二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て53」 ( No.501 )
日時: 2016/10/03 22:48
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

ヘル・スラッシュ UC 闇文明 (8)
呪文
相手の山札を見る。その中から3枚選び、持ち主の墓地に置いてもよい。その後、相手は自分自身の山札をシャッフルする。
※プレミアム殿堂



 繰り出されたのは、三枚も山札を破壊する凶悪な呪文、《ヘル・スラッシュ》。
 《ロスト・チャージャー》などと同様、相手のデッキを見てカードを落とす効果は、様々な観点から凶悪すぎるという評価を受け、そのほとんどが使用不可能となっている。
 それらの例に漏れず、《ヘル・スラッシュ》もプレミアム殿堂のカードなのだが、他の同系統のカードの中でも、墓地に落とせるカードの数が最も多いのが特徴だ。
「カイのデッキも見たいけど、ここで一番怖いのはシェリーだし、ちょっと賭けてみようかしら……確率操作よ。シェリーの山札を見て、その中から三枚を墓地へ落とすわ」
「デッキ破壊のカードまであるのかよ……!」
 プレミアム殿堂の理由を考えると、カジュアルなこのゲームならではの採用カードだ。
 沙弓はミシェルのデッキを確認し、その中からカードを三枚選ぶ。
「ふむふむ。そうねぇ……《バルガライザー》二枚と《インフィニティ・ドラゴン》を墓地へ」
「ドラゴン比率を下げに来たか……!」
「だが、呪文を唱えたな。《パワードミラー》の能力でドローする」
「直接的なアドに繋がらないのが残念だけど、これでシェリーの連ドラが鈍ってほしいところね。2マナで《熱湯グレンニャー》を召喚。一枚ドローして3マナ、《エナジー・ライト》! 二枚ドローするわ」
「《パワードミラー》の能力でドローだ」
「……流石にちょっと鬱陶しいわね、それ」
 沙弓が手打ちする呪文に加え、ターン初めの計略デッキから唱えられる呪文にも反応し、《パワードミラー》が浬の手札を増強する。手札のみとはいえ、流石にアドバンテージを稼がれすぎている。
「まあ、処理できないからターン終了するけど……」
「こっちのターンだ。《コッコ・ルピア》をチャージし、《緑神龍バルガザルムス》を召喚!」
「5マナで《腐敗無頼トリプルマウス》を召喚! マナを増やし、部長の手札を一枚ハンデスだ!」
「おっと」
「さらに2マナで《スパイラル・ゲート》! 《ダーク・クラウン》をバウンス!」
「計略クリーチャーは場を離れると消えるわ……ブロッカー、いなくなっちゃった」
「道は開けたな。《バルガゲイザー》で攻撃! まずは《バルガザルムス》の能力で山札を捲るぞ」
 ブロッカーが消え、《バルガゲイザー》を遮るものはいなくなった。
 攻撃と同時に山札を捲る最初に発動するのは、《バルガザルムス》。ドラゴンが捲れれば手札に加えられるが、
「捲られたのは……《スーパー炎獄スクラッパー》か。ドラゴンじゃないからマナだ。次に《バルガゲイザー》の能力で、トップを捲るぞ」
 《バルガザルムス》は当たっても外れてもアドバンテージになるが、《バルガゲイザー》の場合はそうはいかない。当たればドラゴンが問答無用で出て来るが、外れれば墓地にカードが行くだけ。
 《ヘル・スラッシュ》で山札のドラゴンが削られたと言っても、まだドラゴンは残っている。捲られる可能性は十分にあるはずだが、
「……《ルピア・ラピア》か。ちっ。そのまま墓地へ」
 二連続でドラゴンを外したミシェル。《ヘル・スラッシュ》の影響が地味に出ている。賭けは沙弓の勝ちだったようだ。
「だが、攻撃続行だ! その鬱陶しい薔薇城をブレイク!」
「トリガー……なしね」
「俺の《パワードミラー》も攻撃する。シールドをブレイク!」
「こっちもなし……」
 ドラゴンの展開はできなかったが、勇者側にパワーダウンをかけ続けていた《ローズ・キャッスル》が落城し、パワー低下がなくなる。
「私のターン。とりあえず、計略発動よ、《スーパー・バーストショット》! パワー2000以下の相手クリーチャーをすべて破壊するわ!」
