二次創作小説(紙ほか)
- 番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て35」 ( No.479 )
- 日時: 2016/09/10 18:49
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)
コマンダー・ラッキーロトファイブ 水文明 (2)
クリーチャー:キカイヒーロー 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手は自分自身の山札の上から進化クリーチャーではないクリーチャーが出るまでカードを表向きにする。相手は出たクリーチャーをバトルゾーンに出し、その後、表向きにしたそれ以外のカードをすべて、好きな順序で山札の一番下に戻す。
八がアンタップされているマナをすべて横に倒して出したのは、《コマンダー・ラッキーロトファイブ》。滅多にお目にかかれないようなクリーチャーだ。
2コストに対し、Wブレイカーは持っていないが、6000という高いパワー。そして当然のようにあるデメリット。
《ラッキーロトファイブ》のデメリットは、《ガミラタール》と似ている。相手にクリーチャーを踏み倒させるデメリットだ。
そして、その対象はプレイヤー一人。この時、八が選ぶプレイヤーは、
「空護先輩、山札をめくるっす!」
空護だった。
「? 僕でいいんですかー? またクリーチャーが増えますよー?」
「増えればいいっすね」
「……? まさか……」
《ラッキーロトファイブ》のデメリットは、《ガミラタール》と似ている、と述べたが、同じではなく似ているということは、違いがあるということ。
《ガミラタール》は手札から、任意で踏み倒しさせる能力を持っていた。対して《ラッキーロトファイブ》は、“山札から”“強制的に”踏み倒しをさせる能力だ。
つまり、なにが捲れようとも、その未来が確定していたとしても、避ける術はない。
空護は山札を捲る。その一枚目は——
「っ、《デス・クルーザー》……!」
「ビンゴっす! そのクリーチャー、場に出してもらうっすよ!」
山札の上から四枚は、八が操作した順番通りに並んでいる。浬がドローして一枚、八がドローして二枚、そして、《ラッキーロトファイブ》に捲られて三枚。
八の計画通り、浬に《シナプス・キューブ》をチャージさせて水マナを用意させ、八自身が《ラッキーロトファイブ》を召喚し、空護に《デス・クルーザー》を捲らせることに成功した。
《殺戮の羅刹デス・クルーザー》の能力は、自軍をすべて破壊すること。空護の場のクリーチャーは、一瞬で灰燼に帰した。
「これで僕の場は一掃、残ったのは《デス・クルーザー》だけですが……《グレイテスト・アース》の能力は、使わせてもらいますよー」
《グレイテスト・アース》は、破壊されても仕事をこなすところが厄介だ。このクリーチャーが破壊された時、クリーチャーを一体をタップ、さらにバウンスする能力を持つ。
「夢谷君の《イノス》をタップ。さらに黒月さんの《ドルベロス》をバウンスしますよー」
「ターン終了っす!」
美琴ターン
マナ:11
手札:4
盾:4
場:《ミリエス》
「私のターン。《クスダルフ》はいないから、マナはアンタップね」
マナを起き上がらせてから、美琴がカードを引く。すると、彼女は少し瞳を揺らした。
そのカードは、八が操作してトップに仕込んだ、四枚目——最後のカードだ。
「夢谷君、あなたがここまで考える人だとは思わなかったわ……《グレイテスト・アース》とか、怖いのは消えたけど、代わりに《デス・クルーザー》。なんだかんだでパワーが高いし、打点もあるから、これはこれで厄介なクリーチャーよね。だけど、その処理も考えてたなんて」
言って、美琴はそのカードをスッと引き抜く。
「《ミリエス》で2コスト重くなって、10マナ。《バックベアード》を召喚」
バックベアード 闇文明 (8)
クリーチャー:ダークロード 8000
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、他のアンタップされているクリーチャーをすべて破壊する。
