二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て32」 ( No.476 )
日時: 2016/09/09 07:55
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

グラディアン・レッド・ドラゴン SR 火文明 (10)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン 15000
T・ブレイカー



 沙弓が10マナも支払って呼び出したのは、《グラディアン・レッド・ドラゴン》。
 10マナという膨大なコスト。15000という強大なパワー。Tブレイカーという大量の打点。単純明快に、デカさと力を示すドラゴンだ。
 もっとも、文明や種族が違うものの、同コストに《偽りの名 13》という、よりパワフルなクリーチャーがいるのだが、これは登場時期の問題で、仕方のないことである。
 《グラディアン・レッド・ドラゴン》は旧時代のデュエル・マスターズにおいて、一時は他の追随を許さないほどのファッティだったのだ。巨大な龍の始祖、歴史の始まり。それゆえに、今でも一定の人気を誇っている。
「パワー15000のTブレイカー! この圧倒的なパワーと打点! 返せるものなら、返して御覧なさいな!」
「うわー、部長すっごいノリノリ」
「ただデカいだけのファッティを素出ししたくらいだからなぁ……まあだが、焔にとって、状況は悪くなる一方だな」
 一瞬で沙弓の場には三打点。下手に手札を与えず、一気に殴るつもりなのは明白だが、たった一枚で三打点確保。空護の死へのカウントダウンも、一気に進んだ。
「僕のターン……《光輪の精霊シャウナ》を召喚。ターン終了です」
「いい準バニラね。だけど無意味よ。《執拗なる鎧亜の牢獄》!」
「除去はあると思ってましたけど、よりにもよって《牢獄》なんて……」
「《シャウナ》をバウンスして、即座にハンデス! 捨てられたカードとバウンスしたカードが一致するから、シールドも一枚焼却よ。さらに《レールガン》も召喚! ターン終了!」
 シールドを一枚焼かれ、別の形でカウントダウンが進む。
 沙弓の場には《死海竜》《グラディアン・レッド・ドラゴン》《レールガン》。シールド焼却によって、打点が揃ってしまった。
「しかし、できることはトップを捲ることだけ……僕のターン」
 打点が揃っても、先に手札を叩き落されているため、空護は山札の一番上のカードを捲っていくしかない。対処はすべて山札頼みだ。
「お、これは……3マナで呪文、呪文《ヘブンズ・キューブ》ですー。山札から呪文を一枚サーチしますねー」
 そんな窮地の空護だったが、ここで呪文をサーチできる《ヘブンズ・キューブ》を引いた。
 この場をひっくり返すほどの呪文が持ってこれるとは思わないが、延命するか、なにかしらの逆転の手掛かりを得ることはできるかもしれなかった。
「ふむふむ。それじゃあ、《ライフプラン・チャージャー》を手札に加え、そのまま4マナで《ライフプラン・チャージャー》を唱えますねー。山札の上から五枚を見て……《神銃の精霊ナカツマキ》を手札に」
「《ナカツマキ》……?」
「これでターン終了ですねー」
 なんとか手札を一枚キープした状態で、ターンを返す空護。
 手札を持たれてしまったことは、沙弓にとってはあまり嬉しくないが、それ以上に彼女には気になることがあった。
 しかし沙弓は、もう王手チェックをかけているのだ。今更、一枚の準バニラに怯えているわけにはいかない。
「なーんか、ここに来て怪しいけど……とりあえず私のターン。4マナで《伝説の秘法 超動》を唱えて二枚ドロー。さらに7マナで《激竜王》を召喚よ」



激竜王 R 火文明 (7)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター 25000



「《死海竜》と《激竜王》が同じ盤面に揃うなんてね……」
「《激竜王》はバカみたいなパワーでバニラビートに採用される可能性がなくもないが、《死海竜》のスペックがアレだからな……こんなレギュレーションじゃなきゃ、使えないだろ」
 《死海竜》は多色カード特有のマナタップイン能力があるせいで、バニラビートにさえも入れない不遇なクリーチャーだ。
 デュエマにおいては、準バニラが最も不遇なのだということを示すクリーチャーの一体である。
「どうせ《ボルメテウス》とかはいないわけだから、時間をかけても仕方ないわね。打点は足りてるし、ここは攻めるわよ。《グラディアン・レッド・ドラゴン》で攻撃! Tブレイク!」
 空護が手札を一枚握っているのが少々気がかりだが、ハンデスカードはない。握られているのはどうせ準バニラの《ナカツマキ》なのだ。下手に長引かせるより、とっとと決めてしまう方がいいと判断し、沙弓は殴りかかる。
 一番手は勿論《グラディアン・レッド・ドラゴン》。元祖ファッティの三打点が叩き込まれる。
「……! S・トリガー! 《ガールズ・ジャーニー》で、三枚ドローします」
「それなら問題ないわ。《レールガン》で最後のシールドをブレイク!」
 このターンに決めてしまえば、いくら手札が増えようと関係ない。
 空護の最後のシールドがブレイクされる。
 そして、
「……S・トリガー」
 その一撃が契機となり、天の扉が開かれる——

「——《ヘブンズ・ゲート》」

「っ、天門……!?」
 空護の最後のシールドから飛び出したのは、もはやお馴染みのブロッカー踏み倒し呪文、《ヘブンズ・ゲート》。
 シールドブレイクとS・トリガーで一気に増えた空護の手札から、守りの精霊が溢れ出す。
「《神銃の精霊ナカツマキ》と《天海の精霊シリウス》をバトルゾーンに!」



