二次創作小説(紙ほか)
- 番外編 合同合宿3日目 「叡智を抱き戦場に立て4」 ( No.509 )
- 日時: 2016/10/16 19:55
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
ミシェルのブロッカーを蹴散らしながら、一騎はターン中に二回の攻撃を通し、《銀河大剣 ガイハート》を《熱血星龍 ガイギンガ》へと龍解させることに成功する。
「《ガイギンガ》の龍解時の能力で《クロスファイア》を破壊! さらに《XX幕府》を《熱血龍 GENJI「天」》に龍解!」
「一騎さんの連続龍解……!」
「今の一騎にはこれがあるから、怖いところだよなぁ……!」
ピンポイントメタのピン挿し構築が息を潜めた代わりに、一騎は連鎖的な龍解で一気に打点を揃える、というプレイングをよく行う。
二回攻撃することで龍解する《ガイハート》《XX幕府》、ガイアールが攻撃することで龍解する《ガイアール》、二回バトルに勝つことで龍解する《ガイオウバーン》など、一騎の使用するドラグハートは、龍解条件がある程度似通っている。ゆえに、一度ドラグハートの龍解条件を満たすと、同時に龍解条件を満たすドラグハートも表れ、一気に多数のドラグハートを龍解させることができるのだ。
それによって、打点を一度に大量に生成する。ドラグハート特有の高いカードパワーに物量を合わせて、力押しで攻め切るような戦術も取れる。
「とはいえ、今回は攻め切るつもりじゃないな……場の掃除か」
できるだけ安全に龍解するためには、トリガーを踏むわけにはいかない。シールドを割ってトリガーが出て来る確率を落とすために、《フィディック》に自爆特攻をさせた。
殴り切るつもりなら、少しでもシールドを割りたいはず。そうしなかったうえに、《ガイギンガ》もアタッカーを除去してきたので、一騎の目的はアタッカーを削って延命することだろう。
その安全運転のお陰で一騎は《ガイギンガ》への龍解に成功。同時に《XX幕府》も《GENJI「天」》へと龍解し、戦線を一気に拡大させる。
「《ガイギンガ》で《ロマノフⅠ世》を攻撃! その時《GENJI「天」》の能力で《ホネンビー》を破壊するよ!」
《GENJI「天」》との連携で、ブロッカーを薙ぎ払いつつ、脅威となっていた《ロマノフⅠ世》を破壊する。
これで、ミシェルの場はほぼ一掃された。残されたのは《ロマノフⅡ世》だけだ。
「ターン終了だ」
「面倒くさいことになったが、どうするか……」
《グレンモルト》からの《ガイハート》、《ガイギンガ》龍解はある程度は予想していたが、《暴龍警報》一枚で計算が絶妙にずれた。思った以上に場を荒らされてしまった。その一手には、どことなくメタ張り時代の片鱗を思い起こさせる。
一騎の場には《グレンモルト》《ガイギンガ》《GENJI「天」》の三体。特に《ガイギンガ》が厄介極まりない。選ばれたらエクストラターンを得るため、実質的にアンタッチャブル。バトル時にパンプアップもするので、処理に難儀するクリーチャーだ。
しかし、ミシェルにも手がないわけではなかった。
「まずは《ダーク・ライフ》を唱えて、マナと墓地を一枚ずつ増やす。次に《ホネンビー》を召喚。山札を三枚墓地に置き、《クロスファイア》を回収だ」
「持ってたか、《ホネンビー》」
「G・ゼロで《クロスファイア》を召喚! 《ロマノフⅡ世》で《グレンモルト》を、《クロスファイア》で《ガイギンガ》を攻撃だ!」
「あぁ、《ガイギンガ》が……」
「さしもの《ガイギンガ》も、殴り返しはどうしようもないわね」
選べないなら、力ずくで破壊する。《クロスファイア》はパワーアタッカー+100万。実質的に、あらゆるクリーチャーを殴り倒せるパワーを持っている。
