二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て52」 ( No.500 )
日時: 2016/10/01 22:40
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

『計略デッキ:魔王戦』ルール
・参加プレイヤーは三〜四人。
・プレイヤーは「魔王側」一人と、それ以外の「勇者側」のチームに分かれる。
・「勇者側」のシールドは、プレイヤーが二人なら一人七枚、三人なら一人五枚。「魔王側」は人数関係なく七枚。
・「勇者側」のプレイヤーは、チームで共有するターン、ステップで同時に進行する。ただしカードの使用、攻撃の処理は一人一つずつ行う。
・「勇者側」のプレイヤーのマナ、手札、墓地、山札、シールド、バトルゾーンは共有されない。
・「勇者側」のプレイヤーは、プレイヤー間での相談可。
・先攻は「魔王側」のプレイヤー。ターン最初のドローあり。
・「魔王側」のプレイヤーは「計略デッキ」を有する。
・「魔王側」のプレイヤーはターンの始めに「計略デッキ」の一番上を公開し、そのカードを使用する。カードは使用後「計略デッキ」の一番下に置かれる。
・「計略デッキ」に含まれるカードは、使用時を除き、「計略デッキ」以外のゾーンに存在できない。
・「計略デッキ」からクリーチャーを公開した時、そのクリーチャーのコピーであるトークンを生成する。
・トークンはカードに付属している数字の数だけ生成される。
・「魔王側」のプレイヤーは、先に自分のデッキの文明を公開し、その文明と同色の「計略デッキ」を使用する。
・「魔王側」が勝利した場合、「勇者側」のプレイヤーがそれぞれ定められた金額を支払う。「勇者側」のプレイヤーが勝利した場合、「魔王側」のプレイヤーは「勇者側」のプレイヤーそれぞれに定められた金額を支払う。




