二次創作小説(紙ほか)
- 番外編 合同合宿3日目 「叡智を抱き戦場に立て10」 ( No.515 )
- 日時: 2016/10/22 01:58
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
「はうぅ、負けちゃいました……」
「なーんか、あっさり終わったわね」
「これでも結構危なかったぞ。タイミングよく《スパイラル・ハリケーン》を撃てたからいいものの、一手遅れたら死にかねない数だった」
対戦中こそは平静を保っていた浬だが、実際には見た目以上にギリギリな対戦だったのだ。経験が最も浅いとはいえ、柚も今までに相当数の場数を踏んでいる。流石に舐めてかかれる相手ではない。
「さて、Bブロックの対戦も終わったし、次で最後のブロック、最後の対戦ね」
一回戦で残っているのは、唯一人数が二人だけのCブロック。このブロックは二回戦シードとなっており、一回戦を突破すれば、二回戦が免除される。
そして対戦するのは、沙弓と恋だ。
早速対戦準備を始める中、ふと沙弓が言った。
「そういえば、れんちゃんと対戦するのって、これが初めてよね」
「……ずっと気になってたんだけど……れんちゃんって、私のこと……?」
「そうよ。恋だかられんちゃん」
「…………」
恋の名前は訓読みで「こい」と読むが、沙弓は恐らく“恋”という字を音読みしただけなのだろう。
ひねりがあるようでないようなセンスに、恋は微妙な目線を彼女に向けることしかできなかった。
そうこうしているうちに、対戦準備が整う。
Cブロック一回戦にして、第一回戦の最終戦。沙弓と恋の対戦。
対戦開始だ。
卯月 沙弓
〜ブラック・マジック・カーニバル〜
vs
日向 恋
〜天門の向こう側へ—天命の槍を添えて—〜
超次元ゾーン:沙弓
《時空の悪魔龍 ディアボロス ΖΖ》×1
《時空の封殺ディアスΖ》×1
《勝利のガイアール・カイザー》×1
《時空の凶兵ブラック・ガンヴィート》×1
《勝利のリュウセイ・カイザー》×1
《勝利のプリンプリン》×1
《時空の英雄アンタッチャブル》×1
《時空の喧嘩屋キル》×1
超次元ゾーン:恋
《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》×1
《百獣槍 ジャベレオン》×1
《不滅槍 パーフェクト》×1
《浮遊する讃美歌 ゾディアック》×2
《神光の龍槍 ウルオヴェリア》×1
《革命槍 ジャンヌ・ミゼル》×2
沙弓と恋の対戦。
お互いにシールドは五枚。
沙弓は《特攻人形ジェニー》を撃ち、《ボーンおどり・チャージャー》で下準備を整えている。
恋は《制御の翼 オリオティス》《聖龍の翼 コッコルア》を並べていた。しかし手札が切れており、息苦しそうにしている。
「ん……いいところに……《ジャスティス・プラン》……」
「あちゃ。手札補充されちゃうか」
せっかくハンデスしたが、手札を増やされると沙弓としては少し面倒だった。
「《龍覇 エバーローズ》と《音感の精霊龍 エメラルーダ》を手札に……ターン終了」
「《オリオティス》がいるから、サイキックが出せないのよねぇ……とりあえず《特攻人形ジェニー》を召喚して破壊、手札を捨ててもらおうかしら」
「《エメラルーダ》が……」
恋の規制によって、沙弓の行動も控えめだ。手札を一枚落とすだけで、ターンを終える。
「私のターン……マナチャージ、ターン終了」
「私のターンね。《超次元リバイヴ・ホール》を唱えるわ。墓地の《ジェニー》を回収して、《勝利のリュウセイ・カイザー》をバトルゾーンに」
「タップイン……やらしい」
「そういうデッキだからね。ターン終了よ」
既にマナには六枚のカードがあるので、《オリオティス》がいても《勝利のリュウセイ・カイザー》は出せる。
これで鈍足な恋の足をさらに遅くして、その隙に妨害と、フィニッシャーを繰り出す準備を整える算段だ。
「醤油のせいで出せない……《エバーローズ》をマナに……呪文《エンジェル・フェザー》」
「また手札補充かぁ」
「これくらいしか、できないし……《ヘブンズ・ゲート》と《天英雄 ヴァルハラ・デューク》を手札に……ターン終了」
「私のターン。とりあえず、《ジェニー》を撃ち込もうかしらね」
「ん……《ヘブンズ・ゲート》が……」
「当たりの方が落ちたわね。ターン終了よ」
「まあ、手札がないときに《ヘブンズ・ゲート》握ってても、使うタイミングはなさそうだがな」
それが光単色の辛いところである。
手軽な手札補充手段が多くないので、一度手札が切れると、《ヘブンズ・ゲート》の弾がなくなるのだ。
「でも、恋のデッキは《ヘブンズ・ゲート》だけじゃないからね。大丈夫だよ」
