二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿3日目 「叡智を抱き戦場に立て12」 ( No.517 )
日時: 2016/10/22 23:00
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 《スコッチ・フィディック》の自爆特攻の甲斐あって、《銀河大剣 ガイハート》が《熱血星龍 ガイギンガ》へと龍解し、ひっくり返る。
「《ガイギンガ》の龍解時の能力で、パワー7000以下の《バトラッシュ・ナックル》を破壊するよ! さらに《ガイギンガ》で《バクアドルガン》を攻撃だ!」
 龍解時能力で《バトラッシュ・ナックル》を、殴り返しで《バクアドルガン》を破壊し、暁の場のクリーチャーを殲滅するが、それでも倒しきれていない。
 暁の場にはまだ、《バトライオウ》と《バトライ武神》が残っている。
「私のターン……一騎さん対策の秘密兵器は使うまでもなかったなぁ」
「俺対策?」
「そう言えば、なんかそんなこと言ってたわね」
「そーなんだよね。私がサイキックを入れてるのは、一騎さんのためなんだよ」
 言って、暁は手札のカードを引き抜く。5マナタップした。
「呪文《超次元シューティング・ホール》! 《勝利のリュウセイ・カイザー》をバトルゾーンに!」
 暁が唱えたのは、八戦でも見せた超次元呪文。ただし、火力の《ボルシャック・ホール》ではなく、ブロッカー除去の《シューティング・ホール》だ。
 だが問題なのは、呪文ではない。どちらの呪文でも、この場では関係ない。
 重要なのは、呼び出されるクリーチャーの方。現れたのは、《勝利のリュウセイ・カイザー》だ。
「醤油……あぁ、マナを縛って、切り札の登場を遅らせるんだね」
「そうです。その隙に、私の切り札を先に出しちゃおうってつもりでした」
「なんか思ったよりもしょぼいわね」
「秘密兵器という割には普通だな」
「うるさいな。なんにしたって、こんなことしなくても、私が先に切り札を出せたんだから」
「それについては反論できないね……」
 一騎が加速するより早く暁が加速したため、一騎は完全に後れを取っている。
 そしてその後れが、今や命取りになっているのだ。
「さぁ、決めちゃいますよ! 《バトライ武神》で攻撃! 能力発動!」
 《バトライオウ》と《バトライ武神》。残りシールド三枚の一騎は、この時点で即死圏内に入っているが、暁はさらにダメ押しの追撃をかける。
 《バトライ武神》の攻撃によって、山札の上から三枚が捲られ、その中のドラゴンとヒューマノイドが出て来る。
 いつもよりもドラゴン比率が低いはず。だから、捲られるカードがドラゴンの確率も、いつもよりも低いだろう。
 暁は、そんな希望的感想をぶち破るように、捲ったカードを公開した。
「《熱血龍 バクアドルガン》! 《爆竜 GENJI・XX》! 《龍世界 ドラゴ大王》! 全部ドラゴンだよ!」
「うわ……!」
「相変わらずえげつない引きしてるわね」
 捲られたカードはすべてドラゴン。それにより、暁のクリーチャーはすべてスピードアタッカーになる。
 ダメ押しどころか、オーバーキルの打点が揃ってしまった。
「さぁ、《バトライ武神》でTブレイクだよ!」
 《バトライ武神》が一騎の残ったシールドをすべて薙ぎ払っていく。
 《ドラゴ大王》がいるため、S・トリガーを引いてもドラゴンでなければ場に出せない。呪文でも、一体や二体除去した程度では止まらない。
 暁の場にいる六体のドラゴンは、簡単には止められない。
「……暁さん」
「え? なに、一騎さん?」
 シールドを捲りながら、ふと一騎は暁に呼びかける。
「暁さんが俺の対策をしていたように、俺も暁さんへの対策をしてたんだよ」
「私への、対策?」
「正確には、暁さんだけじゃないんだけどね。俺の見立てでは、東鷲宮も烏ヶ森も、クリーチャーを展開して勝つ人が多いと思うんだ」
 暁の《バトライ武神》からの展開力もそうだが、恋は《ヘブンズ・ゲート》、柚は連鎖類目のクリーチャーたちでクリーチャーを大量展開する。
 浬や沙弓も、盤面をコントロールしつつ、場数を並べてアドバンテージを取っていき、最終的に盤面にクリーチャーが多く並ぶ。
 ロマノフサインで横並びにクリーチャーを展開しながら殴るミシェル、死神を絶え間なく呼び出す美琴、《グレイテスト・シーザー》のための進化元を並べる空護に、小型ハンターを連打する八。
 方法、種類、程度こそ様々だが、確かにクリーチャーを多く展開する、クリーチャーの展開がメイン、という意味では、合宿参加メンバーは皆、その通りだ。
 そんな皆に対して、一騎が選んだ対策。
 それは、

