二次創作小説(紙ほか)

20話「支配の精霊龍」 ( No.70 )
日時: 2014/05/13 03:33
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

「《爆竜 GENJI・XX》召喚!」
 前のターン、《スピア・ルピア》でサーチした《GENJI》が召喚される。
 これで暁の場には《鬼切丸》と《爆槍 ヘーゼル・バーン》、そして《爆竜 GENJIXX》《爆竜 バトラッシュ・ナックル》《爆竜勝利 バトライオウ》と、合計五体のクリーチャーが並んだ。
 対するラヴァーの場には、《栄光の翼 バロンアルデ》と《幻盾の使徒ノートルダム》《再誕の精霊 アルミウル》の三体だけ。シールドも二枚しかない。
「このターンで決める! 《GENJI》で攻撃、その時に相手ブロッカーを一体破壊するよ! 《ノートルダム》を破壊!」
 《GENJI》の刃が《ノートルダム》を切り裂く。そしてそのまま、ラヴァーの残り二枚のシールドも切り裂いた。
「っ、ブロックしない……?」
 驚きを見せる暁。《ヘーゼル・バーン》がいるとはいえ、《GENJI》はWブレイカーだ。ブロックすれば、シールドブレイク数を一枚に抑えられ、S・トリガー次第では凌げるというのに。
 と、そこで暁はハッとする。このターンで決めきれない可能性に、気付いたかのように。
「……S・トリガー、発動」
「やっぱり……!」
「《霊騎コルテオ》を召喚……私の場に、クリーチャーは四体……相手クリーチャーを四体……タップ」
「くぅ!」
 暁のクリーチャーがまとめてタップされ、またも攻撃を止められてしまった。
「でも、次のターンこそ、絶対に決めるよ。どの道そのクリーチャーたちじゃ、打点は足りないし」
 《アルミウル》はWブレイカーがあるが、ラヴァーのクリーチャーの合計打点は三打点。暁のシールドは三枚あるので、次のラヴァーのターンに決めるのはほぼ不可能。
「……分かってる」
 だが、ラヴァーからしたら、なにも勝負を急ぐことはない。このターンに決める必要などないのだ。
「私の……ターン」
 ゆっくりとカードを引くラヴァー。
 この時、彼女は最高のカードを引いていた。それ自体は偶然だが、その偶然は、予見された偶然であった。
 そして、支配を司る天使龍が、降臨する——

「私が世界を支配する——《支配の精霊龍 ヴァルハラナイツ》」


支配の精霊龍 ヴァルハラナイツ 光文明 (7)
クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 7000
ブロッカー
このクリーチャーまたは自分のコスト3以下の光のクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、タップしてもよい。そのクリーチャーは、次の相手のターンのはじめにアンタップされない。
W・ブレイカー


 純白の羽を舞い散らせ、正義の名の下に地上に降り立った天使龍、《ヴァルハラナイツ》。
 正義をかざし、世界を支配するために現れた光のドラゴンたち。その中でも、《ヴァルハラナイツ》の支配力は群を抜いている。
「《ヴァルハラナイツ》の能力、発動……相手クリーチャーを一体選び、タップ。次のターンの初めに、そのクリーチャーはアンタップ、できない……《GENJI》を指定」
 元々タップされている《GENJI》だが、アンタップされないフリーズ能力は通用する。
「っ、でも、それだけじゃあ防ぎ切れないよ!」
「まだ、終わらないから……」
 《GENJI》がアンタップを封じらても、暁のクリーチャーは四体残っている。しかし、
「《ヴァルハラナイツ》はエンジェル・コマンド・ドラゴン……種族にエンジェル・コマンドを含むから……G・ゼロで、《巡霊者ウェビウス》を召喚……《ヴァルハラナイツ》の能力発動」
「えっ?」
「《ヴァルハラナイツ》の能力は、コスト3以下の、光のクリーチャーが出た時にも発動する……《バトライオウ》をフリーズ。続けて、二体目の《ウェビウス》も、G・ゼロで召喚……《バトラッシュ・ナックル》を、フリーズ」
「あ、う……」
 やばい。直感的に、暁はそう判断した。
 そして実際、暁は相当危機的な状況に追い込まれることとなる。
「《アルミウル》で攻撃……その時《アルミウル》の能力、発動」