「ふふふ……それじゃあ、始めましょうか?」
 魔王へと相成った沙弓が、悪戯っぽく、ともすれば邪悪な微笑を浮かべる。
 単なる雰囲気作りだと思ったので、三人は無視した。
「先攻は私。まずは計略を使わせてもらうわ」
 一対三という数で劣勢な沙弓は、ハンデとして先攻を取る権利がある。先攻ドローも有効なので、単純に先手を取れるメリットになる。
「計略一枚目、《ネクスト・チャージャー》……まあ、普通ね」
 最初に計略デッキから捲られたのは、《ネクスト・チャージャー》。手札をすべて山札に戻し、同じ枚数だけ引き直す呪文だ。
 本来ならこの呪文を唱えるために手札を一枚消費しているので、ハンドアドバンテージはマイナス、代わりにマナを伸ばせるのがこの呪文なのだが、今回は計略デッキから唱えているため、チャージャーは発動せず、手札の損失もゼロなので、純粋な手札交換のみとなる。
「チャージャー効果は使えないけど、手札も微妙だし、入れ替えるわ……《執拗なる鎧亜の牢獄》をチャージじて、ターン終了」
「ここで、あたしたちのターンだな」
 1ターン目は特に動きもなかった。肝心の計略デッキも、やったことは手札交換のみだ。
 最初から妙なことをされると困るところだったが、これなら安心して序盤を乗り切れそうだ。
 とりあえず今後の方針をどうするか、三人は小声で耳打ちし合う。
(さて、どうしましょうか)
(どうするもこうするもねぇな。それぞれできることをやるしかないだろ)
(そうですねー。一応、僕のデッキがバニラビート、四天寺先輩のデッキが連ドラ、霧島君のデッキが……)
(青黒緑アナカラーで呪文やらなんやら詰め込んだ、よくわからないデッキです……一応、リキピーの種族デッキみたいにはなってますけど)
 全体的にビートダウンに寄った編成だった。序盤で勝負を決めなければ、厳しそうだ。
 しかし、ビートダウンと一口に言っても、その速度や攻め方は大きく異なる。
(……なら、こうしましょう。序盤は僕が展開して注意を引き付けておくので、中盤以降は四天寺先輩にお任せします)
(連ドラの一撃はデカいからな。決まればかなりの打撃になる……わかった。序盤は任せていいんだな?)
(はい)
(じゃあ、俺はサポートに回ります。コンセプトとしてあんまり一定してないですし、主軸になって攻める自信はないです)
(お願いしますねー)
 それぞれのスタイル、スピードの違いを利用して、状況とターン経過によって軸となって攻めるプレイヤーを変える方針を取ることにした。
 空護が盗賊シーフ、ミシェルが戦士ファイター、浬が魔法使い(メイジ)となり、パーティーを組んで魔王に立ち向かう。
「じゃあ、僕から動き始めますねー。《ポッツーン》をチャージして、《駱駝の御輿》を召喚!」
「焔君は早速、バニラ展開の準備ね。でも、そう上手くはやらせないわよ。私のターン、計略発動!」
 言って沙弓は計略デッキの一番上を捲る。
「計略呪文《策略の手》! とりあえず焔君の手札を見せてもらうわ」
「計略なのか策略なのか……ややこしいな」
 基本的にはほぼ同義であり、細かなニュアンスの違い程度しかないだろう。
 もっとも、その細かなニュアンスの違いですらも、使い分けるには微妙なものだが。
 なんにせよ、沙弓は空護の手札を見て、その中にあるカードを一枚選択する。
「やっぱり持ってたわね。《アクア・ティーチャー》を墓地へ!」
「ピーハンは痛いですねー……」
 計略デッキから放たれる《策略の手》が、空護の手札から《アクア・ティーチャー》をピンポイントで叩き落す。
 バニラビートは《アクア・ティーチャー》と《駱駝の御輿》、二体のバニラサポートをエンジンにして動くデッキだ。特に《アクア・ティーチャー》は後続を呼ぶ、いわばガソリン。給油できなければ、すぐに燃料が切れて息切れしてしまう。
 それをハンデスされたのは、かなり大きな痛手だ。
「《アクア・サーファー》をチャージして、《飛翔する啓示 ゼッツー》を召喚よ。ターン終了」
 そして沙弓自身も動き出した。準バニラの《ゼッツー》なので、まだ脅威というほどではないが、計略デッキからどのような恩恵を受けるかわからない。油断はできなかった。
「俺から行きます。《フェアリー・ライフ》をチャージ。2マナで《鼓動する石版》! マナを追加する」
「じゃあ次は僕ですねー。いいカードが引けたので、まずは《イソロック》をチャージ。そして呪文、《番長大号令》!」
 空護が唱えるのは、ハンターを呼び込む《番長大号令》。《アクア・ティーチャー》も《駱駝の御輿》もハンターで、ハンターにはバニラクリーチャーも数多くいる。たった1コストでバニラビートのメインエンジンを引き込め、それでいてはずれも少なくできるため、自然が入るバニラビートでは非常に重要な潤滑油となる呪文だ。
「山札を五枚見て……《アクア・ティーチャー》を手札に加えますよー。そのまま1マナで《アクア・ティーチャー》を召喚!」
「あらら、結局《駱駝の御輿》と《アクア・ティーチャー》を揃えられちゃったわね。まあでも、計略力でいくらでも巻き返せるわ」
「なんだよ計略力って……」
「ほら、次の計略よ!」
 沙弓のターン。計略デッキから、次の計略カードが捲られる。
 次に捲られたのは、クリーチャーだった。
「計略発動《ダーク・クラウン》! 計略クリーチャーが捲られたから、《ダーク・クラウン》トークンを生成! 生成数は2よ!」
 『計略デュエル』における計略デッキ独自のルールとして、クリーチャーが捲れた場合、そのトークンを場に生成し、カードそのものは計略デッキに戻すというものがある。
 これは、計略デッキで次に捲られるカードがある程度ランダムになるよう、シャッフルカードが用意されているためである。常に計略デッキの枚数が一定でなければその意義が薄れてしまう。
「つまりこれで、《ダーク・クラウン》が二体出て来たわけか……」
「そうね。分かりにくいから、適当な紙に書いて、場に置いときましょう」
 言って、沙弓はルーズリーフを持って来て、それをカードサイズに二枚に千切ると、《だーくくらうん》などと書いて場に置いた。ずいぶんと緊張感のないファンシーな《ダーク・クラウン》だ。
「《ゴースト・タッチ》をチャージ。3マナで《ローズ・キャッスル》を要塞化よ!」
 沙弓のシールドに、茨の城が張り付く。
 これで、勇者側三人のクリーチャーのパワーは常に1000低下し続ける。
 それにより、パワー0のクリーチャー、特にシステムクリーチャーに被害が現れる。
 そう、空護の場だ。
 パワーが1000しかない《アクア・ティーチャー》のパワーが0になり、死滅する。
「また《アクア・ティーチャー》が……!」
「《ゼッツー》で……そうね、シェリーのシールドをブレイクするわ」
「こっちか……トリガーはない」
 除去と同時に、攻撃の姿勢も見せる沙弓。ブレイクするシールドが単純に十五枚と多いので、ワンショットなんてやっていられない。加えて、プレイヤーを一人減らせばそれだけ沙弓は有利になる。
 先に動きの鈍そうなミシェルから倒そうという算段なのだろう。
「薔薇城は面倒だな……《コッコ・ルピア》が出せなくなった」
「《アクア・ティーチャー》がもう二枚もなくなってしまったんですけど……まずいですねー」
 システムクリーチャーを根こそぎ死滅する《ローズ・キャッスル》に。二人は参っていた。ミシェルは《コッコ・ルピア》からのコスト軽減でドラゴンを出す流れが出来ず、空護はメインエンジンの片割れである《アクア・ティーチャー》でドローが出来なくなった。
「ここは致し方ないですねー。《イソロック》をチャージ。《駱駝の御輿》でコストを2軽減、それぞれ1マナで《アクア・ブレイド》と《デュナス》を召喚」
「……《トリガロイド》をチャージ。3マナで《アクア鏡師 パワードミラー》を召喚」
「《パワードミラー》? へぇ……」
 浬の出したクリーチャーに、小さく反応を見せる沙弓。
 《アクア鏡師 パワードミラー》。相手の呪文に反応して、カードを一枚ドローできるクリーチャーだ。それほど大きなアドバンテージを得るわけでもなく、パワーが貧弱で場持ちは悪いが、場に維持できれば手札を多く供給できる可能性がある。
「私のターン……うん、悪くないわね。計略呪文《キサナティック・X》! クリーチャー二体を強制バトルよ。《駱駝の御輿》と《アクア・ブレイド》で仲間割れをしてもらおうかしら?」
「どちらもパワー3000……同士討ち、ですかー……」
 わかっていたことだが、毎ターン確実にアドバンテージを取られている。ノーコストでこちらのリソースを削られ続けるというのは、やはり辛いものだ。
「だが、《パワードミラー》の能力は使わせてもらうぞ! 相手プレイヤーが呪文を唱えたことで一枚ドローだ!」
「《惨劇のアイオライト》をチャージ。3マナで《レールガン》を召喚よ。《ゼッツー》でシェリーのシールドをブレイク! ターン終了よ」
「あたしもやっと動けるな。《バルガザルムス》をチャージ! 4マナで《ルピア・ラピア》を召喚!」
「《ゴースト・タッチ》をチャージ。4マナで《デス・スモーク》! 《レールガン》を破壊だ!」
「僕はなにもしませんが……せめて数だけでも減らしますよー。《デュナス》でシールドをブレイク!」
「《ダーク・クラウン》トークンでブロック! 《ダーク・クラウン》のパワーは6000だからこっちの勝ちだけど、バトル後に《ダーク・クラウン》は破壊されるわ」