そして、殴り返しなら選んだことにならないため、安全に処理できる。一騎は早くも主力である《ガイギンガ》を失ってしまった。
「でも、1ターン稼げたよ。俺のターン! 《次元龍覇 グレンモルト「覇」》を召喚!」
「っ、今度はそいつか……!」
「《グレンモルト「覇」》で《クロスファイア》を攻撃! その時《GENJI「天」》の能力で《ホネンビー》を破壊して、《グレンモルト「覇」》の能力、マナ武装7で《覇闘将龍剣 ガイオウバーン》を装備! 《ガイオウバーン》の効果で《ロマノフⅡ世》とバトルするよ!」
本来なら《グレンモルト「覇」》のパワーは7000だ。しかし、《ガイオウバーン》を装備することでパワーが3000上昇し、パワー8000の《ロマノフⅡ世》を打ち倒し、《クロスファイア》にも一方的に勝てる。
そして、この二度の勝利が、さらなる一手へと繋がる。
「俺のクリーチャーが二回バトルに勝ったから、《ガイオウバーン》の龍解条件成立だよ! 龍解! 《勝利の覇闘 ガイラオウ》!」
「一枚のカードからガンガンクリーチャーを増やすよな、お前は……!」
「ミシェルもそうでしょ。ロマノフサインで次々と並べるじゃん。お互い様だよ。《ガイラオウ》でシールドをWブレイク!」
売り言葉に買い言葉。軽く言い返してから、一騎には剣の切っ先をミシェルに向ける。
《ガイラオウ》の一撃が、ミシェルのシールドを叩き割る。これで残るシールドは二枚。
しかし、砕かれたシールドから、一枚のカードが飛び出す。
「S・トリガー《凶殺皇 デス・ハンズ》! 《GENJI「天」》を破壊だ!」
「あっと、破壊されちゃったか……仕方ない。ターン終了だよ」
「あたしのターン。《デス・ハンズ》を召喚、《グレンモルト「覇」》を破壊する」
返しのターンには、あっさりと破壊される《グレンモルト「覇」》。場に残せれば、次々とドラグハートを呼び出してプレッシャーをかけられたのだが、そう上手くはいかないようだ。
そしてそれは、なにもクリーチャーを除去することだけではない。
圧力をかけられるのは、なにも一騎だけとは限らないのだ。
「あたしの墓地にクリーチャーは十一体。よってマナコスト−11! 1マナで《暴走龍 5000GT》を召喚だ!」
余ったマナから、最大まで軽量化した《5000GT》が、数多の屍を踏み越えて現れる。
これは、一騎にとって非常にまずいことになった。
「《5000GT》が場に出たことで、あたしの《デス・ハンズ》二体は破壊されるが、関係ない。《5000GT》で《ガイラオウ》を攻撃!」
《ガイラオウ》のパワーは11000、《5000GT》のパワーは12000。ギリギリのパワー差で、《ガイラオウ》が破壊される。
「これって、いつきさん、とてもピンチなんじゃ……」
「だろうな。このタイミングでの《5000GT》はきつい」
《5000GT》がいる限り、誰もパワー5000以下のクリーチャーが召喚できない。一騎は《ジョニーウォーカー》や《ロイヤル・アイラ》はおろか、《フィディック》、そして《グレンモルト》といった、ドラグナーも召喚できなくなってしまう。
これで一騎は、《グレンモルト》から《ガイハート》で奇襲する戦法は使えなくなった。
「……《フェアリーの火の子祭》を唱えるよ。山札の上から二枚を見て……片方をマナへ。火のカードだったから手札に戻して、もう一度唱える。ターン終了だ」
「動けなかったか。とりあえずは助かったな」
ドラグナーだけなら、先ほど出された《グレンモルト「覇」》もいるため、安心はできなかったのだが、上手く一騎の動きは止められたようだった。