「S・トリガー——《アポカリプス・デイ》」

「うぇ……!?」
 一騎のシールドから捲られたトリガーに、顔を歪める暁。
 当然と言えば当然の反応だろう。マナ加速のための自然のカードを入れた準赤単デッキに、光のS・トリガー、それも使いどころが限定される《アポカリプス・デイ》が入っているだなんて、思いもしない。
「わざわざマナ加速カードを削って、赤の比率を下げてまで、猛攻を止めるカードを入れたんだ。きっちり仕事はしてもらわないとね」
「……そういやあいつ、《天守閣 龍王武陣》で《ボルメテウス・ホワイト・フレア》を捲ってたな……」
 ふと前の対戦を思い返すミシェル。
 あの時はあまり気にしていなかったが、一騎のデッキには少量だが光のカードも入っている。この《アポカリプス・デイ》も、そのうちの一なのだろう。
「もー! なんで《バトライ武神》が出せた時に限って、みんな《アポカリ》なんて撃つのさー!」
 場は一掃され、まっさらな状態となった。喚く暁を置いて、一騎は自分のターンを進める。
「俺のデッキなら、たとえ1ターンでも攻撃できる隙が生まれれば、押し込める可能性がある……この1ターンは大事にするよ。俺のターン!」
 しかし、場をリセットしたとはいえ、一騎の手の中に勝負を決めるようなカードはない。暁の場にはまだ《バトライ閣》があり、そうでなくとも一騎はシールドがないのだ。スピードアタッカーを引かれるだけで負けてしまう。
 となると、やはり多少は賭けなくてはならないようだ。
「《ジョニーウォーカー》を召喚! 即破壊してマナを追加! 続けて《天守閣 龍王武陣》だ!」
「クリーチャーがいないのに、除去カード、ですか……?」
「いや……つきにぃのこれは、サーチ目的……」
 そう。恋の言う通り、一騎は《天守閣 龍王武陣》をサーチカードとして使う。
 マナ武装5は達している。なので、ここでフィニッシャーが捲れれば、次のターンにとどめが刺せる……かもしれない。
 こればっかりは運なので、実際に捲ってみなければ、どう転ぶのかはわからない。
 一騎は一気に五枚のカードを捲っていく。
 《斬英雄 マッカラン・ボナパルト》《フェアリーの火の子祭》《焦土と開拓の天変》《ボルメテウス・ホワイト・フレア》——
「——来たよ! 《ガイグレン》を手札に!」
「あのカードは……ま、まずいよ……!」
 一騎が手に入れたのは《ガイグレン》。一度動き出せば止まらない、一騎の奥の手。
 次のターンには一騎のマナは9マナになる。暁は返ってきたこのターンにどうにかしなければ、ほぼ敗北決定だ。
「ここでスピードアタッカーが引ければ……うぅ、引けないし。《バトライオウDX》を召喚して、ターン終了だよ。あとはトリガー頼みかぁ……」
 スピードアタッカーを引いたら簡単に勝ちだったが、そう上手くはいかない。
 トップから引いた《バトライオウDX》を一応召喚して、暁はターン終える。
「一気に決着をつけるよ! 俺のターン! 9マナタップ!」
 スピードアタッカーによる強襲もなく、一騎にターンが返ってきた。
 こうなれば、一騎は己の勝利ルートを突き進むだけだ。
「《暴龍事変 ガイグレン》を召喚! 《ガイグレン》で攻撃する時に、マナ武装9発動! 《ガイグレン》をアンタップしてWブレイク!」
「S・トリガー……《バトクロス・バトル》が来たけど、これじゃあ倒せない……」
「二撃目! 攻撃してアンタップ! シールドをWブレイク!」
「S・トリガー《天守閣 龍王武陣》!」
 暁は二回目のWブレイクで、《天守閣 龍王武陣》を引き当てる。
 これでなにか、逆転につながるカードが引ければ、と山札を捲っていく。
 捲った五枚は《コッコ・ルピア》《メテオ・チャージャー》《超次元ボルシャック・ホール》《インフィニティ・ドラゴン》《勝利天帝 Gメビウス》。
「! これだ! 《勝利天帝 Gメビウス》を選ぶよ! パワーは12000!」
「だけど、《ガイグレン》は二回攻撃してる。攻撃のたびにパワーが3000ずつ上がっていくから、今のパワーは17000だよ」
「そうだった! これでも止められないか……」
 とりあえずマナ武装5で《Gメビウス》を手札に加えるが、どうしようもない。
 《ガイグレン》は攻撃するたびにパンプアップし、火力ではまず破壊できない。このままでは《ガイグレン》の暴走を止めることなく、そのまま押し切られてしまう。
「三撃目だ! 《ガイグレン》で攻撃して、マナ武装9でアンタップ! 最後のシールドをブレイク!」
 そして、暁の最後のシールドがブレイクされる。
 その時だ。
「……! 来た! S・トリガー《イフリート・ハンド》だよ!」
「っ、三枚目のトリガー……!」
「コスト9以下のクリーチャー、《ガイグレン》を破壊!」
 最後のシールドから放たれた《イフリート・ハンド》が、《ガイグレン》を破壊し、その猛攻を食い止める。
「っ、まずい……! けど、《ガイグレン》が選ばれたから、《ガイグレン》以下のパワーを持つ相手クリーチャーをすべて破壊するよ!」
 《ガイグレン》もタダではやられない。選ばれたことで暁の場を一掃する。
 だがそれでも、再び暁にターンを返してしまったのは、一騎にとっては大きな痛手だ。シールドもブレイクして、手札を増やしてしまったので、シールドブレイクと今引きで、スピードアタッカーを引かれている可能性がグンと高まる。
「私のターン! やったね! これで逆転——」
 と、暁は喜び勇んでカードを引き、手札からカードを引き抜こうとする。するが、そこで動きが止まった。
 自分の手札をジッと見つめて、そして、

