二次創作小説(紙ほか)
- Act6:二つの解 ( No.108 )
- 日時: 2015/06/28 13:04
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「ス、ステラアームド・クリーチャー……!? アクロガンドラー!?」
聞き慣れない単語に首を傾げるコトハ。無理もない。空間で戦っていたのはレンだったからだ。
「ステラって、星のことよね、アームドは武装って意味で----------ううん、だまされないわ」
しかし、コトハからすればぱっと理解できなかった時点で、そんなことなどどうでも良かった。
そんなことより、ニャンクスについて色々聞き出したかったのだ。
「大体、聞きたいことは幾らでもあるの。仮にあんたが、2人いるとして、何であたし達があんたの片割れと戦っていたことを知っているのよ! 知っていながら、あんたは何で何もしなかったのよ!」
「僕は、奴を監視していたのですにゃ」
「監視……?」とコトハは、疑念を込めて言った。
「いや、監視することしか出来なかったんですにゃ……僕の力の大半は、分裂したアクロガンドラーに殆ど吸われていて……僕はそもそも、カードの状態で浮遊することしか出来なかったのですにゃ」
「それが、どうして今実体化してるのよ」
「貴方が此処にいるから、ですにゃ! 僕が奴を監視していたとき、貴方達がディメンジョン・ゲートに放られたのを見たのですにゃ!」
どうやら、ニャンクスはあの場で起こっていたことを、敵に見つからないように、ずっと見ていたらしい。
気配を消す、というのは猫の十八番だと言うが、どっからどう考えてもお前しか出来ないと思う。
「それで大変だと思って、思わずそのままゲートに入ってしまったのですにゃ。その後、貴方達が縛られて……えと、貴方が色々触られて」
「それは言わなくて良い!! あたしだって分かってるから!!」
「し、失礼しましたのですにゃ! ええと、とにかく満足した奴は、まだ何か用があるのか、もう1人の僕を連れてこの地下室に鍵をかけて、出て行ってしまった次第ですにゃ」
「成る程……筋は通っているわね、此処まで」
「ゲートに入ったときは、まだ貴方が僕の適合者だということは知らなかったのですがにゃ……この部屋に入って貴方に近寄ってみると、一瞬で今までの呪縛が解けて、実体化できたという次第ですにゃ! というわけで、縄も解いておきましたにゃ!」
そこまで言うと、ニャンクスはがばっ、と地に頭を付けた。クリーチャーも土下座するんだ、とコトハはふと思ったが、そんなことはどうでもよく。
「本当に、貴方様、お仲間の方々、そして人間の皆様には迷惑を掛けましたにゃ!! 申し訳ありませんでしたにゃ!」
口から飛び出たのは、精一杯の謝罪の言葉だった。
「奴はまさに、僕自身……! 僕の心が生み出した存在……! その責任は腹を切ってでも」
「やめてよ、グロいから! そんなことよりっ! あんたとあいつが何らかの理由で元が1つだったのが分離したってのは分かったわ。喋り方も性格も全然違うしね。それよりも気になることがあるのだけれど」
「はいですにゃ?」
コトハは、とりあえず質問を投げかけた。ステラアームド・クリーチャーが何であるか、よりも気になる疑念がまだあったのだ。
「-----------あんたの片割れの体を洗っているときに気付いたんだけど----------あんたって-----------」
と、言いかけたそのときであった。
-----------部屋の扉が、開いた。
***
「やはり間違いない! 襲われたのはレンとコトハだ! あいつらと連絡が取れねえ!」
ヒナタは焦りに焦りを重ね、最早スマホの上下を持ち間違える程動揺していた。
ノゾムはとりあえず、教えてやろうかやるまいか、迷っていたが……。
「ともかく、呪文か何かで連れ去られたのかもしれねえな」
「ど、どうするんですか!?」
ホタルが必死な形相で問うも「慌てるな」とフジは落ち着き払った表情で答えた。
「犯人の目星は大体ついている。此処最近の事件を詳しく調べてみたんだがな、今まで交通事故を起こしている奴は皆、同じ会社に勤めているらしい」
「同じ会社に……? 何でそんなこと、早く教えなかったんですか!」
「教える前にニャンクスが襲撃してきたんだろうが!」
「ちょっ、やめてくださいお二方!」
「ったく、この馬鹿先輩は……」
怒鳴りあうヒナタとフジ。しかし、いいかげん不毛だと思ってきたのか、言い合いをやめる。
そして、とフジは続けた。
どうやら、その会社員達を警察が詳しく調べていったところ、社内で以前、”新人いじめ”があったそうだった。嫌がらせや、書類隠しなど、悪質ともとれるものが横領していたそうだ。
そして警察は、何故かいじめに遭っていた社員のうちの1人の業績が、最近著しく上がっていることに不審感を感じていたらしい。
「ひっでぇ話だ……!」
「最低です!」
「全くだな」
しかし、ヒナタ達はその会社でいじめがあったことに、憤りを感じていた。
大人でもこんなことをするのか、という怒りであった。
しかし、それを宥めたフジは続けた。今は目の前の事件の解決が先だ、と。とはいえ彼も、「最低の会社だな」と非難してはいたが。
「----------ニャンクスってよ? 薬が作れるんだよな?」
「ええ、そうですね」
「考えても見ろ。ハラスメントを受けているにも関わらず、成績が上がる人間なんてそうそういない。そいつが図太いメンタル持ってるならともかく、そいつは中でも一番の根性なしでな、遅刻やさぼりの多いろくでなしだったらしい。上もクビにしようと思っていた矢先、急に精を出し始めたらしくてな。ニャンクスがその男と組んで、薬を使わせたのなら納得は行く」
「さらに、恨みを持つ上司を蹴落とすためにニャンクスを手を組んで、交通事故を起こさせた」
交通事故による責任はかなり大きい。当然ながら、運転手にそれは全て降りかかる。まさに、生き地獄とはこのことだ。
そこでだ、と彼は続けた。
「警察では認知できない、法の外の犯罪-----------つまり、クリーチャー犯罪を裁くのも俺ら武闘グループの仕事でな。奴を拘束する」
「どんな理由があるにせよ、これ以上他の関係ない人を巻き込む訳にはいきませんからね!」
「ああ。コトハ達を助けねえと!」
頷いたフジは、2人の熱意を汲み取ったようだった。そして、ホタルを一瞥すると言った。
「淡島。お前は帰ってろ。仮にも、お前は女でしかも年端がいかねえ。これ以上危険に遭わせる訳にはいかん」
「ええ!? で、でも------------」
「ホタル。オレも同意見だ」
うう、とホタルは萎縮してしまった。やはり、彼女も内心では怖いところがあったのだろう。
しかし、それでも彼女は折れなかった。
「お願いです! あたしも連れていってください! 足手まといになるかもだけど、少しでも力になりたいんです!」
力強い、台詞だった。思えば彼女は新聞部。度胸は人一倍あるのだ。
それを聞いたのか、溜息をついたフジは「勝手にしろ」と言ったのだった。
ぽん、とヒナタはホタルの肩に手をおき、呟いた。
「何であれ、危険だと思ったらすぐ逃げろ。クリーチャーがいるからって、自分を過信しすぎるなよ」
「は、はいっ!」
何であれ、これで犯人追跡のメンバーが揃ったのだった。フジはタブレットの画像をヒナタ達に見せた。
「男の名は、”小早川 秀明”。ふん、臆病そうな面だぜ」
「こいつが……」
「----------とにかく、踏み込むぞ。奴の家にな」
こうして、作戦は決行されることになったのである。