二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿3日目 「叡智を抱き戦場に立て3」 ( No.508 )
日時: 2016/10/16 17:40
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

「負けたっす! 流石は暁さんっす、完敗っすよ!」
「いやいや、ハチも強かったって。最後にトリガーでないと負けてたし、《ドラゴ大王》と《Gメビウス》がちょうどいいところで来てなかったら、どうなってたか」
「それでもっすよ」
 負けてもなお、暁の健闘を称える八。
 一回戦。暁と八の対戦は、暁の勝利で終わった。
 次は二回戦。一騎とミシェルの対戦だ。
「部長と副部長の対戦……何気に、なかなかない対戦カードね」
「烏ヶ森組としては、見逃せない一戦ですねー」
 烏ヶ森の部長である一騎と、副部長であるミシェル。
 部内において一騎が最も信頼を置いているのはミシェルであり、またミシェルも最も気を許す相手が一騎である。
 部長と副部長、互いに支え合う存在であるからこそ、互いにぶつかり合うことのない二人の対戦カードは、一回戦の目玉の一つだった。
「って言っても、一応、あたしはお前とやりあってんだけどな……」
「え? そうだっけ?」
「お前がぶっ倒れて暴れ回った時だ」
「あ……あぁ。その節は、本当に迷惑をかけたね。ごめん……」
「もういい、昔のことだしな」
 ただ、とミシェルは続ける。
「あの時、お前は平常ではなかったおはいえ、あたしはお前に負けている。そのリベンジは、させてもらうぞ」
「本当に申し訳ないと思ってるけど、それとこれとは話が別だからね。あの時の俺に意識なんてなかったけど、リベンジはさせないよ」
 静かに闘志を燃やす二人。鋭い眼光で闘争心を剥き出しにしているミシェルと、穏やかで柔和な表情でありながらも内では燃えている一騎。
 対称的なようで本質は似通ったものを抱える二人が、それぞれ向かい合う。
「一騎さんとミシェルさん、どっちが勝つんだろう?」
「さーねぇ。一騎君も強いけど、シェリーもどっちのデッキ使うかわかんないからねぇ」
「どっちのデッキ……?」
 柚が首を傾げると、恋が口を添える。
「ミシェルは、青黒赤クローシス墓地ソと黒赤緑デアリロマサイ……二つのデッキを使い分ける……主として使うデッキを一つに決めてない……」
「高速高打点の墓地ソに、ワンショットのロマサイ。どちらも墓地利用しつつ、スピードアタッカーで奇襲するタイプのデッキだが……」
「特別、有利不利があるようには思えないけど、シェリーのスピード次第では一騎君が厳しいかしら」
 一騎のデッキは準赤単ドラグハートなはず。ミシェルの墓地利用を食い止めるようなメタカードは、恐らく搭載されていない。
 一騎もマナブーストから素早くフィニッシャーを投げつけるデッキなので、この対戦、どちらが早くフィニッシュパターンに辿り着けるかの勝負になりそうだ。
「じゃあ、始めようか、ミシェル」
「あぁ。全力で叩き潰すからな」
「いいよ、受けて立つよ」
 二人はデッキをセット、シールドを展開し、手札を取る。
 そして、対戦開始だ。



剣埼 一騎
〜戦場を駆ける炎龍剣士たち〜

vs

四天寺 ミシェル
〜Pâques du purgatoire(煉獄復活祭)〜












超次元ゾーン:一騎
《覇闘将龍剣 ガイオウバーン》×1
《大いなる銀河 巨星城》×1
《銀河大剣 ガイハート》×1
《将龍剣 ガイアール》×1
《最前戦 XX幕府》×1
《天守閣 龍王武陣—闘魂モード—》×1
《熱血爪 メリケン・バルク》×1
《熱血剣 グリージー・ホーン》×1



