二次創作小説(紙ほか)

27話「ダークサイド」 ( No.89 )
日時: 2014/05/23 17:22
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

「誰だ……フー」
「うわっ、動いた!」
「そりゃ動くだろう」
 巨体——リュウセイ・イン・ザ・ダークはゆっくりと身体を起こし、こちらを見据える。
「俺の眠りを妨げるのはお前たちか、プリベント」
「ぷ、ぷり、プリン……?」
「プリベント、妨げるという意味だ」
「よく知ってますね、かいりくん……」
 中学一年の春に習うような英単語ではないのだが。
「俺になんの用だ、ホワット」
「なんの用、ねぇ……」
 なんと言えばいいのだろうか。リュウセイに、いきなり仲間になれ、というのは図々しいだろう。
 そう思っていると、ドライゼが前に出て来る。
「ようリュウセイ。俺だ、覚えているか?」
「む……お前はドライゼ。久しいな、ロングタイム」
「ああ、そうだな。お前、アルテミス嬢のことは覚えているか?」
「勿論だオフコース。紛いなりにもにも俺が仕えていたお方だからなフォロー」
 その口振りから、どうやらリュウセイは《ドラゴ大王》のように、アルテミスと対立しているわけではないようだ。そもそも《ドラゴ大王》がイレギュラーなのだろうが。
「そうか。なら、俺たちと来ないか?」
「ドライゼ……」
 前置きはしたが、しかしまっすぐにそんなことを言うドライゼ。流石に沙弓も少しだけ驚く。
「俺は今、この麗しきハニー」
「沙弓よ」
「に仕えているんだ。お前もどうだ?」
 随分と軽い調子だったが、しかしこのくらいがいいのかもしれない。
 少なくともドライゼとリュウセイは旧知の仲のようだし、沙弓たちでは言い難いことも、ドライゼなら聞き入れやすいだろう。
 そう思ったのも束の間。ドライゼの言葉を受け、リュウセイは、
「はんっ、冗談はよせ。ドントジョーク」
「なに……?」
「俺が仕えているのは、あくまでアルテミス様だ。それはあの方がいない今でも変わりはしない、アンチェンジド」
 ドライゼの申し出を一蹴する。思ったよりもリュウセイは頭が固かった。
「へぇ、凄い忠誠心ね。女ならなんでもいいドライゼとは大違い」
「おいおい、勘違いしないでくれ。確かに俺はすべての女性を大切に——」
「はいはい、そうね。それよりどうする? 私は別に、無理に仲間に引き込むつもりはないけど」
「まあ俺も、無理強いするのはどうかと思うがな……」
 と、そんな諦めて帰ろうとでも言いたくなるような空気が流れだしたその時。
「それに、こんな女がアルテミス様と釣り合うとは到底思えん。ドライゼ、しばらく眠っているうちにお前の頭も腐ったのか、バッド!」
「なんだと……!?」
 リュウセイがドライゼを挑発しだした。いや、単に思ったことをそのまま言っているだけなのかもしれないが、ドライゼは少なからず怒りを見せる。
「言うようになったな、リュウセイ。誰の頭が腐ってるって?」
「お前だユー! アルテミス様への忠誠を忘れたとは見損なったぞ、ディスアピーア!」
「……忘れちゃいないさ。忘れるわけないだろ、馬鹿野郎」
 ドライゼの目が鋭くなった。その鋭いまなざしで、リュウセイを睨みつける。
「そこまで言われて、しかも俺の女も貶されて、引き下がるなんざできねーなぁ……!」
「あなたの女になった覚えは微塵もないんだけれど」
 そんな言葉も、頭に血の昇ったドライゼには聞こえない。聞こえたとしても、聞き入れはしないだろうが。
「ドライゼって、意外とキレやすいんだね」
「仲良くなればいい奴なんだが、挑発すると結構簡単に乗っちまうんだ」
「煽り耐性がゼロなんです」
「ルールー」
「散々な言い様だな……」
「そう、ですね……」
 そんなドライゼの評価はともかく。
 火花を散らすドライゼとリュウセイ。どちらも主張を譲る気はないようだった。
「ハニー、こいつを叩きのめすぞ。今すぐに」
「ちょっとは落ち着きなさい……って言いたいけど、言っても聞かなさそうだし、下手すれば向こうから襲ってきそうだし、いいわ。戦いましょうか」
 デッキを取り出して、戦う意思を見せる沙弓。なんだかんだでノリノリのように見える。
「いいだろう。かかって来い、カモン!」
「後悔するなよ、リュウセイ。俺とハニーの力、見せつけてやるぜ」
 牙を剥くリュウセイと、銃口を向けるドライゼ。
 違う対戦が始まりそうな中、二人と沙弓を飲み込む神話空間が開かれた。



