二次創作小説(紙ほか)
- Another Mythology 3話「太陽の語り手」 ( No.9 )
- 日時: 2014/04/19 06:31
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
「私のターン! 《激流アパッチ・リザード》を召喚して、超次元ゾーンから《ガイアール・カイザー》をバトルゾーンに!」
暁のターン。暁は序盤からマナ加速を繰り返し、早い段階で《激流アパッチ・リザード》から《ガイアール・カイザー》を呼び出す。
「一気に攻めるよ! 《ガイアール・カイザー》でWブレイク! さらに《青銅の鎧》でもシールドブレイク!」
「ウゥゥゥ……!」
一度に三枚ものシールドを叩き割り、流れを一気に引き寄せる暁。しかし、
『グゥ、ガアァァァ!』
爆竜トルネードシヴァXX(ダブルクロス) 火文明 (7)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/フレイム・コマンド 7000
相手がこのクリーチャーを選んだ時、自分の山札を見る。その中から名前に《XX》とあるクリーチャーを1体選び、相手に見せてから自分の手札に加えてもよい。その後、山札をシャッフルする。
このクリーチャーが攻撃する時、バトルゾーンにあるクリーチャーを2体選んでもよい。そうした場合、選んだクリーチャー同士でバトルさせる。
W・ブレイカー
「うわ、出た……!」
《コッコ・ルピア》の補助を受け、遂に《トルネードシヴァ》本体が出て来る。しかも《キリモミ・ヤマアラシ》から出ているので、《トルネードシヴァ》はスピードアタッカーだ。
『ウゥ……ガァッ!』
《トルネードシヴァ》が早速攻撃を仕掛けた。同時に《トルネードシヴァ》の鎖が、《ガイアール・カイザー》を縛り付ける。
「っ! 《ガイアール・カイザー》!」
《ガイアール・カイザー》は《トルネードシヴァ》に引き寄せられ強制的にバトルが発生し、一方的に殴り倒されてしまう。そして直後に、暁のシールドが二枚吹き飛ぶ。
「っ、痛……!」
割られたシールドの破片が暁に降り注いだ。その破片が、暁の身を切り裂く。
「なにこれ……っていうか、制服! 買ったばかりなのに——」
などと言っている間もなく、《コッコ・ルピア》《紅神龍バルガゲイザー》の攻撃が繰り出され、《バルガゲイザー》の能力で《フレイムバーン・ドラゴン》が現れる。
「《青銅の鎧》まで……」
クリーチャーは破壊され、逆に《トルネードシヴァ》はクリーチャーを並べて来ている。この戦力差は大きい。
「残りシールドは一枚……ちょっピンチかも……」
ちょっとどころではなくピンチなのだが、どちらにせよ暁は焦燥感を抱いていた。全身を走る痛みが、その焦りを助長させる。
しかし、
「諦めるな!」
「コルル……?」
いつの間にかすぐ横にコルルがいた。もしかしたらずっといたのかもしれないが、気付かなかった。
コルルは弱気になりかけていた暁を叱咤する。
「まだ勝てる可能性は残ってるはずだ! 可能性がある限り、諦めるな!」
「……うん、そうだね。私としたことが、らしくないや」
気を取り直して、暁はカードを引く。そして、
「よし……まずは呪文《超次元ボルシャック・ホール》! 《コッコ・ルピア》を破壊して《勝利のガイアール・カイザー》をバトルゾーンに! そして呪文《鼓動する石版》!」
山札からマナを追加し、追加したカードがクリーチャーなら自分のクリーチャーすべてのパワーが2000上昇する。
この時マナに落ちたのは《次元流の豪力》。クリーチャーだ。
「よし……じゃあパワーアップした、スピードアタッカーの《勝利のガイアール・カイザー》で、《バルガゲイザー》を攻撃!」
素のままならどちらもパワー5000で相打ちだが、今は《勝利のガイアール・カイザー》の方が強い。一方的にバトルで勝利した。
そう、勝利したのだ——バトルによって。
「私の火文明のドラゴンがバトルに勝ったから、手札からこのクリーチャーをバトルゾーンに出すよ!」
《太陽神話》と共に戦ったコルルの戦友の一体、神殿に眠り、遂に目覚めた戦闘龍。その熱き魂が今、解放される。
「暁の先に勝利を刻め——《爆竜勝利 バトライオウ》!」
爆竜勝利 バトライオウ 火文明 (7)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/フレイム・コマンド 8000
自分の火のドラゴンがバトルに勝った時、このクリーチャーを自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
自分の他の火のクリーチャーが相手クリーチャーとバトルする時、かわりにこのクリーチャーにバトルさせてもよい。
