二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て34」 ( No.478 )
日時: 2016/09/10 15:36
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

星龍グレイテスト・アース 光/水/闇/火/自然文明 (8)
クリーチャー:ワールド・ドラゴン 9000+
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに置く時、タップして置く。
相手のパワー6000以上のクリーチャーは、可能であればこのクリーチャーを攻撃する。
パワーアタッカー+4000
スレイヤー
T・ブレイカー
このクリーチャーが破壊された時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選んでタップし、その後、クリーチャーを1体、バトルゾーンから持ち主の手札に戻してもよい。



「んな……っ!?」
 吃驚を見せる浬。空護の手札から現れたのは、《星龍グレイテスト・アース》。
 珍しい五色クリーチャーのドラゴン。五文明の特徴をすべて取り入れているだけあり、当然ながら強力なクリーチャーである。
 単純に高い打点とパワー。攻撃誘導、強制能力。そして、殴り倒してきた相手を破壊し、クリーチャーを除去、行動不能にする盤面への影響力。
 出されると非常に厄介なクリーチャーであり、それとを浬は早期に呼び出させてしまった。ある程度の大型クリーチャーは覚悟していたが、ここまで巨大だとは思わなかった。
「完全に失敗した……ターン終了」



八ターン
マナ:7
手札:5
場:なし



 《グレイテスト・アース》の存在は非常に大きい。放置すれば、あっという間に空護に場を制されてしまうだろう。
「《食獣セニア》をチャージっす。7マナで《無垢なる大剣士イノス》を召喚! ターン終了っす」
 とはいえこの早いターン。《グレイテスト・アース》を除去できるカードは持っていないのか、それとも使えないのか、八もクリーチャーを出すだけでターンを終える。
「私のターンね」



美琴ターン
マナ:8
手札:4
盾:5
場:《ミリエス》



「うーん、焔君の《グレイテスト・アース》が厄介ね……《スペルビア》をチャージ。《ミリエス》で2コスト増えて9マナ、《従獄の凶獣ドルベロス》を召喚よ」
 マナに二枚目の《スペルビア》を落としつつ、美琴はクリーチャーを並べていく。
 しかしそれも、ただのクリーチャーではなく、一癖も二癖もあるクリーチャーだったが。



従獄の凶獣ドルベロス VR 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド 7000
W・ブレイカー
闇以外のクリーチャーを召喚する時、支払うコストは2多くなる。



「闇のクリーチャーのコストが2増えるのに、闇以外のクリーチャーのコストまで2増やすんですかー? どれだけ動きを縛りたいのか…」
 これで全員、クリーチャーの召喚コストが2増えたことになる。マナが伸びやすいルールなので普段の対戦よりもマシだろうが、一度に複数のクリーチャーが出しにくくなったので、動きにくくなることは確かだ。
「ターン終了よ」
「僕のターンですねー」



空護ターン
マナ:9
手札:3
盾:5
場:《センシング・ドラグーン》《グレイテスト・アース》



 今最も怖い空護のターンが回ってきた。
 巨大なアタッカーが一体いるだけで、威圧感がまるで違う。
 さらに空護は、追い打ちをかけるようにさらなるクリーチャーを呼び出す。
「ここは、マナチャージなしで。《ドルベロス》で2コスト増えて、7マナで《緑神龍クスダルフ》を召喚!」
「《クスダルフ》……?」
 見たことのないクリーチャーだ。
 浬はミシェルとの対戦で、カードの効果確認を怠っていたことを反省し、今度はテキストをすぐに確認する。そして、目を見開いた。
「……! ま、マジか……!」



緑神龍クスダルフ R 自然文明 (5)
クリーチャー:アース・ドラゴン 7000+
W・ブレイカー
パワーアタッカー+4000
自分のターンのはじめに、自分のマナゾーンにあるカードをアンタップできない。



