二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て25」 ( No.469 )
日時: 2016/09/06 00:14
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

大作家 シンボー 自然文明 (4)
クリーチャー:ヒューマノイド/ドリームメイト 6000
進化—自分の自然のクリーチャー1体の上に置く。
W・ブレイカー
自分のターンの終わりに、カードを1枚、自分のマナゾーンから手札に戻してもよい。



「! まずい、暁さんの防御ももう保たないよ」
「スピードアタッカーを投げられるよりはマシだけど、もう終わりね」
 《ゴンタ》が進化したクリーチャーを見るや否や、一騎らが険しい表情を見せた。
 それとは対照的に、恋は淡々と殴り続ける。
「まずは《ムラマサ》で攻撃……アタックトリガーでパワー2000以下のクリーチャー……《ボーン・スライム》を破壊……」
「《ボーン・アミーゴ》でブロックだよ! パワー3000どうしで相打ち!」
「追撃……《シンボー》で攻撃……」
「《ボーン・スライム》でブロック!」
 スピードアタッカーが出ていればこのターンで終わっていたが、進化クリーチャーであれば、まだ耐えられる。
 という考えは、甘かった。
「ターン終了する時、《シンボー》の能力発動……マナゾーンのカードを一枚、回収する……《マッカラン》を回収」
「ま、マナのカードを回収……!?」
 これが《シンボー》の能力だ。かの《タイタンの大地ジオ・ザ・マン》と同じく、ターン終了時にマナ回収ができる。
 それにより恋は、手札切れを解消し、追撃の手を加速させることができるようになった。今手札にある《マッカラン》がいれば、ブロッカーも薙ぎ払える。
 いくら暁が粘ろうとも、恋は常に増援を補充できるため、この消耗戦は一気に恋へと形勢が傾く。もう、暁は恋の攻撃を防ぎきれないだろう。
「暁の手札はゼロ、ブロッカーもすべて潰された。対してれんちゃんの場には、毎ターンマナ回収ができる《シンボー》、手札には4000以下まで倒せる《マッカラン》」
「ブロッカー二体であと1ターン耐えられるが、トップ頼みでそれは絶望的か。よしんば耐えたとしても、耐えるだけだしな。解決策にはならない」
「空城さん、ビートダウンで殴り合いをしていれば、まだ望みはあったかもしれないけど……こうなると、押し込まれるわね」
 暁の場には《スケルトン・シーフ》二体と《ブレイン・イーター》。アタッカーの数はそこそこいるが、かといって《シンボー》を倒せるわけでも、恋にとどめが刺せるわけでもなかった。
「まだ……私のターン! 呪文《勇愛の天秤》! 手札はないから、そのまま二枚ドローするよ」
 暁は《勇愛の天秤》で手札を増やす。マナは8マナ。枚数は多いので、このドロー次第では、防御の選択肢は広がるかもしれない。
 まだもう少し、寿命を延ばせる可能性が高まった。
 それでも、ただの延命措置になるだけの可能性が否めないが。
「……! 4マナをタップして、呪文《旧知との遭遇》。墓地にいる闇のクリーチャー二体を回収するよ。墓地の《ボーン・スライム》二体を手札に!」
 墓地回収でブロッカーを二体回収する暁。《ボーン・スライム》は1マナのブロッカー、暁のマナはまだ2マナ残っている。
「《ボーン・スライム》二体か。まだギリギリ粘れるな」
「それでもジリ貧だけどね。そもそも黒赤は攻撃的な色だから、防御に回ると巻き返しが難しいし」
「なにより、恋の場に《シンボー》がいるのが辛いはずだよ。毎ターンマナ回収で息切れしないからね。赤緑ステロイドが継続的に殴ってこれるようになると、厳しいよ」
「それにあきらちゃん、マナゾーンに闇のカードがあと一枚です……《ボーン・スライム》は一体しか出せません……」
『え?』
 柚の一言で、場が凍りつく。
 皆一様に、そんなことがあり得るのか、というような顔をしていた。
「空城さん、まさかここでプレミですかー?」
「闇マナを二枚残さないと、《ボーン・スライム》二体は出せない。二色で色が足りないプレミは、流石に酷いな」
「いつも単色デッキばかり使ってるとはいえ、久々に多色デッキ使って色事故だなんて……情けないわ」
「私の死神デッキも黒単だから、色を気にする必要はなかったけど……」
 確かに見てみれば、暁のマナゾーンに残っているのは、黒と赤のカードが一枚ずつ。これでは《ボーン・スライム》が一体しか出せない。
 マナの数ばかりに気を取られて、色が足りないミスはよくあることだ。しかし、それでもたった二色のデッキで、墓地回収することを見通した状態でこのミスは、いくらなんでも酷すぎる。
「うーん……? いくらピンチで焦っていたとしても、ここでそんなミスをするかなぁ?」
 あまりの窮地に焦っていた、どうせ悪足掻きなのだからプレイングが雑になっていた。このミスの要因は、いくらでも理屈付けられる。
 ただし、それが本当にミスならば、だが。
 本当に暁はミスをしたのか。違う視点から、考えることはできないのか。
 否。当然、可能だ。
 この場合は、こう考えられる。
 暁には、火のマナを残す理由があったのだと。
「最後に2マナ! 恋、これがこのデュエルのラストターン——勝負だよ!」
 暁は最後に残った2マナを払い、手札のカードを叩きつける。
 延命だなんて、そんな気長な戦い方は、彼女には合わない。
 刹那のうちに、爆発的に、一瞬の破壊を叩きつける。
 今、この瞬間に——

