二次創作小説(紙ほか)
- 番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て18」 ( No.462 )
- 日時: 2016/09/04 01:28
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)
柚と空護による、『ハイランダー限定構築戦』。すべてのカードが一積みのこの対戦を制するのはどちらか。
「それじゃあ、始めますか——」
「あ、対戦する前に、ちょっといいですか……?」
「? なんですかー?」
「超次元ゾーンを、先に確認したくて……」
「あぁ、そういうことですか。僕はありませんよー」
というより、今まで何戦も見て来たが、サイキックやドラグハートを使っている人はほとんどいなかった。唯一、恋の寄せ集めデッキの中にたまたま入っていたドラグハートを、浬が使えたくらいだ。ここまで超次元にカードが見えないとなると、そもそも入手可能なカードに超次元が絡むカードが存在しないと思っていたが、
「わ、わたしのは、これです」
超次元ゾーン(柚)
《熱血剣 グリージー・ホーン》
《ギル・ポリマのペンチ》
《マシュマロ人形ザビ・ポリマ》
柚の超次元ゾーンが開示される。枚数も少ないし、とりたてて目立つカードはないが、超次元ゾーンにカードがあるというだけで、驚きだった。
「超次元ゾーン、あるんですねー……了解ですー」
サイキック・クリーチャーと、それに対応する超次元呪文やクリーチャー。ドラグハートと、それに対応するドラグナー。超次元ゾーンに置かれるカードはすべて、メインデッキにそれを呼び出す対応カードがないといけないため、両方揃えなくては意味がない。カード資産が限られているうえに、入手するカードは膨大な種類のカードの中からランダムというこのゲームだ。その点でも、超次元ゾーンは使いにくくなっている。
ゆえに、柚は超次元ゾーンに干渉できるだけで、他の人よりも優位に立っていると言える。
(まあ、無理に入れていたとしたら、ただ使いにくいだけですけどー……それに、ブラフって可能性もありますしねー)
超次元ゾーンを用いないデッキなどでは、超次元ゾーンに違うデッキタイプのカードを入れ、相手に自分のデッキタイプを悟らせないテクニックは確かに存在する。このブラフは、カードの寄せ集めになりやすいこのゲームにおいてはそれなりに機能するだろうが、果たして柚の超次元はブラフなのかどうか。
(仮にブラフでなかったとしても、警戒するほどじゃないですけどー……いや、そうでもないですかね? 《グリージー・ホーン》は龍解されたら面倒ですし、サイキックも、ただの準バニラとはいえ覚醒リンクのパーツが揃ってる。覚醒リンクされると、僕のデッキじゃ対処手段が限られますし、それなりに警戒する必要はありそうですねー)
相手の超次元ゾーンのカードは、単純なスペックでしかないが、そもそもサイキックやドラグハートは普通のカードと比べて、カードパワーが高い。単純な力の勝負になれば、空護には勝ち目がない。そうならないよう、常に慎重に立ち回り、考える必要が出て来た。
「それじゃあ、はじめます。わたしのターンからですね。《鎧亜戦隊ディス・キューピット》をマナにおいて、終了です」
「なら僕は……《調和と繁栄の罠》をチャージ。終了です」
「わたしのターン。《デュアル・ザンジバル》をマナに置いて、2マナで《ゴースト・タッチ》ですっ! 手札を一枚墓地へ!」
「おっと……」
「さらにG・ゼロです、《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》を召喚しますっ! ターン終了です」
2ターン目のハンデスから、G・ゼロでブロッカーを展開する柚。早くもビートダウンを止める構えだ。
「さて僕のターン……いいカードを引けました。《蒼狼アクア・ブレイド》をチャージ。2マナで呪文《バニラ・ゾーン》ですよー」
バニラ・ゾーン 水/自然文明 (2)
呪文
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
自分の山札の上から2枚を表向きにする。その中から、能力が書かれていないカードをすべてマナゾーンに置き、その後、残りを墓地に置く。
《メンデルスゾーン》のバニラ版とも言える呪文、《バニラ・ゾーン》。本来なら《駱駝の御輿》でコスト軽減ができ、過剰にマナブーストする必要のないバニラビートだが、この対戦はハイランダー構築。《駱駝の御輿》の代わりとしては心もとないが、まだ採用できる範囲だろう。
空護が捲った二枚は、《3月》と《フェアリー・ライフ》。
「《3月》をマナゾーンへ、《フェアリー・ライフ》は墓地ですねー」
「そんなカレンダー入れてるのかお前……」
「色合わせですよー、色合わせ。一応バニラですしねー」
このモノポリーの順番決めにも使われた、2016カレンダーの種族を持つクリーチャー、《3月》。テキストにはフレーバーテキストの代わりにカレンダーとなっている、ジョーク的な意味が強い変わったクリーチャーだ。
テキストがカレンダーでも、能力なしのクリーチャーとして扱われるため、一応、空護のデッキには合う。
「わたしのターン。《レジェンダリー・ヴァンガード》をマナにおいて……《エナジー・ライト》を唱えます。二枚引いて、ターン終了です」
