二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て39」 ( No.483 )
日時: 2016/09/12 13:30
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

エンペラー・キリコ SR 水文明 (8)
進化クリーチャー:サイバーロード/オリジン 13000
進化—自分の「サイバー」と種族にあるクリーチャーまたはオリジン1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある自分の他のクリーチャーをすべて、好きな順序で自分の山札の一番下に置く。その後、山札の上から、進化ではないクリーチャーが3体出るまでカードを表向きにする。その3体をバトルゾーンに出し、山札をシャッフルする。
T・ブレイカー
※プレミアム殿堂



 《コマンダー・イノセント》から進化したのは、《エンペラー・キリコ》。
 豪快な踏み倒しを連打する、初代《キリコ》だ。
 《キリコ》の登場時、浬の他のクリーチャーはすべて山札に戻るが、戻るクリーチャーはいないため、そのままクリーチャーが山札から踏み倒される。
 三体もの無条件な踏み倒しは強力で、それゆえにこのクリーチャーはプレミアム殿堂となったわけだが、このデッキであれば事情が違う。
 このタワーデッキは、相手にデメリットを押し付けるデッキ。つまり、自分が強烈なデメリットを負うようなカードが捲れる可能性も、決して低くはない。むしろ高いだろう。
 だが勿論、一発逆転、この場をひっくり返すクリーチャーが捲れる可能性もある。
 つまりは博打だ。なにが捲れるかで、浬の行く末が決まる。
 確率は計算できないが、恐らく、良い方向に進む確率の方が低い。失敗する確率の方が高いだろう。
 それでもこれに賭けるしかないのだから、やるしかない。
「さぁ、山札を捲るぞ——」
 浬はゆっくりと、山札を捲っていく。
 一枚目、《電脳聖者タージマル》
 二枚目、《インフェルノ・サイン》
 三枚目、《クローン・ライトニング》
 四枚目、《牢黒の伝道師ミリエス》
 五枚目、《ギガスラッグ》
「……出て来るのはこいつらだ。《電脳聖者タージマル》《牢黒の伝道師ミリエス》《ギガスラッグ》をバトルゾーンへ!」
 捲られたクリーチャーは、揃いも揃ってすべて攻撃できないブロッカーだ。
 変なデメリット持ちのクリーチャーではないが、盤面をひっくり返すほどの力はない。
「な、なんか微妙なラインナップっすね……」
「ほっとけ。《キリコ》でダイレクトアタックだ!」
「それは《パーフェクト・マリア》でブロックっす!」
 しかし、ここでブロッカーが並ぶというのは、悪くない。
 これで浬は八の攻撃を耐えられるし、八に対しては巨大な《キリコ》でプレッシャーをかけられる。八の《パーフェクト・マリア》をバトルで打ち負かしたので、それだけでも大きな成果だ。
 このままじわじわと殴り倒していけば、まだ勝ち目はある。



八ターン
マナ:7
手札:13
盾:0
場:《オロチ》《リベンジ・ドラゴン》《N》《天動の化身》



「むむむ、流石に《キリコ》は大きすぎるっすけど……ギリギリ耐えられるっすかね。《ミリエス》をチャージして、《魔光王機デ・バウラ伯》を召喚っす! 《バウラ》の能力で、《父なる大地》を回収するっすよ。そのまま《父なる大地》を唱えて、で《キリコ》をマナ送りっす! マナゾーンからは、《ヘキサリオ・ドラグーン》を出してもらうっすよ!」
「……《ヘキサリオ》の能力で、俺のシールドを一枚手札に加える」
 少ないマナをなんとか使って、八は《キリコ》を除去。ブロッカーこそ増えたが、浬のアタッカーが消えてしまった。
 そして次に、八は美琴へと向く。
「《サイバー・N・ワールド》で美琴先輩を攻撃、Wブレイクっす!」
「……トリガーはないわ」
「なら、《リベンジ・ドラゴン》でとどめっすよ!」



Lose 美琴



 美琴がダイレクトアタックを受け、やられる。
 これで残りは浬と八だけ。二人の一騎討ちとなった。
「浬さんにも攻撃っす! 《天動の化身》でシールドをWブレイク!」
「《ミリエス》でブロック!」
「ターン終了っすよ!」
 美琴を倒し、浬のブロッカーを削り、ターンを終えた八。
 浬の場はすべてブロッカー。すぐに攻撃される心配はなく、八の場には《ガミラタール》と《天動の化身》、《オロチ》に《リベンジ・ドラゴン》も残っている。シールド二枚なら、殴り切るのは時間の問題だ。
「残るは浬さんだけっすよ!」



浬ターン
マナ:7
手札:5
盾:2
場:《タージマル》《ギガスラッグ》《ヘキサリオ・ドラグーン》



 防戦を強いられた浬。このままアタッカーを展開できなければ、勝ち目はない。
 しかし、
「……悪いが、もう終わっている」
 浬は既に、勝利の方程式を完成させていた。
「《ギガスラッグ》を進化! 《超幻獣ドグザバル》!」
「! 進化クリーチャーっすか、ちょっとまずいっす。でも、ブロッカーでまだ耐え——」
「残念だったな、お前のブロッカーは関係ない。お前のブロッカーの文明を見てみろ」
「へ? 光文明っすけど……」
「そうだな。光文明だ。つまり、お前は“光のマナ”を支払って、そのブロッカーを出している」
 光のマナがなければ、光のクリーチャーは召喚できない。
 その光に反応して、このクリーチャーは光る。
「《ドグザバル》の能力、光ステルス発動」