巨大な眼球が現れた。
あらゆる物の怪、妖怪の頂点に君臨する魔眼。
その眼光は、あらゆる生者に死をもたらす。
「《バックベアード》の能力発動! 他のアンタップされているクリーチャーをすべて破壊するわ。つまり、私の《ミリエス》、焔君の《デス・クルーザー》、夢谷君の《ラッキーロトファイブ》を破壊よ!」
「むぅ……」
唸る空護。彼は、場に残された唯一の大型クリーチャーすらをも消し飛ばされてしまった。
いくら《グレイテスト・アース》や《クスダルフ》を消しても、《デス・クルーザー》とてパワー13000のTブレイカーだ。このサイズのクリーチャーは放置できない。
しかしそこも、八は手を打っていた。
浬が水マナを用意し、八が踏み倒しを強要し、空護が自軍を破壊し、そして、美琴が残党を狩る。
すべては、八の思い描いた通りだ。
「ターン終了よ」
空護ターン
マナ:11
手札:3
盾:5
場:なし
「ちょっと前まではラッキーでいい盤面だったのに、一転して場がすっからかんですねー……《チェンジ・ザ・ワールド》をチャージ」
一巡する間に、ここまで場が変動している。《クスダルフ》のロックは一巡も持たなかった。
どころか、空護はクリーチャーゼロだ。
しかし今度は、その場数の少なさを、逆手に取る。
「それなら、孤独に戦いましょうかねー……《神聖綺神 クロスオーバー・ヨミ》」
新聖綺神 クロスオーバー・ヨミ SR 無色 (9)
クリーチャー:オラクリオン 12000
ブロッカー
T・ブレイカー
バトルゾーンにある自分のクリーチャーがこのクリーチャーだけであれば、このクリーチャーはブロックされず、バトルゾーンを離れる時、離れるかわりにとどまる。
自分のターンの終わりに、このクリーチャーをアンタップする。
オラクリオンとなった《神人類 ヨミ》こと、《クロスオーバー・ヨミ》。
場に他のクリーチャーがいなければ、場を離れない大型クリーチャーだ。除去を受け付けない大型クリーチャーは非常に厄介で、それどころか、ブロックで凌ぐこともできず、ターンの終わりにアンタップするブロッカーなので、こちらの攻撃も通らない。
やっとの思いで場を壊滅できたと思ったらこれだ。勘弁してほしい。
「ターン終了ですー」
「俺のターン」
浬ターン
マナ:12
手札:4
盾:4
場:なし
《クロスオーバー・ヨミ》は確かに厄介だ。しかし、それに直接対抗できるわけではないが、浬はこの対戦についてわかったことがある。
(このデッキは、このレギュレーション用に調整されたデッキだと部長は言っていた。つまりリミテッドのように適当ではなく、デッキのコンセプトがある)
どのようなデッキにも、必ずコンセプトが存在する。早いうちに殴り切る速攻、ビートダウン。盤面を制圧し、相手の身動きを封じるコントロール。過剰なほどのマナを溜めるビッグマナ、ターボ。
そしてそれらのデッキにも、さらに細かく目的、特徴が変わってくる。とにかく早さを追求した赤単速攻、リソースを絶やさない黒緑速攻、息切れを起こさないラムダビート、一瞬の爆発力が強いグレンモルトビート。殴るデッキだけでも、その種類は様々。殴るタイミングもカードの使い方もまったく違う。
それゆえに、それぞれのコンセプトに沿った戦い方がある。自分のプレイングをデッキコンセプトに合わせなければ、プレイヤーはそのデッキを十分に生かすことはできない。それは、この『ワンデッキデュエル』でも同じはず。
ならばこのデッキのコンセプトとはなにか。
(恐らくこのデッキは、デメリット持ちクリーチャーの扱い方を主眼に置いて組まれている。さっきは上手く嵌められそうになったが、《クスダルフ》は本来、自分に強烈なデメリットを課すクリーチャーだ。このルールでも、使いどころを間違えれば自分の首を絞めかねない)
今まで引いたカードもどこか妙なところがあったが、その正体がやっとわかった。
それは、デメリット持ちのクリーチャーが非常に多いことだ。
