二次創作小説(紙ほか)

22話「結晶龍vs天聖龍」 ( No.76 )
日時: 2014/05/18 00:15
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

「俺のターン《アクア隠密 アサシングリード》を召喚! 《ピース・ルピア》をバウンスし、《アクア・ブレイド》でシールドをブレイク!」
「私のターン……再び《ピース・ルピア》を、召喚……ターン終了」
 浬とラヴァーのデュエル。
 浬の場には《アクア・ティーチャー》《アクア戦闘員 ゾロル》《蒼狼アクア・ブレイド》《アクア隠密 アサシングリード》。シールドは五枚。
 ラヴァーの場には《幻盾の使徒ノートルダム》《ピース・ルピア》。シールドは四枚だ。 
「攻め手は緩めない……《ゾロル》を進化! 《超閃機 ジャバジャック》!」
 浬の攻めはどんどん激しくなる。《ジャバジャック》の登場時能力でカードを四枚引き、その後手札二枚を山札の底へ沈める。手札補充と共に、手札の質も良くすることができるのだ。
「《ジャバジャック》でWブレイクだ!」
「ん……S・トリガー、ない……」
「なら、ターン終了だ」
 怒涛の攻めを見せる浬に対し、ラヴァーは静かだ。冷静さを保っていると言えばその通りだが、浬の猛攻に対しなんの反応もない。
「……《束縛の守護者ユッパール》を召喚、《ジャバジャック》を、フリーズ……《ノートルダム》も召喚して……ターン終了」
「俺のターン! 《アクア・ハルカス》を召喚し一枚ドロー。《ゾロル》を召喚し一枚ドロー。さらに《アクア・ガード》を召喚!」
 次々とクリーチャーを展開する浬。対するラヴァーも、クリーチャーを展開してくる。
「《栄光の翼 バロンアルデ》を召喚……マナを増やして、《不屈の翼 サジトリオ》を召喚……ターン、終了」
 とはいえ、やはり展開力は浬に劣る。《ユッパール》のフリーズも解け、これで《ジャバジャック》がフリーに。
「まだだ! 俺のバトルゾーンにリキッド・ピープルは七体! よって、コスト1でこいつを召喚する!」
 リキッド・ピープルを大量展開した後は、このクリーチャーの出番だ。浬の切り札が現れる。

「海里の知識よ、結晶となれ——《龍素記号iQ サイクロペディア》!」

 数多のリキッド・ピープルの力が結晶となり、誕生したクリスタル・コマンド・ドラゴン《サイクロペディア》。登場時の能力で、カードを三枚引ける。
「さらに《アクア監視員 リツイート》を二体召喚! 《ジャバジャック》でWブレイク!」
「《サジトリオ》でブロック……《サジトリオ》が破壊された時、山札の上から三枚を、見る……」
 そして、その中のコスト3以下の光のブロッカーをバトルゾーンに出せるのだ。
「……《サジトリオ》を、バトルゾーンに……」
「削れなかったか……ターン終了だ」
 ラヴァーの場にはブロッカーが多いが、しかしそれ以上に浬の場にはクリーチャーがいる。これらのクリーチャーが一気に攻めて来れば、流石のラヴァーでも耐えきれないだろう。
「……うん、そう……」
「?」
「分かった……なら……もう少し、耐える……うん……」
 ふとラヴァーを見ると、彼女はぶつぶつと呟いていた。
「なんだ?」
「……私のターン」
 浬が疑念をぶつける前に、ラヴァーは自分のターンを進める。
 そしてこのターン、彼女のマナは7マナとなった。つまり、

「私が世界を支配する——《支配の精霊龍 ヴァルハラナイツ》」

「っ、出たか……!」
 ラヴァーの切り札《ヴァルハラナイツ》。登場時とコスト3以下の光のクリーチャーが出るたびに、相手クリーチャーをフリーズするエンジェル・コマンド・ドラゴンだ。
「《ヴァルハラナイツ》の能力で……《ジャバジャック》を、フリーズ」
「そう来るか……だが、そのカードの弱点は見切っている」
 《ヴァルハラナイツ》の支配力は確かに高い。だが、その支配を発動するためには、コスト3以下のクリーチャーを出さなければならない。クリーチャーを召喚し続けなければ支配できず、それ以上の軍勢を相手にすれば支配力は及ばない。
 つまり、《ヴァルハラナイツ》の支配力を上回る展開力で攻めれば、押し切れるはずだ。
「G・ゼロで《巡霊者ウェビウス》を二体召喚……《アクア・ガード》と《アクア・ティーチャー》を、フリーズ。《ユッパール》と《ノートルダム》で、それぞれ攻撃……」
「なに?」
 相打ちとなる《ユッパール》と《アクア・ティーチャー》。そして《アクア・ガード》は破壊される。
 少々おかしなプレイングだ。浬のクリーチャーを減らしたいと思うのは分かるが、打点が高くアンブロッカブルの《サイクロペディア》を差し置いてその二体をタップキルすることに大きな意味があるとは思えない。しかも破壊された二体は、攻撃不可能なブロッカーだ。
「《ウェビウス》を握っているとは思ったが、また妙なプレイ……まあいい。俺のターン《アクア・アナライザー》と《アクア・ブレイド》を召喚。《サイクロペディア》でWブレイク!」
 《サイクロペディア》はブロックされない。大量のブロッカーをすり抜け、ラヴァーの残る二枚のシールドを叩き割った。
「さらに、残るクリーチャーで総攻撃だ!」
 総攻撃と言っても、攻撃する意味のないクリーチャーは攻撃しない。破壊された《サジトリオ》は不発に終わり、《ウェビウス》も一体破壊する。対するこちらの損害は、《リツイート》一体だけだ。
「……ターン終了だ。なにを考えているかは知らないが、俺の展開力はお前の支配力を上回る。このまま攻め続ければ、俺の勝ちだ」
「…………」
 その言葉に対し、ラヴァーは黙っている。
 しかしその沈黙は、浬の言葉を受け入れたということではなかった。むしろ逆だ。
 浬の言葉を否定する、沈黙だった。

