二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 〜星々の系譜〜  ( No.101 )
日時: 2015/06/22 02:44
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

「いやー、それは不運でしたね、レン先輩」
「全く、呪いの装備とはこのことだ」
 
 一通りノゾムとホタルに事情を話した後、玄関に入るとそこには既に武道場のような講堂が広がっていた。そして、最奥には大きな扉があった。
 そして、周りには座禅を組んでいる人型のクリーチャーと思しき連中。

「あれは……《三界 ザゼンダ》達か?」

 こそこそ、と玄関の隅に隠れ、そのクリーチャーの名前を呼ぶヒナタ。ジャスティス・ウィングの侵略クリーチャーだ。
 見ると、中央に居るリーダーと思われるそれが、何か叫んでいる。

「皆さん、精神を統一させるのです! 後三回! 後三回、座禅10分のセットをこのまま行いますよ! その後、いつも通り何か胡散臭そうな雰囲気のある老婆に変装して、幸運のペンダントを配るのです!」
「イエス、南無!! 我は仏の下にあり!」

 洒落か。まさに、三回ザゼンダである。

「何よ、イエス南無(ナム)って。これじゃもう、何教じゃ分かったもんじゃないわね」
「どうする、ヒナタ。まずは奴らが隙を見せるまで待機するか--------?」

 とヒナタに問うたレンであったが---------既に、隣にヒナタは居らず。
 
「っしゃー! 行け、白陽!」
「頼むぜ、クレセント! 叩きのめしちまえ!」
「何で勝手に飛び出してるのだ、貴様らはあああああああ!!」

 レンの叫び虚しく、カードから2体が飛び出してくる。
 が、しかし。2体は何やら気まずそうな雰囲気を醸し出しており。

「……」
「……」

 無理もあるまい。先ほど、クレセントは白陽に酷いことを「何故か」言ってしまっており、喧嘩をした後も同然だったからだ。

「何で黙りこくってんだ、てめーらはああああああああああ!!」

 と、理由は分かってはいるが納得がいかないヒナタが2体に突っ込んだその時であった。ザゼンダのうちの1体が叫ぶ。

「あ、あいつら、さっき私がペンダントの配布をしていたときに家の中で、どう考えてもこの後○○○とか△△△とか、うへへこっちの口は正直だぜ、とかそんな感じになりそーな雰囲気だったクリーチャー共ですよ! ムカついたので、言霊の術吹き込んで酷いこと言わせて仲違いさせてやりましたが」
「何? マジですか。ナイスジョブでしたね。我らブッディ教の教えに従い、”リア充死すべし”に従った善行でしょう」
「いやー、でもまさか此処まで来る------------」

 次の瞬間、言ったザゼンダの体が文字通り、”粉砕”された。クレセントが、音速で距離を詰め、鉄槌を振り下ろしたからである。
 衝撃波で近くに居たもう1体も吹っ飛び、壁にめり込む。そこに白陽が火の玉を飛ばして焼き尽くし、完全に息の根を止めた。
 一瞬の出来事に、その場に居た全員が沈黙した。
 
「白陽? さっきはごめんね? こいつらやっちゃお?」
「そうだな、クレセント。同意見だ」
「ねーえ、白陽? 後で、さっきの続き……シよ?」
「ふん、足腰立たなくなっても知らないぞ?」
「えへへー、白陽大好き。それくらいしてくれないと」
「全く、お前も人のことは言えないな」
「駄目だこいつら、早く何とかしねえと」

 殺意とラブラブオーラが纏わりつく2体に、嫉妬の感情しか浮かばないヒナタ。
 しかし、まだ安心してはいられない。まだ、敵は残っている。

「おいいいいい、異教徒だぁぁぁぁ!! 排除しろおおおおお!!」

 あちこちから声が上がった。同時に、何体かクリーチャーが現れる。着ぐるみのような天使のクリーチャー、《九極 デュエンジェル》の軍団だ。
 
「雑魚は私達に任せろ! この程度の連中、私達が居なくてもどうにかなるだろう!」
「俺とノゾムが決闘空間を開く! 早く奥へ!」
「先輩、自分の呪いは自分で解いて下さいよ!」
「ああ、分かった!」

