二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て19」 ( No.463 )
日時: 2016/09/04 06:07
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

「うーん……《マクシミリアン公》をマナにおきます。3マナで《氷牙フランツⅠ世》を召喚です。《フランツ》でコストを下げて、3マナで《知識と衰弱のアシスト》を唱えます」
 少し考えてから、柚は《フランツ》を出し、呪文を唱える。
 呪文がメインとなるナイトコントロールにおいて、呪文のコストを下げる《フランツ》は厄介だ。なんとか対処したいが、そもそもこのデッキに除去カードはほとんどない。殴り返すしかないが、そもそも《フランツ》が殴ってくるとは到底思えなかった。
 それに厄介なのは《フランツ》だけではなく、《フランツ》でコストの下がる呪文の方もだ。
「《知識と衰弱のアシスト》の効果で、《ザ・ミスター》のパワーを2000下げますね。それから一枚ドロー」
 《ザ・ミスター》のパワーのパワーを下げつつ、キャントリップで手札を取り戻す。《アシスト》と名のつく多色呪文は、決して強力な効果はないが、堅実で扱いやすい。地味ながらも、着実に小さなアドバンテージを取っていく。
「続けて《スペルギア・ファントム》で《ザ・ミスター》を攻撃します。そのとき、《スペルギア・ファントム》の能力発動ですっ」



蒼狼スペルギア・ファントム VR 水文明 (5)
クリーチャー:ポセイディア・ドラゴン/ナイト/サムライ 5000
このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から3枚を表向きにする。その中に呪文があれば、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選んで持ち主の手札に戻し、その後、表向きにした呪文のうち1枚を自分の手札に加えてもよい。表向きにした3枚の中にクロスギアがあれば、カードを1枚相手のマナゾーンから選んで持ち主の手札に戻し、その後、表向きにしたクロスギアのうち1枚を自分の手札に加えてもよい。その後、残りのカードを好きな順序で山札の一番上に置く。



 《スペルギア・ファントム》は攻撃時、山札を三枚捲って、その中にあるカードを参照する。
 クリーチャーには反応しないが、呪文であればクリーチャーを、クロスギアであればマナを、それぞれバウンスできる。同時にそれらのカードも手札に加えられる、ナイトとサムライ、両方の性質を兼ね備えたクリーチャーだ。
 柚のデッキはナイトコントロール。呪文が多いデッキなので、呪文を手札に加えつつ、クリーチャーを除去していくのが目的だろう。バニラばかりの空護のデッキでは、バウンスは普通のデッキよりも単純にテンポを奪われる。能力の使い回しなんてできるはずもない。能力がないのだから。
 そして、柚が捲った三枚は、《魔弾オープン・ブレイン》《暗黒鎧 ディオスター》《至宝 オール・イエス》。
「! 《オール・イエス》、クロスギア……!」
「やりました! 呪文があるので、《イソロック》を手札に戻して、《オープン・ブレイン》を手札に。クロスギアがあるので、マナの《調和と繁栄の罠》を手札にもどして、《オール・イエス》を手札に加えますっ!」
 一度に二枚のカードを手にしつつ、空護の《イソロック》を除去。さらにランデスまで仕掛けてきた。
 呪文は捲れるだろうと思っていたが、まさかクロスギア、それもサムライのカードがあるとは思ってもみなかった。
「では、《スペルギア・ファントム》と《ザ・ミスター》でバトルですっ! こちらのパワーは5000ですよっ」
「《ザ・ミスター》も5000ですけど、《知識と衰弱のアシスト》でパワーを下げられて3000……負けですねー」
「ターン終了ですっ」
 S・トリガー、アタックトリガーに、殴り返し。前の自分のターンには三体いた空護のクリーチャーも、次の自分のターンには全滅していた。地味にランデスも痛い。
 しかし、
「こちらのドローも悪くはないようで。《調和と繁栄の罠》をチャージ。1マナで《アクア・ティーチャー》を召喚!」
「やっと出たか、バニラビートのメインエンジン」
「1ターン待てば《番長大号令》で手に入れられたけどね」
「それは言わないお約束ですよー」
 なにはともあれ、エンジンの片方だけでも場に出れば、空護も立て直しができる。
 ここから、途切れぬバニラを連打して、数で圧倒するしかない。
「残った3マナで《イソロック》を召喚! 《アクア・ティーチャー》の能力でドロー! ターン終了です」
「えぇっと……《エリザベス》をマナにおいて、2マナで《オール・イエス》をジェネレート。4マナで《龍覇 ドクロスカル》を召喚して、《熱血剣 グリージー・ホーン》を装備しますっ」
「む……ドラグハートですかー」
 とりあえず、ドラグハートはブラフではないようだ。しかも、きっちりファンキー・“ナイト”メアの《ドクロスカル》。ナイトという種族は崩していない。
 文明が合わないので、パンプアップは受けられないが、少々厄介だ。
「ちょっと面倒くさそうなことになってきましたねー。とりあえず僕のターン。ここは、《マスター・スパーク》をマナに置いて、《4月》を召喚。《アクア・ティーチャー》の能力でドローして、終わりですね。ターン終了ですー」
「《フランツ》でコストを下げて、4マナで《魔弾オープン・ブレイン》です! 二枚引いてから、ナイト・マジックでさらに二枚引きますね。それから3マナで、《超次元の手ホワイト・ブラックホール》を唱えます」
「超次元呪文……そっちもあるんですねー」
 ドラグハートに続きサイキック。柚は連続で超次元ゾーンに干渉してくる。
 どれほどのドラグナー、超次元呪文が入っているかは分からないが、この分だと覚醒リンクも狙っていそうだ。
「まず、《ホワイト・ブラックホール》の効果で、わたしのシールドを一枚見ますね……これは墓地において、山札の一番上をシールドへ。それから、《ギル・ポリマのペンチ》をバトルゾーンに出します」