超幻獣ドグザバル R 闇文明 (5)
進化クリーチャー:キマイラ 9000
進化—自分のキマイラ1体の上に置く。
光ステルス
W・ブレイカー



「す、ステルス……? なんすか、それ……?」
 聞きなれないワードに、疑問符を浮かべる八。当然と言えば当然だ。浬も、知識の中でしかこの能力は知らなかった。
 しかし今は、その知識の差が、勝負を決定づけている。
「ステルスは、対象となる文明が相手のマナゾーンにあれば、アンブロッカブルになる能力。《ドグザバル》が指定する文明は光、お前のマナゾーン——というより、この共有マナゾーンには光のカードがあるから、条件達成だ。《ドグザバル》はブロックされない!」
「!?」
 これで、八の《バウラ伯》はブロッカーとしての意味をなさなくなった。
 シールドは削り切られている守りを失った八に、この攻撃を防ぐ手立てはシノビしかない。
 しかし、彼の手札からはなにも出てこなかった。ならば、これで終わりだ。

「《超元獣ドグザバル》で、ダイレクトアタック——!」



「ま、負けたっす……」
「正直俺も、《キリコ》から出たのがあんな奴らで勝てるとは思わなかった……進化元が捲れたことと、《ドグザバル》を引いたのが大きかったな」
「私としては、《キリコ》で霧島君と夢谷君の同士討ちを期待してたんだけど……上手くはいかないわね」
 結果として、勝者は浬だ。
 八、美琴、空護の三人はそれぞれ浬に金を支払い、これでまた、浬が順位を上げる。



「まーた対戦か……流石にそろそろ疲れたぞ」
 対戦マスに止まり、ミシェルがぼやく。
 しかし彼女の言い分も理解できないわけではない。朝からぶっ続けで、今さっき昼を過ぎたところだが、ここまでで、慣れないデッキ、見たこともないようなレギュレーションで、何戦もしている。
 疲れが溜まって当然だろう。
「残念だけど、このゲームから下りたいなら破産するしかないわよ。ショップマスに止まって全財産注ぎ込む?」
「……そうやって負けるのは癪だな。仕方ないから最後まで付き合ってやる。で、相手は誰だ?」
「わ、わたしです……」
 柚だった。
(こいつかぁ……焔のナイトコンは面倒なんだよなぁ。フィニッシャーに欠けるから、上手いこと《バルガゲイザー》で大型が捲れれば楽なんだが……)
 金銭的には下位の柚だが、対戦における勝率はそこそこいい。
 というのも、ここまであまり奇抜なレギュレーションに当たっておらず、使用デッキも元が安定した強さのデッキなので、単純に勝ちやすいのだ。
 暁のように使いこなせず惨敗ということもなく、安定して勝率を稼いでいる。
 不動産や土地の買収に出遅れたため、そちらの方面で搾り取られているが。
「まあいいか。で。レギュレーションはなんだ?」
「ここから引いてちょうだい」
 言われて沙弓に差し出された箱から、一枚の紙を引く。
 その紙には『2pick』と書かれていた。
「……? ピック? なんだこれ? もはやデュエル、デュエマという用語すら消えたぞ」
 『殿堂ゼロ』は、公式で打ち出しているのでわかるが、こんなレギュレーションは公式にはない。
 ただ、どこかで聞き覚えがあるような気はする。
「『2pick』は、いわゆるリミテッド系のレギュレーションよ。『トッキュ−8』とか『ブースタードラフト』に連なるレギュレーションね」
 リミテッド。つまり、その場でパックを開封して、即席のデッキを作り、そのデッキで対戦するというもの。
 しかし今回の『2pick』は、五枚入りのパックを8パック開封して四十枚のデッキにする『トッキュー8』や、相手と一緒にカードを選んでデッキを組む『ブースタードラフト』とは違うレギュレーションだ。リミテッド系と一口で言われても、どのような形でデッキを組めばいいのだろうか。
「『2pick』は、二枚一組のカードの束が二つ提示されるから、その束から好きな方を選んでデッキパーツを得ていく。そうして四十枚のデッキを作るのよ」
「『ブースタードラフト』に近いんだな。ただ、相手に自分の選んだカードがばれないだけ、考えることが少なくて楽そうだ」
 ミシェルは『ジェドルール』の時の苦痛を思い出したようで、顔をしかめる。
 相手の選んだカードを把握していなければ不利になる『ジェドルール』と違い、『2pick』はあくまで、自分のデッキをその場で作るだけ。それ以外は普通のデュエマと変わらない。
「二枚の束を選んでいくということは、ぜんぶで二十回選ぶんですね……」
「ある程度、自分のデッキの中身を操作できるのはありがたいな」
「じゃあ準備するから、二人とも、デッキを組む準備してね」
 というわけで、ミシェルと柚の『2pick』。
 まずはデッキ作成から、始まった。