二次創作小説(紙ほか)

番外編 合同合宿3日目 「叡智を抱き戦場に立て18」 ( No.523 )
日時: 2016/10/31 23:58
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

トップ・オブ・ロマネスク 光/火/自然文明 (5)
クリーチャー:アポロニア・ドラゴン/アーマード・ドラゴン/アース・ドラゴン 3500
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
ブロッカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分の山札の上から2枚を、タップしてマナゾーンに置いてもよい。



「《トップ・オブ・ロマネスク》だと……!?」
「光はタッチ程度だと思ってたけど、そんなカードが入ってるってことは、意外とそこそこの数あるのかもね」
「ブロッカーを増やす目的かもしれないっす」
「あの一騎だからなあり得る」
 一騎が召喚したのは、《トップ・オブ・ロマネスク》。莫大なマナを生み出す《龍仙ロマネスク》をリメイクしたドラゴン。
 文明、種族などは《龍仙ロマネスク》のまま、5コストと軽くなり、それに合わせてパワーやチャージされるマナの枚数が減り、5コストで2マナ加速するという、一見すると淡白なスペックのクリーチャーに仕上がっている。
 ただし、単純であることはイコール弱いというわけではない。
 特に、一騎のデッキにおいては、この加速も大きな意味がある。
「《トップ・オブ・ロマネスク》の能力で、2マナ加速だ! ターン終了だよ」
「これで7マナ……次のターンには8マナか」
 このタイミングでこの加速は、浬としては困る一手だった。
「ここまで加速されると、《グレンモルト》に繋がる動きを阻害できない……」
「醤油のタップインがあっても、一騎君は次のターン、7マナ使えるわけだしね」
「《グレンモルト》どころか、《モルト「覇」》すら出て来る勢いですねー」
 素早くマナを溜められてしまい、マナを縛ることで動きを鈍らせる手はほとんど意味をなさなくなってしまった。
「だが、今さら計画の変更もできない……こっちも仕方ない。効果は薄いが、マナを縛るぞ。《超次元エナジー・ホール》! 一枚ドローし、《勝利のリュウセイ・カイザー》をバトルゾーンへ!」
 効き目があまりないとわかっていながらも、今の手札では路線変更はできない。浬は《エナジー・ホール》を唱え、《勝利のリュウセイ・カイザー》を呼び出して、ターンを終える。
「俺のターン7マナで《次元龍覇 グレンモルト「覇」》を召喚!」
「やはりか……!」
 一騎が返すターンで召喚するのは、当然《グレンモルト》。それも打点が高く、呼び出し先の幅が広い《グレンモルト「覇」》だ。
「さて、ここが少し考えどころか……うーん。じゃあ、《グレンモルト「覇」》で攻撃する時、マナ武装7発動! 《将龍剣 ガイアール》を装備して、《勝利のリュウセイ・カイザー》とバトルだ!」
「《ガイハート》じゃない……? だが、《ガイオウバーン》でもないなら、《スペルビー》でブロック!」
 《ガイオウバーン》を装備されていたらブロックしづらかったが、そうでないのなら《スペルビー》を防御に回せる。
 それでも、場が浬にとってかなり不利になってしまったのは確かだが。
「俺のターン! 呪文《幾何学艦隊ピタゴラス》! 《トップ・オブ・ロマネスク》と《グレンモルト「覇」》をバウンス!」
「そう来たかぁ。だったら、もう一度《トップ・オブ・ロマネスク》を召喚だ。2マナ加速!」
「《理英雄 デカルトQ》を召喚! マナ武装7で五枚ドロー! その後、手札とシールドを入れ替えます」
 返しのターン。
「一騎さん、どうして《グレンモルト「覇」》を出さないのかな? 《ガイハート》を出せば龍解できるのに」
「どうも剣埼先輩は、トリガーを警戒しているようね。カウンターを恐れているのかも」
「《ガイギンガ》が出ても、ギリギリでジャスキルできませんしねー」
「それでも龍解したら絶対に有利なんだから、龍解できそうならしちゃえばいいのになぁ」
 短絡的思考とも言えるが、暁の言うことももっともである。
 龍解できる可能性に賭けて殴ってしまう方が有利に感じられる。仮にトリガーで凌がれても、残り僅かなシールドを突き破りやすくもなるのだ。
「一騎を見るに、仮に耐えられてカウンターされても、すぐに立て直せるような状態になるまでリソースを得ることを重視して、不要な攻撃を控えている節はあるな。霧島の動きは鈍い。その隙に念入りに準備して、隙をなくし、その上で殴る気なのかもしれない」
