二次創作小説(紙ほか)
- 短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル) ( No.120 )
- 日時: 2015/07/15 08:05
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
鎧龍決闘学院。
”海戸ニュータウン”と呼ばれる、人口埋め立て台地の上になった新都市の中央に聳え立つ列記とした中等教育学校である。
創設者は武闘財閥の現社長、武闘カゲトラであり、理事長も同時に勤めてはいるが元々の仕事の関係上、滅多に学校にはいない。
そんなことはぶっちゃけるとどうでも良いのである。
建前は”デュエリストの育成”ではあるが、本来は何故かこの近海に沈められていた祠とその中にあった2枚の、カードに封印された伝説のクリーチャーを管理(監視)する場所でもあったのだ。尚、そのカードのうち1枚は黒鳥レンが現在所持。もう1枚は暁ヒナタの手元にあったが、例によって彼の相棒(だった)ドラポンによって超獣界に持ってかれたのであった。
これにより、鎧龍は1つの役割を事実上失った訳であるが、そんなことでこの学校を閉めるわけにはいかないのである。
そもそも、カードの開発機関としての役割も果たしているのであるから。
小説大会早々、(2015年7月10日現在)早速こんな短編に作者が走った上に、何で割りとどうでも良いヒストリーなんざ聞かせられなければならんのだ、と突っ込みたい読者の諸君。さぞご立腹であろう。
まあ、何だ。要するに、”デュエリスト養成機関”という面を除けば、鎧龍は唯の学校となんら遜色無いのである。
つまりはデュエマだけ出来れば良いという訳ではないし-----------------”文化祭”などといった行事も普通に行われるのであるということだ。
今更、文化祭が何かという説明をする必要もないだろう。
鎧龍のそれは6月に行われる。そう、期末考査などであたふたしていた学生達への褒美と言わんばかりに----------なんてことは無かった。
そう。期末考査で精根をしっぽり搾り取られた上で、準備期間という名の忙殺地獄。
はっきり言おう、死ぬかと思った。
そう思いながら、ヒナタは古着だとか古本だとか食器だとかが並べられた上で閑古鳥の鳴く部屋に、レンと共に店番をしていたのだった。
「加えて!! 俺らはニャンクスの件でたっぷり疲れてんだぞ! 今更、俺らに何をしろと!?」
「地の文からナチュラルに繋げるな。最終的に決着付けたのはコトハだろうが。後ついでに面倒だから客寄せをして来い、2Cのフリーマーケット、50〜300円お手ごろ価格だと馬鹿みたいな芸をしながら行って来い」
「来る訳ねぇだろ!! やるわけねぇだろ!! コトハ達のクラス-----------2−Fの出し物見てくるかテメェ!! ”3Dプリンターで作るアクセサリ・小物雑貨店”なんて聞いてねぇよ!! クオリティ高すぎなんだよ!! ドンドン吸い込むナウみたく客が吸われていくよ!! 特に女性層が!!」
「クラスの誰かが3Dプリンターを持っていたらしいな。海戸の技術は他の都市よりも発達しているとはいえ、まさかあんな物を持っている奴がいるとは、僕も予想外だった。男性層も男性層で、どこかの上級生のクラスが作った”自作戦艦大和1/144スケールモデルと、その他艦船模型展示”とか2−Bの自作映画とかそういうのに流れてしまったからな」
「どこもかしこも気合入れすぎなんだよ!! 後、そこは大和じゃなくてエビデゴラスとかにしようよ!!」
「艦船ブームだからな。デュエマの次に流行っているらしい。僕は興味無いが」
「いや、せめてデュエマ関連にしようよ!!」
そう。結果は例えるならば33−4。自分達の出し物がフリーマーケットという無難かつ普通のものだったのに対し。
