二次創作小説(紙ほか)
- 26話「アカデミー学園」 ( No.85 )
- 日時: 2014/05/22 15:35
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
浬とアカデミー・マスターのデュエル。
浬のシールドは五枚。場には《アクア・ティーチャー》《アクア・ビークル》《アクア監視員 リツイート》《アクア隠密 アサシングリード》。
対するアカデミー・マスターのシールドは四枚。場には《アクア・ガード》が二体と《アクア・スーパーエメラル》。
「ご主人様、クリーチャーの数ではこちらが上です! 押してますよ!」
「まだ分からないぞ。前のターンに《ブレイン・チャージャー》でマナを伸ばしたところを、なにかあるかもしない。というか、ご主人様はやめろ」
そんなことを言いながら、浬はカードを引く。
「俺のターン《アクア・ビークル》を二体召喚し、《アクア・ティーチャー》の効果でドロー。続けて《リツイート》で攻撃、もう一枚ドロー」
手札を増やしながらクリーチャーを並べ、攻め手を緩めない浬。
「《アサシングリード》でもシールドをブレイクだ」
「……S・トリガー《月面ロビー・スパイラル》で、アンタップクリーチャーを二体、手札に戻してください」
「《アクア・ティーチャー》と《アクア・ビークル》を手札に戻す。ターン終了だ」
「私のターン」
カードを引くアカデミー・マスター。マナを溜め、そして、
「遂に来ました……神秘の魔術、結晶の力と共に解き放つのです! 《龍素記号Lp エクスペリオン》を召喚!」
「出ましたよご主人様! 龍素記号です!」
「落ち着け、展開力ではこっちが勝ってる。このまま数で攻めればいい」
アカデミー・マスターのシールドはもう二枚しかない。このまま攻め続ければ、押し切れるはずだ。
(どの道、手札に除去はない。今は前に出るしかないんだ)
しかし浬の心中は、言葉とは少々食い違っていた。あのドラゴンをなんとかしたいところだが、今それはできない。なら残された選択肢は、攻めるのみ。
「《アクア・ティーチャー》召喚。さらに《アクア戦闘員 ゾロル》《蒼狼アクア・ブレイド》を召喚」
またしても次々とクリーチャーを展開する浬。一体や二体バウンスされた程度では、浬は止まらない。
「《リツイート》で攻撃、シールドをブレイク! さらに《アサシングリード》でもシールドをブレイクだ!」
「……S・トリガー発動です。《アクア・スペルブルー》を召喚」
《アクア・スペルブルー》は登場時、山札をシャッフルして捲り、捲ったカードが呪文ならそのまま唱えられる。
「唱えるのは……いいですね。《ヒラメキ・プログラム》です。その能力で《スペルブルー》を破壊」
「《スペルブルー》のコストは7……ご主人様!」
「ああ、分かってる」
《ヒラメキ・プログラム》で出て来るのは、コスト8のクリーチャー。そしてこの相手で、コスト8と言えば、
「この私、《真実の名 アカデミー・マスター》をバトルゾーンへ!」
「やっぱりな……ターン終了だ」
予想外に大型クリーチャーが出てしまったが、数ではこちらが上だ。このまま攻め続けるしかない。
しかし、
『このまま数で攻めれば、勝てるとお思いですか?』
「!」
『残念ですが、その考えは浅はかとしか言いようがありません。私のターン』
《アカデミー・マスター》は余裕を見せている。ハッタリかとも思ったが、しかしそうでないことが、次の瞬間に証明される。
『《エクスペリオン》の能力発動。《エクスペリオン》が場にいる限り、私の呪文を唱えるコストは、私の場にいるリキッド・ピープル一体につき1軽減されます』
「なんだと!?」
龍素記号Lp エクスペリオン 水文明 (6)
クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 6000
バトルゾーンにある自分のリキッド・ピープル1体につき、自分の水の呪文を唱えるコストを1少なくしてもよい。ただし、コストは1より少なくならない。
W・ブレイカー
《アカデミー・マスター》を含むリキッド・ピープルたちに反応し、《エクスペリオン》の身体の結晶が光る。
『私の場にリキッド・ピープルは四体。よって1マナで、呪文《超次元エナジー・ホール》! カードを一枚引き、超次元ゾーンより《時空の剣士アクア・カトラス》をバトルゾーンに!』
たった1マナでカードを引き、5コストに相当するクリーチャーを呼び出してしまった。だが、これだけでは終わらない。
『さらに手札から呪文を唱えたことで、私の能力が発動します』
真実の名(トゥルーネーム) アカデミー・マスター 水文明 (8)
