二次創作小説(紙ほか)
- 25話「龍世界」 ( No.79 )
- 日時: 2014/05/18 22:31
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
汐との特訓の翌日、いつものようにリュンが部室に現れた。
「例の通信端末、持ってきたよ。はい」
「…………」
「どうしたの?」
「いや、なんか……普通のスマホっぽいな、って」
渡された端末は、カラーこそそれぞれ違っていたが、長方形の扁平な機体に、タッチパネルの画面が面積の半分を占めるというものだった。
「なんかウルカさん、その形が気に入ったんだって」
「これのどこに気に入る要素があるんだ……?」
まあそれはさておいて、とリュンは一枚のカードを取り出した。そしてそれを、暁へと投げる。
「暁!」
「コルル!? どうしたの?」
カードが実体化し、コルルが現れる。
「あいつ、クリーチャー世界にいたんじゃないのか?」
「それがね、暁さんのとこに連れてけって聞かなくて」
「コルル、なにがあったの?」
「感じるんだ」
コルルは、必死に訴えるように言う。
「すげぇ龍の力を感じる……アポロンさんがオレと一緒に封印した戦友たちの魂が、蘇ったんだ」
「それって《バトライオウ》と同じ……ってことは、また新しい仲間ができるってこと?」
「分からねえ。でも、早く行こうぜ!」
「うん!」
そんなわけで一同は再び、太陽山脈へと向かうこととなった。
コルルが眠っていた山の一角は崩れていたが、入り口と小部屋自体は無事だった。
だがその中は、驚愕する状態となっていた。
「な、なに、これ……」
いや、驚愕するものが存在していたと言うべきか。
小部屋の中には、部屋のスペースのほとんどを圧迫する、巨大なクリーチャーが座していた。
赤黒い身体を持つ、巨大な龍。今は翼を折りたたんでいるが、それでも王の如き威厳と、攻撃的な凄まじい威圧感が感じられた。
「あいつは……《龍世界 ドラゴ大王》!」
「ドラゴ、大王……? なにそれ? 王様?」
「俺たち火文明軍の中で唯一、アポロンさんに反抗していた奴だ」
「反抗? なんで? 同じ仲間じゃないの?」
「あやつと仲間など……戯言はやめろ、小娘」
重い声が響き渡る。
目の前に鎮座する、ドラゴ大王の声だ。
「我は奴のような軟弱な思考は持ち合わせていない」
「なんだと! アポロンさんを馬鹿にするな!」
ドラゴ大王の言葉に、コルルが食って掛かる。
「真実を言ったまでよ。ファイアー・バードなどという惰弱な鳥と共にしか存在できぬ奴もまた、惰弱な存在よ」
「……なんでそんな、ファイアー・バードを悪く言うのさ」
「我が龍の世界の大王ゆえだ」
静かに答えるドラゴ大王。
「龍の世界の、王……?」
「あいつの作り出す世界は、ドラゴンしか存在できねえんだ。だからファイアー・バードも大切にするアポロンさんと対立が絶えなかったんだ」
「ドラゴンなのにファイアー・バードを嫌うなんて、変なの」
ファイアー・バードはドラゴンのサポート種族だ。ファイアー・バードがいるからこそ、ドラゴンはその力を十全に生かすことができる。
「ふん、我の世界に惰弱なクリーチャーはいらぬ! 我の世界に必要なのは強き龍のみ! 立ち去れ、惰弱な小娘と脆弱な小童どもよ! アポロンの名を思い出した我は今、機嫌が悪い。我が逆鱗に触れる前に消えるのだ!」
「なんだと! お前こそここから出てけ! ここはアポロンさんの仲間たちが眠る場所だ! お前みたいな奴がいていい場所じゃないんだよ!」
「……でも、そのアポロンって奴は、こいつをここに封印したんだよな……」
背後で浬が言う。確かにその通りだ。《太陽神話》がドラゴ大王の力を忌み嫌っていたのなら、後世に残すようなことはしないはず。
しかし当の本人たちは頭に血が上っており、そんなことなど気付きはしない。
「いいぜ! こうなったら力ずくで分からせてやる!」
