二次創作小説(紙ほか)

烏ヶ森編 3話「焦土の語り手」 ( No.98 )
日時: 2014/05/24 17:11
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)

 中から熱気と火花を発しながら、焦土の殻が綻び、破れる。そして——
「……僕を目覚めさせてくれたのは、君かな」
 二頭身の体躯だが、人の形をしている。侍のような羽織と各所を覆う部分的な鎧、そして腰に差した軍刀が目を引く。
「え、あ、うん……君は?」
「僕の名はテイン。《焦土の語り手 テイン》だよ」
「俺は一騎……えっと、よろしく?」
「うん、よろしく」
 テインは物腰柔らかに言う。
「……あれが十二神話の配下とやらか?」
「そうだね」
「火文明のクリーチャーにしては、随分と落ち着いてるもんだな」
「僕も少しびっくりだけど、まあそういうクリーチャーもいるんじゃない?」
 鎧やら軍刀やら、物騒なものを携えてはいるものの、テイン自体は非常に温厚そうだ。
「さて、一騎だっけ……君がこれから僕の主になるんだね」
「えっと、たぶんそうなるのかな……」
「だったら、君に渡しておきたいものがある」
 そう言ってテインは、フワッと浮きながら壁の一ヶ所まで飛んで行く。そして、幾何学的な模様に手を触れた。
「ここは僕だけじゃなくて《焦土神話》……マルス隊長と共に戦った戦友が眠る地でもあるんだ。そして同時に、武器庫でもある」
「武器庫?」
「そう、武器庫。彼は様々な武器もここに封印したみたいなんだけど、そのうちの一つ、超次元ゾーンからやってきた龍の力を宿す武器を、解放するよ」
 すると、テインが触れた箇所から火の玉が発生し、ゆっくりと一騎の下へやって来る。そして、一騎の目の前で止まり、手の上にカードとして落ちた。
「これは……」
「銀河の剣、そしてそれを扱う者……彼らも君の力になってくれるよ。あと、確かもう一体、封印が解けたはず……」
 そう言って今度は別の壁面へ移動し、また幾何学模様に触れる。そして再び火の玉が発生し、それが一騎の下へと向かっていくのだが、
「っ、なに……!?」
「炎がでかくなってる……!」
 火の玉は途中でさらに燃え上がり、巨大な炎の塊となった。
 そしてその炎の中から、なにかが飛び出す。
「なっ、なにあれ!?」
「《涙の終撃オニナグリ》……火文明の進化ヒューマノイドだ!」
 オニナグリは降り立つと、拳を振り上げて雄叫びを上げる。そしてその振り上げた拳を、地面に振り下ろした。
 地面が抉れ、岩の破片が四方八方に飛び散る。
「な、なんかやばくないか、これ……?」
「テイン、これって……」
「暴走か……永い眠りから目覚めたせいで力の制御が利いていないか、寝起きで気が立ってるのかも。僕の仲間だったクリーチャーたちは、血の気が多いから」
 そう説明するテイン。そして目の前のオニナグリは、拳を振り上げたままこちらを睨みつけ、のしのしと向かってくる。
「なんか、こっち来るんだけど……!」
「寝起きで機嫌が悪いなんて理由で殺されたらたまんないっての! どうにかならないのか?」
「僕にはどうしようもないけど……一騎くんとテインくんなら、どうにかなるかもね」
「俺……?」
「そうだよ」
 リュンの言葉を受けて、テインが一騎の傍に寄る。
「お頭さんを倒して、気を落ち着かせるんだ」
「いやむしろ怒りそうだけどな、それ……」
 ミシェルの言うことももっともだが、しかし実際は戦うことでクリーチャーは鎮まるのだ。それを知るのは、この後の事である。
「で、でも、どうやって戦うんだ? 殴り合いなんて無理だよ」
「僕が戦いの場を用意する。だから、君の力と、君の仲間の力で彼を倒すんだ」
「俺の仲間……?」
 ふと一騎の目に留まったのは、腰に吊り下げていたデッキケース。
 もしや、と一騎の中でとあるイメージが像を結んだ。
「行くよ一騎! 準備はいいかい!」
「……ああ! 頼む、テイン!」
 刹那、テインを中心とする、一騎とオニナグリの周囲の空間が歪みだす。
 そして三者は、その歪んだ空間の中へと導かれていった。