超次元ゾーン:ミシェル
なし



 一騎とミシェルの対戦。
 お互い、まだシールドは五枚。
 一騎の場にはなにもない。《フェアリーの火の子祭》を一回唱えただけだ。
 ミシェルの場には《白骨の守護者ホネンビー》が一体。こちらも《爆砕面 ジョニーウォーカー》でマナを伸ばしている。
「あたしのターン。まずは呪文《ダーク・ライフ》だ。山札の上から二枚を見て、《ロマノフ》を墓地へ、《デス・ハンズ》をマナへ置く。続けて《ホネンビー》を召喚。山札の上から三枚を墓地に置いて、墓地の《クロスファイア》を回収する……ターン終了だ」
「俺のターン。《スコッチ・フィディック》を召喚。《最前線 XX幕府》を設置して、ターン終了だよ」
「一騎さんの場にドラグハートが出た……!」
「でも、3コスのフォートレス。まだここまでは、お互いに準備段階といったところね」
「問題はこの先だな」
「ミシェルのマナは、次のターンで7マナ……墓地もそこそこ、揃ってる……」
 お互いに動きが見え始めた頃。ミシェルのターン。
「さて……決めに行くか」
 先にフィニッシュルートに辿り着いたのは、彼女だった。
「もう動くのね」
「運が絡むが、ここで決められたら美味しいからな。やって損はないはずだ。6マナで呪文! 《煉獄と魔弾の印》!」
「っ、来たか……! クリーチャーの方だと思ってたけど……」
 《煉獄と魔弾の印》。ミシェルの新しい戦術、ロマノフサインの核となるキーカードだ。
 呪文の効果で、墓地から闇か火の、コスト7以下のクリーチャーが復活する。選ばれるカードは当然、前のターンに墓地に落とされた、あのクリーチャーだ。