天海の精霊シリウス SR 光文明 (11)
クリーチャー:エンジェル・コマンド 12000
ブロッカー
T・ブレイカー



 現れた精霊は、先ほど《ライフプラン・チャージャー》で手札に加えられた《ナカツマキ》と、古き天門の代表的ファッティ、《天海の精霊シリウス》。
 《グラディアン・レッド・ドラゴン》が巨大な龍の始祖なら、《シリウス》は天国の門から舞い降りた最初の天使、天門の始祖である。
 そしてやはり、現在では《ヘブンズ・ゲート》で踏み倒すクリーチャーとしては、《シリウス》よりもハイスペックなクリーチャーは多く、完全上位互換もいる。それでも、その巨大さ、神々しさ、そして天門の始まりという歴史的意味を持つクリーチャーとして、人気は高い。
 さらにここで、沙弓は今まで空護のデッキに対して抱いていた違和感が、解消された。
「途中から変だと思ってたけど、トリーヴァに仕立ての天門だったのね」
「どうにもカードが足りなかったので、他のカードで誤魔化さざるを得なかったんですよねー。それがいい感じに偽装になってたようですけど」
 今までの空護のカードを見れば、確かに光のブロッカーが何体かいた。
 しかしバニラビートという先入観、バニラサポートや、空護がここまでほとんど動けなかったことなど、様々な要素が重なり、実際に撃たれるまで天門だと完全に気づくことはできなかった。
 空護の場には大型ブロッカーが二体。決して無視できるクリーチャーではない。
「確かに《シリウス》は怖いけど、私のデッキのフィニッシャーは、パワーだけは馬鹿みたいに高いからね。このままだととどめ刺されちゃうし、守りのためにも攻撃を継続させるわ。《死海竜》でダイレクトアタック!」
「《ナカツマキ》でブロック!」
 《死海竜》のパワーは12000。《ナカツマキ》のパワーをギリギリ上回り、一方的に打ち倒す。
 これで空護の場のアタッカーは、Tブレイカーの《シリウス》が一体。沙弓にとどめを刺すことはできず、また沙弓のクリーチャーを止めることもできない。
 しかしそれでも、空護は不敵に笑っていた。
「さて、ここから逆転劇の始まりですよー。3マナで《ロジック・スパーク》! 山札から《調和と繁栄の罠》をサーチして、そのまま唱えますねー。指定文明は火です」
「む……時間稼ぎをされたわね」
 《調和と繁栄の罠》。1ターンの間、指定した文明のクリーチャーの攻撃を封じる呪文。
 たった1ターンだけの拘束だが、後続のスピードアタッカーすらも止められる固有性があり、主にビッグマナ系のデッキにおける防御トリガーとして、よく使われる。
 沙弓のクリーチャーはすべてが火文明を含んでいるため、とりあえずこれで、空護は沙弓の攻撃を1ターンは凌ぐことができる。スピードアタッカーも確実に火文明が混じるので怖くない。進化クリーチャーは考慮してないが、準バニラの進化クリーチャーは限られている。恐らくいないだろう。
 1ターン稼いだこの隙に、空護は攻撃に転じる。
「《シリウス》でTブレイク!」
「トリガーは……残念、ないわね」
 これで沙弓もシールドがゼロ。そして、空護へのダイレクトアタックができない状態にある。
「ちょっと、まずいかもね……でもまだ全然なんとかなるわ」
 しかし、それでも盤上は圧倒的に沙弓が有利だ。手札も多いため、取れる選択肢はいくらでもある。
「とはいえ、わざわざすることもないけども……一応、ブロッカー対策よ。《ゼッツー》二体と、《暗黒の騎士ザガーン》を召喚!」
 ブロッカーで攻撃を止められないよう、オーバーキル気味に打点を並べる沙弓。さらに闇単色の《ザガーン》も呼び、《調和と繁栄の罠》すらもすり抜けようとする。
「《調和と繁栄の罠》はプレイヤーへの攻撃は禁止するけど、クリーチャーへの攻撃までは止められなかったはずよね? その大きなアタッカーにはご退場願うわ。脳筋パワーで踏み潰しなさい、《激竜王》で《シリウス》を攻撃!」
 《シリウス》のパワーは12000、それに向かっていく《激竜王》のパワーは25000もある。元祖、天門デッキのエースでさえも、パワー差を倍以上つけて踏み潰してしまうこのパワー。
 《激竜王》は、一撃で《シリウス》を葬った。
「ターン終了よ」
「では、僕のターン」
 過剰に展開された沙弓のクリーチャー。対する空護の場には、クリーチャーゼロ。
 白青緑トリーヴァではスピードアタッカーもいない。
 しかし、
「……つまらない奴を戦場に出しても、もう無意味なんですよねー」
 空護は既に、勝利への道を見出していた。
「これで終わりです。5マナで《破戒の右手 スミス》を召喚。そして、さらに5マナをタップ」
 本来ならば、守るための盾を刃に変える魔術。
 けれど今は、一閃を解き放つための閃光だ。

「呪文——《ダイヤモンド・カッター》」

「あ……」
 これで、終わりだった。
「《ダイヤモンド・カッター》の効果は……まあ、説明不要ですよね。僕のクリーチャーはすべてダイヤモンド状態、勿論《スミス》の召喚酔いも解除です。シノビはいませんし、ブロッカーもない。これで、とどめです」
 宝玉の閃きを受けた無法者が、とどめの一撃を繰り出す。

「《破戒の右手 スミス》で、ダイレクトアタック——」