二次創作小説(紙ほか)
- Act6:二つの解 ( No.109 )
- 日時: 2015/06/29 17:51
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
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「----------何だァ? 人が面倒事処理してる間に、何をやっている」
「縄抜けが随分と得意なようだにゃー」
男だ。そして、”ニャンクス”も一緒に居る。
コトハは焦りを感じていた。まさか、思ったよりも早く見つかってしまうとは!
ニャンクスは反射的にカードとなって彼女の手に戻り、”脳内会話(テレパス)”を用いて会話をしていた。
----------あんたを疑って悪かったとしか言いようが無いわ……って何これ。
----------テレパスですにゃ。貴方の思っていることで、そのまま会話ができるのですにゃ。
----------それなら、好都合! それよりも、あんたの言っていたステラアームド・クリーチャーって何なのよ! あの男は此処で倒さなきゃいけないけど、それだけ教えてよ!
----------僕達の世界で使われていた戦闘型技術、”星芒武装”に必要な要素ですにゃ。自らの心を使って生んだステラアームド・クリーチャーを鎧として武装し、更なる存在へ昇格する技なのですにゃ!
----------成る程、分からないわ! もうちょっと分かりやすくできないの、この辺!
----------無茶振りはやめて欲しいのですにゃ!
----------だけど、覚醒だとか龍解みたいな技だってことは何となく理解できたけどね!
----------???
----------分かんないみたいね、それは。だけど、無駄口叩くのはそろそろやめにしましょうか!
全て、もう1人のニャンクスが言ったとおりだった。やはり、彼らは分裂していたのだ。
「借金取りの男をぶっ殺して、死体を何処に埋めようか考えてたところだけどよ……てめーから埋めなきゃいけねえようだな」
男はさらり、と恐ろしいことを言ってのけた。
やはりこいつ、”精神病質(サイコパス)”だ、と。生まれつきの悪魔で、善の念が欠けており、悪事を働くことに躊躇いがないのだ。今の間に、また人を殺してきたのか、と思うと非常に恐ろしくなってくる。
しかし、今のコトハには思ったよりも恐れは無かった。目の前の敵に立ち向かおうという意思で溢れていた。
「出来るもんなら、やってみなさい---------ニャンクス!」
「はっ、俺様の名前を軽々しく-----------」
と、目の前にいるニャンクスが言うが否や、コトハの握っていたカードから、一陣の風が吹き抜け、クリーチャーとして実体化した。
それは、目の前のニャンクスにとってはハンマーで殴られたに等しい衝撃であった。
「----------僕の姿を名を借り、死後も悪さを働くか、アクロガンドラーっ!!」
先ほどまで、余裕たっぷりの表情を浮かべていたニャンクス----------いや、アクロガンドラーは驚愕の表情を浮かべた。
男の方は、完全に置いてけぼりになっていたが。
「違う!! 俺が”ニャンクス”にゃ!! お前は一体、何者にゃ!!」
「お前は今際の際に呟いていた。”俺がお前で、お前が俺なら”------------だとすれば、言う事があるにゃ」
ニャンクスは言い放った。
「本当にすまなかったにゃ!!」
しばらく、沈黙が続いた。
コトハでさえも、意外で、他の言葉が出なかった。
関をきったように、ニャンクスの言葉は続いた。
「僕がお前を恐れたから……僕がお前ともっと向き合っていれば、”あんなこと”にはならなくて済んだのにゃ!」
「今更何を----------!! テメェが、王国が俺に仕向けた仕打ち、忘れたとは言わさねぇ!!」
アクロガンドラーは既に、元の口調を取り繕うつもりもないようだった。
「オイ、茶番はそこまでだ。”ニャンクス”!!」
びくり、と彼は肩を震わせた。
「奴を殺すぞ。折角、”奴らが何故、呪文を受けなかったのか”を聞き出そうと思ったが、どうせ無駄だ」
「俺様に----------俺様に-----------!!」
「あ?」
ザクリ
次の瞬間、男の腹から血しぶきが飛んだ。
「がはっ」と呻き声をあげて、男は階段から転げ落ちた。腹から、頭から、血が流れ出ていた。
これが、男の哀れな最期であった。私利私欲のために、悪事と悪事を重ね続け、自分を正当化するために人を傷つけ続けた男が受けるべき、然るべき報いだったのか。
「俺様にッ、指図を、するなあああああああああああああああああああああ!!」
ひっ、とコトハは小さく悲鳴を上げた。涙無き慟哭とも取れる目の前のクリーチャーの叫びは、とても痛々しかった。
まだ、コトハには目の前の男が死んだと認識できていないため、そこまで動揺は大きくなかった。しかし、ニャンクスは既に自分の生み出した化身が何をしたのかが分かっていた。
もう、奴を許すわけにはいかない。ここでやめていれば良かったのに。何故、過ちを繰り返すのか。
「コロシテヤル……お前らも、コロシテヤル……!!」
じりじり、と詰め寄るアクロガンドラー。猫の姿は崩れかけていた。ただ、殺意と憎しみのままに、全てを殺す機械へと成り果てていた。
パニックに陥りそうな彼女を、ニャンクスが沈静の秘薬で落ち着かせる。
何となく、心に安らぎが戻る。
「奴は僕の力と精神の一部を吸い取っていますにゃ。邪念、負の感情、それらは全て奴に持っていかれている。奴が本当に僕になる前に!! 奴がこれ以上、誰かを傷つける前に!!」
「----------もう分かってるわ。デュエマで奴を倒せってことね!」
「そうですにゃ! いきますにゃ!」
”2人”で、これを使うのは、何時ぶりだろうか。
恐らく、ヨミを倒してからは使っていなかった気がする。それも、此処まで強大なクリーチャーを相手にするのも久々だ。
しかし。心なしか。先ほどまで信用していなかったこの猫が近くにいるだけで、力が沸いて来る。
----------レン。ありがとう。あんたの分まで戦ってくるわ!
「コトハ様!」
「ええ、行くわ! 決闘空間解放よ!」
次の瞬間、黒い靄が彼女から現れ、じりじりと詰め寄るアクロガンドラーと自らを覆った-------------そう、このとき、知識と知恵を使った命がけの戦い、”デュエル”が始まったのである。