 一騎当千とも言える火力で次々にクリーチャーを薙ぎ倒していく2人を横目に、レンとコトハ、ホタルにフジは奥へ進む。

「……しっかし、想像以上のラブラブっぷりね。異種族にしては」
「あれはもう……教会建てるしか無いですね」
「くだらん。胸糞が悪いぞ、俺様は」
「とにかく、奥の部屋に敵の親玉が居るということだ。行くぞ!」

 レンが先頭に、そのまま扉を開いた。
 そこには、かなり長い通路が広がっていたが、番人と思われるクリーチャーが徘徊しており、こちらを見るや襲いかかってきた。
 しかし。

「ワシに任せい!」

 飛び出したハーシェルが、角をクリーチャーへ突き立てる。そして、ホタルとフジが進み出た。

「此処は私達に任せてください!」
「俺様も久々に、決闘空間でクリーチャーを片付けてやろうかね」

 レンはしばらく黙り込む。しかし、頷くとすぐさま駆け出し、そのまま抑え込まれたり、決闘空間に引きずりこまれているクリーチャーを潜り抜け、そのまま奥へ走り出した。
 コトハもその後に続く。

「分かった! 皆の思いは踏みにじるわけには行かない!」
「行くわよ、レン!」

 叫びながら、いつも先陣をきっていたヒナタの気持ちが、何となく分かった気がした。


 ***


 最奥部の部屋。そこには、金色の飾りをつけた派手な仏像が安置されていた。先までの通路にいたクリーチャーが最終防衛ラインだったのか、他には何も見られない。
 しかし、直感で感じた。
 
「……クリーチャーか?」
「そうみたいだけど……」

 と、呟いたそのときであった。ゴゴゴゴゴゴ、と重い音を立てて仏像が動き出す。仏像の中から、力士象のようなクリーチャーが現れた。

「ククク、遂に此処に来たか。異教徒め」

 クリーチャーは、神々しい光を放ち、座禅のポーズを取った。
 そして、槍を片手に顕現させ、レンとコトハの前に立ち塞がる。
 光のジャスティス・ウイングの侵略者、《三界 カッツイレル》だ。

「コトハ、下がっていろ。こいつは僕が倒す」
「だ、だけど!」
「安心しろ。僕はもう、負ける訳には行かないんだ!」

 ギリッ、と拳を握り締める。 
 1人の少女の表情が浮かんだ。変化に乏しくていつも笑わなくて、でも内に秘めた感情は大きくて。
 ----------僕はかつて、彼女の思い出を奪ってしまった。それが正義のためだったとはいえ。それが仲間を守るためだったとはいえ。
 ギリッ、と歯を食いしばる。
 ----------だから僕は染めることにした。何にも染まらなかった透明のデッキを、漆黒に。

「ほほう。戦うというのか? この《三界 カッツィレル》は、此処で座禅を組むのが暇で暇で----------人間共の苦しむ顔を見るのが趣味なのだよ。貴様もその1人のようだが、それで私の邪魔をしに来た、と」
「悪いが、貴様のやっていることは僕にとって邪魔なんでな。パックを引いてもアタリが来ないなら、それは金の無駄遣い、美しくない」

 それに、と彼は続けた。


「僕は貴様の金メッキで覆われた腐った性根に、激しくキレているのでな!!」


 次の瞬間、黒い霧が現れる。

「気をつけて、レン! 相手は侵略者! 速攻で潰される危険性が高いわ!」

 コトハの声がした。しかし、レンは振り返らなかった。
 ----------この程度でくたばっていては、スミスに、あいつに笑われてしまう!!
 絶対、この戦い。負ける訳にはいかなかった。

「教えてやる、”三回カツ丼”」
「三界カッツイレルだ。死ぬか人間クソヤロー」
「一回で切れたわ。酷い僧ね」

 レンは、自らのデッキを掲げて叫んだ。


「----------”美学に勝る不運無し”ということを!!」


 ----------次の瞬間、決闘空間が顕現した。