二次創作小説(紙ほか)
- 番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て28」 ( No.472 )
- 日時: 2016/09/06 23:54
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)
浬が十三枚目のカードを取り、十四枚目のカードを取ろうとした時、ふとその手が止まった。
(ん……? これは……)
さっき見た束と、今見ている束との違い。抜けているカード。つまり、ミシェルが取ったカードが、気にかかった。
《慈悲と自愛のアシスト》
《雷光の使徒ミール》
《怒りの影ブラック・フェザー》
《剣舞の修羅ヴァシュナ》
これが、今のカードの束の中身。この中からなくなっていたもの、ミシェルが取ったカードは、
(《キング・アルカディアス》? 確かに《エル・カイオウ》はいるが、腐りやすいそのカードを取ったのか……)
《エル・カイオウ》しか進化元がいないデッキに《キング・アルカディアス》。浬は取る気がまったくないので、最後にはミシェルに押し付ける予定だったが、自分から取ってくるとは思わなかった。
ミシェルのデッキには光のカードもそれなりにあるので、色合わせだろうか。
(だがそれなら《慈悲と自愛のアシスト》でいいよな……《デーモン・ハンド》や《たたりとホラーの贈り物》を手打ちするため?)
しかし《デーモン・ハンド》は手打ちするには明らかに重く、《たたりとホラーの贈り物》は積極的に手打ちしたいようなスペックではない。
それとも、あわよくば《エル・カイオウ》からの進化を狙っているのだろうか。
(……まあこの枚数だし、あまり深く考えなくてもいいか? 俺ももう、欲しいカードなくなったしな……)
浬のデッキは最終的に、青赤緑のビートダウンになった。今のところ他の色は一切混じっていない。
なので、残ったカードはまるで使い道がないのだが、
(《ヴァシュナ》のWブレイカーは魅力だが、味方を殺す《ブラック・フェザー》も入れることが前提と考えると、選びにくいな。それにここで俺が《ヴァシュナ》を選んでも、四天寺さんがそれを見て《ブラック・フェザー》を選べば、腐るだけだ)
ミシェルはすべての文明が混在したデッキなので、《ブラック・フェザー》単体でも、使えないことはない。実用性はないだろうが。
ここで《ヴァシュナ》を選べば、ミシェルが《ブラック・フェザー》を取って腐る可能性がある。それならば、
(やはり腐ることになるが、相手のトリガー比率を下げること、ついでに俺のトリガー確保も考えて、《慈悲と自愛のアシスト》を選んでおくか。一応、緑のマナ基盤になるしな)
そしてあわよくば、次に《ミール》を取れれば、両方のカードを使うチャンスができたが、そこまで上手くはいかない。
次に束(二枚)が回って来た時には、黒いカードしかなかった。
(まあ、そうだよな。仕方ない。俺としてはどちらを選んでも同じだが……《ヴァシュナ》を相手に渡す方が危険か? 高パワーのWブレイカーだし、ここは味方破壊のデメリットを持つ《ブラック・フェザー》の方を押し付けるか)
そう考えて、《ヴァシュナ》を取り、最後に残った《ブラック・フェザー》を渡す。味方を殺し、できなければ自壊する《ブラック・フェザー》。使いどころは難しいだろう。
しかし《ブラック・フェザー》も軽さのわりにパワーが高めなので、早い段階から出て来る殴り返し要員と考えると、渡しにくいところはあった。
(……今気づいたが、《ブラック・フェザー》を自爆させれば、《再誕の社》でマナ加速しやすくなるな。やはり重い《ヴァシュナ》を押し付けるべきだったか?)
とはいえもうカードは渡してしまったので、今更そんなことに気付いても後の祭りだが。
なんにせよ、これでデッキは完成した。
それぞれ、浬はシールド三枚、手札二枚。ミシェルはシールド五枚、手札二枚で対戦を始める。
「あたしの先攻からだったな。《たたりとホラーの贈り物》をマナチャージして、ターン終了だ」
「俺のターン。まずはドロー……」
デッキ枚数が極端に少ないだけに、ターン最初のドローでさえも重い。
カードを引いて、浬はいつも半分しかない手札を眺める。
(手札は……《ケローラ》《ピコラ》《ゼピメテウス》か)
見事にコスト1のクリーチャーが目白押しだ。
しかし、序盤から殴るのであれば、この手札は悪くない。とりえず《ケローラ》で殴ることを考えて、《職人ピコラ》を抜き取る。
「《ピコラ》をチャージ。ターン終了」
「あたしのターン。《リク》をチャージ、ターン終了だ」
ミシェルはマナに光、闇、火の三色を揃える。様々な色のカードが投入されているので、色基盤を先に作ってしまおうということだろうか。
「俺のターン。《ゼピメテウス》をチャージ。1マナで《飢えと乾き ケローラ》を召喚」
飢えと乾き(アップ・サイダー) ケローラ C 火文明 (1)
クリーチャー:アウトレイジ 2000
自分のマナゾーンに水のカードがなければ、このクリーチャーを破壊する。
「《ワーニング・スパイク》をチャージ。ターン終了」
ミシェルはまだ動かない。これでマナに四文明が揃ったが、一枚もカードを使っていなかった。
そして浬のターン。ここで、切り札を引いた。
「よし。《フェアリー・ギフト》をチャージ。3マナで《覚醒するブレイブ・ホーン》を召喚!」
「! 《ブレイブ・ホーン》……!」
