二次創作小説(紙ほか)

Act2:レンの傷跡 ( No.129 )
日時: 2015/07/16 15:11
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***


「……出来たぞ」
「嗚呼」

 ヒナタは、組み終えた40枚の札を掲げた。白陽も頷いた。
 -----------2人とも、いかにも不健康そうなげっそりとした顔立ちになってはいたが。
 
「あ、あっれー、おっかちぃな……空がすっげー明るいぞ……? 今何時だ白陽」
「この時計というものが全くわからん」
「あ、んじゃ、俺が見るわ-------------12時? ああ、まだ夜中------------」

 此処で2人の意識は覚醒した。



「んなわけあるかあああああああああああああああああああ!!」



 まずい。完全に9時間の間、あの後デッキを組んでいたことに気付く。どんだけ集中してたんだこいつら。
 それはともかく、もう昼にまでなっているとは。
 そういえば、何かコトハっぽかったり、母っぽい声が聞こえてきてたような。

「とりあえず白陽」
「嗚呼」
「寝るか」
「違うだろ!! 昨晩の件はどうするんだオイ!!」

 もちろん、冗談ではある。いや、半分マジが入ってはいたが。
 何せ、ヒナタももう10時間近く寝ないで作業をしていたので、相当眠気がきつくなっているのである。
 何故、10時間もかかったのかというと、その中に寝かけたりなんだりがあったからであるが、それでも不屈の根性で彼はデッキ完成に向かっていったのだった。
 さて、白陽の問いについてだが、ヒナタ自身、これについては考えあぐねていた。
 何故ならば、まずアヴィオールが律儀に約束を守るとはさらさらヒナタには思えないのである。クレセントやほかの人間に働いた所業からも一目瞭然、義理人情が通用するタイプだとは到底思えないのである。

「今教えても不安がらせるだけだろ。……とはいえ、奴等が律儀に約束を守るとは思えない。やっぱ警告はしておくべきか。白陽、奴等はどこに潜んでいるって言った」
「キュウカイドスイサンコウジョウと言っていたぞ」

 旧海戸水産工場。かつて、東京都旧海戸区湾岸にあった水産工場であったが、海戸が建設される際に新しく工場が作られることになったため、閉鎖して新しく作ることになったのである。
 しかし、未だに取り壊されておらず、建物は残っていると聞いた。
 
「確か、築地の近くに武闘財閥が昔、建設したって聞いたな。10何年くらい前に」
「全く、人間とは色々作るのが好きなのだな。この”日本”という国の技術には驚いたぞ。魔法だとか妖術だとかは発達していないみたいだが、鋼で出来た建物ばかりだ」
「いや、木やコンクリートで出来た建物だって沢山あるぞ」
「そうか? まあ、そういえばそうだな。だが、木で出来た建物ばかり見てきた私には、全てが珍しく見えて仕方がないのだ。クレセントは、あんまり興味が無さそうだったがな」

 それは、現代の技術と水文明の超技術を比べる方が酷だというものである。オカルトと科学。相反するものを司る種族のクリーチャー同士が此処までラブラブなのも分からない。

「どっちにせよ、白陽。これは速急にノゾム達に知らせ------------」

 そう言おうとした瞬間、ヒナタは盛大に机に突っ伏した。とうとう限界が来たか。それはどうやら、白陽も同じらしく--------

「ま、まずい、私ももう---------」

 そのまま、ヒナタの椅子に寄りかかる形で寝てしまったのであった。

 ***

「そうだ、ノゾム君。あたしとデュエルしてみない?」

 唐突にコトハから発せられた言葉はそれだった。

「シケた気分にさせちゃったお詫びも兼ねて、ね?」
『そう言いながら、コトハ様が楽しみたいだけなんじゃないですかにゃ?』
「うっさいわね、あんたにも出て貰うわよ!」

 うーん、と少しノゾムは悩んだがすぐに、


「はい、喜んで受けさせて貰います!!」


 と返したのだった。

「ええ。こちらこそ頼むわ。一回あんたとはやってみたかったしね!」
「オレも如月先輩の実力、直接戦って感じたいです!」
「それじゃあ、このデパートの屋上に行こうかしら。確か、あそこにもデュエルテーブルがあったはずだから」

 考えてみれば、ノゾムは入学初日に何人もの上級生を屠っている。だが、ヒナタが自分を倒したように。レンがそれと同格だったように。
 目の前のこの先輩も只者ではないことは分かる。
 自然文明使い、如月コトハ。噂に聞いてはいたが、マナを相手よりも速く伸ばすことに長け、それで強烈なビートダウンを放ち、相手のシールドをがりがり削っていくことに定評があるとは聞いていた。
 さらに、ヒナタからも最近はジュラシック・コマンド・ドラゴンを扱うようになったため、より強敵になったことには間違いないと聞かされてはいた。
 いざ戦うとなると、緊張が走る。
 
「言っておくわよ? あたしはヒナタやレンより弱いかもだから」
「よく言いますよ。そのヒナタ先輩にもこの間勝ったんでしょ?」
「あいつよりもあたしが成長していた、それだけだわ。ヒナタは気付いたら、もう追い越してる。この間まではこっちが追い越していたはずなのにね。それでも-----------」

 彼女はデッキケースを掲げて、言った。


「後輩を簡単に勝たせるほど弱くも無いことは言っておくわよ!」
「望むところです! 勝負だ、如月先輩っ!」