 計略デッキから捲られたのは、小型クリーチャーを一掃する《スーパー・バースト・ショット》。できれば《ローズ・キャッスル》が要塞化している時に引きたいカードだったが、勇者側の場はほとんどが小型のクリーチャーだ。この状況でも十分に機能する。
「だいぶ仕事されちゃったけど、邪魔な《パワードミラー》にはご退場願うわ」
「だが最後にもう一仕事だ、一枚ドローする」
 ここまで幾度と浬に手札を与え続けた《パワードミラー》が遂に破壊されるが、破壊される瞬間にも、呪文である《スーパー・バースト・ショット》は唱えられている。置き土産に最後の手札を浬に届け、墓地に送られた。
「《グレンニャー》をチャージ。4マナで《炎獄スマッシュ》! 《バルガゲイザー》を破壊! さらに2マナで《腐敗電脳メルニア》を召喚よ! ターン終了」
「チャージなし、《コッコ・ルピア》と《バルガゲイザー》を召喚!」
「3マナで《アクア・ハルカス》を召喚。一枚ドローし、《アクア・ガード》を召喚。さらに5マナで《無頼電脳スプラッシュ・アックス》召喚! マナを追加し、シールドを一枚見るぞ」
 場を一掃されても、二人にはまだ手札がある。そこからさらにクリーチャーを展開していく。
 ミシェルは二体目の《バルガゲイザー》で追撃の準備。浬は場を並べつつ、マナやブロッカーを増やし、《スプラッシュ・アックス》で沙弓のシールドを見て情報アドバンテージ燃える。
 確認を終えると、空護らが耳打ちしてきた。
(どうでしたー?)
(《レールガン》でした。特にトリガーでもなんでもないですね)
(じゃあ、あのシールドは安全てことか。なら、先に他のシールドから割るのが吉か?)
(ですねー。タイミングとしては悪くないですし、ここいらで物量で押しましょう)
 と、ここまでなかなか動けなかった空護が、攻めの姿勢を見せる。
「まずは《アクア・ティーチャー》を召喚!」
 《ローズ・キャッスル》が消えたことで、これまで出せなかった三枚目の《アクア・ティーチャー》が出て来る。
「《駱駝の御輿》でコストを軽減、1マナで《蒼狼アクア・ブレイド》を召喚! 《アクア・ティーチャー》の能力でドロー! さらに1マナ、《イソロック》を召喚! 一枚ドローして、《紳士妖精レンダン》召喚、ドローです!」
 《アクア・ティーチャー》の能力で、バニラを展開しつつカードをドローし、どんどん盤面を埋めていく空護。遂にバニラビートが本領を発揮し始めたといったところだろう。
「! いいカードです……G・ゼロ!」
「バニラビートでG・ゼロって……やば」
 そしてここで、空護は大きな一撃を手に入れる。
「《アクア・ティーチャー》《アクア・ブレイド》《イソロック》の三体を種にして、進化! 《零次龍程式 トライグラマ》を召喚!」
 リキッド・ピープル軸のバニラビートの切り札、《トライグラマ》。破壊されても手札に戻り、一撃で三枚のシールドを叩き割る進化クリーチャーだ。
 除去が得意な沙弓のデッキでも対処は難しい巨大なアタッカーの登場で、さらに沙弓を攻めたてる。
「《トライグラマ》でTブレイク!」
「きっつ……だけど、S・トリガーよ! 《アクア・サーファー》を召喚して、《バルガザルムス》をバウンス!」
「アタッカーは潰されたが、かなり追い詰めたな。もうひと押しだ」
 一気に三枚のシールドを削り取り、沙弓のシールドは残り二枚。かなり追い詰められた。
 まだ勇者側はプレイヤーが三人。場には巨大な《トライグラマ》や、追加の打点を呼ぶ《バルガゲイザー》も残っている。対する沙弓の場には《グレンニャー》《メルニア》《アクア・サーファー》と、小型クリーチャーばかり。
 流石に、厳しい状況だ。
「こうなれば、魔王の最終奥義を使わざるを得ないわね」
「最終奥義?」
「……禁断の秘術、とかの方が格好良いかしら?」
「どうでもいい」
 なんにせよ、なにかしらの逆転の一手があるのだろう。
 そして、それが発動されるのが、計略デッキだ。
「さぁ、来なさい。魔王にのみ許された暗黒の術法。生きとし生けるものをすべて、屍に変えるのよ。計略発動——」
 沙弓が計略デッキからカードを引く。
 このどれほど追い詰められても、魔王には奥の手が存在する。
 どんな逆境でも、一撃でひっくり返す必殺技が。
 そして、それが今、発動する。

「——《インビンシブル・アビス》!」