二次創作小説(紙ほか)
- 25話「龍世界」 ( No.81 )
- 日時: 2014/05/20 21:40
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
超竜サンバースト・NEX 火文明 (7)
進化クリーチャー:アーマード・ドラゴン 11000+
進化—自分のアーマード・ドラゴン1体の上に置く。
このクリーチャーがバトルに勝った時、このクリーチャーをアンタップしてもよい。
パワー12000以上のクリーチャーとバトル中、このクリーチャーのパワーは+11000される。
W・ブレイカー
不屈の魂は、未来へと繋がる絆の力へと進化する。
『だからどうした。そやつでは我には勝てぬ!』
「そう思うなら、黙って見てなよ。《スピア・ルピア》で《ドラゴ大王》を攻撃!」
槍を構え、《スピア・ルピア》が《ドラゴ大王》へと突貫する。
『効かぬ! そのような雑魚が、我に敵うものか!』
「確かに《スピア・ルピア》だけじゃ君は倒せない。でも《スピア・ルピア》が破壊された時、私のクリーチャー一体のパワーをプラス2000、そしてアンタップ状態のクリーチャーも殴れるようになる!」
強化するのは当然《サンバースト・NEX》。これでパワー13000だ。
「行っけぇ! 《サンバースト・NEX》で、《ドラゴ大王》を攻撃!」
『ふん、忘れたのか。我には《ギャノバズガ・ドラゴン》がいる。その能力でバトル時の我がパワーは16000だ。そやつでは敵わんぞ』
「いいや! 《サンバースト・NEX》はパワー12000以上のクリーチャーとバトルする時、パワーが11000上昇する! だから《スピア・ルピア》と合わせて、パワー24000だよ!」
『なんだと……!?』
太陽の如き莫大な炎を纏い、《サンバースト・NEX》の刃が《ドラゴ大王》を断ち切った。
「ぐおぉぉぉ! だがそれまでだ! 我が龍たちが、貴様を燃やし尽くす!」
「燃え尽きるのは君だよ! 《サンバースト・NEX》のもう一つの能力! 《サンバースト・NEX》がバトルに勝った時、アンタップする!」
「なに……!?」
今の《サンバースト・NEX》は、《スピア・ルピア》によってアンタップ状態のクリーチャーも攻撃できる。
「これが、君が馬鹿にしたファイアー・バードたちの力だ! 《サンバースト・NEX》で《ギャノバズガ・ドラゴン》を攻撃!」
さらに続けて《フジサンダー》《バルケリオス・ドラゴン》《バルケリオス・Gカイザー》と立て続けの攻撃し、《ドラゴ大王》のクリーチャーは全滅した。
「そして最後に! 私の火のドラゴンがバトルに勝ったから《爆竜勝利 バトライオウ》をバトルゾーンに!」
「馬鹿な、こんなことが……《偽りの名 バルガ・ラゴン》を召喚!」
「それで終わり? だったらこれで終わりだよ! 《サンバースト・NEX》でWブレイク!」
炎の刃がドラゴ大王のシールドを切り捨てる。
そして最後に、熱血の戦闘龍が、大王を討つべく駆けるのだ。
「《爆竜勝利 バトライオウ》で、ダイレクトアタック!」
《バトライオウ》の刃が、ドラゴ大王を切り裂く。
そして龍の世界が、断ち切られたのだった——
「ふぅ……みんな、ありがとう」
「やったな暁! あのドラゴ大王を倒したぜ!」
はしゃぐコルル。確かにこの勝利は嬉しい。だがそれが、仲間のクリーチャーたちの力があってこその勝利だと分かると、なおのこと歓喜が込み上げる。
「私にも聞こえた。カードの、クリーチャーの声が……」
今まではただのカードだと思っていたクリーチャーたち。しかしその声をじかに聞き、今まで以上に仲間としての意識が強くなる。
と、その時。重い声が響く。
「まさかこの我が、貴様のような小娘に敗れるとはな」
ドラゴ大王だ。その威厳は負けても変わらず、しかし攻撃的な威圧感はなくなっていた。
「貴様はあの憎たらしい小僧——アポロンにそっくりだ。仲間がどうとか甘いことをぬかし、弱きものを擁護し、共に戦う。その癖に強い。まったくもって気に食わん」