暁がそう言うと、その言葉に導かれるかのように、恋は引いた。
天門ではない方の、彼女の切り札を。
「来た……《龍覇 エバーローズ》を召喚」
それは、ドラグナー。
恋のデッキは、天門であり、ドラグナーのデッキ。二つの戦術を使い分け、時に折衷し、合わさる。
手札が切れてもドラグハートは呼べる。今引きの《エバーローズ》から、恋は一つの武器を呼び寄せる。
「《百獣槍 ジャベレオン》を装備……ターン終了」
恋は今引きの《エバーローズ》に、迷わず《ジャベレオン》を装備する。
《ジャベレオン》が装備対象に付与するのは、破壊耐性。さらにその破壊耐性を発揮するためには、シールドを一枚手札に加える必要がある。
これは裏を返せば、破壊を免れつつ、シールドを手札にできるということでもある。破壊を防ぎつつ、その行為が手札補充になるのだ。除去手段が破壊しかなく、ハンデスで動きを縛ってくる沙弓に対しては、かなり効果的だろう。
「でも、ここからなら、まだまだ問題ないわね。《永遠の悪魔龍 デッド・リュウセイ》を召喚」
「む……」
「《デッド・リュウセイ》の登場時、相手クリーチャーを一体破壊するわ。《コッコルア》を破壊よ」
「結局、まったく仕事しなかった……」
「さらにクリーチャーが破壊されたから一枚ドロー。ターン終了」
「沙弓ちゃんはここで手札補充かぁ。上手く進んでるなぁ」
場に出てから、一度もコスト軽減の働きをしなかった《コッコルア》が破壊される。むしろ、今までなぜ生き残っていたのか。
そして、沙弓はドローソースの一つである《デッド・リュウセイ》から知識を得る。闇単色も、決して手札の管理が得意なわけではないので、この置きドローの存在は大きい。
「私のターン……《龍覇 セイントローズ》を召喚……《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》を設置」
「あらら。面倒くさいのが出ちゃったわね」
「手札がないからマシだが、これは面倒どころのものではないと思うがな……」
「メガネは使ったことないからわからないだろうけど……手札がない《ヘブンズ・ヘブン》は思った以上にただの置物だから……」
「……そうかよ」
ならなんで出したんだ、と言おうとしたが、下手に突っ込んで刺激すると面倒な反感を買いそうだったので、黙した。
「……ターン終了」
手札がないので踏み倒しこそできないが、これで沙弓が唱える呪文のコストは1増加する。マナが増えた終盤では大きな影響はないが、計算が狂うので、地味に面倒ではある。
「おっと、ここでこのカードが来るのね。ごめん、ちょっと考えさせて」
「ん、わかった……」
引いてきたカードを見て、思案する沙弓。
手札をじっと見つめ、一、二分ほど考え込むと、手札のカードをスッと引き抜いた。
「……よし。まずは安全運転。《ヘブンズ・ヘブン》でコストが1増えて、6マナ。呪文《生死の天秤》よ。《オリオティス》のパワーを5000下げて破壊。これでターン終了」
「私のターン……《聖鐘の翼 ティグヌス》を召喚……ターン終了」
「やることなくて暇そうね」
「手札ないし……つまらない」
「だろうな。ハンデスコンはこれだから嫌いだ」
「私のデッキ、言うほどハンデスしないけどね」
なんにせよ、恋は沙弓のハンデスで制されて、動きを封じられてしまっている。
龍解するにしても遠く、手札がないため山札の一番上を投げつけるだけの作業だ。面白いはずがない。
もっとも沙弓のデッキは、相手をそういう、面白くない状況、に引き込むデッキなのだが。
「《地獄門デス・ゲート》で《セイントローズ》を破壊して、墓地から《ホネンビー》を復活。山札を三枚捨てて、《ウラミハデス》を回収よ。で、ターン終了ね」
「私のターン……ここで《ヘブンズ・ゲート》はいらないし、マナチャージしてターン終了」
「じゃあ、私は《ボーンおどり・チャージャー》を唱えるわ」
山札の上から二枚を墓地に置く。
墓地に落とされたカードを見て、沙弓はふっと微笑んだ。
「ふふ、いいカードが落ちてくれたわね。じゃあ今度は、賭けてみようかしら。《呪英雄 ウラミハデス》を召喚。マナ武装7発動よ。墓地から《凶英雄 ツミトバツ》をバトルゾーンへ」
「《ツミトバツ》……」
「《ツミトバツ》のマナ武装7も発動。相手クリーチャーすべてのパワーを−7000!」
マナ武装によって、《ツミトバツ》は強烈な全体除去を放つ。
恋は沙弓の妨害によって、大型クリーチャーを出せていない。クリーチャーすべてが、《ツミトバツ》の射程に収まっている。
「《エバーローズ》に装備された《ジャベレオン》の能力……破壊される代わりに、シールドを一枚、手札に加える……」