「墓地から蘇れ! 《邪眼教皇ロマノフⅡ世》!」

 蘇ったのは《邪眼教皇ロマノフⅡ世》。登場時、山札を五枚、墓地に落とす。そしてその中から、コスト6以下の呪文をタダで唱える《ロマノフ》だ。
 ミシェルのコンボの起爆剤。ここで二枚目の《煉獄と魔弾の印》が落ちるか否かで、一騎の生死が決まると言っても過言ではない。
 《ロマノフⅡ世》の能力で、ミシェルは山札を五枚、墓地へと落とす。落とされたのは《爆砕面 ジョニーウォーカー》《邪眼皇ロマノフⅠ世》《煉獄と魔弾の印》《地獄門デス・ゲート》《暴走龍 5000GT》。
「大当たりだ。《煉獄と魔弾の印》!」
「綺麗に当てて来たなぁ……!」
「墓地から《邪眼皇ロマノフⅠ世》をバトルゾーンへ! 山札から《ロマノフⅠ世》を落とす! さらにG・ゼロで《百万超邪 クロスファイア》を召喚だ!」
「ロマサイのダメ押しに《クロスファイア》……剣埼先輩でも、これはきついわね……!」
 登場時、《ロマノフⅠ世》は自身の能力で次の死体を墓地に落とす。そして、墓地に落ちたままの魔弾を放ち、用意された骸に魂を吹き込む。
「《ロマノフⅠ世》で攻撃! その時、墓地から《煉獄と魔弾の印》を唱え、墓地から二体目の《ロマノフⅠ世》を蘇生! その登場時能力で、山札に戻った《煉獄と魔弾の印》を再び墓地に落とすぞ」
 完全に決まってしまったロマノフサインの流れ。こうなってしまうと、どこかでトリガーでもなんでも撃ち、《ロマノフⅠ世》を除去しなければ止まらない。ミシェルの場には《クロスファイア》もいるため、早く処理したいところだ。
「Wブレイク!」
「S・トリガーだよ。《イフリート・ハンド》で、二体目の《ロマノフⅠ世》を破壊!」
「いきなりか、ついてないな……」
「まあ、シェリーもかなり運よく《煉獄と魔弾の印》やら《ロマノフⅠ世》やらを捲ってるし、どっこいどっこいよね」
 なんにせよ、一騎にとっては展開される前にロマノフサインを止めることができたので、物量で押し切られてやられるというパターンはなくなった。
「このまま殴ってもいいが、一騎はまだ6マナか……ちょっと考えていいか?」
「いいよ」
 ミシェルは考え込む。このまま、《クロスファイア》でも殴るかどうかを考えているのだろう。
 しばし腕を生んで思案してから、彼女は小さく宣言する。
「……ターン終了だ」
「終わりでいいの?」
「あぁ」
 ミシェルは攻撃せず、ターン終了を選択した。
(殴ってもシールドは割り切れないし、それよりトリガーで場を荒らされる方が怖いからな。ブロッカーもいるし、すぐにとどめを刺すだけの奇襲はない……はずだ)
 あまり確信し切れないのは、一騎の奇襲性と爆発力をどの程度まで見積もっていいのか、基準が測れないからだ。
(今でこそ落ち着いてるが、昔は白青赤ラッカカラーのヤヌスビートに《アマテラス》やら《緊急再誕》やら入れてた奴だからな……変なピンポメタをされると、どう対処していいのかわからん)
 今の一騎しか知らない暁たちではわかりようもないことだが、その昔——昔と言ってもリュンと出会う直前までだが——一騎は特定の状況、特定の相手に対するピンポイントなカードを、銀の弾丸的に仕込むプレイスタイルを好んでいた。
 元々、メタ読みとピン刺しが好きな性分らしく、いきなり予想だにしない奇妙なカードを繰り出されることがままあったことがある。ミシェルもその時代の一騎を多少は知っているので、そんな予想外の一撃が怖いところではある。
「俺のターン! 《龍覇 グレンモルト》を召喚! 《銀河大剣 ガイハート》を装備!」
「来たか……!」
 現れたのは《ガイハート》を携えた《グレンモルト》。しかし、一騎が繰り出してきた一手は、まだミシェルの予想の範疇だった。
 《龍覇 グレンモルト》と《銀河大剣 ガイハート》。強力なドラグハート・クリーチャーで、こちらの布陣に風穴を空けるつもりだろうか。
「さらにG・ゼロで呪文《暴龍警報》! 《フィディック》にガイアール・コマンド・ドラゴンを追加するよ」
「?」
 首を傾げるミシェル。今の一騎のプレインが理解できない。
 《暴龍警報》は、味方クリーチャー一体にガイアール・コマンド・ドラゴンとスピードアタッカーを付与する呪文。G・ゼロで撃ち、ドラグナーをスピードアタッカーにして、即座に攻撃させるために使う使い方が一般的だが、《スコッチ・フィディック》は既に場に出ているクリーチャー。スピードアタッカーの付与は関係ない。
 一体、どういうつもりなのだろうか。
「《フィディック》で《ロマノフⅠ世》を攻撃! 《XX幕府》の効果で、ブロッカーの《ホネンビー》を破壊!」
「あぁ、そういうことか」
 《XX幕府》は、火のドラゴンの攻撃にしか反応しない。
 だから一騎は、ミシェルの《ホネンビー》を破壊するために、《暴龍警報》で《フィディック》をドラゴン化させたのだ。
 《ロマノフⅠ世》に特攻する《フィディック》。パワー5000の《フィディック》に対し、《ロマノフⅠ世》はパワー8000。
「《フィディック》はバトルに負けて破壊されるね。次に《グレンモルト》でシールドをブレイク!」
「ブロックはしないが……トリガーもないか」
「よし。だったら《グレンモルト》を龍解だ!」
 ターン中に二回の攻撃を達成。そして場には、《ガイハート》が残っている。
 龍解条件成立。《ガイハート》が龍解する。

「龍解! 《熱血星龍 ガイギンガ》!」