「なんだと! 負けた癖によくもそんなことを——」
「だが」
ドラゴ大王の物言いに憤慨するコルルだが、ドラゴ大王はそれを遮るように続ける。
「奴の強さは認めざるを得ない。龍と共にしか存在できぬ、龍以外とは相容れぬ我よりも、奴の方がよっぽど強い。我はかの《支配神話》たちと同じだ。力で他者を屈服させ、ただ一人で龍の世界に坐する、孤独な存在よ。そんな我は、仲間と共にある奴に憧れていたのかもしれぬな」
「ドラゴ大王……」
龍だけの世界を作り出す彼は、圧倒的にして絶対的な世界を作り上げる。しかし力による支配しかないその世界において、彼は孤独な存在だった。
《太陽神話》もドラゴ大王と同様に、本心ではドラゴ大王の力は認めていたはずだ。そして彼の孤独さも理解していただろう。
だからこそか、彼もこの地に眠らせたのかもしれない。
「結局のところ、我もアポロンと共にありたかった。だが奴に従う小さき鳥たちは、我の圧力に耐え切れぬ。故に我は孤独の道を歩み、それが我のあるべき姿だと念じたのだ」
孤独な王は、弱き民を求めていた。惰弱でも、脆弱でも、弱き彼らの中には、王にはない福楽が存在している。
「その一念は、やがて我の存在意義となった。思い込んだが最後、我はそのようにしか生きられぬ。弱くてもいい、小さき民を求めようとも、その民たちは我の後には続かぬ。我の存在は、生を得た時から孤独の運命だったのだ——」
「だったらさ」
悲嘆を増すドラゴ大王に、暁は言う。それは気休めでも慰めでもない。彼女の、本心からの言葉だった。
「私と一緒に来ればいいよ」
「!」
「あ、暁!?」
コルルが驚愕する。後ろにいる浬や柚たちも、少なからず驚いているようだった。
「なに言ってんだよ! あのドラゴ大王だぜ!? 正気か!」
「? コルルこそなに言ってんの。だってすっごい強いじゃん《ドラゴ大王》。是が非でも私のデッキに入れたいよ」
それに、と暁は続ける。
「私の仲間たちは、君の圧政なんかに負けるほど弱くないし。ねぇ、コルル?」
「え、まあ、それは……確かに、こいつの圧力なんかに屈してたまるか!」
半ば自棄になったかのようにコルルが叫ぶ。それを聞き、ドラゴ大王は、
「……ふん、口の減らない小娘が。いいだろう、我もそこまで言われて引き下がることはできん。我が圧政、耐えられるものなら耐えてみよ」
「上等!」
刹那、ドラゴ大王が炎に包まれる。その炎は次第に小さくなっていき、やがて一枚のカードとなった。そして、暁の手中へと収まる。
「《龍世界 ドラゴ大王》……これからよろしくね」
『我は貴様に従う気はない。あくまで王権は我にある。だが、この姿になってしまえば、否が応でも主導権は貴様にあるがな』
「口が減らないのはどっちだよ」
暁の純粋な言葉も、尊大に返す《ドラゴ大王》。
その時、彼はふと思い出したように声を発す。
『そういえば、忘れていた』
「なにを?」
『あの小僧——アポロンが我をこの地に封印した時、我に託したものがある』
「アポロンさんがお前に?」
『ああ。我も不思議に思ったものだがな……だが奴は、龍以外と相容れぬからこそ、我に持っていてほしいと、ふざけたことをぬかしておった。今思い出しても不愉快なことよ』
《ドラゴ大王》の気分はともかくとして、《太陽神話》が彼に託したものというのは気になるところだ。
「で、なにを託したんだよ」
『急かすな、小童。今掘り起こす』
と言うと、小部屋の壁面が赤く光り始める。そしてその光の中央から、炎が噴き出した。
吹き出した炎はやがて一つの形を創り出す。
その物体は、暁の手元へと流れて行った。
「これは……」
『それがなんなのかは我にも分からぬ。だが奴が言うには、奴の力を継ぐ者が持つべき代物らしい』
暁は手元のそれを見つめる。見覚えのある形状だ。自分がこの世界に来たばかりの頃。横で飛んでいる相棒が生まれた卵と似ている。
そう、それは、
漆黒の翼に抱かれた、太陽だった——