二次創作小説(紙ほか)
- 27話「ダークサイド」 ( No.90 )
- 日時: 2015/10/01 01:31
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
《ブラックルシファー》が進化し、沙弓の切り札《デストロンリー》が現れる。
「《デストロンリー》を召喚した時、他のクリーチャーをすべて破壊よ!」
「《フューチャレス》がやられたが……ドラゴンが破壊されたことで、《グール》を復活リバイバル! 《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を回収サルベージ!」
「なんでもいいわ。《デストロンリー》は他に自分のクリーチャーがいなければパワープラス5000され、Tブレイカーになる。《デストロンリー》でTブレイクよ!」
《デストロンリー》が放つ漆黒の稲妻が、リュウセイのシールドを貫く。これでリュウセイのシールドはゼロだが、
「甘いぜスウィート! S・トリガー発動! 《黒神龍オドル・ニードル》! 《旧知との遭遇》! 《インフェルノ・サイン》!」」
「嘘っ、S・トリガーが三枚!?」
「《オドル・ニードル》を召喚。《旧知との遭遇》で、墓地の闇クリーチャー、《アバヨ・シャバヨ》と《学校男》を回収。さらに《インフェルノ・サイン》で、墓地から《偽りの名 ドレッド・ブラッド》をバトルゾーンへ!」
場のクリーチャーと手札がまとめて増える。せっかく場を一掃したというのに、むしろ増量してしまった。
「残念だったな。そして俺のターン、俺のマイ切り札にして、俺自身! ワンセルフ! 《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を召喚!」
リュウセイ・イン・ザ・ダーク 闇文明 (8)
クリーチャー:ブラック・コマンド・ドラゴン 8000
闇以外のクリーチャーは、バトルゾーンに出すときタップして出す。
自分の闇のクリーチャーはすべて「スレイヤー」を得る。
W・ブレイカー
自分のドラゴンが破壊された時、このクリーチャーが自分の墓地にあれば、このクリーチャーを自分の墓地から手札に戻してもよい。
遂に現れた、暗黒面に目覚めし黒いリュウセイ——《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》。
『俺の能力で、俺の闇クリーチャーはすべてスレイヤーとなる! 《グール》で《デストロンリー》を攻撃だアタック! スレイヤー能力でバトルの勝敗に関係なくクリーチャーを破壊するぜデストロイ!』
「くっ……でも、ドラゴンが破壊されたから、私の墓地から《グール》を復活させる!」
『無駄な足掻きだウェイト! 《オドル・ニードル》でシールドをブレイク!』
《オドル・ニードル》の攻撃で、当然《オドル・ニードル》自身がタップされる。これで沙弓のクリーチャーは《オドル・ニードル》を攻撃するしかなくなった。
『ターンエンドだ。次のターンにはこのデュエルを終わらせてやるぜ、ゲームエンド』
「……まずいわね」
《リュウセイ》の場には四体のドラゴン。沙弓の場には《グール》が一体。あと一撃でも入れれば《リュウセイ》を倒せるが、それには《オドル・ニードル》が邪魔だ。
「私のターン……」
沙弓はカードを引く。だが、この状況を打開できるようなものではない。
「やばいぞ、ハニー」
「そうね……」
現状では打つ手がない。どうしたってこのターンではとどめを刺せず、次のターンまで生き延びる確証もない。
そんな折、《リュウセイ》は嘲笑するように沙弓とドライゼを見下ろす。
『ふん、やはり大したことないな、ウィーク』
「なんだと……!」
『真実を言ったまでだトゥルース。それに』
《リュウセイ》はどこか怒気を含んだ目でドライゼを見据える。
『お前もだドライゼ、セイム』
「なに……?」
『俺はお前のことは認めていたんだがな。アルテミス様のことを一心に思うお前は、凄い奴だと思っていた。グレイト』
だが、
『しばらく眠っているうちに、ここまで腑抜けになっているとは思わなかったぞ。お前はあの時のことを忘れたのか!? フォーゲット!』
「あの時……?」
恐らく、まだ十二神話がいた時に起こった出来事だろう。当然それを沙弓が知る由もない。
だが《リュウセイ》は、ドライゼを非難するように続ける。
『アルテミス様が力を失った時、自分の力を削ってまで彼女を救ったお前はどこへ行った!? 俺はあの時なにもできなかった……あんな思いはもうごめんだ。だからあの方のことだけを、一心に思い続ける。それは俺が封印されていようと、あの方がこの世界にいなかろうと関係ない! なのにお前は……! 答えろドライゼ! リプライ!』
「…………」
捲し立てるような《リュウセイ》の言葉に、ドライゼは押し黙った。顔を伏せ、表情が見えない。
「……忘れるわけねぇだろ」
だが、やがてぽつりと声を漏らす。
「俺もお前と同じだ。あの人のことを忘れたことなんて一度もないし、あの人への忠誠も薄れちゃいない。ここにいなくても、アルテミス嬢は俺の大事な主だ」
『だったらなぜだ! ホワイ!』
「あの人のためだ」
即答だった。
ドライゼの静かな圧力に《リュウセイ》は気圧される。
「俺とお前とじゃ、根本の考えが違うんだよ。どっちの頭が腐ってるか、教えてやる。ハニー——いや、沙弓」
「……オーケー」
ドライゼと《リュウセイ》の会話の中身は理解できなかったが、しかし自分がすべきことは理解した。