ギル・ポリマのペンチ UC 火文明 (3)
サイキック・クリーチャー:ゼノパーツ/エイリアン 3000



 出て来たのは、火のサイキック・クリーチャー。
 サイキックの中でも逆に珍しい、バニラのサイキック・クリーチャーだ。なにも能力がないので、一応バニラサポートも受けられる。柚のデッキでは関係ないだろうが。
「《アクア・ティーチャー》の能力は相手のバニラにも反応するけど、召喚じゃないと反応しないから、カードは引けないわね」
「あれ? そうなの?」
「一応、そういうことになっているな。まあ、使う機会なんてなかなかないだろうが」
 つまり単純に場数が増えただけ。特に脅威でもないクリーチャーだ。警戒するとしたら、覚醒リンクくらいだが。
(でもこれ、サイキック・セルも5コスト超次元呪文でまとめて出せるんですよねー)
 それをわざわざ4コストの超次元呪文で出したということは、手札に5コストの超次元呪文がないというより、4コストの超次元呪文しかないのだと思われる。
「《グリージー・ホーン》は装備したクリーチャーを、アンタップしているクリーチャーにも攻撃できるようにします。なので、《ドクロスカル》で《アクア・ティーチャー》を攻撃ですっ」
「防げないですねー……《アクア・ティーチャー》はパワー1000しかないので、パワー2000の《ドクロスカル》には敵いません」
「じゃあ、これでわたしのターンは終了しますけど、《グリージー・ホーン》を装備した《ドクロスカル》がタップされているので、龍解条件成立ですっ!」
 もう一つ、厄介なものがある。サイキック・セルなんかよりも、よほど面倒なクリーチャーが。
 ターン終了時にタップしているという条件を満たし、《グリージー・ホーン》が龍解する。

「龍解っ、《熱血龍 リトルビッグホーン》!」

「パワー5000のアンタップキラー……単純だけど、色々まずいんですよねー、そういうの」
 単純だが、だからこそ強いカードもある。特に今回の空護は、不完全なバニラビート。能力のないクリーチャーで殴るという単純なことしかできないので、単純な強さで返されるのは厳しい。
 これで毎ターン、空護はパワー5000未満のクリーチャーを殴られて殺される。パワーの高いクリーチャーで牽制したいが、バニラにパワー5000を超えるクリーチャーは少ない。パワーが6000以上あれば、大抵はWブレイカーを持っているのだから。
「でも、今は並べるしかできないんですよねー。《鬼面城》をチャージ。《A・ザラシー》と《模龍の伝道師 ドルーラー》を召喚して、ターン終了ですよー」
 手札がない現状、《海底鬼面城》はドローソースとして貴重だが、相手にも手札を与えてしまう。このまま短い時間で殴り切れる気もしないので、ビートダウンとしては好ましくないが、一旦待ちに入る。
「《ジェラシー・シャン》をマナにおいて、4マナで《魔光王機デ・バウラ伯》を召喚です。墓地の《エナジー・ライト》を手札に加えて、3マナで《超次元ブラックブルー・ホール》を唱えます!」
「! 来ましたかー……」
 二枚目の超次元呪文。コスト4なので一体しか出てこないが、残る一体は決まっている。
「《マシュマロ人形ザビ・ポリマ》をバトルゾーンに出しますっ!」