 《緑神龍クスダルフ》。コストのわりにパワーが高く、パワーアタッカーまで付いている中型のアース・ドラゴン。
 《ガミラタール》がそうであったように、コストに対して得る高いパワーは、デメリットを持つ証である。《クスダルフ》の場合は、アンタップステップ時、自分のマナゾーンがアンタップしないこと。つまり、《クスダルフ》がいる限り、マナはほとんど使い捨てになるのだ。《クスダルフ》の登場直後は、後続のクリーチャーを出したり、呪文で支援することがほぼできなくなる。
 しかし問題は、《クスダルフ》のデメリットが及ぼす影響範囲だ。そしてその影響がデメリットへと変換される対象だ。
 《クスダルフ》はマナを起き上がらせなくなるクリーチャー。だがこのレギュレーションにおいて、マナゾーンという領域は各プレイヤーに与えられたものではない。
「このレギュレーションはマナ共有。つまり僕のマナゾーンは皆のマナゾーンです。《クスダルフ》の能力は全体に及び、誰もマナはアンタップできませんよー?」
 マナを共有するということは、空護のマナゾーンは他人のマナゾーンでもある。そのため、《クスダルフ》の影響を受けるのは空護だけではなく、全プレイヤーだ。空護は《クスダルフ》のデメリットを全員に向けることで、実質的に自分だけが強力なクリーチャーを出したような結果になる。
 加えて、全員が同じ目に遭うとはいえ、空護の場には《グレイテスト・アース》という巨大なクリーチャーがいる。使えるマナが一気に減ったことで、他の三人は《グレイテスト・アース》を処理することが難しくなり、
 そして追い打ちをかける美琴の《ミリエス》と《ドルベロス》。クリーチャーの召喚コストは常時2増えているうえに、除去呪文に多いだろう闇の呪文も重い。手札からカードを使いづらくなった。
 下手をすれば、このまま《グレイテスト・アース》と《クスダルフ》に全員殴り切られる可能性すらある。
「さて、ここは……夢谷君を殴りますかねー」
「じ、自分っすか!?」
「念のため、ですねー。《イノス》がなにをしでかすかわからないので。《グレイテスト・アース》で攻撃、Tブレイク!」
 空護が最初に矛先を向けたのは、八だった。コストを重くするクリーチャーを置いている美琴は放置として、浬ではなく八を狙ったのは、浬の場のクリーチャーが《ガミラタール》だからだろう。
 《グレイテスト・アース》の能力で、パワー6000以上のクリーチャーはすべて《グレイテスト・アース》に特攻しなければならない。放っておいても浬のクリーチャーは消えるので、それなら消せないクリーチャーを抱えている八を先に倒す、ということなのだろう。
 それが空護の考えなのかどうかはわからないが、この際はどちらでもいい。《グレイテスト・アース》の攻撃が、八のシールドを三枚叩き割る。
「っ! S・トリガーっす!」
「おっと、トリガーですかー……まあ、仕方ないですねー。そのは覚悟の上ですけど、なんですかねー?」
 空護がこのまま全員を殴り殺すつもりなら、全員のシールド計十五枚を砕き、ダイレクトアタックすることになり、必要な打点は十八。このデッキにどれほどのS・トリガーが積まれているのかはわからないが、シールドを割っていく間にトリガーを踏むことは、十分にあり得るだろう。
 早速その一枚目を、空護は踏んでしまったわけだが、
「……《フューチャー・カプセル》っすよ。山札の上から五枚を操作するっす」
 捲られたトリガーは、山札操作の《フューチャー・カプセル》。除去カードではなく、盤面になんの影響も及ぼさない呪文だ。
「! えーっと、これはこうで、こうして……この一枚は山札の下にこう置いて、終わりっす」
 できればここは、なにかしらの除去呪文で《グレイテスト・アース》か《クスダルフ》を退かしてほしかったところだが、今の手札ではなにもできない浬が言えることでもない。山札を掘り進んで、いいカードをトップに持ってきてもらうことを期待するしかない。
「《センシング・ドラグーン》で……こっちは霧島君を攻撃しますかねー」
「……トリガーはないです」
「なら、ターン終了ですー」
 八のシールドは二枚。次のターン、《クスダルフ》でWブレイク、《センシング・ドラグーン》でとどめということだろうか。
 美琴は最後に残すようで、浬も地味に被害を被ったが、シールド一枚なら、まだ微々たるものだ。
「俺のターン……」