少なからず驚きを見せるミシェル。当然だ。彼女はこのカードを知らないのだから。
恐らく、Wブレイカーは《リトル・ガンフレア》だけだと高をくくっていたのだろう。この早い段階でのWブレイカーは、強烈な圧力になる。
「《ケローラ》でシールドをブレイク!」
「っ、トリガーはない」
まずは一枚、シールドを粉砕する。
「……マナチャージなし。《カーズ》を召喚して、ターン終了」
「俺のターン。マナチャージなしで《アクア・ソルジャー》を召喚! 《ブレイブ・ホーン》でシールドをW ブレイクだ!」
ミシェルの場にはブロッカーがいない。殴り返してくるクリーチャーはいるが、これはチャンスだ。
こちらにアタッカーは三体。一撃でもWブレイクを通せば、かなり勝利に近づく。なので、迷わず《ブレイブ・ホーン》でシールドを二枚、叩き割ったが、
「! S・トリガー! 《伝説の秘法 超動》! 《ケローラ》を破壊!」
「やはりトリガーは埋まっているか……ターン終了」
アタッカーを削られ、次のターンには《ブレイブ・ホーン》も殴り返される。
攻め手を止められると、浬としては厳しいのだが、
「《躍喰の超人》をチャージ。2マナで《霊王機エル・カイオウ》を召喚。《カーズ》で《ブレイブ・ホーン》を攻撃!」
「ぐっ、ブロッカーか……!」
ここで《エル・カイオウ》が出て来てしまった。パワー4500のブロッカー。浬のデッキでは、どのクリーチャーでも突破できない壁だ。
「たったコスト2のクリーチャーに封殺されるとはな……《クック・ポロン》を召喚。ターン終了だ……」
「あたしのターン。《雷光の使徒ミール》を召喚。能力で《アクア・ソルジャー》をタップ。さらに《怒りの影ブラック・フェザー》を召喚。能力で《ミール》を破壊する」
《アクア・ソルジャー》がタップされて無防備を晒す。さらに、おまけのように《ミール》を生贄に捧げ、《ブラック・フェザー》が現れる。
「《カーズ》で《アクア・ソルジャー》を攻撃!」
「っ、だが、《アクア・ソルジャー》は破壊されても手札へ戻る!」
案の定、《アクア・ソルジャー》はタップキルで破壊される。しかしリソースの枯渇を危惧して入れたカードだ。墓地へは行かず、手札へと戻す。
いつも以上にテンポが削がれるのは痛いが、裏を返せば、いつも以上にすぐ戦線復帰できるアタッカーというのは心強い。また出し直すだけで、すぐに殴り手になれる。
とはいえ《エル・カイオウ》が邪魔なので、早急に処理しなければならないのだが、
「! 引いたぞ、1マナで《火炎流星弾》! 《エル・カイオウ》を破壊!」
「ちぃっ! やられたか」
「《クック・ポロン》でシールドをブレイク!」
手札がなく、マナも足りないので《アクア・ソルジャー》と同時に出すことはできなかったが、厄介だったブロッカーを処理し、攻撃も通せた。
《クック・ポロン》はパワーこそ貧弱だが、攻撃されない。殴り返しを受けないので、やはりしぶとく生き残るだろう。
おまけにミシェルの多色クリーチャーはこれでゼロなので、《キング・アルカディアス》も出せない。最初からそれほど気にしてはいないが。
さらに良いことは重なる。それは、ミシェルのデッキ枚数だ。
見ればミシェルの残りデッキ枚数は二枚。次の1ターンさえ凌げば、なにもせずとも浬の勝利だ。
「……1マナで《ロスト・ウォータゲイト》を唱える」
ロスト・ウォーターゲイト C 水文明 (1)
呪文
S・トリガー
自分の山札を見る。その中から多色カードを1枚選び、相手に見せてもよい。その後、自分の山札をシャッフルし、そのカードを山札の一番上に置く。
「山札を見て、《キング・アルカディアス》をトップに固定」
残り二枚のデッキのトップを固定するミシェル。
浬には、ここでそのカードを使う意義が、いまいちわからなかった。
(四天寺さんの見えていないカードは……《雷撃と火炎の城塞》《K・リミー》《デーモン・ハンド》《再誕の社》か? 《ロスト・ウォーターゲイト》の効果は強制じゃない。《雷撃と火炎の城塞》が盾落ちだとしても、トップに使えない《キング・アルカディアス》を置く必要があるか? マナも足りてないぞ)
わざわざ次のターンに《キング・アルカディアス》を引く理由が、果たしてミシェルにあるのだろうか。
「さらに3マナで《再誕の社》を唱える。墓地の《ミール》と《ロスト・ウォーターゲイト》をマナへ」
(これでマナは溜まった……残り手札は一枚。盾一枚。山札は、ボトムが一枚。その中にそれぞれ《雷撃と火炎の城塞》《K・リミー》《デーモン・ハンド》が振り分けられている状況……)
となると、シールドにトリガーが埋まっている確率は三分の二。割ったら踏んでもおかしくない。
(そもそも、こんなに考える必要あるか? 次のターンを耐えれば、俺の勝ち——)
とそこで、浬はハッと気づく。
自分が今まで攻めていたがゆえに、見落としていた。
(! しまった、まずいぞ……!)
ミシェルの場には、《カーズ》と《ブラック・フェザー》の二体。
浬のシールドは一枚もブレイクされていないが、初期段階で三枚だ。
つまり、
(このターンで二枚ブレイクされたら、返しのターンで一体でも除去しなければ、次のターンに殴り切られる……! だが俺の場のクリーチャーは……)
パワー1000の《クック・ポロン》が一体だ。《火炎流星弾》で《エル・カイオウ》を破壊して喜んでいる場合ではなかった。
手札にあるのも《アクア・ソルジャー》一枚だけだ。
殴り返しもできず、除去カードもない。かなり絶望的な盤面だ。