「俺のマイターン! 呪文《邪魂創生》! 《0点男》を破壊し、三枚ドロー!」
「手札補充……」
 沙弓とリュウセイのデュエル。
 沙弓のシールドは四枚あり、場には《復讐のバイス・カイザーΖ》が一体。
 リュウセイのシールドは五枚で、《邪魂創生》を使用したため場にクリーチャーはいない。
「そして呪文《ボーンおどり・チャージャー》を唱え、ターン終了だエンド」
「……私のターン」
 沙弓は引いたカードを一瞥すると、マナへと落とす。
「ここは、攻めようかしら……《バイス・カイザー》でWブレイク!」
「S・トリガーはないぜ、ナッシング」
「ならターン終了よ」
「よし。行くぜ《黒神龍アバヨ・シャバヨ》を召喚! 互いにクリーチャーを破壊するんだ! 俺は《アバヨ・シャバヨ》を破壊するぜ、セルフディストラクション!」
「私は《バイス・カイザー》を破壊……で、いいのかしら? そんなことしても」
「勿論だオフコース。お前の魂胆は見抜いているぜ、シースルー。」
「そう。だったら遠慮はしないわ。私のドラゴンが破壊されたことで、墓地の《黒神龍グールジェネレイド》を蘇らせる」
 《バイス・カイザー》の死に反応して、沙弓の墓地から《グールジェネレイド》が復活する。
 しかし、復活するのは沙弓の《グール》だけではなかった。
「《アバヨ・シャバヨ》が破壊されたので、俺も《グール》を復活させるぜリバイバル! さらに墓地の《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》も回収だサルベージ!」
「回収……?」
「《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》は、ドラゴンが破壊されると墓地から手札に戻せるんだ。そろそろ来るぞ、気を付けろハニー」
「いい加減ハニーはやめなさい。とにかく、手札に入った《リュウセイ》には要注意ね」
「おいおい、これで終わった気になるなよ? 《学校男》を召喚! 俺の《グール》と《学校男》を破壊、ダブルデストロイ!」


学校男 闇文明 (2)
クリーチャー:ヘドリアン/エイリアン 8000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のクリーチャーを2体破壊する。その後、相手は自身のクリーチャーを1体選び、破壊する。
W・ブレイカー


「こっちは《グール》を破壊するしかないわね。私のターン」
 次々とクリーチャーが破壊される。相手もクリーチャーはいないが、しかし手札は多いので、手札一枚の沙弓が不利だ。
「《暗黒導師ブラックルシファー》を召喚。ターン終了よ」
「それで終わりか、フィニッシュ? なら行くぜ、俺のターン!」
 声を張り上げてカードを引くリュウセイ。そろそろ鬱陶しく感じて来る。
(きっとこのターンに、相手は《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を出してくるはず……墓地に送っても回収されるけど、出たらこれで破壊してましょうか)
 沙弓の手札にあるのは《地獄門デス・ゲート》。沙弓の考えは、召喚された《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を《デス・ゲート》で破壊しながら、墓地のクリーチャーを復活させること。8コストのクリーチャーを破壊すればそれなりに大型のクリーチャーが出せるので、そのまま攻め切ってしまおうというわけだ。
 だが、しかし、
「もしやお前、俺がこのターンに俺自身を召喚すると思っているのか、イマジン?」
「っ」
 どうやら、沙弓の考えは見抜かれているようだ。
「お前の考えなどお見通しだと言ったはずだ。俺をあまり見くびるなよ、ダウンプレイ。《絶望の悪魔龍 フューチャレス》を召喚!」


絶望の悪魔龍 フューチャレス 闇文明 (6)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 6000+
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の闇のカードを好きな数、捨ててもよい。こうして捨てたカード1枚につき、相手の手札を1枚見ないで選び、捨てさせる。
W・ブレイカー
自分の手札が1枚もなければ、このクリーチャーのパワーは+6000され、「T・ブレイカー」を得る。


「デーモン・コマンド・ドラゴン……っ」
「《フューチャレス》の登場時能力発動! 俺の手札を一枚捨て、お前の残る一枚の手札も墓地に捨ててもらうぞハンドレス!」
「っ、《デス・ゲート》が……!」
 除去カードを潰されてしまう沙弓。しかもこれで手札はゼロ。
「流石にまずいかも……」
 デュエマにおいて手札がないということは、選択肢を奪われるということ。一枚減るだけでも、プレイの幅が格段に狭まってしまう。
 そんな中、沙弓は切り札を引き当てる。
「来た……! 《ブラックルシファー》進化!」
 大鎌を持つ悪魔は数多の霊魂に囲まれ、闇を取り込み、進化する。

「孤独なる死に逆らい、抗え——《悪魔龍王 デストロンリー》!」