二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て42」 ( No.486 )
日時: 2016/09/13 23:47
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

ロスト・チャージャー R 闇文明 (3)
呪文
自分または相手の山札を見る。その中からカードを1枚選び、持ち主の墓地に置いてもよい。その後、そのカードの持ち主は山札をシャッフルする。
チャージャー
※プレミアム殿堂



 ミシェルが唱えたのは、3マナのチャージャー呪文、《ロスト・チャージャー》。
 自分、相手問わず山札をすべて確認し、その中から好きなカードを落とすことができるチャージャー。単純なアドバンテージはそれほど大きくなく、墓地を増やす目的であれば、後に出た《ボーンおどり・チャージャー》の方が、枚数だけなら上回る。
 しかし《ロスト・チャージャー》の恐ろしさは、ピンポイントで、好きなカードを、落とせ、それが自分と相手どちらに対しても使える、という点だ。しかもチャージャーなので、本体はマナに行く。かつては3→5の流れで《インフェルノ・ゲート》へと繋がり、問答無用でデッキのどんなクリーチャーでも出すことが可能だった。
 僅か3ターン目に山札の内容を確認し、どのカードがどこにあるのかをすべて把握できる。それに加えてキーカードを墓地に落とし、チャージャーでマナも伸びるという、一見するとわかりにくいが、このカードが及ぼす影響は非常に大きい。
 また、相手のデッキに触れることもできるため、相手のデッキのキーカードを潰したり、相手のデッキ内容を早期に把握することが可能なので、この一枚は痛烈だ。しかし相手のデッキに触れる以上、カードの取り扱い、マナーについての問題などももあり、以上の影響力と相まってプレミアム殿堂となっている。
「このゲームのためのカードとは言え、他人のデッキに触るのはあまり気が進まないが……お前の山札を見せてもらう」
 ミシェルが見るのは、柚の山札。このデッキでは墓地肥やしに対して意味はなく、《オリーブオイル》を出した以上、デッキ圧縮も効果は薄い。シールドもないのでトリガーの確認も無意味だ。
 ならば、柚のデッキを削り、キーカードを潰し、かつ内容を把握するために、柚へと撃つ。相手のデッキに触るので、あまりいい気分ではないが。
「この中身なら……《混沌の獅子デスライガー》だ。こいつを墓地に置いてもらう」
 柚のデッキを見てみると、全体的に青黒緑アナカラーのカードが多かった。それ以外の文明もそれなりには多かったが。
 その中で目立つようなカードパワーのカードはなく、正直、どれを落としても大差はない。なので、単純にパワーが高くて対処が面倒そうなクリーチャーを落としておいた。それだけだ。
 そもそも、この《ロスト・チャージャー》はあまり意義のある一手ではない。マナがあまるから使った、その程度の呪文だ。
「さらに8マナ! 《天地爆炎》! タップ状態のパワー6000以下のクリーチャーをすべて破壊だ!」
 本命はこちらだ。柚のクリーチャーをすべて破壊し、場を空にする。
「スピードアタッカーは見たところいなかったな。ターン終了だ」
 再び場をリセットするミシェル。マナは使い切った。これ以上、このターンにできることはない。