「念には念を、っすか」
「霧島君はそんなに警戒されているんですねー……」
 徹底的に場を制し、最後の最後に攻撃する。その警戒っぷりはコントロールデッキのようでもあるが、しかし一騎の行動はコントロールのそれではなかった。
「俺のターン。《グレンモルト「覇」》を召喚! 攻撃する時にマナ武装7! 《覇闘将龍剣 ガイオウバーン》を装備して、《デカルトQ》とバトル!」
「あ、攻撃……」
「……意図が読めん」
「トリガー潰しでしょ、きっと」
「そんなに単純か?」
 それは、結果を見れば明らかだ。
「じゃあ、仕込んだシールドからブレイクするよ」
「ね?」
「…………」
 ミシェルは黙った。
 先にトリガーを仕込んだ可能性が高いシールドをブレイクするということは、十中八九そういうことなのだろうが、そこまで単純なのかどうかは、やはり疑問であったが。
「……S・トリガー、《英雄奥義 スパイラル・ハリケーン》! マナ武装7で、相手クリーチャーをすべてバウンス!」
「やっぱりそうかぁ。こういうトリガーを先に潰せてよかったよ」
「ほら見なさいシェリー、私の言った通りでしょう?」
「うぜぇ……」
 最後までしたり顔の沙弓を押しのけつつ、対戦に戻る。
 浬のターンだ。
「《龍覇 メタルアベンジャー》を召喚! 《龍波動空母 エビデゴラス》を設置! ターン終了!」
「遂に来たね、ドラグハート・フォートレス。だけどちょっと遅いかな。《グレンモルト「覇」》と《スコッチ・フィディック》を召喚! 《フィディック》の能力で、《天守閣 龍王武陣 —闘魂モード—》を設置するよ!」
「ドラグナー……しかも二体か」
 バウンスした《グレンモルト「覇」》が戻ってくるのは想定内だが、他のドラグナーまで引き連れて来るとなると、少々面倒だ。下手をすれば、物量で押し切られかねない。
 ここで《グレンモルト「覇」》が出て来るということは、当然殴って来るものと浬は考えていたが、一騎はすぐには動かない。
「ここはどうしようか……ちょっと考えさせてね」
「はい。どうぞ」
 一言そう断ってから、一騎は考え込む。
 浬のシールドは残り三枚。一騎の場にはスピードアタッカーの《グレンモルト「覇」》と召喚酔いの《フィディック》。そして、《龍王武陣》。
 次のターンには《龍王武陣》が龍解し、打点が揃う計算だ。しかし、《グレンモルト》のアタックトリガーでドラグハートを出しておけば、さらにプレッシャーがかかる。
 そのリスクとしては、S・トリガーやシールドに埋まっているなにかしらのカードだ。このターンでは決められないので、なにかしらのキーカードを引かれて、カウンターされる恐れはある。
 強力なスピードアタッカーを多数抱える一騎には、青単の除去トリガーはあまり効果がない。ただし、沙弓との対戦で見せた《水霊の計》のようなカードもある。バウンスの効果が薄いと言っても、あまり油断はできない。カード指定除去であれば、ドラグハートも狙い撃ちにできるのだから、
 以上の要素に加え、他の様々な要因を考慮に入れて、一騎は結論を出す。
「……よし、決めた。殴るよ、浬君」
 その結果は、攻撃だ。
「《グレンモルト「覇」》で攻撃! その時、《ガイアール》を装備して《メタルアベンジャー》とバトルだ!」
「やはりクリーチャーを残させてはくれないか……!」
「Wブレイク!」
 《メタルアベンジャー》を蹴散らしつつ、《グレンモルト「覇」》が浬のシールドを砕く。
 《ガイアール》を装備したことで、《グレンモルト「覇」》が生き残れば、次のターンには《ガイバーン》に龍解しつつ、新たなドラグハートが出て来てしまう。
 さらに、もうシールドにトリガーは仕込まれていない。《グレンモルト「覇」》を処理できるかどうかはわからない。正直、これでシールドが一枚になってしまうだけで、かなり劣勢な状況だ。
 それでも、なのか。
 そうだから、なのか。
 浬は、“それ”を引いた。
「! S・トリガー……」
「踏んじゃったか、運がいいね。でも、バウンスじゃ俺には効き目が薄いよ」
「……バウンスだったら、よかったですね。一騎さん」
 コントロールと銘打っているわりに、浬のデッキは防御力が低い。
 それは制圧力が低いからということもあるが、根本から辿れば、水文明の性質上、相手のリソースを枯らすことが苦手だからだ。
 どれだけ知識を得ようと、水文明は非力で、その場凌ぎの小賢しい真似しかできない。
 ただしそれは、カード一枚一枚の性質だ。
 非力なものを組み合わせ、小賢しさを積み上げて、それは大きな力となる。
 その一手は一見して、それとはわからない。
 即ち、目的が不明な作戦である。

