二次創作小説(紙ほか)

短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル) ( No.122 )
日時: 2015/07/15 08:12
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ----------一旦、店は1時間の休憩となった。夕方の営業で、再び大々的に売り出したいからである。食材の準備もあり、こればっかりはシフトでどうこうなる問題ではなかった。

 ***

 鎧龍で最初に会った時のノゾムの第一印象は、”生意気な若侍”であった。
 それも、どこか子供っぽさを残したような。いや、それもそのはずである。彼は同学年の男子に比べ、少々背が低い上に顔もやや幼いのだ。
 その癖、髪をいつも後ろに束ねているので、見方を変えれば女子に見えないこともない。
 つまり、何が言いたいのか。男っぽい格好をさせれば男らしく見え、女っぽい格好をさせれば、女っぽく見える。それが十六夜ノゾムという少年であった。納得しただろうか。

「納得できるか、バーロー!!」
「さっきから地の文に突っ込むのやめましょうよ……」
「ギャラを50%増しにしてやるから、それで許せ」
「そ、そんなぁ……」
『似合ってるよー、のぞむー!』
「クレセントまで……」
「ノゾミちゃん、可愛いです! 似合ってますよ!」
「ホタルワレェ……後で覚えとけよ」

 さて、とフジは割って入るように続けた。

「ついでにだが。お前に折り入って頼みたいことがある」
「これ以上、オレに何をしろと!?」
「ノゾミちゃん、てめーは黙ってろ」
「酷いです、ヒナタ先輩!!」
「それはだな、これだ」

 フジが取り出したのは、1枚のポスターであった。
 そこにはでかでかと、大きな文字でこんなことが書かれていた。


”チキチキ女装コンテスト! 優勝者には最新パック20枚贈呈!”


「ふーざけるなああああああああああああああああ!!」


 叫んだノゾムの思わず振り上げた拳が、すぐ近くにいたヒナタに炸裂した。

「理不尽っ!?」
「はっ、すいません、ヒナタ先輩!?」
「いやさー、俺様自体、男の娘だとかそういうのには全然興味ないんだけどね? ただ、試せるもんは一通り試しておいた方が良いよね?」
「嫌ですよ、こんなん!!」

 そんなこんなしていたら、休憩時間は終わってしまった。
 しかし。先ほどあれだけ大盛況だったメイド喫茶は-----------


 ***



「人……来ないっすね」
「ああ」

 まさかの閑古鳥が鳴いてしまっていた。先ほどまで、あれほど人がいたというのに。
 この状況に、一番腹を立てたのはフジであった。

「お、おいいい!! どうしたんだぁぁぁ!! 休憩時間の間に、一体何があった!!」
「落ち着いてください、武闘先輩!!」
「おのれ、こんなん落ち着いてられるかああああああああ!!」

「大変だ、武闘!!」

 教室の外から駆けて来たのは、フジを呼び捨てで呼んでいる辺り4−Aと思われる男子生徒と思われた。 
 
「きゃ、客が、どんどん4−Dの教室に吸われていくんだ!!」
「な、何ぃぃぃ!?」

 その報告を受け、驚いた表情をフジは浮かべた。

「ば、馬鹿な---------4−Dは唯の喫茶店で、俺達に比べてインパクトは薄かったはず---------なのに、何故!?」
「おい、あっち面白そうだぞ、いってみようぜ」
「すっげー可愛いぞ、おい!」

 客達がどんどん、別の教室へ向かっていく。

「ば、馬鹿な……メイドに勝るモノなど、この世に存在するわけがない!! 行くぞ、お前ら!!」

 フジの声に続き、ヒナタ達も急いで4−Dに向かったのだった。

「あ……オレ、メイド服のままだった」

 気付いた時には既に遅かったのである。


 ***


「……なん……だと?」

 何と言う事だろうか。先ほどまで、閑古鳥が鳴いていた4−Dの喫茶店、”オプティマス”はこの1時間の間に大盛況となっていた。
 一同はこの世が終わったような顔で立ち尽くしていた。
 ヒナタとレンとコトハとノゾムとホタル以外。

「おいいい、ちったぁ心配しろてめぇらぁぁぁ」
「いや、だってさっきまで儲かっていたんだし……」
「許せん……俺様のクラスの出し物が一番だということ、その事実が揺るぐワケが-------------」


「力の逆位置……”人”任せにするからこんなことになるのさ。ははは、ザマァないな、フジ。やっぱりお前もその程度か」


 つかつかと歩いてきたのは、黒髪にニヒルそうな笑みを浮かべ、タロットカードを持った少年であった。
 
「あれって、星目先輩!?」
「知ってるんですか、ヒナタ先輩!」
「嗚呼」

 星目テツヤ。それが目の前に立つ少年の名前であった。
 数年前、海戸で起こったカード事件をフジ、そして現在は転向している無頼シントと共に解決した1人。
 そして、鎧龍決闘学院での異名は”ハイドロ・ブレイン”。または”コンボの鬼”。
 その名の通り、ループ系のコンボを平然とした顔で使用する、エイリアンとグレートメカオーと光と水を愛する男である。
 フジとは別次元の天災的な頭を持っており、まずその思考は”ドS”、”鬼畜”の一言。相手をストレスの渦に巻き込むような戦術しか思いつかない根っからのSである。根が善人なだけまだマシな方か。
 ちょっと前まで見かけなかったのは、病気の治療をしていたからなんだとか。その間、鎧龍には一時的に”鬼”の片方が消えて安堵と平和が戻っていたが----------こうして復活しちゃったんだからしゃーない。同学年の面子は彼とフジに当たるのを恐れる毎日が戻ってしまったのだった。

「えええ、この人も相当の実力者じゃないですか!」
「くくく、この俺の戦術は完璧かつ最高だ。それはリアルに於いてもな!」
「何っ!?」

 フジは看板の方を見た。
 そこには-----------


『”猫カフェ”オプティマス、ただいまよりリニューアルオープン! 可愛い猫ちゃんとにゃんにゃんしながらゆっくりいていってね☆』


「ね、猫カフェだとおおおおおおおお!?」
「はははは、お前達が悠々と休んでいる間に、近所から野良猫拾って衛生のために体を洗いまくる作業は大変だったぞ……!」
「何が大変だっただ、この鬼ぃぃぃ!! 働いてたのは俺らじゃねーか!」

 そう教室の中から突っ込む4Dの生徒だが、

「黙れ、アニメVS3のデュエルゾーンに引きずり込んでイメンループとラララオプティマスとシューゲイザーと天門ループとヘルゲートムーンライブラリアウトとジェームズゾルゲ順番に決めてからてめぇの脳みそKOされてぇか」
「ヒイイイイイ!!」
「えげつねえ……やってることがえげつねぇ……つか、色々アウトじゃね?」
「はははは、それでは俺は調理に戻るとするよ」

 流石のヒナタもドン引きである。

「お、おのれ……そうだ、良い手段があるぞ!!」
「え?」

 フジはコトハの方を見て、にやり、と勝利を確信した笑みを浮かべた。


「如月、ちょっとニャンクス貸せやお前」