すべて、自分の仲間が教えてくれたことだ。
「《グール》を召喚。もう一体の《グール》で《オドル・ニードル》を攻撃」
『それだけか。だったら、《オドル・ニードル》が破壊されたことで、俺の墓地の《グール》を復活リバイバル! そして……このターンで終わりだフィニッシュ! 《グール》でシールドをWブレイク!』
《グール》の吐き出す黒い炎が、沙弓のシールドを二枚破壊する。
『《ドレッド・ブラッド》で最後のシールドをブレイク! そしてとどめだ! 《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》で、ダイレクト——』
「待ちなさい、S・トリガーよ」
沙弓の最後のシールドが光り、その光が収束する。
「呪文《デッドリー・ラブ》。私の《グール》を破壊して、《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を破壊よ」
「それがどうした! それでは俺の勝ちは揺るがないぞ、ノープロブレム!」
「どうかしらね?」
沙弓は悪戯っぽく微笑むと、手札のカードを一枚抜き取る。
「私のコスト4以上の闇のクリーチャーがカードの効果で破壊された時……このクリーチャーをバトルゾーンに出すわ。行きなさい《月影の語り手 ドライゼ》!」
月影の語り手 ドライゼ 闇文明 (4)
クリーチャー:ダークロード/ドラゴン・ゾンビ 2000
自分のコスト4以上の闇のクリーチャーがバトル以外で破壊された時、このクリーチャーを手札からバトルゾーンに出してもよい。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手の手札を1枚見ないで選び、捨てさせる。
「な……《ドライゼ》……!」
「俺の登場だぜ。そしてその時、相手の手札を一枚見ないで選び、捨てさせる。どいつにするか、ハニー?」
バトルゾーンに出ると同時に、銃口をリュウセイへと向ける《ドライゼ》。
「そうねぇ……右三番目とか、どうかしら?」
「右三番目だな。了解した」
《ドライゼ》は引き金を引き、弾丸がリュウセイの手札目掛けてまっすぐに飛んで行く。そして右から三番目のカードが撃ち抜かれた。
「っ、《ハンゾウ》が……!」
「ビンゴ。やっぱシノビを握ってたわね。で、私のターンでいいかしら?」
「ぐぅ……!」
もはやなにもすることができないリュウセイ。
そんな彼に、旧友の銃が向けられる。
「《月影の語り手 ドライゼ》で、ダイレクトアタック——!」
「負けた、ルーズ……」
神話空間が閉じると、リュウセイは力が抜けたようにその場に横たわる。
だが、それでもドライゼを睨みつけていた。
「ドライゼ……もう一度問う、クエスチョン。お前はなぜそのような女に仕えるのだ……お前にとってのアルテミス様は、どこへ行ったんだ……!?」
負けて勢いがなくなっているが、しかし目は本気だ。本気で、ドライゼに疑問をぶつけている。
そして当のドライゼは、
「……言っただろう。俺もお前と同じだ。いつだってアルテミス嬢のことを考えているさ」
「ならばなぜ、その女に仕える!?」
「それがアルテミス嬢のためになるからだ」
「っ!」
リュウセイはその一言で、気圧されたように言葉を失う。逆にドライゼは、次の言葉を紡いでいた。
「今のこの世界にはアルテミス嬢はいない。だがこの世界は、あの人が生きた世界だ。十二神話が守り抜いた、大切な世界なんだ」
だが、今のこの世界は荒廃している。規律も統制もなく、乱れ切った世となっていた。
十二神話がいた頃とは、まるで違う様相を呈しているのだ。
「俺はいつかあの人が帰って来ると信じている。だのに、この世界が荒れたままでいいと思うか?」
「それは……」
「だから俺は、あの人が戻って来るまでにこの世界を元のあるべき姿に戻す。だがそのためには、彼女たちの力が必要なんだ」
そう言って、ドライゼは沙弓たちを見遣る。
「しかし彼女たちは、この世界を知らな過ぎる……彼女たちを導き、共に戦うのが、クリーチャーたる俺たちの役目。リュウセイ、お前はそうは思わないのか?」
「……その通りだな、ザッツライト」
リュウセイは、ゆっくりと首肯した。
「確かに、お前の言う通りだ。アルテミス様がいない今、彼女を思うだけではなにも起こらない。それならば、あの方のために今できることをするのが、真の忠誠というものだな……ロイアリティ」
リュウセイは身体を起こすと、今度は沙弓を見据える。
「沙弓と言ったか。アルテミス様のため、俺もお前の力になるぞ、フォロー!」
「あ、うん……よろしく」
急に威勢のよくなったリュウセイに戸惑いながらも、沙弓はリュウセイを受け入れる。
次の瞬間、リュウセイはカードの姿となった。だが一枚ではない。
「……? これは……」
『元々俺は、二つに分かれたリュウセイの片割れだ。お前の悪魔龍の力の影響で、さらなる姿を得たようだゲット!』
「……頼もしいわね、本当。ドライゼとは大違い」
「おいおい、冗談だろうハニー? リュウセイにとどめを刺したのは俺だぜ?」
「美味しいところだけ持って行ったのよね」
「そ、その言い方はあんまりだろ……」
そんな沙弓とドライゼのやり取りを眺めるリュウセイは、ふと言葉を漏らす。
「……楽しそうだな、ドライゼ。ハッピー」
「ん? ああ、楽しいぜ」
「そうか……やはりお前は変わったな、チェンジ」
「……?」
リュウセイはどこか懐かしむように言うと、それっきり黙ってしまう。
しかし心なしか、彼の表情は柔らかくなっているように見えた。