「……《ヴァルハラナイツ》を進化——《聖霊龍王 ヴィブロス・ヘブン》」

 刹那、聖なる光がバトルゾーンを支配する。
「なんだ……!?」
 そして次の瞬間、浬のクリーチャーがすべて消え去った。
「っ、俺のクリーチャーが……!」
 しかも見れば、浬のシールドが凄まじい数になっていた。その枚数は、なんと十四枚。
「《ヴィブロス・ヘブン》は、登場時……光以外のクリーチャーを、すべてシールドに、送る……」


聖霊龍王 ヴィブロス・ヘブン 光文明 (8)
進化クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 15000
進化—自分のエンジェル・コマンドまたはドラゴン1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある光以外のクリーチャーをすべて、新しいシールドとして持ち主のシールドゾーンに裏向きにして加える。
T・ブレイカー


「なんだと……っ!」
 《ヴィブロス・ヘブン》の能力により、浬の八体のクリーチャーがすべてシールドにされてしまったのだ。
「……《ヴィブロス・ヘブン》で、Tブレイク」
「ぐぁっ!」
「ご主人様!」
 《ヴィブロス・ヘブン》の一撃でシールドが三枚砕け、その衝撃で浬の眼鏡が吹っ飛んだ。さらにラヴァーの攻めは続く。
「……《ノートルダム》二体で、シールドブレイク」
 一気に五枚のシールドが削られる。それでもまだ九枚残っていた。
「くそ……!」
 手札は大量にあるが、しかし選別されてブレイクされたシールドは、どれもこれもバニラクリーチャーばかり。マナはそれなりにあるが、この大量の手札を使い切ることなど不可能だ。
「こうなったら、やるだけやるしかない……《アクア・ブレイド》二体と《ゾロル》を召喚!」
「私のターン……《ヴァルハラナイツ》を召喚」
 能力で《アクア・ブレイド》がフリーズする。さらに、
「G・ゼロ……《ウェビウス》を召喚……《ゾロル》も、フリーズ。《ノートルダム》で、攻撃」
 《ゾロル》は殴り倒された。浬が展開するクリーチャーを、殴って潰すつもりのようだ。
「……《ヴィブロス・ヘブン》で、Tブレイク……《ノートルダム》で、シールドブレイク」
 これで残り五枚。
「俺のターン! 《ゾロル》二体と《アクア・ビークル》、そしてシンパシーでコストを下げた《サイクロペディア》を召喚!」
 なお増え続ける手札。しかし、もう手遅れだ。
「……《ヴィブロス・ヘブン》でTブレイク……二体の《ノートルダム》で、シールドブレイク」
 遂に十四枚のシールドがすべて破られた。
 そして最後。シールドを失った浬に、正義の鉄槌が下される。

「……《支配の精霊龍 ヴァルハラナイツ》で、ダイレクトアタック——」



「……この程度の相手なんて……話に、ならない……」
「くそ……っ」
 神話空間が閉じ、浬とラヴァーが戻ってくる。
 跪く浬と、それを冷たく見下ろすラヴァー。かなり身長差があるので目線の高さは近いが、その瞳の昏さには有無を言わさない圧力があった。
「……考えすぎた、かも」
 ふと、ラヴァーは独り言のように呟く。
「この前は、ちょっとムキになってた……支配の邪魔だから、取り除くつもりだった、けど……この程度なら、放っておいても大丈夫、かも……」
「そうだね。彼らにはカード化したクリーチャーの声が聞こえないみたいだし、その程度の力しかないのはもう証明されてるよね」
「うん……」
 なにやらラヴァーとキュプリスの間でやり取りが交わされる。そして次に暁たちを見た時のラヴァーの目は、道端の雑草でも見るかのような眼差しだった。
「そういうわけ、だから……あんまり邪魔、しないで欲しい……目障りすぎると、気、変わるかも……しれないから」
 刹那、ラヴァーとキュプリスの姿が消える。