二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿3日目 「叡智を抱き戦場に立て2」 ( No.507 )
日時: 2016/10/15 18:14
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

「——と、いうわけで、Aブロック一回戦は、暁とハチ君の対戦ね」
「やったー! 一番だぁ!」
「いきなり対戦できるなんて、ついてるっすね」
 最終日のトーナメント戦。その一回戦目は、暁vs八の対戦カードとなった。
 初戦で戦えることに、二人は喜び勇んではしゃいでいる。
「いや、最初に終わったら結局後の対戦は待ってるだけだが……というか、Aブロック一回戦ってことは、他のブロックも同時に対戦するのか?」
「んー、いや、それはやめときましょう。せっかくだし、皆の対戦を一戦ずつやるのがいいと思う」
「そうだね。皆の対戦が一戦一戦ちゃんと観戦できるし、俺はそれで賛成だよ」
「ならやはり、初戦が終わったら残り四戦ずっと待ってるだけか……」
「まあ、皆さんの対戦なら、暇はしないと思いますけどねー」
 この場にいるプレイヤーはすべて、一癖も二癖もある強者。
 傍から見ているだけでも、価値のある対戦を展開してくれることだろう。
「それじゃあ暁さん、始めるっすよ!」
「オッケー! 私のドラゴンに押し潰されないよう、気をつけてね!」
「そっちこそ、自分のスピードに置いて行かれないよう、注意した方がいいっすよ!」
 対戦直前、二人はそんな風に言葉を交わして、デッキをセット。シールド展開。手札を持つ。
 そして、対戦開始だ。



空城 暁
〜爆熱武装のドラゴンビート〜

vs

夢谷 八
狩人ハンターたちの協奏曲コンチェルト












超次元ゾーン:暁
《爆熱剣 バトライ刃》×1
《ガイアール・カイザー》×1
《勝利のガイアール・カイザー》×1
《時空の火焔ボルシャック・ドラゴン》×1
《勝利のリュウセイ・カイザー》×1
《勝利のプリンプリン》×1
《ブーストグレンオー》×1
《ドラゴニック・ピッピー》×1



超次元ゾーン:八
《勝利のリュウセイ・カイザー》×1
《流星のフォーエバー・カイザー》×1
《ブーストグレンオー》×1
《剛腕の政》×3
《ウコン・ピッピー》×1
《サコン・ピッピー》×1



