二次創作小説(紙ほか)

短編2:てめーが不幸なのは義務なのであって ( No.103 )
日時: 2015/06/25 06:09
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「終わったな」

 夕陽が沈む空、そして何も残っていない空き地。
 寺院はクリーチャー界からやってきた自警部隊と思われる連中が解体していった。また、それらのクリーチャーも捕らえられて、皆仲良く超獣界へ連行されていったのだった。思ったとおり、この寺院はカッツイレル率いる光の”侵略者”達の郎党がこちらに構えていた隠れ場だったという。

「全く、あのペンダントの所為で色々酷い目に遭わされたな」
「ま、でもよ、あのペンダントもいざ無くなってみると----------って感じじゃね?」
「悪いが、あんなものに愛着が沸くほど、僕は馬鹿ではないぞ」

 至極当然である。

「大事にならなくて良かったぜ。あー、疲れた」

 フジが汗を、ハンカチで拭いながら言った。そのまま、タブレットを操作して連絡をとっていた。
 そうして、各自解散となったわけである。

「何であれ、事件解決ですね!」
「そうっすよ、レン先輩。不幸キャラが定着しなくて良かったんじゃないですか?」
「ま、俺は悪いことばっかりでも無かったがな、”コレ”が当たったり、コトハのパン------------」

 
 ドギャッ


 残念。ヒナタの脳天に当たったのは、コトハのパンチであった。レアカードが当たったのは、紛れも無い事実ではあるのだが。
 
「全部解決ね。良かったわ、本当」
「嗚呼。全く、これで不幸の連鎖から解放される」

 レンからすれば、本当に大変な一日であったことは言うまでも無い。しかし、もうこれで自分が悲惨な目に遭うことも無いであろう。

「おい、そういえばヒナタ、ノゾム。白陽とクレセントはどこ行った?」
「え? 知りませんよ」
「……あのクソリア獣共」
「マジで何処に行った? 折角-----------この、高圧発射装置、”ネオ・メタルアベンジャーソリッドサイクロンジェットメタルアベンジャーソリッド二連装砲”を試してみようと思ったのだが。略してMASだ」

 言ったフジは、どこから引っ張り出して来たのか、指を弾くとざざざっ、と武闘財閥の社員と思われる男達が現れ、何か布を被ったどでかいものを取り出してきた。
 そして、覆っていた布が外され、それの全貌が明らかになる。
 それは--------------思ったとおり、どでかい二門の大筒であった。
 思い出せば、人間大砲同好会の連中が使ってた大筒も武闘財閥の開発だった。
 それを見たヒナタは、おおー、と感嘆の声を漏らす。
 何とまあ、雄雄しい外観であろうか。

「完成度たけーなオイ」
「メタルアベンジャーソリッドって二回言ったわよ! あるわけないでしょ、こんな慨視感ありまくりの高圧発射装置!! 」

 尚、どんな外観をしているかは”お察し下さい”。分からない人はグーグル先生に相談だ。

「尚、分かっていると思うが二連装砲になっていてだな」
「最初から2人同時に飛ばす前提かよ」
「つーわけでだ、ヒナタ、ノゾム。お前らに頼みがあるのだが----------ペットがいないなら、飼い主が責任取るべきだよな? なぁ?」
「え、ちょ、何で凄い力で俺らの腕掴んでるんスか、フジ先輩」
「……ヤな予感しかしないですって、やめてください、ちょ、おま、やめ------------------」


 ***


「どわあああああああああああああ」
「ぎゃあああああああああああああ」


 ああ、哀れなり。ネオ・メタルアベンジャーソリッドサイクロンジェ(以下略)二連装砲の餌食になった2人は、そのまま何処か知らない方向へ飛ばされて言ったのだった。
 その光景を見ながら、フジは-----------すっげー爽やかな笑みを浮かべていた。

「超☆エキサイティン」
「フジ先輩、こんなことして良かったのでしょうか」

 呆れたような顔で、レンがフジに問うも、当の彼は無表情のまま「もーまんたい、もーまんたい、心配要らん」と言う。

「ぶっちゃけると、砲口の向きも適当でどこに落ちるか分からないが」
「ちょ」
「だが、大丈夫だ。ヘルメットも防護服も、実はクリーチャー世界の光文明の装甲技術を取り入れたもので、海にでも落ちん限りは死なないようになっている。発信機もつけてるし、何処に落ちたかは、まあ分かるだろ」

