二次創作小説(紙ほか)
- 番外編 合同合宿3日目 「叡智を抱き戦場に立て16」 ( No.521 )
- 日時: 2016/10/26 00:00
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
沙弓がブレイクしたシールド。そこから捲られたのは、浬が初めて見せる呪文。《龍脈術 水霊の計》だ。
「そのカードは……今まで入れてるのを見たことないわね……?」
「投入は今回が初めてだからな。《水霊の計》は、相手のカードを一枚、山札の下に送り込む……バウンスではないから、《セツダン》の耐性も効かない! 《セツダン》を超次元ゾーンに送還だ!」
「っ!?」
《水霊の計》の効果で、《セツダン》がデッキボトムを経由して、超次元ゾーンへと還される。
《セツダン》が付与する除去耐性は、サイキック・クリーチャーが手札に戻される場合のみ。つまり、バウンス耐性しか持っていない。
バウンスが水文明の主な除去手段と言っても、バウンスしか除去手段を持たないわけではない。山札の下への送還、手札以外への除去であれば、《セツダン》の能力は効かないのだ。
「だけど、もう一枚のシールドもブレイクよ! いくら《セツダン》を除去しても、もう遅いわ! 《オレドラゴン》も、《アンタッチャブル・パワード》も、もう止められない!」
「……トリガーはない」
《オレドラゴン》によって手札に加えられたシールドから出て来たトリガーは一枚だけ。
もう一枚は、手札に入る。
「結構粘ったけど、残念だったわね、カイ。最後のシールドを貰うわ。《オレドラゴン》で《アクア・サーファー》を攻撃!」
《オレドラゴン》の三度目の攻撃が繰り出される。対象は《アクア・サーファー》。浬のクリーチャーを殲滅し、最後のシールドを吹き飛ばそうとする沙弓だったが、
「舐めんな! ニンジャ・ストライク7! 《斬隠オロチ》を召喚!」
「っ!」
突如、浬の手札からシノビが飛び出す。
《斬隠オロチ》。クリーチャーを山札に戻すことで、転生させるシノビだ。相手クリーチャーの除去にも使えるので、今まで出てこなかったところを見ると、先ほどの疑似シールドブレイクで手札に入ったのだろう。
「《オロチ》の能力で、《アクア・サーファー》を山札に戻し、非進化クリーチャーが出るまで山札を捲る」
「そんな運任せで、果たして目当てのカードが出るかしらね?」
「知るか。出なかったら負けるだけだ」
《クローチェ・フオーコ》を出したことでで山札が多いので、狙ったカードを捲るのは難しい。しかし今は、この一枚に賭けるしかないのだ。
そして、浬は山札を捲っていく。
その一枚目で、銀色に輝くカードが姿を見せた。
「……ドンピシャだ。出て来い! 《龍素記号Sr スペルサイクリカ》!」
「っ、このタイミングで《スペルサイクリカ》を引くなんて……!」
「《スペルサイクリカ》の能力で、墓地から《英雄奥義 スパイラル・ハリケーン》を詠唱! 《オレドラゴン》を選んでバウンス!」
「リンク解除! 《勝利のガイアール・カイザー》だけを超次元ゾーンに戻して、残りの二体は場に残すわ!」
「無駄だ! マナ武装7発動! 部長のクリーチャーをすべてバウンス!」
「くぅ……!」
《セツダン》がいなくなった今、沙弓のサイキック・クリーチャーを守るものはいない。
すべてのクリーチャーが手札に押し戻され、そのまま超次元ゾーンへと還っていく。
「《アンタッチャブル・パワード》は選べないしブロックもされない。シールドがゼロになった時点であのクリーチャーを残してしまったらほとんど敗北確定だけど、対象を取らない全体除去なら、問題なく場から取り除ける」
手軽に全体除去が撃てるのも、青単の強み。それすらも妨害する《セツダン》が非常に厄介だったが、《水霊の計》が上手く働いてくれた。
なんにせよ、これで沙弓のクリーチャーは全滅。逆転に逆転を重ね、その逆転も逆転で上書きされてしまった。
「……ターン終了しかないわね、これは」
攻撃を完全に止められてしまった沙弓は、ターン終了を宣言することしかできない。
「俺のターン、《アクア呪文師 スペルビー》を召喚! 《エナジー・ホール》を回収し、呪文《エナジー・ホール》。カードを引き、《アンタッチャブル》と《マティーニ》をバトルゾーンへ! 《スペルサイクリカ》でダイレクトアタックだ!」
「悪いけど、私も悪足掻きくらいはさせてもらうわよ。ニンジャ・ストライク7! 《威牙の幻ハンゾウ》! 《スペルサイクリカ》のパワーを6000下げて破壊よ!」
「《スペルサイクリカ》は破壊される時、墓地の代わりに山札の下に戻る……さらにターン終了時、俺はコスト4以上のブロッカーを出しているため、《時空の踊り子マティーニ》を《舞姫の覚醒ユリア・マティーナ》に覚醒だ!」
浬は《ユリア・マティーナ》で、殴り手を増やしつつ、さらに防御も固める。
ブロックすればシールドが追加されて延命される。ブロッカーとして機能せずとも、攻撃可能なので、打点になる。
次のターンには沙弓を討つ準備を整えるが、
「きつい……でも、まだ勝機はあるわ。《墓標の悪魔龍 グレイブモット》を召喚!」
「そいつは……!」
「このクリーチャーがこんなに刺さる場面に出くわすなんてね。《グレイブモット》の能力で、相手のサイキック・クリーチャーのパワーを5000下げるわ!」
浬の場のサイキック・クリーチャーは、《アンタッチャブル》と《ユリア・マティーナ》。それぞれパワー1000と3000なので、呆気なく破壊されてしまう。
「まだまだ! 《ミカド・ホール》で《スペルビー》のパワーを−2000! そして超次元ゾーンから《勝利のガイアール・カイザー》をバトルゾーンに! ダイレクトアタックよ!」
「《スペルビー》でブロック!」
「ターン終了!」
「俺のターン。《エビデゴラス》の効果で追加ドロー、その後、通常ドローだ」
沙弓の場には《グレイブモット》と《勝利のガイアール・カイザー》。浬の場にはクリーチャーはゼロ。
ブロッカーで守りを固めても、簡単に除去されてしまいそうだ。かといって《勝利のガイアール・カイザー》を除去しても、超次元呪文一枚で簡単に戻ってきてしまう。《グレイブモット》が睨みを利かせているため、サイキック・クリーチャーも使いづらい。
またこちらに不利な盤面だが、浬は自分の手札を今一度見つめる。
——この手札であれば、問題ない。
「呪文《連唱 ハルカス・ドロー》! 効果で一枚ドローし、リサイクルでも唱え、さらにドローだ!」
さらに、
「《龍覇 メタルアベンジャー》を召喚! 《真理銃 エビデンス》を装備して、効果で一枚ドロー!」
「っ、まずい……!」
これで浬は、このターンにカードを五枚ドローした。
《エビデゴラス》の龍解条件成立だ。
「龍解! 《最終龍理 Q.E.D.+》!」
《エビデゴラス》は、何度沈んでも浮上する。
勝利の方程式を完成させるまで、何度でもだ。
「……決まったね」
静かに呟く一騎。
「はぁ……もう無理ね。降参よ」
それに同意するように、沙弓も息を吐いた。
これで、この準決勝戦の勝者が、決定する。
「《最終龍理 Q.E.D.+》で、ダイレクトアタック——!」