二次創作小説(紙ほか)
- 番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て43」 ( No.487 )
- 日時: 2016/09/16 14:51
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
世界樹ユグドラジーガ R 自然文明 (6)
進化クリーチャー:ツリーフォーク 7000+
進化—自分のツリーフォーク1体の上に置く。
パワーアタッカー+2000
W・ブレイカー
闇ステルス
《トゲ刺しマンドラ》から進化したのは、唯一のツリーフォークの進化クリーチャー、《ユグドラジーガ》。
ツリーフォークという種族自体がマイナーで数も少なく、かつどのクリーチャーも非力だ。デュエル・マスターズ黎明期から存在しているが、途中で廃れた種族なので、カードパワーは現代のカードと比較すると、非常に低い。種類が少なく、有能な進化元もいない。ゆえに《ユグドラジーガ》も使いにくい進化クリーチャーだ。
たとえ出せたとしても、《ユグドラジーガ》そのもののスペックも、お世辞にも高いとは言えない。ただし、それは状況にもよる。
少なくとも今この場において、ミシェルにとっては、厄介なクリーチャーであった。
「《ユグドラジーガ》は闇ステルスです! 闇のカードがマナゾーンにある時、ブロックされません!」
「おいおい、マジかよ……ツリーフォーク進化なんてまずないと思って無視してたが、このタイミングで出るのか?」
《ユグドラジーガ》の能力は闇ステルス。相手のマナゾーンに闇のカードがあればブロックされない。
ミシェルのマナには闇のマナが大量に埋まっており、かつ少ないシールドをブロッカーを並べて守っているので、このクリーチャーの登場は、痛恨の一撃だ。
さらに追い打ちをかけるのが、《ユグドラジーガ》のパワー。《ユグドラジーガ》の素のパワーは7000とそこそこあるのだが、ミシェルのアタッカーは皆、このパワーラインを越えられない。最高パワーの《オーラヴァイン》でもパワー6000だ、相打ちにすらできない。手札には除去カードもなかった。
防御はできず、処理もできない。もたもたしていると、ブロッカーをすり抜けて殴り切られてしまう。
「いきますっ! 《ユグドラジーガ》でシールドをブレイク!」
「トリガーはない……!」
最後のシールドは、とりあえず埋めた《髑髏月》。当然トリガーなどではない。
「まずいな……」
シールドはゼロ。《ユグドラジーガ》は除去できず、ブロッカーは意味をなさない。
長引けばデッキ枚数的に柚が不利、などと言える状況ではなかった。柚は勝負を決めにかかっている。
制圧したと思ったら、その隙間を潜り抜けられたこの状況。
こうなってしまった以上は、もう、
「……殴るしかないか。2マナで《マジェスティック・サンダー》! 《ユグドラジーガ》をフリーズ!」
ミシェルはゆっくりと盤面を制圧する作戦を放棄して、打点が足りずとも、殴り切る方針に切り替えた。
ひとまず、このターンにはとどめは刺せないので、次のターンにダイレクトアタックを決めて来る《ユグドラジーガ》の動きを止める。これで1ターンは持つはずだ。
後はただひたすらに、殴り続けるだけ。
「行くぞ! 《オーラヴァイン》でWブレイク!」
「トリガー……ないです」
「《クズトレイン》でシールドをブレイク!」
「S・トリガー! 《共倒れの刃》です! 私の《ミラミッケ》と《ディス・マジシャン》を破壊しますっ! でも、《ミラミッケ》はエスケープで、破壊される代わりにシールドを一枚手札に加えますよ」
トリガーで《ディス・マジシャン》を破壊されたが、柚はエスケープで《ミラミッケ》を守ったので、結果としてシールドは割り切れた。
これで次のターン、とどめを刺すことができるのだが、
「わたしのターン! 《スターピッピー》を召喚! さらに《憤怒の悪魔龍 ガナルドナル》を召喚ですっ! タップされているクリーチャーをすべて破壊しますっ!」
「……ヤバいな」
ここでシールドを削って《ミラミッケ》を残すということは、なにか考えているのだと思っていたが、アタッカーが全滅してしまった。
ミシェルのデッキにスピードアタッカーはいない。このままだと、次のターンにやられるのはミシェルの方だ。
「攻撃は……このターンはしません。ターン終了です」
「《クズトレイン》のドロー警戒か……」
どちらにせよ次のターンには《ユグドラジーガ》が起き上がり、とどめを刺しに来るのだ。ここでブロッカーを削る意義は薄いだろう。
逆に言えばミシェルは、このターンで《ユグドラジーガ》を処理するか、シールドを増やすかしなければ、負けになるのだが、
「あたしのターン……まだギリギリ耐えられるか? 4マナで《矛盾のスカイソード》を唱え、シールドを追加。《ドリリング・イヤリング》を召喚し、ターン終了だ……」
この時点で、ミシェルは殴り切ることをほぼ放棄した。
柚のデッキは残り三枚。あと2ターン耐えきることができれば、デッキ切れを起こして柚は負ける。
アタッカーが引けない以上は、殴るという手段は取れない。最初に殴ったことが完全に裏目に出てしまい、方針もぶれぶれで、悪いプレイングの見本のようになってしまったが、仕方ない。
とにかく2ターン耐える。それだけでミシェルの勝利だ。
「わたしのターンです。《ユグドラジーガ》は起き上がります」