 実は武闘財閥は、クリーチャー界の技術を一部取り入れているのである。数少ない、クリーチャーを認知し、研究している組織、それが武闘財閥であるが、それらも自社の商品へ(よもやそんな技術を使ったと公にするわけはないが)取り入れているのである。
 それは、人間大砲同好会が知らずに使っている例の高圧発射装置も例外ではなく。

「その海に落ちたときは」
「運が悪かった、事故だった、過失だった、と思って諦めるっきゃねーな、これは」
「何てアバウトな!」
「ちょ、助けに行くわよ!!」
「嘘だ、ちゃんと水にも浮く心折……じゃなかった、親切設計だ。ほっといても構わん、ギャグ補正で何時かは帰ってくるさ」
「あんたが言うといちいち心配になるのですが、それは」

 コトハが手厳しい突っ込みをきかせるも、それをガンスルーするフジ。本当に歪み無い先輩である。
 頭脳も、腕っ節もピカイチなのだが、何分発想が破滅的かつ天災的なのだ。

「フジ先輩! 今度、取材させて貰っていいですか?」
「取材か? 良いだろう」
「はい、ありがとうございます!」
「ちょっと待ちなさい、ホタル。その人は危ない」

 こうしてコトハが止めるのも無理は無い。
 そんな光景を見ながら、レンは1人夕陽を眺めていた。遠い日を思い出すように。


「これでまた、僕は強くなれた気がする。スミス-----------ゆっくりお休み」


 ***


 互いの甘い呼気が顔に触れ合う。純白の彼女の体毛は、いつにも増して艶が増えており、より色っぽかった。
 此処は、武闘財閥が管理している巨大ビオトープ(という名の森林)であった。確かに、うっそうとした此処ならば、誰も来ないだろう。
 そんなこと、この2人が知るわけもないのであるが。
 たまたま近くにあったこの場所を発見し、(クリーチャーだから当然のようにカード状態で空中移動が可能)ようやくやりたい放題できるわけであった。いや、小説のレーティング的に余りやりたい放題されたら作者が困るのであるが。
 
「えへへー、流石に此処なら誰も来ないよね?」
「しかしだな、クレセント……風邪を引くんじゃないか、これは」
「白陽が居るから寒くないもーん」
「……可愛い奴だ」

 何気なく飛び出たその言葉に、クレセントは動転したようにあたふたし始める。

「恥ずかしいよぅ、白陽……」
「私とお前の仲だ、何も恥ずかしいことは無いじゃないか」
「も、も、もう……」

 ぎゅっ、と抱き着いてくる彼女。余程、恥ずかしかったらしい。
 気分も高揚してきたころだ。彼女の顎に、手を掛けてくいっと顔を自分の方へ向け、唇を重ね合わせる。

「……クレセント、もう私は押さえきれな------------」

 



「どわああああああああああああああああああああ」
「ぎゃああああああああああああああああああああ」



 -----------言い終わる前に、どごおおおおむ、という音と共に2つ、何かが地面に突っ込んできた。
 完全に邪魔をされたとしか言いようがないのである。

「何だ!! 何なんだ!? 今度はキスの前に------------」
「白陽、あれ見て!!」

 見れば、そこには見覚えのありまくるのが、約2名。しばらく動かなかったが、ようやくもぞもぞ、と動き出す。
 ヘルメットと防護服に身を包んだ、ヒナタとノゾムであった。

「げほっげほっ、ノゾム、大丈夫か?」
「先輩、オレは何とか……あれ? クレセント、何で白陽と一緒に、こんなところに居るんだ? あれ、何で怒ってらっしゃるのでせう」
「あー、お前ら野外プレイが趣味だったのか。……あ、ヤベ」

 ビキッ、と青筋の立った2体を前に最早逃げる道筋も絶たれ、ヒナタとノゾムは何となく、この後の展開を察したのだった。


『だから何で邪魔してくれるんだあああああああああああああああ!!』


 バキッ!! ドガッ!!

 それはそれは恐ろしい一撃であった。白陽の神通力で体を空中に固定され、クレセントの鉄槌がバットみたく2人を打ったのである。防護服が無ければ死んでいた。
 2度目の空中飛行をする中で、ふとノゾムは思った。
 ---------先輩、今回一番扱い酷いのオレなんじゃないすか?
 ---------知らん。
 ---------まあ、やっぱ何と言いますか-------------空はこんなに青いのに
 ---------いや、おもくそ真っ赤なんだけど


「不幸だあああああああああああああああ!!」


                            短編2(完)

※余談:2人はちゃんとこの後、助かりました。