「呪文——《メガ・ブラスター》!」




メガ・ブラスター R 火文明 (2)
呪文
自分の手札から好きな枚数を選び、自分の墓地に置く。その後、その枚数と同じ数の自分のクリーチャーをバトルゾーンから選ぶ。このターン、選ばれたクリーチャーは「W・ブレイカー」を得る。



「っ……! それは……」
「この呪文……! 暁さんは、これを狙っていたのか!」
 暁が唱えた呪文、《メガ・ブラスター》。
 手札を捨てた枚数だけ、自分のクリーチャーにWブレイカーを与える呪文だ。
 暁の場にクリーチャーは三体。そして、暁の手札は、先ほど回収した《ボーン・スライム》が二枚だ。
「私は残った手札を全部捨てるよ! そして選ぶのは二体の《スケルトン・シーフ》! これでこの二体はWブレイカーになる!」
「私のシールドは残り四枚……まさか、最初の攻撃って……」
「そう、このためなんだよね。こうやって決着つけるデッキにしてるから、シールドは四枚か二枚がちょうどいいんだ」
 この呪文で、暁の場にはWブレイカーが二体並んだ。打点は合計五。恋の四枚のシールドをすべて粉砕し、ちょうどとどめまで持って行くことができる。
 追いつめられていた暁が、ここで反逆する。
 正に、起死回生の一手だった。
「さぁ、勝負! 一撃目だよ! 《スケルトン・シーフ》でWブレイク!」
「っ……トリガー、ない……」
「二撃目! もう一体の《スケルトン・シーフ》でWブレイク!」
 守りをすべて捨てた決死の突撃。ここで殴りきれれば暁の勝ち。トリガーで防ぐことができれば、恋の勝ちだ。
「一枚目……トリガー、ない……」
「続けてもう一枚! これが最後!」
「二枚目……」
 二体目の《スケルトン・シーフ》が恋のシールドをすべて割り砕く。
 一枚目のシールドからはなにも出ない。しかし、二枚目を手にした恋の口から、小さく言葉が漏れる。
「……S・トリガー」
「っ、やば……!」
 今までに出たカードやマナ見る限り、防御用のトリガーはほとんど積んでいないように見えたが、ゼロではなかったのか。
 恋の手から、そのS・トリガーが零れ落ちる。
「……《特捜兵クロード》……能力は、不発……」
「び、びっくりした……でも、それならこれでとどめだよ!」
 恋の最後のシールドから飛び出したのは、《特捜兵クロード》。今の盤面には、なんら影響を及ぼさないクリーチャーだ。
 残りのアタッカーが生き残った。このレギュレーションならシノビもいない。
 これで、暁の勝利だ。

「《さまよう者ブレイン・イーター》で、ダイレクトアタック!」