「——できないじゃん」

 ズンッ、と重い一言を吐き出した。
「うわぁぁぁ、スピードアタッカー一枚もないし! いや、あるけど、《Gメビウス》はマナが足りないよ……」
「……あれだけブレイクされても、一枚もないのか……」
「案外、スピードアタッカーの比率も下がっているのかもね」
「いやだが、超次元呪文一枚でも勝てるだろう、ここは」
 なんにせよ、暁がスピードアタッカーを引き入れられなかったのは、まごうことなき事実。
 ここでスピードアタッカーがなければ、次のターン、一騎もスピードアタッカーを出して反撃に出る可能性がある。そうでなかったとしても、そこから先はお互いにトップ勝負だ。胃袋に優しくない展開である。
「いや、でも、まだ可能性はある! 呪文《ネクスト・チャージャー》! 私の残った四枚の手札を全部山札に戻して、その枚数分ドローするよ!」
「手札交換か……まずいかもね」
「さらにチャージャーはマナに置くよ……これで、スピードアタッカーを引く!」
 チャージャーによって暁の残りマナは7マナ。《バルガライザー》などの8コストのスピードアタッカーは出せないものの、7マナであれば大抵のクリーチャーは出せる。
 暁のデッキの中身がどうなっているのかはわからないが、四枚も入れ替えれば、流石になにかしらは引けるだろう。
 そして、
「ひ、いたぁぁぁぁ!」
 手札を入れ替えた暁は、怒号のような大声を轟かせて、ありったけのマナを支払う。
「7マナで《撃英雄 ガイゲンスイ》! 召喚!」
「スピードアタッカー……やっぱり引いたのね」
「流石あきら……引く時はは引く」
 なんにせよ、ここでスピードアタッカーを引いた暁。これでゲームセットだ。
 暁は《ガイゲンスイ》に手を添える。
「マナ武装とかこうなったらどーでもいいよ! 《ガイゲンスイ》で攻撃! 《バトライ閣》は……《コッコ・ルピア》で不発だけど、関係ない!」
 もう、この一撃で、終わらせるのだから。
 そう思って暁は、声高らかに宣言する。
「《撃英雄 ガイゲンスイ》でダイレクトアタックだぁ!」
「ごめんね暁さん。ニンジャ・ストライク4で《ハヤブサマル》を召喚。自身をブロッカーにしてブロックだよ」
「えぇぇぇぇ!?」
 再び絶叫する暁。今回は、いつにも増してオーバーリアクションだった。
 暁の渾身の一撃は、あっけなく《ハヤブサマル》にブロックされてしまう。
「多少は《アポカリプス・デイ》を手打ちできるように、光タッチ気味になってるんだよね……というわけで、俺の勝ちだ」
「い、いや、まだ、スピードアタッカーが来ない可能性とか——」
「《次元龍覇 グレンモルト「覇」》を召喚」
「なかった!」
 一騎もしっかりとスピードアタッカーを用意していた。
 様々な防御に枠を割いた一騎と違い、暁の防御はS・トリガーのみ。シールドがない時点で、防御手段は尽きていた。
「《グレンモルト「覇」》で攻撃、マナ武装7で《覇闘将龍剣 ガイオウバーン》を装備して、《ガイゲンスイ》を破壊。そして——」
 ゆえに暁はこの一撃を防ぐことができず、

「——ダイレクトアタックだ」