「呪文——《目的不明の作戦》!」

「! それは……」
 目を見開く一騎。
 想定外のカード。浬のデッキなら入っていてもおかしくないカードだというのに、頭から抜け落ちていた。
 可能性はすべて考慮したつもりだったが、考慮不足だ。バウンス程度なら大丈夫だろうと、詰めが甘かった。
 しかし、後悔する時には、もう遅い。、
「《目的不明の作戦》の効果発動! 墓地からコスト7以下の呪文を唱えます! 俺が唱えるのは……《龍素解析》!」
 墓地の呪文を再利用する《目的不明の作戦》。その効果によって、《スペルビー》によって墓地に落とされていた《龍素解析》が、再び詠唱される。
「俺の手札をすべて山札に戻し、四枚ドロー! そして手札から《龍素記号Sr スペルサイクリカ》をバトルゾーンへ!」
 《龍素解析》から《スペルサイクリカ》が現れる。言わずと知れた、呪文を再利用するドラゴン。《目的不明の作戦》と同じような挙動で、浬は墓地の呪文を連鎖させるように詠唱する。
「《スペルサイクリカ》の能力で、墓地から《超次元エナジー・ホール》を唱える! カードを一枚引き、《時空の喧嘩屋キル》《時空の英雄アンタッチャブル》をバトルゾーンへ!」
「キルタッチャか……」
「さらに、このドローで俺がターン中にドローしたカードが五枚に達した! 《エビデゴラス》の龍解条件成立!」
「え!? 《エビデゴラス》って、自分のターンにしか龍解できないんじゃないの?」
「えぇ。カードを五枚引きさえすれば、《エビデゴラス》はいつでも龍解するわ」
「ただ、ドローする機会が多いのが自分のターンだから、必然的に自分のターンに龍解することが多くなるってだけだな」
 吃驚する暁に、すぐさま説明を入れる沙弓とミシェル。
 《龍素解析》で四枚、《エナジー・ホール》で一枚、合計五枚。
 浬は一騎のターン中に、《エビデゴラス》の龍解条件を満たした。
 それにより、《エビデゴラス》が、ひっくり返る。
「龍解! 《最終龍理 Q.E.D.+》!」
 たった一枚のトリガーから、浬は《スペルサイクリカ》《キル》《アンタッチャブル》そして《Q.E.D.+》と、四体のクリーチャーを展開する。
 運が絡んだ一手だったが、これに一騎は後悔よりも、むしろ称賛したくなるような情が湧いてくる。
「とんでもないカウンターだね……参った。ターン終了だ」
「俺のターン。まずは《Q.E.D.+》の能力で、山札の上から五枚を見る。そのうちの一枚をトップに固定して追加ドロー、その後通常ドロー」
 手札の量、質共に強化する浬。
 さらに、
「俺の場にパワー6000の《サイクリカ》がいるため、《キル》を覚醒! 《巨人の覚醒者セツダン》!」
「Wブレイカー三体に《アンタッチャブル》か……」
「打点は十分すぎるほど十分ね」
「まだ終わりませんよ。8マナで、《サイクリカ》を進化!」
「ま、まだあるんすか!?」
 完璧に制圧し、完璧に勝利を収めるなんて芸当は、浬にはできない。
 相手のすべてを破壊し尽くせない。驚異的なスピードで圧倒できない。とんでもない物量で押し切れない。一騎当千のフィニッシャーで瞬殺できない。
 自分にできることは、相手を乱すこと。
 乱して、乱して、乱し続けて。
 いつか綻ぶ相手の隙を突き、崩すのだ。
 その最大の一撃が、放たれる。

「《甲型龍帝式 キリコ3》!」