二次創作小説(紙ほか)

18話「不滅の守護者」 ( No.68 )
日時: 2014/05/11 20:10
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

「ねぇ、霧島」
「なんだ」
「一つ聞いていい?」
 沙弓や柚たちと分断されてしまった暁と浬。ほぼ一本道の通路を進む中、暁は浬に問う。
「なんか私、霧島に嫌われてるっぽいんだけど……なんで?」
「ストレートだな」
 嫌われていると自覚していながらもこの発言。相当図太い精神をしているとしか思えないが、これが暁である。
「まずお前が嫌いかどうかだが……はっきり言って好きな部類の人間ではない」
「ん……」
「お前みたいなうるさい奴は好かない」
 だが、
「それでも、お前は強い」
「え……?」
 まさかそんなことを言われるとは思わなかった、というような顔をする暁。
「お前の強さは認める。今の俺でも、お前には勝てないと思う」
「霧島……」
「だから」
 浬は目線だけを暁に向ける。そして、
「お前を倒せる時まで、お前とは対戦しない」
「…………」
 足を止め、黙り込む暁。浬の言葉を噛みしめるように心中で反芻し、やがて彼女も口を開く。
「……馬鹿じゃないの?」
「なんだと?」
 少しだけ怒気を含んだ浬の声。自分の中身を晒した言葉を、こうも真っ向から否定されたのだから当然だろう。
「デュエマはなにが起こるか分からないから面白いんだよ。なのに最初から勝てないとか、勝てるようになったら対戦するとか、霧島は馬鹿だよ」
「……黙っていれば、言ってくれる——」
「でも」
 暁は見上げる。そして、浬をまっすぐに見据えた。
「一人ひとり、考え方やスタイルが違うのもデュエマの面白いところだよね。私には霧島の考え方なんて理解できないけど、それが霧島だってなら、それでいいんじゃないかな」
「…………」
 今度は浬が黙った。まさかそんなことを言われるとは思わなかったような、そんな表情だ。
「……俺は、少しお前のことを誤解していたかもな」
「私も。霧島ってもっと頭の固い嫌な奴だと思ってた」
「はっきり言うな……」
 しかし暁風に言うなら、それが暁というものなのだろう。
 再び歩を進める二人。そして暁は、浬を見上げながら言う。
「ねぇ、これから浬って呼んでいい?」
「……好きにしろ」
「私のことも、暁って呼んでいいよ」
「知るか」
 素っ気なく断る浬と暁。いつもの様子とそれほど変わらないが、しかしそこには確固とした変化があった。
 さらにしばらく進む二人。すると、やがて次の扉が見えてくる。
 だがその扉を守護するように、一体のクリーチャーも構えていた。
「《不滅の精霊パーフェクト・ギャラクシー》か……奴を倒さなければ、先には進めないみたいだな」
「だったら私が倒すよ。コルル!」
「任せろ! 神話空間、展開だ!」
 率先して飛び出し、神話空間に飲み込まれていく暁とパーフェクト・ギャラクシー。浬とエリアスは、その様子を見るだけだった。
「え、あ、早いですね……いいんですか、ご主人様?」
「ああ」
 大丈夫だ、と浬は続け、暁が消えた先の空間をじっと眺めるのだった。



「《ギャノバズガ・ドラゴン》召喚!」
 暁とパーフェクト・ギャラクシーのデュエル。
 序盤から攻める暁はパーフェクト・ギャラクシーのシールドを次々と割っていったが、S・トリガーを踏んでしまい、そこからクリーチャーを殲滅されてしまった。
 暁の場には、今しがた召喚した《ギャノバズガ・ドラゴン》が一体。シールドは四枚ある。
 対するパーフェクト・ギャラクシーのシールドは三枚。場には《時空の守護者ジル・ワーカ》《光器パーフェクト・マドンナ》《光陣の使徒ムルムル》《磁力の使徒マグリス》。
「私のターン。《不滅の精霊パーフェクト・ギャラクシー》を召喚!」


不滅の精霊パーフェクト・ギャラクシー 光文明 (7)
クリーチャー:エンジェル・コマンド 9000
シールド・フォース
SF—このクリーチャーは「ブロッカー」を得る。
SF—このクリーチャーがバトルゾーンを離れる時、バトルゾーンから離れずにとどまる。
W・ブレイカー