W・ブレイカー
『グァゥ……!』
《バトライオウ》の登場により《トルネードシヴァ》がたじろぐのが分かる。それに乗じて、暁は攻めに出た。
「《アパッチ・リザード》で《トルネードシヴァ》に攻撃!」
《鼓動する石版》で《アパッチ・リザード》もパワー7000、《トルネードシヴァ》と相打ちだが、暁はそんなことは狙わない。
「《バトライオウ》の能力発動! 私の火文明のクリーチャーがバトルする時、そのバトルは《バトライオウ》が代わりに引き受ける! 行って《バトライオウ》!」
《アパッチ・リザード》の代わりに《バトライオウ》が前線へと飛び出し、《トルネードシヴァ》とのバトルを行う。そしてバトルの結果は、《バトライオウ》の勝利だ。
「グウゥゥ……!」
これで本体も破壊され、トルネードシヴァは1ターンで三体ものクリーチャーを破壊されてしまったことになる。対する暁の場には、三体のクリーチャーが構えている。
「グ、ガアァァ!」
トルネードシヴァは、《無双竜鬼ミツルギブースト》で《アパッチ・リザード》こそ破壊し、暁の最後のシールドもブレイクしたが、そこまでだ。
「さあ決めるよ! 呪文《超次元シューティング・ホール》で、《ガイアール・カイザー》をバトルゾーンに! 《ガイアール・カイザー》でWブレイク!」
トルネードシヴァのシールドが、《ガイアール・カイザー》によりすべて砕け散った。
「ウゥゥ……ガアァァァァ!」
そして最後に、勝利を司る戦闘龍が駆ける。
「《爆竜勝利 バトライオウ》で、ダイレクトアタック——!」
デュエルが終わり、周囲の空間が変化したような感覚に囚われる。いや、それはさっきまでいた空間に戻った、と言うべきか。
「ふぅ……あ」
一息つくと、暁の手元にカードとなった《トルネードシヴァ》が落ちて来る。
「やったな暁!」
「え? あ、うん。そだね」
よく分からないが、とりあえず《トルネードシヴァ》に襲われる危険は、ひとまず去ったようだ。
「ところで、この《トルネードシヴァ》はどうするの? カードになっちゃったけど……」
「カードになったのは、恐らく君が《トルネードシヴァ》をデュエルで鎮めたからだね。カードを操って戦うという、君のルールでクリーチャーを手なずけた、とでも言うのかな」
「だったら、そいつは暁が持ってた方がいいな。《トルネードシヴァ》も、きっとそれを望んでる」
「そう……なら遠慮なく貰っちゃうね」
微笑みながら、暁は一度《トルネードシヴァ》を見遣り、それをデッキと共にケースへと仕舞い込む。
その時、彼女は気付いた。
「あ! そうだ……今、何時!?」
暁は慌てて携帯を取り出すが、少なくとも一時間は経過しているはずなのに時間は変わっておらず、アンテナも立っていなかった。どう見てお圏外である。
「それは君の世界の通信端末だよね。それは、他の星にいても自分の星と通信できるのかい?」
「星!? そんな遠くまでは電波届かないな……やばい、どうしよう……」
「どうしたんだ?」
「早く家に帰って、夕ご飯作らないと……!」
深刻な面持ちでそんなことを言う暁。少々場違いな発言ではあるが、リュンもコルルも、その意味は理解していない。
「リュン! どうにかして帰れないの!?」
「んー……まあ、ここまで一瞬で飛べたんだし、もう一度地球に行くことも不可能じゃないと思うよ。ちょっと待ってて」
と言って、リュンはまた古ぼけた携帯をのろのろと操作する。
「えーっと、こう、だった、かな? いや、こうか……」
「なにしてるのさ! 早く早く! ちょっと貸して!」
「これでオーケーって、ちょっ、それ、待っ——」
暁がリュンの携帯をぶんどると同時に、携帯から光が発せられる。
そして暁は、その光に飲み込まれていった。
「……ここは」
見慣れた通学路。夕焼の光は闇夜に浸食されつつあり、暗くなりかけている。
「あきらちゃん!」
ふと、大声が暁の耳に届く。柚だ。
「心配しましたよぅ……急にいなくなって、わたしどうしたらいいか——」
「ゆず……今、何時?」
「え?」
「今、何時!? 早く!」
「え、えーっと……七時、ちょっと前です」
「うわ、もうそんな時間なの!? やばいよやばいよ、早く帰らないとお兄ちゃんがお腹空きすぎて死んじゃうよ!」
「いや、ゆーひさんはそのくらいじゃ死なないと思います……て、あ、あきらちゃん!」
「じゃあね、ゆず! また明日!」
まだ困惑している柚に一方的に別れを告げると、暁は一目散に家へと駆け出していった。
空城暁。彼女の兄、空城夕陽が、やがて彼が巻き込まれる“ゲーム”と称される神話戦争における重要人物になるのと同様に、彼女もまた、《太陽神話》を継ぐものの片割れとして、兄とは別の形で名を残すことになる——