二次創作小説(紙ほか)
- Act4:月英雄と尾英雄 ( No.13 )
- 日時: 2015/04/29 21:14
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「ちょっと! こんなことしていいと思ってるんですか! レディには優しくするって学校の授業で習わなかったんですか!」
「ちっ、ガタガタうるせー女だぜ。そうだぁ、助けに来たあいつが、ボロ炭になって横たわっているのを見たら、どう思うだろうなぁ」
「ひぃ……っ!」
厭らしい口調で男は答えた。
男とは述べているがるが、背丈的にはまだ少年であることには再三見てもう分かりきっている。
現在、ホタルは《サンダー・ネット》の檻によって捕らえられていた。
脱出しようとしても、電撃のネットから逃れることは出来ない。
さらに、明かりは男の背後にいる龍-----------全身がほのかに赤く光っている-----------のみ。
「はやく、早く誰か来て-------------」
「呪文、《ラディカル・バインド》」
男のカードが黄色に光り、直後何重もの光がホタルの身体を回って締め付けた。
そして、口も。
口を塞がれて、ホタルは何も言うことが出来ない。
「んー! んー!」
「む、誰か来たのか」
男はふと口にした。ホタルは思わず歓喜しそうになる。
だが、それとは裏腹に男は口角を上げた。
余裕たっぷりに、2枚のカードを見る。
「ほーう、少し遊んでやるか-----------なあ、《「白陽」》、《ソウルフェザー・ドラゴン》」
***
開けた部屋に来た。見れば、地下駐車場のようだった。辺りは薄暗く、埃が集っている。
コンクリートの床を踏みしめながら、ノゾムは確実に一歩、確実に一歩進む。
「たのもーう!! おい、人攫い! どこにいやがるんだ、鬼畜生が!」
彼は虚に向かって怒鳴った。刹那、赤い玉がこちらへ向かってやってくる。
なるほどなるほど、近づくにつれて玉はどんどん辺りを明るく照らし、そして肌をじりじり焦が------------
ここでノゾムはすべてを察した。
目の前から迫ってくるのは、間違いなく”火”ということに。
------------わわわ、わわわわ!!
ノゾムは若干パニックに陥りながら、咄嗟に《ルーン・ツールC》を取り出す。
普通に考えればそのままカードもろとも消し墨になってから塵になってしまうそうなものだが、そうはならなかった。
青いバリアが炎の玉を水飛沫とともに消し去ったのだった。
「う、うおおおお! すげえええ!」
ノゾムは、思わず歓喜の声をあげた。まさか、このカードにコンナ力があるとは誰も思わなかっただろう。
《ルーン・ツールC》の効果と関連付ければ、”ブロッカー”の能力でノゾムを守ったというのが一番しっくり来る。
----------はクよう、コこにイるノ?
声だ。
《ルーン・ツールC》から再び声がする。
だが、その声は以前よりも確かなものとなっていた。
一体、ハクヨウとは何のことなのか、全く分かりはしない。
「ちっ、まあ良いや。今のはちょっとした余興だ------------」
声が聞こえた。
低く、ぶっきらぼうで、それでも優しさの残る声------------
直後、部屋の中が明るく照らされる。
すべての光景が映し出される。
檻に囚われたホタル、巨大な鳥龍、そしてその声の主----------ローブを脱いだ男-----------の姿を見た途端、ノゾムの息は止まりそうになった。
「おいおい、ノゾム----------必死にここにやってくるお前の姿はお笑いだったぜ?」
声の主は卑しく笑った。
逆立った茶髪、前髪に掛けたサングラス。
まさしく、自分が尊敬する人物そのものだった。
「ヒナタ--------------先輩!?」
だが、即座に頭の中で否定する。
違う。
あの人はヒナタじゃない。
考えてみれば、さっきであったローブの男の声とは大きく違ったからだ。
「いや、違う。誰だ、アンタは!」
「分かってるようだなぁ、ククク」
直後、燃え盛る炎がヒナタ-------ではない誰か--------を包み込み、再びローブの男の姿を象った。
直後、燃え盛っていた炎は1つのクリーチャーを同時に象った。