ハンデス、ブロッカー、に続き、今度は減った手札をしっかり補充する。コントロールデッキのお手本のような流れだ。
「霞さん、コントロールデッキをちゃんと扱えてるね」
「空城さんよりは上手いわね」
「……いつものあきらなら、《ヴァンガード》残して、殴ること考えてたと思う……」
「そ、そんなことは……ないとも言えないけどさ」
普段の柚は自然単色のデッキを使用しているため、あまりコントロールデッキのイメージがなかったが、いざその手のデッキを握ると、しっかりと扱えていた。
「柚ちゃんは臆病だからね。臆病な方がコントロールには向いてるのよ」
「ぶちょーさんっ、それはどういう意味ですかっ?」
「褒めてるのよ」
「そ、そうですか……?」
訝しげな視線を向けるも、今が対戦中ということもあり、柚は引き下がった。
「……まあ、臆病すぎると、足元をすくわれるんだけどね。柚ちゃんは、どう転ぶかしら……」
そんな彼女を見つつ、沙弓は目を細める。
「そろそろ、攻めないとですねー。僕のターン、《スカイソード》をチャージ。3マナで《白銀の牙》を召喚、ターン終了ですー」
遂に空護の場にバニラが並んだ。《アクア・ティーチャー》も《駱駝の御輿》もいないので、過剰な展開もなく、単純に出して殴るだけになるのだろうが、空護がなにも考えていないとも思えない。
恐らく、なにかを隠している。
「それなら……《シルバー卿》をマナにおきます。4マナで呪文《魔弾バレット・バイス》ですっ! わたしの場にはナイトの《ブラッディ・シャドウ》がいるので、手札を二枚、捨ててくださいっ!」
「ん? ハンデスですかー? わかりましたー……では、これを捨てましょうか」
アクア提督 ザ・ミスター UC 水文明 (5)
クリーチャー:リキッド・ピープル閃 5000
相手の呪文の効果または相手のクリーチャーの能力によって、このクリーチャーが自分の手札から捨てられる時、墓地に置くかわりに自分のバトルゾーンに置いてもよい。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から3枚をすべてのプレイヤーに見せる。その中から、カードに能力が書かれていないクリーチャーをすべて自分の手札に加え、残りを好きな順序で自分の山札の一番下に置く。
空護の手から零れ落ちる二枚のカード。一枚は墓地へと落ちたが、もう一枚はバトルゾーンに落ちた。
「《ザ・ミスター》の能力発動! こいつは相手の呪文やクリーチャーの能力で手札から捨てられる時、代わりにバトルゾーンに出るマッドネス能力を持つクリーチャー! なので、そのままバトルゾーンに出ますよー!」
「あぅ……」
「もう一つ、《ザ・ミスター》の能力! 《ザ・ミスター》がバトルゾーンに出た時、山札の上から三枚を公開して、その中のバニラをすべて手札に加えますよー」
空護は山札の上から三枚を捲る。捲られたのは《4月》《アクア船長 イソロック》《未来設計図》。
「《未来設計図》だけ山札の下に戻して、残りは手札へ」
「はうぅ、手札破壊のつもりが、クリーチャーがふえちゃいました……ターン終了です……」
マッドネスによって場数が増え、手札も補充されてしまった。柚にとっては、少し苦しい展開だろう。
「僕のターン。《スーパー・スパーク》をチャージ。《4月》を召喚し、《白銀の牙》でシールドを攻撃ですー」
「え、えっと……《ブラッディ・シャドウ》でブロックですっ。こっちはパワー4500なのでバトルに勝ちますが、能力でバトルに勝っても破壊されちゃいます……」
「なら、《ザ・ミスター》で追撃ですよー、シールドをブレイク!」
《ザ・ミスター》が柚の一枚目のシールドを割る。柚の場にクリーチャーはおらず、空護の場にはアタッカーが二体。一転して、今度は空護が流れを引き寄せた。
「うぅ……《ドラム・トレボール》をマナに置いて、《蒼狼スペルギア・ファントム》を召喚します……ターン終了です」
「《スペルギア・ファントム》? 珍しいカードですねー」
確か、攻撃時に山札を捲り、呪文化クロスギアを参照してバウンスを行うクリーチャーだったはず。
なかなか見ないクリーチャーに警戒を向けながらも、空護は引いたカードに注視する。
「おっと、悪くないカードですねー。1マナで《番長大号令》を唱えますよー。山札を五枚見ますねー」
引いたのは《番長大号令》。たった1コストでハンターを呼べる呪文だ。
空護のデッキにハンターは少ないが、《アクア・ティーチャー》や《駱駝の御輿》を持ってこれる可能性があるカードとして、投入している。一積みなのでなかなか当たらないが、はずれたらはずれたで、トップに引きあがるものとして考えればよかった。1コストしかかからないので、失敗してもあまり損失もない。
「……残念、はずれです。3マナで《イソロック》を召喚して、《ザ・ミスター》でシールドをブレイク」
などと考えていると、本当にはずれてしまった。しかし攻め手は緩めない。次のアタッカーを並べ、《ザ・ミスター》でさらにシールドを割るが、
「あ、S・トリガー! 《スパイラル・ゲート》ですっ! 《4月》を手札に戻しますっ!」
「ふむ、ならターン終了ですー」
トリガーで《4月》をバウンスされ、追撃を防がれてしまった。
しかしここまでは悪くない流れだ。柚のシールドは残り三枚。徐々に押している。
このまま押し切れれば良いが、柚とて黙って殴られてばかりではない。
そろそろ、反撃が来るはずだ。
「……わたしのターン」