二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て41」 ( No.485 )
日時: 2016/09/13 08:22
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

「はぁ!?」
 あまりに予想外のカードが飛び出し、素っ頓狂な声を上げるミシェル。
 当然と言えば当然かもしれない。それはあるゲームとアニメのコラボカードであり、能力面でもジョークカードの一種なのだ。
 それも、その能力というのが——



ロックマンエグゼ&勝太 水/火文明 (3)
クリーチャー:ヒューマノイド/キカイヒーロー 3000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーを召喚する時、右のコードを読み取り、能力を相手に見せてもよい。そうしたら、このクリーチャーにその能力を与える。



 ——テキストに、QRコードがついているのだ。
 しかもこのコードは日替わりで内容が変化し、曜日ごとに能力が変わる。ユニークかつ型破りではあるが、ある種、カードゲームの常識からはずれたカードである。
「また面白いカード使ってくれるわね、柚ちゃんは。今日は金曜日で、能力はブロッカー破壊だけど、一応、QRコードを読み取りましょうか」
 読み取ったコードによって判明するのは、当然ながら金曜日の能力「このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手の「ブロッカー」を持つクリーチャー1体を破壊する。」だ。
「《ロックマンエグゼ&勝太》の能力で、《ラプソディ》を破壊しますっ」
「ちぃ、パワーが高い《ラプソディ》は痛いな。だが《クズトレイン》の能力でドローする」
「次に4マナで、《爆熱 タイガー・ヴァーム》を唱えます!」
 間髪入れずに柚は、さらに呪文を唱える。
 その呪文もまた、珍しい効果の呪文だ。
「わたしの墓地から、カードを一枚、ランダムで手札にもどします。一枚しかないので、《黄昏地獄拳》になりますけど。そして、多色クリーチャーがいるので、もう一つの効果も使います。山札からクリーチャーを一体、手札に加えますね」
 火と自然で墓地のカードを回収する能力は、文明として見ても、カード指定で回収できるという点で見ても、かなり稀有だ。加えて墓地からランダムで回収というのも珍しい。実戦においては不確定さが足を引っ張ることが多いだろうが、今回の柚は、墓地にカードが一枚のときに使用したため、狙ったカードが回収できる。また《黄昏地獄拳》でブロッカーを吹き飛ばすつもりだろう。
 そして、《タイガー・ヴァーム》のもう一つの効果。山札からのクリーチャーサーチ。柚はさらに手札を充実させる。
「……《煽動の面 フリント》を手札に加えます。さらに《ウツボカヅラ》で攻撃です!」
「《ピエール》は強制ブロック持ち、ブロックし、スレイヤーで両者相打ちだ。そして、二体死んだから二枚ドローする」
「まだまだですっ。《チュラロリエス》で攻撃する時、わたしのシールドを一枚墓地において、二枚ドローしますっ」
「その攻撃は……通す。トリガーはない」
「ターン終了ですっ」
 結果として、ミシェルのシールドは二枚。柚のシールドも一枚減ったが、手札が大幅に増えてしまった。
 これは、もっとハンデスカードを入れるべきだったかもしれないと、悔やみたくなるが、悔やんでいていも仕方ない。
 次のターンには《黄昏地獄拳》が放たれ、ブロッカーがすべて吹き飛ばされるはずだ。そうなれば場のクリーチャーで一斉に攻めてくる。その前に、場数を少しでも減らしておきたい。
「《未来設計図》をチャージ。まずは3マナで《凶喜にして凶器なる一撃》! あたしの墓地のクリーチャーの数だけ、相手クリーチャー一体のパワーを下げる。あたしの墓地にクリーチャーは三体、《ガチャック》のパワーを3000マイナスだ!」
 まずは厄介な《ガチャック》を破壊する。ターボラッシュ発動時限定で、ブロックされなかった時という条件がつくとはいえ、確定除去を放つクリーチャーは残しておきたくない。
「さらに4マナで《トラップ・チャージャー》! タップされている《チュラロリエス》をマナゾーンへ! ターン終了」
「わ、わたしのターンですっ」
 ひとまず、除去を撃つ《ガチャック》と、ドローソースになる《チュラロリエス》を除去してターンを終えるミシェル。クリーチャーをすべて除去したかったが、《ロックマンエグゼ&勝太》だけが残ってしまい、まだ厳しい状況だ。
「《9月》をチャージ。4マナで《黄昏地獄拳》! ブロッカーを手札にもどして、二枚引きます。それから5マナで、《煽動の面 フリント》を召喚です!」