 自分の周囲を回っているのは、五枚の盾。
 目の前に浮いているのは、五枚の手。
 そして残る三十枚が、自身の横に積み重なって置いてある。
「デュエマ……」
 そう、その光景は、まるでこれからデュエマの対戦を始めるかのようであった。
「戦えって、そういうこと……」
「そうさ」
「テイン……!」
 いつの間にか、すぐ横にテインが浮いていた。
「ここは神話空間。君たち他の星の生命体が、僕らクリーチャーと同じ立場に立って戦う場所さ。ルールは君たちの知る戦い方と同じ。だから、戸惑うことはない」
 しかし、
「お頭さんは強いよ。なにせ、マルス隊長も一目置いていた特攻隊だからね。一筋縄でいく相手じゃない」
「……大丈夫だよ」
 一騎は目を瞑ると、目の前に浮く五枚の手札を取った。
「デュエマなら……勝つ自信はある」
「うん。じゃあ見せてもらうよ、君の戦い方を」
 そう言って、テインは少しだけ一騎から離れる。
 そして一騎とオニナグリのデュエルが今、開始された。
「まずはマナだ。《ピーカプのドライバー》でマナチャージ!」
「ウゥ——」
 オニナグリもマナチャージをして、一騎のターン。
「俺のターン、ドロー。次は……《氷牙フランツⅠ世》をマナチャージ。そして出て来て。《熱湯グレンニャー》を召喚!」
 《グレンニャー》が出た時の能力で、一騎はカードを一枚引く。
「グウゥゥゥ……!」
「《爆裂B—BOY》か……俺のターン! 呪文《超次元キル・ホール》!」
 オニナグリの場にはブロッカーがいないので、超次元ゾーンからサイキック・クリーチャーのみが出て来る。
「出すのはこのクリーチャーだ! 《時空の戦猫ヤヌスグレンオー》!」


時空の戦猫(せんびょう)ヤヌスグレンオー 火文明 (4)
サイキック・クリーチャー:フレイム・モンスター 4000+
M・ソウル
K・ソウル
このクリーチャーに覚醒した時、バトルゾーンにある自分のクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーは「パワーアタッカー+2000」と「スピードアタッカー」を得る。
ループ覚醒—自分のターン中に水のクリーチャーをバトルゾーンに出した時、このクリーチャーを《時空の戦猫シンカイヤヌス》のほうに裏返す。


 超次元の門が突き破られ、炎を纏う戦猫が姿を現す。
 ループ覚醒により、水文明のクリーチャーが出れば《時空の戦猫シンカイヤヌス》に覚醒する《ヤヌスグレンオー》。このクリーチャーを核に、水と火のクリーチャーを交互に繰り出しながら攻めていくのだ。
 だがオニナグリのターン。突如として《ヤヌスグレンオー》は爆散した。
「っ、なに……!?」


爆炎シューター マッカラン 火文明 (3)
クリーチャー:ヒューマノイド爆 3000+
マナ武装:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンに火のカードが3枚以上あれば、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選んでもよい。そうした場合、その選んだクリーチャーとこのクリーチャーをバトルさせる。
バトル中、このクリーチャーのパワーは+1000される。


 オニナグリの場にも、崩れ落ちていくクリーチャーの姿があった。
「強制バトル……《マッカラン》のマナ武装で、相打ちにされたのか……!」
 相手も《ヤヌスグレンオー》が厄介なのは分かっているようで、
「まだだ! 《アクア・ジェスタールーペ》を召喚! 連鎖で山札を捲って……《グレンニャー》をバトルゾーンに! 《ジェスタールーペ》の能力も合わせて、二枚ドロー。もう片方の《グレンニャー》でシールドをブレイク!」
「グウアァ!」
 《グレンニャー》がブレイクしたシールドが、光の束となって収束する。そしてその光は、一体のクリーチャーとなった。
「《タイガーグレンオー》……! くっ」
 S・トリガーの《火焔タイガーグレンオー》の能力で、登場時にパワー2000以下の《グレンニャー》と《ジェスタールーペ》が焼き払われる。
 これで一騎のクリーチャーはゼロになった。
「っ、まずい……!」