その姿は、火文明のクリーチャーとしては極めて異型だ。平安時代の貴族を思わせる服装に、黄金の体毛、そして狐の体。
最後には、尻から伸びた九つの尾が特徴的だった。
そして、胴には赤い蛇のような生き物が絡み付いている。
しかし、蛇の首は2つに分かれていた。
それは、先ほどホタルを攫ったクリーチャーとは別物だ。つまり、敵は、あの鳥龍と狐の2枚を所持していることになる。
「素晴らしいだろう? この《尾英雄 開闢の「白陽」》の力は」
「やっぱり、クリーチャーの力を使ってたんだな! お前は一体、何者なんだ!」
「お前如きに名乗る名前など、無い。だが、お前の持っている《ルーン・ツールC》は貰う」
「ああ! そのつもりで来た!」
悔しいが、クラスメート1人の命が懸かっている以上は仕方が無い。
「ク、クカカ! 本当だぜ。”何も知らない”奴相手ってのはこんなにも簡単に事が進むもんなんだな!」
「ッ----------!」
------------ただ、気がかりなのは、あのノゾムって奴と《ルーン・ツール》の適合が思ったよりも早く進んでいることだ。奴らの意思が疎通できるようになる前に、引きはなさねえと--------------
ふと、男はノゾムの右手にあるカードを見た。《ルーン・ツール》だ。だが、様子がおかしい。青白く、まるで怪しく光る十五夜の満月のように光っているのだ。
『ハ、クヨウヲ-------------はくようを------------白陽によくもそんな真似を-----------!!』
どんどん、口調が饒舌になっていく。
そして---------爆ぜるようにして玉兎の武神はその姿を現した。
眩い水色の光と同時に、鉄槌を両手で抱え、蒼い装甲の纏わり着いた白いもふもふとした身体。
顔には先進技術を連想させるヘルメットが目を隠している。だが、うっすらと見える。ヘルメットのゴーグル部分から怒りに燃える赤い瞳が。
「え、えーっと? 《ルーン・ツール》さ----------」
「はぁぁぁあああ!!」
甲高い咆哮を上げた獣人は、鉄槌を振り回して羽ばたく鳥龍へ一気に振り下ろす。
振り下ろされた部分が一気に抉られた鳥龍は悲鳴を上げる。
「ッ、まずい----------何てな」
男はカードを再び鳥龍へかざした。
直後、鳥龍の抉られた部分がどんどん回復していき、再生した。
「こいつは、鳳凰座の力を持つドラグハートで、司るは不死だ! そして、そのドラグハートに選ばれた俺は、最強のデュエリストなんだ、ははははは!」
男は高笑いした後、自分の右手にある2枚のカードのうち、もう1枚のカードに目をやった。
「そして、こいつも手に入れた。これを英雄とか抜かしていたふざけた奴からよォ!!」
「だが----------」と男は視線をルーン・ツールへ向けた。
「俺の最強伝説を否定するってんなら、容赦はしないぜ、クソガキよぉ!」
「最強のデュエリストなんて存在しない。それを敢えて最強って言うなら、自分のデッキのカードを仲間として信頼できる奴のことだ! お前は何だ? こいつ欲しさにこんな卑怯な真似しやがって---------お前なんか、デュエリストの恥だ! とっとと此処から消えていなくなりな!」
2人の視線がカチ合った。
と、そのときだった。
「あたし抜きで話を進めてない?」
女性の声-------どちらかと言えば、少女に近いほうだ。
しかし、ホタルではない。
ノゾムの隣に立っていたルーン・ツールだった。
「えっ、ルーン・ツール!?」
「あたしの力で、決闘空間を開く。そこであいつをブチのめせば、白陽も助けられる! 一緒にがんばろ!」
「いや、頑張れって言われても」
「それに、あたしの名前は”クレセント”! 《ルーン・ツールC(クレセント)》だよ!」
「あ、ソッチが本名?」
「もたもたすんじゃねえぞ! いいぜ、決闘空間で死ぬのがお望みなら、そうしてやる!!」
男は苛立ちながら叫んだ。
「行くよ! あたしのカードを持って、”決闘空間解放”って叫んで!」
「え、ええええ」
若干戸惑いながら、ノゾムはルーン・ツール改めクレセントのカードを掲げて叫ぶ。
「決闘空間解放ッ!」
カードが激しく光った。
直後、ノゾムと男の体が黒い霧に包み込まれた。