煽動の面(アジテイト・スタイル) フリント UC 自然文明 (5)
クリーチャー:ビーストフォーク號 5000+
自分のクリーチャーが攻撃する時、それがそのターンはじめての攻撃であれば、そのターン、そのクリーチャーはパワーを+5000され、シールドをさらにひとつブレイクする。



「《ロックマンエグゼ&勝太》で攻撃! 《フリント》の能力で、このターンはじめての攻撃のとき、そのクリーチャーのパワーを5000ふやして、ブレイク数も一枚ふえますっ! シールドをWブレイク!」
「これでシールドゼロか……だが、一応S・トリガーだ。《埋没のカルマ オリーブオイル》。あたしの墓地のカードをすべて山札に戻してシャッフルする」
 《フリント》の能力でWブレイカーとなった《ロックマン》が、ミシェルのシールドをすべて打ち砕いていく。トリガーでブロッカーこそ出たが、また《黄昏地獄拳》でも撃たれようものなら、そのブロッカーも意味がない。
 正直、かなり追いつめられている。
「あたしのターン……これはいらないか? 《フォーチュン・スロット》をチャージ。まずは4マナで《爆熱 矛盾のスカイソード》を唱える。シールドを一枚追加だ」
 《爆熱》の名を持つ呪文は、場に多色クリーチャーがいれば二つの効果が使える。ミシェルの場に多色クリーチャーはおらず、いたとしてもブレイク数を増やす効果なので、使うつもりはないが。
「さらに5マナ、《連唱 ハンゾウ・ニンポウ》! 相手クリーチャー一体のパワーを6000下げるぞ。《フリント》のパワーをマイナスして破壊だ!」
 とりあえずクリーチャーを強化してくる《フリント》は破壊した。ブロッカーのパワーラインを越えられると面倒なので、早めに処理しておく。
「《クズトレイン》で一枚ドロー。そして《クズトレイン》で《エグゼ&勝太》を攻撃だ!」
「あぅ、クリーチャーが……」
 とりあえずこれで、柚のクリーチャーは殲滅した。ブロッカーがいて、シールドも増やしたので、スピードアタッカーが来て即死することもない。
「わたしのターン……《電脳聖者エストール》を召喚します。シールドをふやして、相手のシールドを見ます」
 柚は《チュラロリエス》で減ったシールドを補充しつつ、増えたミシェルのシールドを見る。
「……はい。では、《地獄のケンカボーグ》を召喚して、《猛攻と進撃のアシスト》を唱えます。このターン、わたしのクリーチャーはぜんぶ、スピードアタッカーになりますよっ」
「マジか……」
 スピードアタッカーが来て即死することはない。確かにこのターンは耐えられるが、かといって増やしたブロッカーもシールドも、すべて1ターンで持って行かれるのは辛い。
 《進撃と猛攻のアシスト》で、柚のクリーチャーはパワーアップしている。《オリーブオイル》のパワーでは、簡単に突破されてしまう。
「《エストール》で攻撃です!」
「一応、ブロックせずに受けるが……トリガーは、まあないよな」
「《ケンカボーグ》でダイレクトアタック!」
「《オリーブオイル》でブロックだ!」
 少しずつ盛り返すつもりが、たった1ターンでシールドもブロッカーもなくなった。
 加えて柚の場のクリーチャー二体も倒さなくてはならない。防御札、除去札が尽きそうだ。
「《ディープ・オペレーション》をチャージ……むぅ……」
 ミシェルはマナを溜めてから、唸る。
 どうしようか悩んでいる、と言わんばかりの唸りだ。
 しかしそれは、どのカードを使うか悩んでいる悩みではなく、今この手にあるカードを使うべきかを悩んでいる。
 戦術的に、この状況においてそのカードが戦局を左右する可能性を考える。それは当然だが、それだけではない。
 倫理的に、常識的に、モラルなどの面から、使っていいものか悩ましい。
 しかしこのゲームでモラルやらなんやらを気にしていても仕方ない。そもそも自分のカードではないのだ。と、適当なところで割り切ってから、ミシェルはマナのカードを3枚倒す。
「……3マナタップ」
 そして放たれるのは、禁じられた一手。
 魂を、資産を、希望を喰らう、失われた闇の秘術。
 嘆きが、怒りが、妬みが、あらゆる悪意が言の葉となって吐き出される——
 
「——《ロスト・チャージャー》」