 シールドもブロッカーもいないが、《ロスト・チャージャ》で山札を見る限り、スピードアタッカーはいなかった。なのでスピードアタッカーに奇襲されるという懸念もなく、安心してターンを終了できる。
「わたしのターン、《ガールズ・ジャーニー》をチャージ……2マナで《闇からの復権》! 墓地の《デスライガー》を手札にもどして、相手よりシールドが多いので一枚ドローしますっ」
「山札から落としたことが、裏目に出たか……まあしょせんは《デスライガー》なわけだが」
「7マナで《デスライガー》を召喚ですっ! ターン終了!」
 《混沌の獅子デスライガー》。コスト7、パワー9000、Wブレイカーの闇のデーモン・コマンド。デュエル・マスターズ初期のスーパーレアというだけで、そのスペックは想像がつくだろう。ただの準バニラ系ファッティだ。上位互換に位置するようなカードも多いため、スペックは残念と言わざるを得ない。
 イラストの派手さ、豪快さ、フレーバーテキストの秀逸さなど、別の視点からの人気は高く、再録限定エキスパンションでアルトアート版が出たり、ジョークエキスパンションで再録されたりと、わりと優遇されていたりする。
 対戦における影響を考えるなら、柚の場にアタッカーが一体増えたというだけだ。問題があるとすれば、パワーがそこそこ高めなので、対処には若干苦労しそうなくらいか。
「まあ、どんな奴にしろ、アタッカーってだけで排除対象なんだがな。しかしこの場合は……こうか? 5マナで《鎧亜戦隊ディス・マジシャン》を召喚。3マナで呪文《ザ・ストロング・ガード》。手札を一枚シールドに置き、2マナで《ピエール》を召喚。ターン終了だ」
 ミシェルは《デスライガー》を直接除去することなく、シールドとブロッカーを増やして場を固める。
 ただし、そのブロッカーがスレイヤーの《ピエール》だ。殴って来ればすぐさま相打ち。間接的な除去を狙っているのだろうか。
「じゃあわたしは……3マナで《コダマの気合掘り》! 墓地から《ロックマンエグゼ&勝太》を手札に加えて、シールドも一枚手札に。それから3マナで《ロックマンエグゼ&勝太》を召喚、もう3マナで《妖魔賢樹フライ・ラブ》を召喚! 《ロックマンエグゼ&勝太》の能力で、ブロッカーの《ピエール》を破壊です!」
「またそいつか……《ピエール》がやられたのは、少し痛いか」
「《デスライガー》で攻撃、シールドをブレイクです!」
「これはS・トリガー、《神託の守護者 胡椒》だ! そのまま召喚する」
 ミシェルのシールドから《胡椒》が捲られ、召喚される。
 破壊されると、墓地のクリーチャーを回収するトリガーブロッカーだ。
「あたしのターン。まずは《剛勇傀儡ガシガシ》をチャージ。黒緑のカードをチャージしたため、《ディス・マジシャン》のスペース・チャージ発動だ。まずは墓地から《ピエール》を回収!」
 《鎧亜戦隊ディス・マジシャン》。コンボのために使えと言わんばかりの、墓地回収とコスト軽減のスペース・チャージを併せ持つクリーチャー。
 闇のマナを置けば墓地からクリーチャーを回収し、自然のマナを置けば次に召喚するクリーチャーのコストが2下がる。二つの文明を持つカードをチャージすれば、当然、両方発動する。
 ミシェルは先ほど破壊された《ピエール》を回収しつつ、クリーチャーの召喚コストも下げ、戦線を拡大させる。
「4マナで《封滅の大地オーラヴァイン》を召喚! コスト3以下のクリーチャー二体をマナ送りだ!」