同級生含めた別のクラスの出し物のクオリティはピンキリこそあるものの、十分フリマに閑古鳥を鳴かせる程度のインパクトをパンフレットの時点で客達に与えていたのだった。
「おーい、次俺らが店番入るぞ、暁ー、黒鳥ー」
丁度良い。クラスメイトの2人が教室に入ってきて、当番の交代を知らせに来た。
「お、もうこんな時間か。ひゅー、終わった終わった。とにかく、他のクラスの出し物見に行こうぜ」
「そうだな」
「あ、お前ら客寄せもついでに----------」
「てめーらでやれ」
「あぐ……そんなバッサリ言わなくても良いじゃないか、暁にしてはツレないなー」
***
「----------で、結構賑わってるのは------------」
「先ほど上げた例に加え、武闘先輩の所属する4−Aの出し物、”メイド喫茶MX-MAX”だ」
「いや、絶対あの人自分の使ってるクリーチャーの名前入れただろ」
4回生。つまり、普通の学校で言えば高校1年に当たる彼らの出し物は、自分達よりも更にグレードアップしている。
その際たるが、このメイド喫茶であった。
まあ、さっすがあの野心と煩悩だけで構成されたあの先輩が指揮したのか。なかなかの完成度を誇っていたのだった。
それに絶対来るように、ヒナタ達は予めフジから招待されていたのである。彼曰く「絶対席は空けておく」と。
『4回生A組 ”超”本格メイドカフェ 〜MX-MAX〜
可憐なメイドさんの破壊力はゼニス級! ご主人様のハートをワールドブレイクしちゃうぞ☆』
「何だぁ? この慨視感ありまくりの煽り文は」
「後で怒られるな。大会だから張り切ってるのかもしれんが、完全に喧嘩を売りにいってるぞ」
「んあ? 何処にだ」
「大人の事情だ」
いや、マジすいませんでした。
「おう、おめーら来たか」
入ってきてすぐ、来客記録を手に引っさげて、セーターにネクタイを締めたバーテンのような格好のフジが迎えた。
「いやはや、この通り大盛況だ。おかげさまで何人かダウンしちまってな。他のクラスからもメイド役もとい店員を借りてきたところだ」
「本当賑わってますね」
「つか、ダウンってどんだけこき使ったんすか先輩」
「人聞きの悪いこと言うんじゃねぇ。俺様がそんなブラック思考だと思ってるのか」
「説得力ねーんですよ!!」
「大体、こうでもしなきゃ、もうちょいでこのクラスは蝶が給仕を務めるメイド喫茶から蛾が給仕を務めるオカマ喫茶になるところだったからな」
「そ、それは……うーん」
ま、それはそれでだ、とフジは続けた。
「実は下級生からも何人か借りてだな」
「良いのですか? そんなことして」
「安心しろ、黒鳥。バレなきゃどうってこたぁねえ」
「おい、とんでもねえよこの人!!」
「もしかしたら、知ってる顔に会えるかもなー」
そう言ったフジは、ついでのように空いてる席に2人を案内した。
「わりーな、案内してるのが俺様で。人手が足りないのさ。だが大丈夫だ、注文とかはメイドさんがやってくれる。んじゃ、俺様は戻って手伝ってくるわ」
「あ、はい」
少しして。
エプロンドレスというかメイド服を見に纏った少女がやってきた。しかも、誰の趣味なのかは知らないが、猫耳カチューシャまで付けられている。
「お帰りなさいませ、ご主人様。メイド喫茶”MX-MAX”にようこそ……え?」
しかし、少女は言いかけた瞬間に言葉に詰まったらしい。何が理由かは分からないが。
一方のヒナタも、
「……んあ?」
「どうしたヒナタ------------あ」
ようやく気付いたのか。メイドには然程興味のないレンは、少女の顔を見て気付いたようであった。
「ヒナタ!? 何であんたらがこんなところまで来てるのよ!」
「コトハ……お前、先輩に捕まってたのか……」
「これは滑稽だな」
パッと見、まさか堅物の彼女がこんな格好をしているわけがない、という先入観が働いていた所為で分からなかったが、ヒナタ達の前に現れたメイド少女の正体は如月コトハで間違いなかったのであった。