《ユグドラジーガ》のフリーズが解け、攻撃に参加できるようになる。どれだけブロッカーを並べても、このクリーチャーだけはどうしようもないので、このクリーチャーをどうにかして処理することが、一番の課題だった。
しかし、ミシェルが並べたブロッカーを無為にする手段は、なにも《ユグドラジーガ》だけではない。
「《クアトロ・ブレイン》をチャージ。《黒神龍ベルザローグ》を召喚! さらに2マナで呪文、《パワー・パズル》ですっ!」
パワー・パズル UC 光文明 (2)
呪文
S・トリガー
バトルゾーンにある自分のクリーチャーを1体タップする。その後、合計パワーがそのクリーチャーのパワー以下になるように、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを好きな数選び、タップする。
《パワー・パズル》、変則的なタップ呪文だ。自分のクリーチャー一体を寝かせることで、そのパワーを参照して、割り振り火力のようにタップを放つ。
普通に使えば、自分のクリーチャーに隙を与えてしまう上に、使い終わった登場時能力持ちのクリーチャーでは、大した効果は期待できない。
相手ターン中では自分のクリーチャーがタップしていることが多く、殴り返しの隙を生む。自分のターン中なら、アタッカーを一体潰しかねない。非常に使いどころの難しいカードなのだが、今の柚の場には、うってつけのクリーチャーがいる。
このターン攻撃できない、パワーだけが高い、大型クリーチャーが。
「わたしがタップするのは《ベルザローグ》! パワーは14000ですっ! それ以下になるように、ミシェルさんのクリーチャーをタップします!」
ミシェルのクリーチャーは、パワー4000の《ドリリング・イヤリング》、パワー3000の《カルネイジ》、パワー2000の《胡椒》《オリーブオイル》《ミケ》、パワー1000の《ピエール》。
合計パワーはピッタリ14000。綺麗に《ベルザローグ》のパワー内で収まり、ブロッカーがすべてタップされる。
「そのカードも知ってたが、まるで考慮してなかったぞ……まさか《ベルザローグ》がいたとはな」
恐らく、シールドから手札に来たのだろう。《ロスト・チャージャー》でこのファッティが見えていれば、《デスライガー》より優先して捨てていたはずだ。
なんにせよこれで、ミシェルのブロッカーはいなくなった。もはや《ユグドラジーガ》もステルスも関係ない。並んだ大型アタッカーに踏みつぶされるだけだ。
「決めますっ。《ヴェスプトックス》で最後のシールドをブレイクです!」
「……S・トリガー、《スローリー・チェーン》。このターンの攻撃はもう不可能になる。が……」
なんとかS・トリガーで延命はできたが、1ターン耐えただけだ。
シールドはゼロ、柚の場には《ユグドラジーガ》が残っており、アタッカーも多い。
次のターンも耐えきれる自信はなかった。
(あと1ターン、及ばずか……)
《ユグドラジーガ》を処理できれば、まだ耐えられる可能性はあるのだが、構築段階で既に、ハンデスとブロッカーで耐える方向にデッキを持って行ってしまったので、除去が少ないことが裏目に出た。
シールドを増やすカードも使い切ってしまい、ここから《ユグドラジーガ》をどうにかしようとするなら、《ハンゾウ・ニンポウ》を引いて二連打するくらいしか方法がない。
これ以上、この対戦を引き延ばすことはできなさそうだ。
そう思ってカードを引く。すると、
「……ん?」
そのカードに、目が留まった。
一瞬のうちに、思考が繋がる。ミシェルは迷いなくそのカードを引きぬいた。
「8マナタップ、《アクア・デフォーマー》を召喚だ」
アクア・デフォーマー R 水文明 (8)
クリーチャー:リキッド・ピープル 3000
このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、各プレイヤーは自分自身のマナゾーンからカードを2枚ずつ選び、それぞれの手札に戻す。
「こいつの能力で、互いのプレイヤーはマナゾーンのカードを二枚、手札に戻す」
「マナゾーンから、ですか? えっと、じゃあわたしは、《血風神官フンヌー》と《ロックマンエグゼ&勝太》を手札に加えます」
スピードアタッカーとブロッカー破壊を回収する柚。やはり、次のターンで殴り切る気だ。
しかし、もう遅い。
ミシェルは既に、決着をつけるためのカードを手中に収めることができるのだ。
「ならあたしは《トラップ・チャージャー》と——」
ミシェルは柚の攻撃を耐え切れない。これ以上、この対戦を引き延ばすことができない。
だが、それでも勝つ方法は存在する。
時間の経過で目指す結果があるのであれば、どのような過程であっても、どのような速度であっても、その結果は同じ。時間を引き延ばせないのであれば、その逆を行えばいいだけだ。
時間を長引かせることができないから、その逆のベクトルで攻める。
つまり、
「——《ロスト・チャージャー》だ」
「あ……」
時間を、加速させればいい。
ドローのための時間を稼げないのであれば、そのドローを加速——もとい、山札そのものを削ればいいだけだ。
「悪いな、こんな勝ち方で。3マナで《ロスト・チャージャー》だ。残り山札は二枚。どっちでもいいが、とりあえず《戦略のD・Hアツト》を墓地に……これでお前の山札は残り一枚だ」
ターン終了、とミシェルは宣言する。
柚の山札は、残り一枚。デュエル・マスターズのルールにおける敗北条件の一つは、山札がなくなること。
最後の一枚を引いたその瞬間に、敗北する。
柚は、最後のカードを引いた。
そして、
「……わたしの、負けです」
ミシェルが勝利した。