ダーク・クラウン R 闇文明 (4)
クリーチャー:ブレインジャッカー 6000
ブロッカー
このクリーチャーは攻撃することができない。
このクリーチャーがバトルする時、バトルの後、このクリーチャーを破壊する。



「私のターン! さぁ、次の計略よ! 《拳撃と混乱のアシスト》! シェリーの《ルピア・ラピア》を破壊して、一枚ハンデス!」
「《ルピア・ラピア》は破壊されてもマナに行くぞ。マナ回収はしない」
「それと、《パワードミラー》の能力でドローする」
「《ゼッツー》をチャージして、《死海竜》を召喚!」
「大きいのが出ましたねー……これは殴りにくくなりました」
「ほらほら、もたもたしてるとあっという間に仲間が一人死んじゃうわよ? 《ゼッツー》でシェリーのシールドをブレイク!」
 沙弓がミシェルを攻撃し、どんどん攻めたてる。
 しかし、
「ポカスカ殴るのは結構だが、あんま調子に乗んなよ。S・トリガー、《ナチュラル・トラップ》! 《死海竜》をマナゾーンへ!」
「あっと、踏んじゃったか……まあいいわ。ターン終了」
「《刃隠・ドラゴン》をチャージし、やっと6マナだ! 《紅神龍バルガゲイザー》を召喚!」
「僕も一応、《駱駝の御輿》を召喚しておきましょうかねー」
「《エナジー・ライト》をチャージし、4マナで呪文《ポイズン・ティー》! 《ゼッツー》のパワーを4000下げて破壊だ!」
 ミシェルはデッキの核である《バルガゲイザー》を召喚。さらに浬の援護でアタッカーも潰し、徐々に沙弓の盤面が制圧され始める。
「これはなかなかに面倒なことになったわね……とりあえず計略発動よ」
 どれだけ窮地に立たされても、沙弓には計略デッキがある。
 毎ターンなにかしらのカードによって、盤面を覆す可能性を秘めているのだ。
「お? 面白いカード引いたわ……計略呪文——」
 そうして沙弓は、なにかいいカードを引いたのか、不敵な笑みを零して、捲ったカードを場に繰り出す。
 それは、最悪にして凶悪な、地獄のような一閃だった。

「——《ヘル・スラッシュ》!」