 遂に現れた《パーフェクト・ギャラクシー》。シールド・フォースで指定したシールドが存在する限り、その名の通り不滅の守護神となる。
『《マグリス》でシールドブレイク!』
「っ、私のターン! 《爆竜 バトラッシュ・ナックル》召喚!」
 《バトラッシュ・ナックル》は召喚時、相手クリーチャー一体と強制的にバトルする。
「《ムルムル》とバトル! そして《バトラッシュ・ナックル》がバトルに勝利!」
 それにより、手札から暁の切り札が現れる。
「暁の先に、勝利を刻め——《爆竜勝利 バトライオウ》!」
 これで場にドラゴンが三体並んだ。しかし、それでも《パーフェクト・ギャラクシー》の壁はなお高い。
「ターン終了……」
『私のターン。呪文《ソーラー・チャージャー》、私と《マグリス》を指定。このターンの終わりに、この二体はアンタップする。さらに《光陣の使徒ムルムル》《曙の守護者パラ・オーレシス》を召喚し、私と《マグリス》で残りのシールドをブレイク!』
「くぅ……S・トリガー発動《ドリル・トラップ》を二枚発動! 《ムルムル》と《ジル・ワーカ》を破壊!」
 二つの螺旋槍が二体のブロッカーを貫く。しかし厄介なクリーチャーは消した代償として、暁のシールドはゼロ枚になってしまった。
『そしてこのターンの終わりに、私と《マグリス》はアンタップする。さらに私はこのシールドがある限り場を離れない! 次のターンにはとどめだ』
「それはどうかな? 私のターン! 《爆竜 GENJI・XX》を召喚!」
 攻撃時にブロッカーを破壊するスピードアタッカー《爆竜 GENJI・XX》。これで一気に突破口が開けるだろう。
『しかし、それでは私を破壊できない!』
 しかも相手の場には《パーフェクト・マドンナ》までいる。除去は困難だ。
「どうかな。行くよ《GENJI》で攻撃! その時《パラ・オーレシス》を破壊!」
『私でブロック! 《ギャノバズガ・ドラゴン》がいるのでバトルは私の負けですが、私は破壊されません』
「なんでもいいよ。どっちにしろ、私の《GENJI》は“バトルに勝った”んだから」
 そう、暁にとってはタップ状態の《パーフェクト・ギャラクシー》などどうでもいい。破壊されようがされまいが関係ない。重要なのは、バトルに勝てるかどうかだ。
 《ギャノバズガ・ドラゴン》のお陰で、暁の火のクリーチャーはバトル時のみパワーが3000足される。なので《GENJI》のパワーは10000となり、《パーフェクト・ギャラクシー》を上回った。
 そして、バトルに勝利したのだ。
「さあ出て来て! 《太陽の語り手 コルル》をバトルゾーンに!」
「《GENJI》に続いて登場だ! 任せろ!」
「続けて《バトラッシュ・ナックル》でWブレイク!」
『《パーフェクト・マドンナ》でブロック!』
 バトルに勝っても《パーフェクト・マドンナ》は破壊されないが、しかし《パーフェクト・ギャラクシー》同様、それはどうでもいい。
 これで、ブロッカーはいなくなった。
「《ギャノバズガ・ドラゴン》でシールドをブレイク! 《バトライオウ》で残りのシールドをWブレイク!」
 次々とシールドを粉砕していく暁。これで《パーフェクト・ギャラクシー》のシールドはなくなった。
「《コルル》でダイレクトアタック!」



「終わったか。少し冷や冷やしたぞ」
「あはは。まあ、勝てたんだし、いいじゃん」
「まあな……とりあえず」
「行こうか」
 カードとなった《パーフェクト・ギャラクシー》を回収しつつ、扉に目を遣る暁。
 扉を開くと、その先はまたも開けた空間になっていた。しかし今度は左右に扉があるのではなく、奥に一つだけある。
「あきらちゃんっ!」
「ゆず! それに部長とリュンも! 無事だったんだ」
 手前にある扉のうち一つから、柚と沙弓、そしてリュンが出て来る。
「あの扉は正解不正解ではなく、ルートが違うだけで最終的には同じ場所に着くようになっていたのか」
「だからプルも首を傾げていたのね」
「ルー」
 正解がどちらかと言われて、どちらも正解だったということだ。
「ご主人様、あの奥の扉から私たちと同じ気配を感じます」
「ということは、あの扉に先に《語り手》がいるわけだな」
 となればここで突っ立っている理由もない。一行はその扉へと歩を進めようとする。
 その時だった。

「ちゃんと揃ってる……ここに来る程度の力は、あるみたい……」

 奥の扉が開く。
「え……?」
「はひ……?」
「これは……」
「どういう、ことだ……」
 唖然とする一行。
 開かれた扉の先にいたのは——たった一人の、少女だった。