再誕の精霊 アルミウル 光文明 (6)
クリーチャー:エンジェル・コマンド 6000
このクリーチャーが攻撃する時、進化ではないコスト3以下の光クリーチャーを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー


 《アルミウル》は再誕の精霊の名に相応しく、墓地に落ちた光の軽量クリーチャーを再生し、誕生させる能力を持つ。しかもラヴァーの場には《ヴァルハラナイツ》もいるのだ。
「墓地から《束縛の守護者ユッパール》を、バトルゾーンに……《ユッパール》の能力で、《鬼切丸》を、フリーズ……《ユッパール》はコスト3以下の、光のクリーチャー、《ヴァルハラナイツ》の能力も発動。《ヘーゼル・バーン》を……フリーズ」
「…………」
 もはや暁は言葉も出なかった。たった1ターンにして、暁のクリーチャーはすべて動きを封じられてしまったのだ。
「……Wブレイク」
 そして《アルミウル》の攻撃が放たれる。暁のシールドが二枚、吹き飛ばされた。
「く……S・トリガー発動《ピアラ・ハート》! 《ウェビウス》を破壊!」
「《コルテオ》で攻撃……シールドを、ブレイク」
「もう一度S・トリガー! 《ドリル・トラップ》で《バロンアルデ》を破壊!」
 二枚ものS・トリガーを発動させ、ブロッカーを除去する暁。だが、シールドはゼロになってしまった。
 しかも暁のターン、暁の五体のクリーチャーはアンタップされない。
「私のターン! 《ギャノバズガ・ドラゴン》と《砕神兵ガッツンダー》を召喚! 《ピアラ・ハート》でダイレクトアタック!」
「……《ウェビウス》でブロック」
 《ピアラ・ハート》のバトルは《バトライオウ》が肩代わりし、一方的に《ウェビウス》を討ち取ったが、それだけだ。
 もう、暁の場に攻撃できるクリーチャーはいない。
「くっ、うぅ……!」
 悔しそうに歯噛みする暁。これ以上の攻撃はできず、ターン終了。そして、ラヴァーのターンが訪れる。
 これが本当の、ラストターンだった。 

「……《支配の精霊龍 ヴァルハラナイツ》で、ダイレクトアタック——」



 神話空間が閉じる。そして出て来たのは、膝をつく暁と、それを見下ろすラヴァーだった。
「っ、くぅ……!」
 悔しそうに歯を食いしばり、ラヴァーを睨みつける暁。しかしラヴァーはそんな暁を、吠える負け犬でも見るように、冷たく見下ろしていた。
「……これは、警告」
 そして、静かに言葉を紡ぐ。
「これ以上、邪魔するなら……次は本気で、潰す」
 暗に、もうクリーチャー世界に来るなと言うラヴァー。
「……キュプリス」
「もう戻るの?」
「うん……」
 ラヴァーの警告に対して暁がなにかを言う前に、ラヴァーとキュプリスは消えてしまった。
「消えました……っ?」
「たぶん、僕がいつもやってるみたいに、どこかに転送したんだと思う」
 もし彼女が人間なら、地球とこのクリーチャー世界を行き来しているはず。それならばリュンと同じように自身をどこかに転送することもできるだろう。
「そんなことより……なんなのさ、あの子。なんか、凄いムカつくんだけど……!」
 立ち上がる暁。非常に不機嫌そうな顔をしている。
「でも、あの子のプレイングはかなり高かったわ」
「ああ。気になったのは、《アルミウル》を召喚した時くらいだが、あれも《コルテオ》のトリガーで凌ぎ、《ヴァルハラナイツ》への布石になっていた」
「……そういえばあの時、クリーチャーの声がどうとか言ってたっけ」
 急にラヴァーがぶつぶつと呟き始めた時だ。
「クリーチャーの声が聞こえないって、どういうことだろう……?」
「なんにせよ、あの子は放っておけないよ。僕が君らをこの世界に連れてきたのは、この世界の秩序を取り戻すためだ。それを支配だのなんだの言って乱すのを黙って見過ごすことはできない」
 珍しく意志をはっきりと見せるリュン。その意見に、反対する者はいない。
「……そうだね。私も負けたままじゃいられないよ。次こそリベンジだ!」
 警告だの潰すの言われたが、その程度で気圧される暁ではない。それは浬も、沙弓も、柚も同じだ。
 胸中で再戦を誓う暁。内に秘めた彼女の闘志は、轟々と燃え盛っている——