「このまま押し切るぞ。あたしのターン、《煉獄と魔弾の印》! 墓地から《ロマノフⅠ世》を蘇生!」
一騎のシールドは残り三枚。《5000GT》がTブレイカーなので、なにを戻しても、打点は足りる。
「決めるぞ一騎。《5000GT》でシールドをTブレイクだ!」
ここでトリガーが出なければ、押し切ってミシェルの勝ちだ。
仮にトリガーが出たとしても、《5000GT》が睨みを利かせている状況だ。一枚のカードで二枚のシールドを割り切り、とどめを刺すことは難しい。
そう、難しいのだ。
「……S・トリガー」
難しい、だけで——
「《天守閣 龍王武陣》!」
——不可能、ではない。
「山札の上から五枚を捲るよ!」
「ここで《龍王武陣》か……お前はいっつも、いいところでいいカードを引くな」
「防御はトリガーに多く枠を割いてるからね。それなりに出てもらわないと」
言いながら一騎は山札を捲っていく。
一枚目、《爆熱血 ロイヤル・アイラ》
二枚目、《英雄奥義 バーニング・銀河》
三枚目、《爆砕面 ジョニーウォーカー》
四枚目、《暴龍事変 ガイグレン》
五枚目、《ボルメテウス・ホワイト・フレア》
「うん、最高の引きだ。《ガイグレン》を選択して、《ロマノフⅠ世》を破壊! マナ武装5で《ガイグレン》は手札に!」
「……ターン終了」
「俺のターン! 決めるのは俺の方だったね、ミシェル!」
「そうだな。だが、まだわからないぞ」
一騎はミシェルのマナに目を落とす。《地獄門デス・ゲート》。
まだミシェルにも、逆転の芽が残されている。
「これで決着だ! 《暴龍事変 ガイグレン》を召喚!」
一騎の切り札の一枚《ガイグレン》。マナ武装9は達成しているので、無限に攻撃できる。選べばバトルゾーンが吹き飛ぶおまけつきだ。下手なトリガーでは逆転には繋がらない。
しかしミシェルのデッキは、墓地回収とリアニメイトが豊富だ。《クロスファイア》を回収されたり、また《煉獄と魔弾の印》を唱えられたり、あるいは二枚目以降の《クロスファイア》や《5000GT》を引かれれば、即座に負ける。
もたもたしていては、どこで強襲されるかわからない。こちらに決められるだけの打点が揃っているなら、ここで決めるしかない。
《ガイグレン》が場に出た以上、あとは殴るだけだ。
「……《ガイグレン》でシールドをWブレイク!」
少し悩んでから、一騎はシールドへと攻撃する。《5000GT》の脇をすり抜け、残った二枚のシールドを叩き割る。
そして、
[! S・トリガー……!]
「来ちゃったか……!」
ここで《地獄門デス・ゲート》でも捲れようものなら、《ガイグレン》は破壊され、攻撃は止まる。選ばれた時に相手の場を殲滅できるが、《ホネンビー》を復活させ、《クロスファイア》を回収すれば、確実にとどめを刺される。
「…………」
しかし、ミシェルはそのカードをすぐには出さない。ジッと、見つめているだけだ。
いや、それは、出さないのではない。
“出せない”のであった。
「……最後のトリガーは《デス・ハンズ》だ。だが、《5000GT》がいるから出せない。あたしの負けだな」
「そっか……じゃあ、俺の勝ちってことで」
《5000GT》で召喚を制限したことが、仇となってしまった。ミシェルもトリガークリーチャーすらも、《5000GT》は制限してしまう。
《デス・ハンズ》が召喚できず、ミシェルは最後の攻撃を止められない。
「……勝ったと思ったんだがな」
ミシェルは自分の手札に目を落とす。
そこには、《クロスファイア》が握られていた。
「自分の首を自分で絞めて負けるとか、格好つかないな」
そう小さく呟いて、ミシェルは手札を伏せた。
そして、決着する。
「《ガイグレン》で、ダイレクトアタックだ!」