封滅の大地オーラヴァイン SR 自然文明 (6)
クリーチャー:ガイア・コマンド 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある、相手のコスト3以下の進化ではないクリーチャーを2体まで選び、持ち主のマナゾーンに置く。
W・ブレイカー



 《オーラヴァイン》の能力で、《ロックマン》と《フライ・ラブ》がマナへと封じられる。シールドがない現状、数で攻められるのが最も困るので、しょせん《オーラヴァイン》でも、複数除去できるカードはありがたい。
「まだだ。2マナで《ピエール》を召喚、6マナでリサイクル! 《ハンゾウ・ニンポウ》を唱えて《デスライガー》をパワーダウン! 《クズトレイン》で突撃だ!」
「《デスライガー》のパワーは9000ありますけど……」
「《ハンゾウ・ニンポウ》で6000下がって3000、《クズトレイン》はパワー5000だ。当然、こっちの勝ちだな。バトルで勝ち、破壊して一枚ドローする。ターン終了」
「わたしのターン……うーん、《有毒目 ヴェスプトックス》《防御の面 ミラミッケ》を召喚です」
「面倒そうなのが増えたな……」
 タップされていれば、バトルに勝った相手をマナ送りにする《ヴェスプトックス》、エスケープを持つWブレイカー《ミラミッケ》。
 強力かといわれるとそうでもないが、相手にするのは面倒だ。
「《ソイル・チャージャー》をチャージ。これで次の召喚するクリーチャーのコストが2下がる。1マナで《邪法カルネイジ》を召喚! さらに《両断のスカルセドニー》を召喚!」
 《カルネイジ》のシールド・フォースは、当然ながら残った一枚のシールドが選択される。これで《カルネイジ》がブロックするたび、墓地のクリーチャーを回収できる。《胡椒》と合わせれば互いに回収し合い、軽いループの完成だ。これで柚の攻撃を止める。
「ついでだ。6マナで《強襲する髑髏月》を発動! 手札を二枚捨てもらうぞ!」
「あぅ……っ」
「さらに《髑髏月》の効果で、あたしの闇のクリーチャーを破壊すれば、《髑髏月》は手札に戻る。《スカルセドニー》を破壊!」
 柚にハンドキープもさせない構えを見せるミシェル。場のクリーチャーをコストにするので、そう何度も使える手ではないが、柚のデッキは残り少ない。下手にドローもできず、ハンデスを抱えてハンドキープさせない心理的ロックは、見た目以上に有効だろう。
 それにミシェルは、なにも柚の動きを制限したいがためだけに《髑髏月》を回収したのではない。
「ここで《スカルセドニー》の能力だ。《スカルセドニー》は破壊されてもマナに行く。そして黒緑の《スカルセドニー》がマナに置かれたことで、《ディス・マジシャン》のスペース・チャージ発動! 墓地の《オリーブオイル》を回収し、コストが下がった《オリーブオイル》を召喚!」
 《スカルセドニー》を破壊することで、闇と自然文明を持つ《スカルセドニー》をマナに置き、《ディス・マジシャン》のスペース・チャージを発動。墓地のカードを山札に戻しつつ、ブロッカーを並べていく。
 ミシェルの布陣はどんどん盤石なものになっていく。《黄昏地獄拳》のようなブロッカーメタか、アンブロッカブルでもない限り、この数のブロッカーを捌ききることは不可能だろう。柚のデッキには水の有するアンブロッカブルはいなかったはず。《黄昏地獄拳》を唱えられても厳しいが、墓地の呪文を回収するようなカードもない。なので、この陣形を突破することは、柚には不可能なはずだ。
 『ジェドルール』の時には、脳への負担という意味で苦しめられたが、こうして一方的に有益な情報があるというのは、やはり重要だ。情報アドバンテージは直接の利得には繋がらないが、持っているのといないのでは、作戦の組み立てがまるで異なる。
「《トゲ刺しマンドラ》を召喚です。墓地の《エストール》をマナにおきます」
 手札がなく、ミシェルが《髑髏月》を抱えている以上、柚はトップを捲る作業のようなことしかできない。
 一枚一枚のカードパワーが高くないこのデッキだ。コンセプトも一定しておらず、トップ解決でどうにかなるということもないだろう。
「ブロッカーが多すぎます……ターン終了です」
 《ピエール》《カルネイジ》《胡椒》らが睨みを利かせていることもあり、柚は殴れずターンを終えた。
 今この場は圧倒的にミシェルが有利。シールドゼロの状況から場を固め、柚の動きを完全に封じた。
「……まあ、ギリギリ打点も足りないから、やることがないな……《ザ・ストロング・ガード》で手札を一枚シールドに置き、一枚ドロー……《道化人形ペケ》を召喚して、ターン終了だな」
 ミシェルとしても、下手に柚に手札を与えることはできない。山札こそ見たが、シールドの内容まではわからないので、トリガーや、奇襲してくるスピードアタッカーが埋まっていることなどを考慮すると、軽々しく攻撃できない。打点をしっかりと揃えてから攻撃した方がいい。
 このまま長引いても、不利なのはデッキ枚数が残り僅かな柚だ。ずるずると引き延ばせば、デッキが切れて負ける。ミシェルは《オリーブオイル》で回復する手段があるが、柚にはそれがない。
 だからミシェルは、守りを重視しつつ、じっくりと攻めていくつもりだったのだが、
「わたしのターン……あ」
「ん? どうした?」
 柚が声をあげる。なにを引いたのだろうか。
 流石にマジマジとデッキを見るのは失礼だと思い、《ロスト・チャージャー》使用時もサッと確認して返したため、すべてのカードを完全完璧に把握しているとは言い難い。それでも、この盤面を一枚で返せるようなカードはなかったはずだ。
 すると、
「……《トゲ刺しマンドラ》を進化」
 柚は、一輪の獰猛な花を、世界を覆い尽くすほどの大樹へと、進化させた。

「——《世界樹ユグドラジーガ》!」