マシュマロ人形ザビ・ポリマ UC 闇文明 (2)
サイキック・クリーチャー:デスパペット/エイリアン 2000
覚醒リンク—自分のターンのはじめに、バトルゾーンに自分の《ギル・ポリマのペンチ》があれば、そのクリーチャーとこのクリーチャーを裏返しリンクさせる。



 覚醒リンクしか能力を持たない、準バニラのサイキック・クリーチャー。単体では特に脅威ではないが、一応、覚醒リンクを持っている。
 次のターンの始めに覚醒リンクすれば、それなりのサイズのクリーチャーが出て来る。小型を並べて殴るバニラビートで、大型の処理は厳しい。できれば、覚醒リンクは防ぎたいところだが、都合よく除去できるわけではない。少なくとも今の手札に除去札はなかった。
「えっと、闇のクリーチャーがバトルゾーンに出たので、《ブラックブルー・ホール》の効果発動ですっ。相手クリーチャーは、次のターン可能なら必ず攻撃しなければなりませんっ」
「強制攻撃……ブロッカーを出された直後だと、これはこれで面倒ですねー」
 これでは待ちに入った意味がなくなる。《スペルギア・ファントム》の時から、柚は空護のペースを乱していた。
「《リトルビッグホーン》はアンタップされているクリーチャーも攻撃できるので、で《4月》を攻撃ですっ!」
「《4月》はパワー4000……ま、勝てませんねー」
 普通に殴り倒されてアタッカーを減らされる。盤面はほぼ、柚に制されてしまった。
「とりあえず、いいカードがないか探ってみますかねー。3マナで呪文《ヘブンズ・キューブ》。山札から呪文を一枚サーチしますよー」
 盤面だけではない。空護は手札も切れている。マナも十分とは言えず、リソース面でもかなり不利だ。
 そんな状況で、苦し紛れのように呪文をサーチする。ハイランダーにおいては、特定のカードをサーチでkるというのは非常に重要な意味を持つが、この状況ではその意味も無意味になりかねなかった。流石に苦しすぎる。
 しかし、そんな様子を微塵も見せず、デッキからカードを探す空護。
「……成程。では、《スパイラル・スライダー》を手札に加えますねー。そのまま2マナで《スパイラル・スライダー》を唱えて……《リトルビッグホーン》をバウンス」
「サイキック・クリーチャーじゃなくて、いいんですか……?」
「悩むんですけどねー、そこは。まあ、毎ターンアタッカー潰される方が困るかな、と。じゃあ、強制攻撃でしたねー。《イソロック》で攻撃ですー」
「《バウラ伯》でブロックしますっ。こちらの勝ちです!」
「続けて《A・ザラシー》でも攻撃、シールドブレイクですよー」
「S・トリガー、《狼牙獣銃拳》ですっ。《ドルーラー》のパワーを6000下げて破壊します!」
 先に《ホワイト・ブラックホール》で入れ替えたシールドを狙ったが、S・トリガーだったようだ。アタッカーがまた減らされた。
 残ったのは《A・ザラシー》のみ。しかも、《ザビ・ポリマ》と《ギル・ポリマのペンチ》の二体を場に残したまま、柚のターンが回ってきてしまった。
「じゃあ、このターンの始めに、わたしの場に《マシュマロ人形ザビ・ポリマ》と《ギル・ポリマのペンチ》がいるので、覚醒リンクですっ!」
 二体のサイキック・セルが覚醒し、リンクする——

「——《幻惑の魔手ドン・マシュマロ》!」