(俺が出した《ボーン・リーパー》もデメリット持ちだ。それらのデメリット持ちクリーチャーを、《シナプス・キューブ》や《フューチャー・カプセル》でトップを操作して、《転生プログラム》や《ラッキーロトファイブ》などで相手に押し付けることもできるだろう。だが逆に、それらのクリーチャーを《デス・クルーザー》のような自分の場をリセットするカードで取り除くこともできる)
恋と美琴の計略デュエルでは、恋に害を与えていたデメリット持ちクリーチャーを《デス・クルーザー》で焼き払っていたが、今回は空護の展開したクリーチャーを、《デス・クルーザー》を押し付けて焼き払った。デッキ共有というルールを生かせば、この対戦ではどちらでも使えるだろう。
(デメリット持ちクリーチャーや、クリーチャーを入れ替えるカード、踏み倒させるカード、敵味方問わずクリーチャーを除去するカード、それに山札操作系のカード……そんなカードが多く見えるこのデッキは、恣意的に一つのコンセプトに基づいて作られていることは明白。恐らく、割合からして相手にデメリット持ちカードを押し付けることを一番の目的にしているな)
《転生プログラム》も相手の有用なクリーチャーを破壊し、デメリット持ちのクリーチャーを出させるためのカードだと考えられる。だとすれば、浬の最初の転生は、失敗だった。
なんにせよ、そんなデッキの特色がわかれば、ここからは多少は動きやすくなるはずだ。
「デメリット持ちが跋扈するのであれば、盤面が混沌とするのは目に見えている。怖気づいて縮こまるよりは、殴り続ける方がいいはずだ。《スカイ・ジェット》をチャージ! 8マナで《呪縛の剣豪バロスト》、5マナで《超速リベンジ・ドラゴン》を召喚!」
今までは見に構えていた浬が、ここで動き出す。
クリーチャーはあくまでも打点。打点として生きているうちに、殴る。
「《リベンジ・ドラゴン》で……黒月さんのシールドをブレイクする」
「こっち? トリガーはないわ」
「なら、ターン終了」
「自分のターンっすね」
八ターン
マナ:13
手札:5
盾:2
場:《イノス》
八のターン。《グレイテスト・アース》にタップされていたお陰で、《バックベアード》の除去から生き残った《イノス》が起き上がる。
「みなさん、大きなクリーチャーばっかで怖いっすねー。でも、大きいことはいいことばかりじゃないっす。《ミリエス》をチャージ、4マナで《預言者マリエル》を召喚っす!」
予言者マリエル R 光文明 (4)
クリーチャー:ライトブリンガー 1000
パワー3000以上のクリーチャーは攻撃できない。
「っ、そのクリーチャーは……!」
「あー、困る奴ですねー……」
「流石は夢谷君、いいところでいいカード引くわね……!」
ここで出て来たのは、《預言者マリエル》。
パワー3000以上のクリーチャーの攻撃をすべて停止させるクリーチャーだ。パワーが低く、場持ちも良いとは言えないが、それでも出るだけでほとんどのクリーチャーの攻撃を止めてしまうロック能力ゆえに、殿堂入りとなったクリーチャーである。
《マリエル》で3000以上、《ノーブル・エンフォーサー》で2000以下のクリーチャーの攻撃を停止させ、パワー2500程度のごく限られたクリーチャーしか攻撃できない盤面を生み出すロックが、最も有名だろう。
今回は《ノーブル・エオンフォーサー》まではないが、場に出ているクリーチャーはすべてパワー3000以上。すべてのクリーチャーの攻撃が止まってしまった。
しかも、それだけでは終わらない。
「さらに6マナで、《イノス》を進化っす! 《イノス》はどんな種族進化もこなせるっすよ!」
無垢なる大剣士イノス R 自然文明 (7)
クリーチャー:ドリームメイト 5000
どんな種族の進化クリーチャーを、このクリーチャーの上に置いてもよい。
種族進化限定だが、どんなクリーチャーにでも進化可能な《イノス》。普通なら、《無垢の宝剣》《無垢なる刃ビャッコ》が重くなっただけだが、このマナが溜まりやすいルールでは、それほどの枷にはならない。
あらゆる進化の可能性を秘めた、無垢なる大剣士は、なにに進化するのか。
それは、天に君臨する天使たちの王。
さらなる法をを制定するものだった。
「進化——《聖霊王アルカディアス》!」