 暁と八の対戦。
 暁の場にはなにもない。《ネクスト・チャージャー》でマナを伸ばしただけで、シールドは残り四枚。
 対する八の場には《ヤッタレ・ピッピー》《斬込の哲》がおり、シールドも五枚。
 盤面でもシールドでも、暁は完全に後れを取っていた。
「自分のターンっすよ! 《アクア・ジェット》を召喚っす! 能力でハンターの数だけドローっすよ!」
「うわ、手札増やされちゃったよ……きつい」
「《ヤッタレ・ピッピー》と《斬込の哲》でシールドブレイクっす!」
「トリガーはないなぁ……私のターン」
 コスト軽減にマナ加速、そしてドロー。八はさらに展開するためのリソースを増やしながら、暁を攻め立てる。
 一方、暁は中盤からの爆発力こそ高いものの、序盤の動きは鈍い。
「暁は上手く切り返さないと、ハチ君に押し切られるわね」
「ハチ公はスピードだけはピカイチだからな。スピードっていうか、テンポか」
 一撃一撃の打撃は大きくないが、ビートダウンの合間に行う手札補充とマナ加速のタイミングが絶妙だ。この二つを最良のタイミングで行うことで、常に攻撃の手を緩めず、攻撃のペースを崩すことがない。
 単純に早いのではなく、テンポ良くビートダウンすることができるのが、八の強みだ。
 対する暁は、防戦一方になってしまっているが、彼の猛攻に必死で抗う。
「マナチャージして、5マナ! 《超次元ボルシャック・ホール》を唱えるよ!」
「超次元呪文……あきらが使うの、珍しい……」
「普段の暁さんのデッキはトップデックからの踏み倒しが軸になるから、基本的にデッキをクリーチャー主体にしてるからね」
「だけど今は《コーヴァス》がいないから、踏み倒しに縛られる必要はない。《バトライ刃》があるのはちょっと気になるけど」
 今回の暁のデッキは踏み倒しにこだわない構築となっており、いつもならクリーチャーで埋める枠に、超次元呪文を入れている。これにより、火文明単色でありながらも、より幅広い戦術を取ることが可能となった。
 このまま攻められるのは、守りの薄い暁にとっては良い展開ではない。ここは一度守りに入って、相手の場数を減らすことにした。
「《ヤッタレ・ピッピー》を破壊して、《勝利のガイアール・カイザー》をバトルゾーンに! 《勝利のガイアール・カイザー》は出たターンだけアンタップしてるクリーチャーを攻撃できるから、《アクア・ジェット》を攻撃するよ!」
「でもやってることは、いつものあきらちゃんっぽいですね……」
 それでも、火力とアンタップキラーで二体のウィニーを破壊。まだ《斬込の哲》が残っているが、かなり数は減らせた。
「二体も破壊されたっすけど、それでも自分はまだまだ止まらないっすよー! マナチャージして6マナ、《熱血ボス!バルス・カイザー》を召喚!」
「っ、それは……!」
 《バルス・カイザー》は自分のハンターが攻撃するたびに山札を捲り、攻撃したハンターよりもコストの低いハンターであれば場に出せる、という能力を持つクリーチャー。
 打点もさることながら、これ以上展開されると、処理しきれずに攻めきられてしまう。そんな危機感が、暁を襲った。
「空城さんがトップデックからの踏み倒しをしない代わりに、夢谷君がそっちの戦術に切り替えてきましたねー」
「《斬込の哲》で攻撃! その時、《バルス・カイザー》の能力発動っす! 自分の山札の上を墓地に置くっすよ!」
 山札を捲る八。《斬込の哲》のコストは4。決して高くはないが、八のデッキであれば、コスト3以下のクリーチャーは多く入っている。さらに展開される可能性は十分にあった。
 しかし、捲られたのはコスト5の《ニドギリ・ドラゴン》。コスト4より大きいクリーチャーだ。
「あちゃ、はずれっすね」
「っ、よかった……」
「でも、攻撃っすよ! シールドブレイク!」
「トリガーは……ないよ」
 これで暁のシールドは残り一枚。かなり危険な域に達している。
「耐えられるかなぁ……とりあえず、《コッコ・ルピア》を二体召喚! 《勝利のガイアール・カイザー》で、《斬込の哲》を攻撃!」
「《斬込の哲》は破壊されてもマナに行くっすよ! そして、自分のターン!」
 八の場には《バルス・カイザー》が一体。スピードアタッカーが一体でも出て来れば、その時点でとどめまでの打点が揃ってしまう。
 そう思っていると、
「《反撃の城 ギャラクシー・ファルコン》を要塞化っすよ!」
「うげ……やっばいのきた!」
 スピードアタッカー一体どころではない。すべてのハンターをスピードアタッカーにする城、《ギャラクシー・ファルコン》が要塞化されてしまった。
「これで夢谷君のハンターはすべてスピードアタッカー……」
「残りマナ数、手札数、そして夢谷君のデッキに入っている軽量ハンターの枚数を考えると……どのくらい展開されるかな」
 《ギャラクシー・ファルコン》はたった1コストなので、マナは十分に余っている。手札の方はやや切れかかっているが、
「さらに《アクア・ジェット》を召喚っすよ! ハンターの数だけドローして、《ヤッタレ・ピッピー》を召喚!」
「やばいよやばいよ……」
 再び、援軍を補充する八。並べられたクリーチャーは二体だが、暁にとどめを刺す打点は十分だ。
「《バルス・カイザー》で攻撃! 山札の一番上を捲るっすね」
 だが、それだけでは止まらない。《バルス・カイザー》でさらなるハンターが展開される。
「捲られたのはコスト4の《アパッチ・ヒャッホー》っす! 《アパッチ・ヒャッホー》の登場時、超次元ゾーンからコスト4以下のハンターを出すっすよ! 《剛腕の政》をバトルゾーンに!」
「これで後続のアタッカーは四体……終わったか?」
「あきらちゃん……」
 《バルス・カイザー》の能力で一体、《アパッチ・ヒャッホー》の能力で、サイキック・クリーチャーが一体、さらに二体のクリーチャーが展開される。もはやオーバーキルだった。
 ここまで展開されては、並大抵のS・トリガーではどうしようもない。後続のアタッカー四体すべてを処理できるS・トリガーが、火文明単色の暁のデッキにあろうか。
 暁はゆっくりと最後のシールドを捲り、確認する。
 そして、
「! やっと来た! S・トリガー発動!」
 最後のシールドから、S・トリガーが捲られた。
 無数の銃弾が、弾幕として戦場に放たれる。