浬ターン
マナ:2/9
手札:4
盾:4
場:《ガミラタール》



 八が操作した山札の一番上を引く浬。引いたのは、《シナプス・キューブ》。
 1マナの水の呪文。山札の上から四枚を操作できる効果を持つ。
(このカードは……この状況だと、既に操作した山札を操作してもあまり意味はないが、どうする? 山札共有のこのルールなら、手札に持っておくだけでも意味はありそうだが……)
 浬は考える。
 ここで重要なのは、今の山札のトップは、八が操作しているということ。
 そして、今の空護は、三人にとって脅威であるということが、、共通認識だということだ。
(あいつが自分のドローする位置に除去札を置いている可能性はあり得る……いや待て、除去札を置くなら、他の誰かのところに置くよな? 《グレイテスト・アース》と《クスダルフ》、どちらを先に除去したいか、今の手札にもよるだろうが、ただ除去することだけを考えるなら、自分が除去札を使う必要はない。誰かに除去させればいいだけだ)
 たとえばそれは、今ここでドローした浬でもいい。たとえば、ここで浬が《クスダルフ》を除去すれば、八は次のターンにはマナがフルで使えるようになるのだから。
 仮に八が自分のドローする位置に除去札を置いたとして、その意図はなにか。なぜ、自分の手で空護のクリーチャーを退かそうとするのか。
(さっきのトリガーで、夢谷は《フューチャー・カプセル》を唱え、山札を操作した。つまりこれは、奴が思い描く“なにか”が想定されて選ばれた山札だ。そこには、あいつの意図するなにかが、あいつが求める意味が必ずある)
 正直、まったくの考えなしの可能性も否めなかったが、そのことを想定しても無意味だと思ったので、そこは考えないことにした。
(考えろ、この局面、この状況、このタイミングで、あいつがこのカードを俺の手元へと持って来た理由を……)
 盤面を見る。自分の手札は、ドローしてきたカードと合わせて四枚。
 美琴の場には《ミリエス》と《ドルベロス》。二体のクリーチャーで全クリーチャーのコストが2増えている。
 空護の場には《センシング・ドラグーン》と、浬が呼んでしまった《グレイテスト・アース》。タップされているので、パワー6000以上のクリーチャーは、《グレイテスト・アース》に攻撃しなければならない。
 八の場には《イノス》。どんな種族の進化クリーチャーにでも進化できるが、八は進化クリーチャーを抱えているのか。
 そして浬の場には《ガミラタール》。《グレイテスト・アース》を呼び、このターン、《グレイテスト・アース》に特攻して死ぬ予定だ。自分で呼んだ敵のフィニッシャーに自ら突っ込んで死ぬという道化を演じている。
 最後にマナ。マナゾーンのカードは二枚。このターン、マナチャージしても3マナしかない。《ミリエス》と《ドルベロス》でコストが上がっているので、クリーチャーはまず出せないだろう。それに、マナにあるのは《スペルビア》二枚だけ。闇のカードだけだ。使える文明すら縛られている。
 と、そこで、浬の脳になにかが走った。
 このトップデックから八が伝えようとしたことが、わかったかもしれない。
「……これか?」
 浬はこのターンに引いたカードを抜き取り、スッとマナに置いた。
「《シナプス・キューブ》をチャージ。《ガミラタール》で《グレイテスト・アース》に攻撃です」
「いいんですかー? カード使わなくても」
「えぇ、使えるカードもないですし……とりあえず強制攻撃ですね。《ガミラタール》で《グレイテスト・アース》に攻撃。《ガミラタール》はバトルに負けて破壊されます。夢谷、お前のターンだ」
「はいっす! いくっすよー!」



八ターン
マナ:3/10
手札:6
盾:2
場:《イノス》



 浬に除去札を渡してもできず、八のターンに除去札を渡せばできること。
 その一つ目の意味は、恐らくマナ数。
 《クスダルフ》でマナが縛られ、《ミリエス》と《ドルベロス》が存在しているこの状況では、使えるカードに大きな制限がかかる。そのため、単純にカードを使うためにマナが多くかかるのだ。
 そして二つ目。八としては、こちらの方が重要だったかもしれない。
 浬が思考を巡らせた小さな結果が、現れる。
「まずは、《ベルフェギウス》をチャージ!」
 アンタップされたマナが増える。しかしそのほとんどは、黒い。
 その中でたった一枚だけ見える、浬の溜めた水のマナ。それを含む四枚のマナが、倒される。

「4マナタップ! 《コマンダー・ラッキーロトファイブ》を召喚っす!」