二次創作小説(紙ほか)
- Act7:大地を潤す者=大地を枯らす者 ( No.111 )
- 日時: 2015/06/28 23:29
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
とある超獣世界の王国について語ろう。そこには、人間界の人間と大差無い人々もいれば、異形のクリーチャーもいたが、共に共存していた。
しかし、あるときから絶えず謎のクリーチャーからの侵略を受けるようになっていた。
闇文明のクリーチャーだ。彼らは、巨大な大地を有す”王国”を度々狙うようになったのだ。
それに対抗するため、代々星読の儀式に通じてきた神官は、とある技術を生み出した。
それが、星芒武装だった。
そして、その力を真っ先に手にしたのは------------王の従順なる僕、ニャンクスであった。
ニャンクスは赤子だった頃、捨てられていたのを王に見つけられて保護された。それが後に、ビースト・コマンドのクリーチャーであることが分かったものの、やはりニャンクスは生まれつき戦闘適正が低すぎたのだ。
だから、王はニャンクスに精一杯の教育を受けさせた。
后が早死にし、王子も病気で死んだので、2人に注げなかった愛情の分も注いで育てたのだ。
だから、王から見ればニャンクスは子供同然であった。
医師として、賢者として、この国の頭脳として、ニャンクスは今まで活躍していたが、彼は唯一つ申し訳なく思っていることがあった。
彼は、余りにも非力すぎたのだ。
まず、竜化の秘薬。コレを使えば、自分も竜となって闘うことができるが、それでも自分が周りのクリーチャーより劣っていることを自覚せざるを得なかった。
だからこそ、ニャンクスは自分にこの能力が与えられたことが嬉しかった。
「王様! 僕なんかで、良いのですかにゃ?」
「お前を前線に向かわせるのは悩んだ。本当に悩んだ。だが、お前が望んでいたことが遂に実現できる。知識と力を持ち合わせる、究極の戦士が、星芒武装が実現できる」
「ありがとうございますにゃ! この恩、死んでも返せないほど大きいですにゃ! 万が一、この力の使い方を誤ったとき、僕はこの腹を斬る覚悟でいますのにゃ!」
「これこれ、そんなことを軽々しく言うものではない。ワシは、お前が側にいてくれるだけで嬉しいのだから」
***
その日からニャンクスは、星芒武装の研究により没頭するようになった。
そして、自ら前線に出向いていくこともあった。
ある日のことだった。今まで、ステラアームド・クリーチャーは、持ち主に特殊な儀式を施すことで、心から生み出すのが通説であった。
では、それに別の要素を加えたらどうなるか。
つまりは、クリーチャーを封じ込めた石だとか、核だとか、そういうものを儀式の際に一緒に入れることで、呼び出すクリーチャーに更なる力を与える、というものだった。
ニャンクスは、恐竜の化石を入れるのはどうか、と早速試した。
結果、生まれたのは----------------巨大で禍々しい暴君の恐竜だった。
「-----------これは、どういうことだ? 大地が、別の生き物に支配されているだと?」
《アクロガンドラー》。それが恐竜の名前であることは分かっていた。知識を持ち、非常に獰猛な性格であること。味方につければ、闇の軍勢を倒す足がかりになるはずだった。
しかし、彼は許さなかった。
自分達以外、つまりジュラシック・コマンド・ドラゴン以外が支配する世の中を。数億年の間に世界が変わってしまったことを。
彼は嘆いた。大地が変わってしまったことを。
怒り狂う彼は、早速王国を破壊し始めた。
ニャンクスは真っ先に、自ら武装をしてアクロガンドラーを食い止めようとした。
しかし、彼ではアクロガンドラーを止めることができなかった。
アクロガンドラーは、野心に塗れた暴君の恐竜だった。この王国に代わり、世界を支配しようとしたのだ。
「この大地を生まれ変わらせてみせよう------------原始に戻してくれる!! 古き良き、原始の大地に!! 民は我に平伏せよ! 貴様らは今日から、我の僕だ!!」
アクロガンドラーが吠えれば、樹木が辺りを覆い尽くし、家々を薙ぎ倒していく。
まさに、大地を古代の時代へ還そうとしているのだった。
しかし、王国がそんな自分勝手な行いを許すわけがなかった。
「----------ニャンクス、すまない。あいつを殺す」
「王様……僕が悪いのですにゃ……せめて、僕に……」
----------一度だけでも、あいつと向き合うチャンスを。
そう言おうとしたが、そんな勇気は出なかった。これ以上、王に自分が仇名すことは出来ないのだ。
王国は封印していた1体の龍を呼び出すことに成功した。
自然の力を司る王国が、大地のエネルギーに各文明の力を加える事で、復活させた龍だった。
これで、アクロガンドラーを倒せるはずあった。
だが、同時に予想外のことが起こった。
龍は民の生命力をも一瞬で吸い尽くし、殺してしまったのだ。
さらに、大地も一瞬で枯れ果てさせてしまったのだ。
アクロガンドラーは絶望した。
自分が望んだのは、こんなことでは無かった。自分が王になり、支配する世界。しかし、民がいなければ支配するもへったくれも無いのである。
「馬鹿な……王国は俺一人を殺めるためだけに、これだけの人々を犠牲にしたというのか!! こんな世にも禍々しい化け物を世に放ったというのか!!」
しかし、その言葉は最早、自分勝手で野心的で偽善的な言い訳に過ぎない。
「おのれ……俺がニャンクスならば、この世界を支配できたやもしれないのに!! 王に一番近い存在である奴だったならば、この王国を乗っ取ることも容易かったのに!!」
アクロガンドラーは成す術も無く、龍に粉砕された。
その後、王国がどんな末路を辿ったのか。龍は何とか封印することに成功した。
しかし。
「--------------この事態を引き起こしてしまったのは、僕の責任」
王が気付いたときにはもう遅く。ある日、彼の部屋を覗いたとき。
ニャンクスは自ら腹を切り、死んでいた。
悲しんだ王も後を追うように死んだ。
豊かだった王国は、瞬く間に、崩壊してしまった。
その理由は、闇文明が侵略したからでは無かった。
古代の世界を復活させ支配しようとした恐竜、それを倒すために大地と民を犠牲にして生まれた龍、そして根源となるものの自責の果ての自殺だったことは言うまでもあるまい。