二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿3日目 「叡智を抱き戦場に立て8」 ( No.513 )
日時: 2016/10/20 23:54
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 Bブロック一回戦、空護と美琴の対戦が終了する。
 勝者は、黒月美琴だ。
 対戦が終わった直後に訪れる静寂。しばらくして、パチパチと手を叩いたのは、
「まずは二人とも、お疲れさま。いい対戦だったよ」
 二人の健闘を称え、労う一騎。
「ありがとうございます……まあ、僕は負けましたけどねー」
「それでもいい対戦だったよ。誇っていい」
「そうね。文句なし、掛け値なしで、最高の一戦だったわ」
「でもやっぱり、最後の《バロム・モナーク》の自力復活に、すべてを持っていかれました」
 それについては、皆が同意する。
 自分自身の能力で、同一処理中に破壊された自身を復活するという、型破りな蘇生法。
 そのインパクトからの追撃で勝利したのだから、それも含めていい対戦だったと言えるだろう。
 ただ、
「自分の能力で破壊された自分を復活なんて、本当にできるの?」
 ルール上の問題として、疑問を抱く者もいた。
 それについては、一騎が説明する。
「クリーチャーのバトルにおける処理順序は、公式のルールで決まっているんだ。ややこしいから、一つずつ順番に説明するよ。まずは、バトルが発生。その時に、バトル時に発生する能力が発動する。ハンティングとか、バトル中にパンプアップする能力とかだね」
 ちなみに、このバトル時に発生する能力にも、細かく処理順番が決められていたりする。具体的には、ハンティングなどのバトル中の継続的効果が一番目、《死神術士デスマーチ》や《恐気の覚醒者ランブル・レクター》などのバトル時の常在型能力が二番目、《電磁無頼アカシック・サード》などのバトルする時に発動するトリガー能力が三番目だ。これらが、アクティブ・プレイヤー、非アクティブ・プレイヤーの順番で処理される。
「バトル時の能力がすべて解決されたら、次はパワー比べで勝敗を決定するよ。この時に、《バロム・モナーク》の「バトルに勝った時」に発動するトリガー能力が誘発するけど、ここでは一旦待機されて、次の破壊処理に移るよ」
 つまり、勝敗が決した段階では、《バロム・モナーク》の「バトルに勝った時」の能力は、まだ処理されないので、リアニメイトは発生しない。
「勝敗が決定した後は、バトルに負けたクリーチャーを破壊する。いわゆるモヤシ能力とか、エターナル・Ωとかの置換効果を持つクリーチャーは、ここでその能力を解決するよ」
「ん? 破壊する……ってことは」
「そう。ここで、「破壊された時」のトリガー能力が誘発するんだ」
「つまり、「バトルに勝った時」と「破壊された時」、《バロム・モナーク》と《ベル・ヘル・デ・ガウル》、二つの能力が誘発し、どちらも効果の解決が待機された状態になるわけだな」
 そしてその後は、それらの効果を解決する段階へと移行するのだが、この効果処理の順番にも、ルールがある。
「同時に効果処理をする場合、そのターンを進行するプレイヤー——いわゆるアクティブ・プレイヤーが、同時発生している効果から好きな順序で効果を解決できるんだ。それに加えて、トリガー能力の解決中に別のトリガー能力が誘発した場合は、同時に誘発したものとして扱われるというルールもある」
 これらを踏まえて、今回のケースを見てみる。
 《ギガアニマ》が《ポーク・ビーフ》とのバトルに勝ち、《ポーク・ビーフ》を破壊した時、《バロム・モナーク》と《ベル・ヘル・デ・ガウル》の二つの能力が解決される状態にあった。美琴は最初に《ベル・ヘル・デ・ガウル》の能力を解決し、それによって《デスライオス》の能力が新しく待機状態となった。美琴は《バロム・モナーク》よりも《デスライオス》の効果を先に処理した。そして最後に《バロム・モナーク》の効果処理を行う時、《バロム・モナーク》は《デスライオス》に破壊されて墓地に移動していたので、自身の能力で自身を復活させた、というわけだ。
 蓋を開ければ特別なことはなにもない。《バロム・モナーク》《ベル・ヘル・デ・ガウル》、《ベル・ヘル・デ・ガウル》の能力で出て来た《デスライオス》。これら三体の効果処理の順番を少し工夫しただけである。
「ということよ。わかった、あなたたち?」
「……まあ、大体は……」
「うーん? トリガー……効果処理……?」
「ごめんなさい、よくわからなかったです……」
 しかし、肝心の理解できていない組は、ほとんどわかっていなかった。
「要するに、「バトルに勝った時」に発動する能力と「破壊された時」に発動する能力は好きな順番で発動できて、これらの能力で新しく発生した能力も、好きな順番で発動できるってことよ。だから《ガウル》の能力を使う→踏み倒された《デスライオス》の能力を使う→《バロム・モナーク》の能力を使う、っていう順番で、効果を解決できるってわけ」
「なるほどー、そっちの説明の方がわかりやすいね」
「……ごめん、わかりにくくて」
「いや、複雑な効果処理の話ですし、正確な情報で説明するのが筋ですよ。一騎さんは間違ってません」
 と、浬が一騎の肩を持つようなことを言うと、沙弓が悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「カイはまたすぐそうやって一騎君に媚びるんだからー」
「媚びてねぇよ!」
 思わず声を荒げて怒りを露わにする浬。
 流石に怒った。
「……それはそれとして、剣埼先輩。それと、四天寺先輩も。部長就任の件につきましては、また後日、ゆっくりとお話ししましょう」
「あ、うん……わかったよ」
 対戦にはかったが、部長就任には納得しきれていない美琴は、圧力のかかった眼差しで一騎らを睨むように見据える。
 この合宿の後、彼らの間で一悶着があったりなかったりするが、それはまた別のお話。
 今は、二校合同トーナメントの真っ最中。そして次は、Bブロック第二回戦。
 浬と柚の対戦だ。
「まあ、さっきの対戦の後だと、見劣りするかもしれんがな」
「別にさっきの対戦と比較することなんてないと思いますけどねー」
「そうそう。自分の思う通りのプレイングをすればいいんだよ。浬君は、いつもそうだったと思うけど?」
「……そうでしたね」
 空護と一騎、二人からの言葉を受けると、浬は既に準備を始めている柚に向き直った。
「じゃあ、やるか、霞」
「は。はひっ。よろしくおねがいします……」
 Bブロック、第二回戦。
 浬と柚の対戦が、開始した。



霧島 浬
〜結晶魔術の定理〜

vs

霞 柚
〜森の妖精さんと恐竜さん〜