相手対象効果を取り払って進化クリーチャーも出せるようにした《母なる紋章》があるが、こちらもプレミアム殿堂。調整したカードですらこの様なのだ。それだけ、《母なる大地》は元祖の呪文として凶悪だった。
 その凶悪さは、踏み倒すクリーチャーがいてこそなのだが、浬のマナゾーンには、この対戦を決するほどの大型クリーチャーが眠っていた。
 それを今、引きずり出す。
「墓地利用封じと、マナ回収できたら儲けもの、くらいにしか考えてなかったんだが、この選択は正解だったようだ。《ブルース・ガー》をマナに置き、マナゾーンから《偽りの名 13》をバトルゾーンに!」



偽りの名(コードネーム) 13(サーティーン) R 自然文明 (10)
クリーチャー:アンノウン 24000
ワールド・ブレイカー



 《ブルース・ガー》と引き換えにマナから引きずり出されたのは、アンノウン。
 アンノウンは巨大であることが特徴の一つだが、その中でも《13》は、一際巨大だ。というより、それ以外の特徴がない。
 ただただデカい。コストも、パワーも、ブレイク数も、なにもかもがビッグサイズ。その巨大さのみが取り柄のクリーチャーである。
 デュエル・マスターズでは通常、パワーよりも能力の優秀さが求められる。いくら巨大でも、普通に出すのは燃費が悪い。ただの脳筋と言われても反論はできない。
 しかしそれもケースバイケースで、一枚一枚のカードパワーが高くないこの対戦なら、これほどの巨大なクリーチャーは脅威となり得る。
 浬の数という答えに対して八が出した答えを、今度は浬が返した結果だ。
「むぅ……でも、まだやれるっす! 《ツインキャノン》でとどめっすよ!」
「《ジルコン》でブロックだ!」
 ダイレクトアタックを《ジルコン》で防ぐ。これで水のクリーチャーが消えたので、《ガルベリアス》もアンブロッカブルではなくなったが、浬のブロッカーもいなくなった。
 しかし、ブロッカーはもう関係ない。《13》さえいれば、あとは力ずくでねじ伏せるだけだ。
「《13》は強いっすけど、でも、こっちには《ルナ・ヘドウィック》がいるっす。ブロックすれば、ワールド・ブレイカーも怖くないっすよ!」
「そうか。だがブロッカーは、タップすれば怖くないな。3マナで《エレメンタル・トラップ》、《ヘドウィック》をタップだ」
 水では珍しいタップ呪文。光のそれと比べるとコストパフォーマンスはすこぶる悪いが、ブロッカー一体を寝かせるためなら、多少の燃費の悪さは関係ない。
 《ヘドウィック》はタップされた。これで《13》が通る道は開けた。
「う、まずいっす……!」
「念のためだ。ついでにこっちも唱えておくか。5マナで《シヴィル・バインド》! 文明を一つ指定して、その文明の呪文を、相手は次の自分のターンの終わりまで唱えられない」



シヴィル・バインド R 光文明 (5)
呪文
S・トリガー
文明を1つ選ぶ。相手は、自分自身の次のターンの終わりまで、その文明の呪文を唱えることができない。



「指定する文明は……スパーク呪文が怖いところだから、光にしておくか」
 《13》の一撃さえ決まれば、あとは一体でもクリーチャーが残っていればいい。浬のクリーチャーは多数生き残っているので、恐れるべきトリガーは、複数のクリーチャーを無力化するトリガー。その多くは《スパーク》と名のつく、全クリーチャーをタップさせる呪文だ。
 一枚は浬が既に捲っているが、《スーパー・スパーク》や《バリアント・スパーク》がないとも限らない。それらを警戒して、光の呪文を封じ込める。
「さぁ、決めるぞ! 《13》でシールドをワールド・ブレイク!」
「っ……!」
 《13》が持つ唯一の能力、ワールド・ブレイカー。
 たった一撃で、すべてのシールドが吹き飛ぶ、最上級のブレイカーだ。
「S・トリガー《ワンショット・フレーム》っす! アンタップされているパワー3000以下のクリーチャーをすべて破壊っすよ!」
「っ、いきなりか……!」
 一枚目のシールドから、早速S・トリガーが飛び出す。火の呪文、《ワンショット・フレーム》。全体火力を放つ呪文で、浬の小型クリーチャーがほとんど一掃されてしまった。
 残ったのは、ギリギリ素のパワーが3000を超えていた、《アンドク・トロワ》のみ。
「二枚目はなし……三枚目……S・トリガーX! 《インフェルノ・シザース》をジェネレート! そして《ガルベリアス・ドラゴン》にクロスっす!」
「そんなものは関係ない! 残りのシールドをブレイクだ!」
「四枚目……《預言者リク》! シールドを追加するっすよ!」
「それも関係ないな、すべて吹き飛ばす!」
 ワールド・ブレイクはすべてのシールドをブレイクする。ブレイク途中のトリガーでシールドが増えようと、問答無用だ。止まることはない。
 次のシールドも打ち砕かれる。
「五枚目もトリガーっすよ。《ポジトロン・サイン》——」
「《シヴィル・バインド》の効果で、光の呪文は唱えさせない」
「そ、そうだったっす。じゃあ、これが最後っすね……」
 トリガー呪文を山札から唱える《ポジトロン・サイン》。しかし、その可能性すらも封殺し、浬は最後のシールドをブレイクする。
「……S・トリガー」
「! 最後もか、運がいいな。なにが来る……?」
 六枚中五枚がS・トリガー。防御にならないカードや、運任せなカードもあったが、プレミアム殿堂カードを引き当てた浬以上に運がいいことは確かだ。
 恐らく、この最後のトリガーが、この勝負を決定つけるだろう。
 その、トリガーとは、

「……《希望の守り手ペッパー》っす」

 最後のトリガーは、S・トリガーしか能力を持たない、《希望の守り手ペッパー》。
 アタッカーがすべて除去されることもなく、ブロッカーも立っていない。あとはシノビがなければ、終わりだ。
 浬は残ったクリーチャーに手をかけ、横に倒す。

「《暗黒皇女アンドゥ・トロワ》で、ダイレクトアタック——!」