二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て46」 ( No.490 )
日時: 2016/09/18 22:12
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 最初に統率者を呼び出したのは、浬だった。
「《サイクロペディア》の能力で三枚ドロー! 《ドリルゲッター》で部長を攻撃!」
「いい加減、殴られるのもきついのよね……! S・トリガー《火焔タイガーグレンオー》召喚! カイの場のパワー2000以下のクリーチャーをすべて破壊よ!」
「っ、攻撃を止められたか……ターン終了」
 《タイガーグレンオー》一体で、浬の場のウィニーが全滅。残ったのは統率者たる《サイクロペディア》のみだ。
 数で攻めるリキッド・ピープルは、全体火力に弱い。その典型的な例を晒してしまった。
 しかし沙弓のシールドは既に四枚だ。なかなか追いつめてきたと言えるだろう。そして、沙弓自身もこのシールド枚数は辛いはずだ。
「あたしのターン。《エクスプロージョン・リザード》をチャージ。《青銅の鎧》を召喚してターン終了だ」
「もう他二人は蚊帳の外だし、面白みが足りないわねぇ……私のターン」
 完全に今の場は、浬と沙弓の攻防戦だ。これでは普通の一対一の対戦と変わりない。
 彼女にとっては、それが面白くないようだった。
「4マナで《サイバー・ブレイン》。二枚ドローして、2マナで《メルニア》を召喚よ。ターン終了」
「《スプラッシュ・アックス》を召喚……ターン終了」
「俺のターン」
 ここまでは順調に攻められたが、《タイガーグレンオー》で攻勢を止められた浬。
 ここで一度、状況を分析する。今この時の最善手を考える。
 まずは、沙弓の場に目を向けた。
(《メルニア》か……スレイヤーを立てたってことは、《サイクロペディア》を殴り返しで破壊する算段か。このまま攻め続ければ、部長を倒しきるには十分だろうが、部長を落としたとして、残りの二人を倒す余力があるかどうかが問題だよな……)
 最初こそ、とりあえずで沙弓を殴っていたが、そろそろ殴る相手も考えなくてはならない。
 沙弓の動きは鈍い。あるは程度削ったので、他の二人にも仕掛けた方がいいかもしれない。
「……《アクア・ハルカス》《アクア監視員 リツイート》を召喚。《サイクロペディア》で攻撃……お前だ」
「私……? ……トリガーはない……」
「統率者がプレイヤーに攻撃してブロックされなかったから、一枚ドローだな。ターン終了」
 浬は攻撃の矛先を一度、恋へと変える。
 特に大きな意味はない。こちらの動きも鈍そうだったので、ひとまず殴っただけだ。
 一人に集中しすぎてリソースを割きすぎるより、全体的に殴ってプレシャーをかけるべきかもしれないと判断した。
「あたしのターンだな。2マナで《ジャスミン》を召喚。破壊してマナを追加。さらに5マナで《スカイソード》を召喚だ。マナとシールドを追加して……」
 ミシェルは少し考える仕草を見せてから、場のクリーチャーに手をかける。
「……そろそろか。《パクルパン》で霧島のシールドをブレイク」
「っ、こっちに……? トリガーはないです」
「《ピュアランダース》でもブレイクだ。これでターン終了するが、《パクルパン》の能力でシールドを追加する」
 ターン終了時。《パクルパン》は相手プレイヤーを攻撃して、ブロックされていないため、シールドを一枚追加する。《ピュア・ランダース》と合わせて、だいぶシールドの層が厚い。
(シェリーが攻めてきた……《サイクロペディア》の処理を私に任せるつもりね? その手に乗るのは面白くないけど、私としても《サイクロペディア》は邪魔だし……仕方ないわね)
 この状況、やはり一番の問題は、浬の《サイクロペディア》だろう。
 ミシェルのデッキは光、火、自然の三色。除去が弱い色の組み合わせだ。彼女のデッキでは、《サイクロペディア》を除去する手段は少ないのだろう。
 もしくは、除去しなくても問題ないのか。
 なんにせよ、現時点で最も削られている沙弓が、《サイクロペディア》を退かしたいのは確か。となれば、その望みは自分で叶えるしかないのだろう。
「私のターン。4マナで《クリムゾン・チャージャー》! シェリーの《スカイソード》を破壊よ。さらに4マナで《炎獄スマッシュ》! 《パクルパン》も破壊!」
 しかし、自分だけが浬の対応をするのも癪だったので、せめてもの意趣返しとして、ミシェルのクリーチャーも除去しておく。ささやかすぎるが。
「《メルニア》で《サイクロペディア》を攻撃! スレイヤーで両者相打ちよ」
「こっちに来るよな、やっぱり。《サイクロペディア》は統率者領域へ戻す」
「で……《タイガーグレンオー》でシェリーのシールドをブレイクしてみましょうか。プラスされてない方ね」
「……S・トリガー、《孤高の願》だ。召喚する」
「ふぅん……じゃあ、ターン終了よ」
 含みありげにそのトリガーに目を向けて、沙弓はターン終了する。
 次は、ここまでずっと大人しかった恋のターンだ。
「4マナで《ハルク・クロウラー》を召喚、一枚ドロー……さらに、3マナで《フェアリー・ミラクル》……五色揃ってるから、2マナ加速……」
「!」
「れんちゃん、結構マナが溜まったわね……こっちも危険かも」
 地味に地道にリソースを稼いでいた恋は、ここで一気にマナを伸ばす。
 確実になにかしらの下準備をしている。流石にそろそろ放置できない。
 浬は変更した矛先をそのままに、恋へと照準を定める。
「俺のターン。《アクア傭兵 スタローン》と、《アクアーミー》、さらに《アクア・ガード》を召喚! 《リツイート》で攻撃し、一枚ドローだ」
「……トリガー、ない」
「《アクア・ハルカス》は……《ハルク・クロウラー》がいるから殴りにくいな。少し怖いが、四天寺さんのシールドをブレイク」
「S・トリガー《フェアリー・ライフ》だ」
「……ターン終了」
 二枚のシールドを割り、二枚ともトリガー。偶然だ。
 それが偶然であることはわかっているのだが、浬にはどうしても、この偶然が、“作られた偶然”であるように感じる。
 いや、感じる、だなんて抽象的表現を使うべきではない。これは意図された偶然だと、断言してもいい。
 恋はどうだかわからないが、少なくとも沙弓は気づいている様子。そして浬も、ほぼ確信している。
 ミシェルのデッキの正体を。
「あたしのターン……そろそろか。まずは《ホルデガンス》を召喚」
 ミシェルはマナを伸ばす。マナに落ちたのは、《音階の精霊龍 コルティオール》。
 そして次に、マナゾーンのカードを七枚、倒した。
「続けて、7マナで統率者領域から召喚だ。進化元はマナのクリーチャー三体! マナ進化GV」
 マナゾーンのクリーチャー三体が重なる。
 現れるのは、遠き時代の超神星。癒しの加護を与え、絶対的な守護を約束した不死鳥。
 光り輝く十字架を掲げ、今、戦場に降り立つ。

「マナ進化GV——《超神星グランドクロス・アブソリュートキュア》!」