「《ミラクル・バーストショット》! 相手のパワー3000以下のクリーチャーを全部破壊するよ!」

 目当てのS・トリガーを、引き当てた。
 火文明が得意とする全体火力。八のクリーチャーは、数こそ多いがそのすべてはパワー3000以下のウィニー。《ミラクル・バーストショット》の火力の前に、一掃される。
「おぉ、流石は暁さんっすね……ここで決められなかったのは残念っすけど、まだ《バルス・カイザー》も《ギャラクシー・ファルコン》もあることですし、大丈夫っすよ。ターン終了っす」
「私のターン!」
 なんとかS・トリガーで九死に一生を得た暁。
 ここから、彼女の反撃が始まる。
「私のバトルゾーンには《コッコ・ルピア》が二体いるから、ドラゴンの召喚コストは4軽くなる! 6マナで召喚だよ! 《龍世界 ドラゴ大王》!」
「! そのクリーチャーは……!」
「《ドラゴ大王》がバトルゾーンに出た時、相手クリーチャー一体と私のクリーチャーをバトルさせる。《ドラゴ大王》と《バルス・カイザー》でバトルだ!」
 《ドラゴ大王》のパワーは13000。対する《バルス・カイザー》のパワーは、ハンティング込みでも7000。一撃で粉砕される。
 大王とボスでは、前者の力が圧倒的だった。
「それと、スピードアタッカーも怖いから、《ギャラクシー・ファルコン》は破壊しておかないとね。《勝利のガイアール・カイザー》でシールドをブレイク!」
 《ギャラクシー・ファルコン》がある限り、八はハンターを投げるだけで暁にとどめを刺せる。手札を与えるのは怖いが、それ以上にこの城が怖い。とりあえず一枚だけ、シールドをブレイクする。
「む、S・トリガーっす! 《鬼スナイパー モエル》で——」
「待った! 《ドラゴ大王》がいるから、ドラゴン以外は出せないよ!」
「おっと、そうだったすね……申し訳ないっす」
 S・トリガーで場に出そうとした《モエル》を手札に戻しつつ、詫びる八。
 《ドラゴ大王》でドラゴン以外は場に出れないので、《ギャラクシー・ファルコン》を落城させたことも含めて、八は攻撃を通しにくくなっている。
「だったら……呪文《ドンドン吸い込むナウ》っす! 山札の上から五枚を見て、《ヤッタレ・ピッピー》を手札に加えるっすよ! 火か自然のカードを手札に加えたッすから、《ドラゴ大王》を手札に戻すっす!」
 一時凌ぎにしかならないが、《ドラゴ大王》を場から離す八。これで、少なくともこのターン中は召喚ができる。
「《ヤッタレ・ピッピー》《斬込の哲》を召喚! ターン終了っす! このターンを耐えれば、反撃できるっすよ……!」
「上手い! これなら《ドラゴ大王》を出しても、暁さんは夢谷君の攻撃手を潰し切れない」
 八の場にアタッカーは二体。《ドラゴ大王》の強制バトルでも、片方しか破壊できない。ロックをかけても、もう無意味だ。
 だから、暁もこのターンで決着をつけようとする。
「だったらこのターンで決める! もう一度6マナタップ! 次はこれだよ! 《勝利天帝 Gメビウス》!」
 暁が繰り出す次なる大型ドラゴン、《Gメビウス》。
 《ドラゴ大王》が相手を制圧して倒す切り札なのに対し、《Gメビウス》は火力、二回攻撃、スピードアタッカー、Tブレイカーの超攻撃的シナジーによって、出したその瞬間に勝負を決めるフィニッシャー。
 これで打点は九。八のすべてのシールドを粉砕し、とどめを刺す打点が揃った。
「これがラストターンね。さて、どうなるかしら……!」
「《Gメビウス》で攻撃! その時に《ヤッタレ・ピッピー》を破壊! さらに《Gメビウス》をアンタップして、Tブレイク!」
 《Gメビウス》は小型クリーチャーを薙ぎ払いながら次の攻撃に備えて起き上がり、直後、八のシールドを三枚叩き割る。
「うぐ……S・トリガーっす! 《ドンドン吸い込むナウ》! 《ニドギリ・ドラゴン》を手札に加えて、《Gメビウス》を手札に戻すっすよ!」
「まだまだ! 《コッコ・ルピア》で最後のシールドをブレイク!」
 バウンスされる《Gメビウス》。S・トリガーはある程度予想していたが、一撃でもTブレイクを決めただけで、《Gメビウス》は大きな仕事を果たしたと言える。
 八のシールドは残り一枚。シングルブレイカーとはいえ、暁のアタッカーは残り三体。打点は十分だ。
 《コッコ・ルピア》が《Gメビウス》の後に続き、八の最後のシールドをブレイクする。
「S・トリガー! 《クラッシャー・ベア子姫》召喚っす! 《コッコ・ルピア》二体をマナゾーンに!」
 最後のシールドから、《クラッシャー・ベア子姫》が現れ、暁の小型クリーチャーを一掃する。
 しかし、これだけではまだ足りない。
 暁にはまだ、アタッカーが残っている。
「シノビがなければ、このまま勝てる……! 《勝利のガイアール・カイザー》でダイレクトアタック!」
 最後に残った《勝利のガイアール・カイザー》の攻撃が放たれる。
 攻撃宣言の後、タップされた《勝利のガイアール・カイザー》を見て、八は自分の手札を見遣る。
 そして、晴れやかな笑顔で、にっこりと笑った。

「——自分の負けっす」