「でも、パワー低下は継続中よ。破壊してもらうわ」
「……もう一枚、シールド回収……」
「え? クリーチャーは破壊されるのに、まだシールドを手札に戻すの?」
「手札補充だろ。部長のハンデスで動きをかなり縛られたからな。自分の肉を切り落としてでも、逆転手を探るつもりなんだ」
守りを知識に変換し、反撃の芽を見出そうとする恋。
その分、守りは薄くなるが、元々防御は得意分野だ。減ったシールドもまた戻せる。
恋はシールドを二枚だけ手札に加えて、《エバーローズ》を破壊する。
そして、恋のターン。
「呪文……《ヘブンズ・ゲート》」
「あちゃー……」
「来た! 恋の必勝パターン!」
返しのターン、恋は遂に《ヘブンズ・ゲート》を唱える。
《ジャベレオン》で回収したシールドにあったのか、今引きなのかはわからないが、なんにせよ、手札が増えたこのタイミングでの《ヘブンズ・ゲート》は、沙弓にとってはあまりよくない。
「必勝って言うには、ちょっと微妙だけど……《音感の精霊龍 エメラルーダ》と《龍覇 エバーローズ》をバトルゾーンに……《エメラルーダ》の能力で、シールドを回収……《エバーローズ》に《ジャベレオン》を装備」
「思ったより大きいのは出なかったけど、少し面倒そうね……」
「ターン終了……その時、《ヘブンズ・ヘブン》の効果で、手札から《蒼華の精霊龍 ラ・ローゼ・ブルエ》をバトルゾーンに……さらにターン終了時に私のシールドが三枚以下だから、《ジャベレオン》の龍解条件成立……2D龍解して、《百獣聖堂 レオサイユ》に」
恋はさらに《ラ・ローゼ・ブルエ》も並べ、《ジャベレオン》を《レオサイユ》へと龍解。防御を固める。
「これで恋は、次のターンには《ヘブンズ・ヘブン》を龍解させられる……」
「しかも、除去しようにも《レオサイユ》がある。無理に除去しようとすればシールドを犠牲に守られるし、それで下手にシールドを削れば、《レオサイユ》まで龍解する」
《ヘブンズ・ヘブン》の龍解を阻止するために、クリーチャーを除去したい。しかし、中途半端な除去は《レオサイユ》の龍解を手助けすることになってしまい、むしろ逆効果だ。
こうなると、沙弓としては盤面のコントロールが厳しくなる。
「うーん、いい感じの除去カードもないわね……」
ここでまた《ツミトバツ》のような大きなパワー低下を発生させられれば、かなり盤面は有利にできたかもしれないが、それも都合よく引けるはずもない。
「となると……決めるしかないか」
ここで下手に引き伸ばすのは悪手と考え、沙弓は手札のカード二枚を引き抜く。
この勝負を決定づけるカードを、呼び出すために。
「あんまりスマートなやり方じゃないけど、仕方ないわね。呪文《リバイヴ・ホール》&《ミカド・ホール》!」
「超次元呪文……二枚……」
「これは決まったかな」
このタイミングで二枚の超次元呪文。それがなにを意味するかくらい、誰もが理解していた。
「《リバイヴ・ホール》でコスト5以下のサイキック・クリーチャー、《勝利のプリンプリン》を。《ミカド・ホール》でコスト9以下の闇のサイキック・クリーチャー、《勝利のガイアール・カイザー》をバトルゾーンに!」
一度に二枚の超次元呪文を唱え、沙弓は二体のサイキック・クリーチャーを一気に展開する。
呼び出されたのは、勝利シリーズのサイキック・クリーチャー。そして沙弓の場には既に、《勝利のリュウセイ・カイザー》がいる。
よって、
「V覚醒リンク! 《唯我独尊ガイアール・オレドラゴン》!」
三体のクリーチャーは一体のクリーチャーとして覚醒し、リンクして、サイキック・スーパー・クリーチャー、《唯我独尊ガイアール・オレドラゴン》となる。
「《プリンプリン》の能力で《ラ・ローゼ・ブルエ》をロックよ。そして《勝利のガイアール・カイザー》の能力で、このターン《オレドラゴン》はアンタップキラーよ」
「むぅ……」
「ここは無理やり押し切るわ。《オレドラゴン》で《エメラルーダ》を攻撃!」
「ブロックは……しない」
《ラ・ローゼ・ブルエ》の動きを封じ、直接《エメラルーダ》を殴ることでブロックもさせない。《ラ・ローゼ・ブルエ》の能力を発動させることなく、沙弓は恋を殴りつける。
「バトルに勝ったからシールドを二枚手札へ!」
「……トリガーは、ない……」
自らシールドを減らしたことが仇となり、恋は残り二枚のシールドを薙ぎ払われてしまう。《レオサイユ》の効果も、《オレドラゴン》がバトルに勝った時点でシールドがなくなってしまうため、発動できない。
ブロッカーは無意味で、トリガーもない。恋の防御網は、完全に突き崩されてしまった。
「《唯我独尊ガイアール・オレドラゴン》でダイレクトアタックよ」