クリーチャー:リキッド・ピープル/ハンター/アンノウン 6000
自分の手札から呪文を唱えた時、その後、その呪文を墓地からコストを支払わずに唱えてもよい。
W・ブレイカー
『墓地から再び、呪文《超次元エナジー・ホール》! 山札からドロー、《アクア・カトラス》をバトルゾーンに!』
これで実質、1マナでクリーチャーを二体並べ、カードを二枚引いたことになる。これがたったの1マナだ。《アカデミー・マスター》のマナは、まだ6マナもある。
しかも、リキッド・ピープルがさらに並んでしまった。
『《エクスペリオン》の能力でコストを下げ、1マナで呪文《超次元キラーメガネ・ホール》! 指定コストは3です!』
浬の手札が公開される。手札にある3コストのカードは二枚。
『よってカードを二枚ドロー。さらに超次元ゾーンから《アクア・ジェット<BOOON・スカイ>》《アクア・カスケード<ZABUUUN・クルーザー>》をバトルゾーンに! そして私の能力で再び呪文を唱えます! 《超次元キラーメガネ・ホール》!』
「これは……やばいな」
再び現れる二体のサイキック・クリーチャー。さらに、この連続詠唱はまだ続く。
『呪文《超次元ガロウズ・ホール》! 《アクア・ブレイド》を手札に戻し、《アクア・アタック<BAGOOON・パンツァー>》をバトルゾーンに! そして私の能力で再び呪文を発動! 《超次元ガロウズ・ホール》! 《ゾロル》を手札に!』
「ご、ご主人様ぁ……」
「分かってる……!」
これは、相当やばい状況だ。
わずかターン、しかもたったの3マナしか使わず、《アカデミー・マスター》の場には八体ものクリーチャーが並んだ。
『まだまだですよ呪文《龍素の宝剣》!』
龍素の宝剣(ドラグメント・ソード) 水文明 (5)
呪文
バトルゾーンにあるクリーチャーを1体選び、持ち主の手札に戻す。その後、いずれかのマナゾーンにある呪文を1枚選び、持ち主の手札に戻す。
『あなたの《アクア・ビークル》を手札に戻し、私のマナゾーンから《スパイラル・ゲート》を回収。私の能力でもう一度《龍素の宝剣》発動! 《アクア・ティーチャー》を手札に戻し、あなたのマナゾーンの《ヒラメキ・プログラム》を手札へ。そして残った3マナで《アクア・スーパーエメラル》召喚』
やっとマナを使い切った《アカデミー・マスター》。
そしてマナを使い切った後は、攻撃だ
『《エクスペリオン》と私で、《リツイート》と《アサシングリード》を攻撃です!』
「ぐぅ!」
『ターン終了です。次の私のターンが、私の勝利の時ですよ』
「くっそ……!」
返す言葉がなかった。浬の場には《アクア・ビークル》が一体だけ。対する《アカデミー・マスター》の場には、覚醒リンクするサイキック・セルが二組に、通常ブロッカー四体、大型クリーチャーも並んでおり、手札は潤沢。この差は相当なものだ。
「流石に、これは……!」
勝てる気がしない。
今の手札では、サイキック・セルを一体や二体どかすことができても、《アカデミー・マスター》のアタッカー全てを除去することは不可能。すべてでなくとも、自分がやられない数にまで削るのも無理そうだ。
覚醒リンクされれば、こちらのクリーチャーは根こそぎ手札に戻されるだろう。そうしなくても、《エクスペリオン》と《アカデミー・マスター》のコンボで、少ないマナで呪文を連打して来るはず。どの道、浬のクリーチャーは全滅する。
S・トリガーに賭けても、所詮はその場凌ぎ。どうにもならない。
このターン、浬の場には《アクア・ビークル》が一体。それでどうしろというのか。
「……ダメだ、勝機が見えない……」
いくら考えても、今の手札ではどうしようもない。この状況をひっくり返すことはできない。
この絶望的すぎる状況に、浬が諦念を滲ませた。その時、
「ご主人様!」
エリアスの叫びが、聞こえた。
「っ! な、なんだよ……」
「こんなところで諦めないでください。この勝負、負けるわけにはいかないんです!」
「確かにそうだが……別に、負けても死ぬわけじゃない。お前も、永遠に会えなくなるわけじゃないし、悪いとは思うが……」
「そういう問題じゃないんです! ご主人様の馬鹿!」
「な……っ」
他者を罵る言葉選び。今までエリアスは、そんなことを一度も口にしなかった。
だがそれ以上に、彼女の悲痛さに、浬は言葉に詰まる。
「なにも、負けたくない理由は龍素のことだけじゃありません。むしろ、龍素のことなんて二の次で……私は、私は——」
必死に、切実に、エリアスは叫ぶ。
今まで口には出さなかった、自身の内面を、曝け出す。
「——私は……ご主人様に、仕えていたいんです!」