「我と戦うというのか? 身の程を知らぬようだな。貴様程度のクリーチャーが、我に敵うと思っているのか」
「なんか、よく分かんないけど……ファイアー・バードだって大事なクリーチャーだよ。それを馬鹿にするのは、私も許せないな」
コルルに続き、暁までドラゴ大王に食って掛かる。暁とコルル、そしてドラゴ大王の間に、険悪かつ好戦的な空気が漂う。
「やってやろうぜ暁! この偉そうな奴に、目に物言わせてやるんだ!」
「ほざけ小童。貴様らなど、我が龍の圧政で押し潰してくれる!」
「やれるものなら! 行くよコルル!」
「おうよ!」
刹那。
コルルの展開した神話空間に、暁とドラゴ大王は飲み込まれてゆく。
暁とドラゴ大王のデュエル。
暁のシールドはまだ五枚。場には《神砕兵ガッツンダー》。
ドラゴ大王のシールドも五枚。場にはなにもない。
「速攻で行くよ《鬼切丸》召喚! 《ガッツンダー》と《鬼切丸》でシールドをブレイク!」
「その程度か。我がターン、呪文《勝負だ!チャージャー》を対象なしで撃つ。そして《紅神龍ガルドス》を召喚。スピードアタッカーの《ガルドス》で《ガッツンダー》を破壊」
そしてターン終了時《ガルドス》は手札に戻る。
見たところドラゴ大王のデッキは、クリーチャーがすべてドラゴンのようだ。チャージャー呪文で速度を上げたり、S・トリガー呪文で防御を固めているようだが、かなり極端な構成だった。
「っ、まだままだ! 私のターン《勝負だ!チャージャー》でマナを加速! 続けて《ライラ・ラッタ》召喚!」
ここで攻めてもいいが、しかし攻撃してもまた《ガルドス》に狙い打たれるだけ。
「ターン終了」
「我がターン。《偽りの名 バルキリー・ラゴン》を召喚」
遂にドラゴ大王の場に大型のドラゴンが現れる。
「《バルキリー・ラゴン》の能力で、山札よりドラゴンを我が手中に収める。貴様の番だ」
「……私のターン」
カードを引き、手札を見る暁。
(《スピア・ルピア》と《タイガーグレンオー》か……相手はドラゴンばっかりみたいだし《タイガーグレンオー》を握ってても意味はないかな)
続けて、今度は場を見る。
(相手のシールドは三枚。私の場には《ライラ・ラッタ》と《鬼切丸》。《ライラ・ラッタ》でシールドを削っておけば、スピードアタッカーを引ければとどめまで行ける。手札もほとんどないし、殴り返されても手札を補充できる)
《タイガーグレンオー》をマナに落とすと、暁は残る一枚のカードに手をかける。
「《スピア・ルピア》を召喚! さらに《ライラ・ラッタ》でシールドをブレイク!」
「ふん……あまり迂闊に攻撃しない方が身のためだぞ、小娘」
「なにおう! そーいう台詞は私に勝ってからから言いなよ。ターン終了!」
「生意気な小娘よ……我がターン。《バルキリー・ラゴン》によって呼び込まれた《ジャックポット・バトライザー》を召喚!」
ジャックポット・バトライザー 火文明 (8)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン 8000
スピードアタッカー
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルに勝った時、自分の山札の上から3枚をすべてのプレイヤーに見せてもよい。その中から進化ではないドラゴンを1体、バトルゾーンに出し、その後、残りを墓地に置く。
「な、なにこのドラゴン……?」
「龍の力を思い知るがいい! スピードアタッカーの《ジャックポット》で《ライラ・ラッタ》を攻撃!」
《ライラ・ラッタ》が切り裂かれ、破壊される。バトルを受けた《ライラ・ラッタ》の能力で、暁のシールドが一枚手札へ。そして、
「《ジャックポット》の能力発動! 山札の上から三枚を捲り、その中のドラゴンを一体バトルゾーンに出す!」
捲られた三枚は、《紅神龍バルガゲイザー》《熱血龍 シビル・ウォード》そして——
「君臨せよ、偉大なる龍の王! 我が世界は龍のものなり——《龍世界 ドラゴ大王》!」