二次創作小説(紙ほか)

Act3:警戒 ( No.132 )
日時: 2015/08/07 10:25
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「これが、クレセントの武装ですよ、先輩!!」

 時は既に遅かった。彼にマナを貯めさせたのはまずかったのだ。
 --------確か、この子の効果って----------!! 
 武装時に、相手のクリーチャーを全てバトルゾーンに戻すというもの。

「さあ、クリーチャーを全て手札に戻してください、如月先輩ッ!!」
「あんた……!! やってくれるじゃない!!」

 これにより、コトハの《ザウルピオ》は超次元ゾーンに送還され、他のクリーチャーは全て手札に戻ってしまった。
 そのまま、彼女のターンに移行するが、一気に勢いを削がれ、彼女は焦っていた。
 
「とりあえず、あたしは《ザールベルク》を9マナで召喚! 効果であんたのマナを2枚、吹き飛ばすわ!」

 再び、ノゾムのマナゾーンからカードが2枚、吹っ飛ばされた。
 それだけでは飽き足らず、コトハは更にクリーチャーを展開した。

「更に、《ドラピ》2体と《ジュランネル》も召喚! ターンエンドよ!」

 T・ブレイカーとワールド・ブレイカーの2体が完全に睨みを利かせている。野放しにしていては危険だ。
 しかし。最早この程度、ノゾムの敵ではなかった。

「オレのターン!」

 カードを引いたノゾムは、着実にコトハを追い詰めるために手を進めていく。
 まだ幼げに見えるその容姿とは掛け離れた、その頭脳で。

「呪文、《幾何学艦隊 ピタゴラス》を使い、《ドラピ》を手札に戻します! 更に、マナ武装5で《ジュランネル》をバウンス!」
「うっ----------!!」
「更に、《Q-END》の効果発動! 墓地から、今唱えた《ピタゴラス》よりもコストの低い呪文を唱えますよ! 《スパイラル・ゲート》でもう1体の《ドラピ》も手札に戻します!」

 これにより、再びコトハの場のクリーチャーはいなくなった。

「そして! 今がチャンスだ!」

 高らかに叫んだノゾムは一気に決めにかかる。
 現在、ノゾムの場には《チュレンテンホウ》、《スペルサイクリカ》、《メタルアベンジャー》、《Q-END》、そして《クレセント・ベクトル》の5体がいる。攻めきることは可能だ。
 
「《メタルアベンジャー》でW・ブレイク!」

 シールドが2枚、ブレイクされた。トリガーを確認するが、生憎勝利の女神の機嫌が悪いらしく。

「《チュレンテンホウ》で更にW・ブレイク!」
 
 さらにそこへ、《チュレンテンホウ》の攻撃が届く。
 これで残り、シールドは2枚。先ほど、《ルーン・ツール》の効果で増えたとはいえ、雀の涙程度だ。
 しかし。
 此処で彼女に一気に勝機が沸いてきた。

「S・トリガー、《古龍遺跡 エウル=ブッカ》! 効果で-------------」
「《クレセント・ベクトル》の効果発動! 相手が呪文を唱えたとき、その効果が発動する前に多色ではない水の呪文を唱えます! 呪文、《龍脈術 水霊の計》で《ザールベルグ》を山札の一番下に!」
「で、でも! まだ終わっていないんだから! タップされていない《スペルサイクリカ》をマナゾーンに!」

 -----------《Q-END》は呪文によっては選ばれない! だから此処は----------

「《クレセント・ベクトル》を超次元ゾーンに!」
「武装解除で生き残ります!」
「そうくるわよね……! しぶとすぎよ、本当----------!!」
「そして、武装解除した《クレセント・ニハル》でW・ブレイク!」

 一気にシールドが2枚、消し飛ばされた。
 シールドには2枚目の《エウル=ブッカ》。しかし。《Q-END》は呪文では選ばれない。
 最早、コトハを守るものは1つもない。



ν(ニュー)・龍素王 Q‐END 水文明 (8)
ドラグハート・クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 11000
呪文の効果によって、相手がバトルゾーンにあるクリーチャーを選ぶ時、このクリーチャーを選ぶことはできない。
自分が呪文を唱えた時、それよりコストの小さい呪文を1枚、自分の墓地からコストを支払わずに唱えてもよい。そうした場合、唱えた後、墓地に置くかわりに自分の山札の一番下に置く。
W・ブレイカー



「楽しかったですよ、如月先輩!! 《Q-END》でダイレクトアタック!!」



 ***



「はぁー。完敗、ね」

 溜息をついて彼女は言った。

「やっぱり、除去に耐性がないのはキツいか。いや、それを抜きにしてもノゾム君が強かった、それだけね。悔しいけど」
「あ、いや……」
「良いわ。遠慮しなくても。あたしは、自分が未熟だってことが自覚できただけでも、収穫だもの」

 コトハは、ぽん、と彼の肩に手を置いて言った。

「ヒナタは良い後輩を持ったわ」
「……え?」
「実際、あんたは強いもの。”味方”なら頼もしい限り。”敵”なら脅威ね」
「そ、それってどういう意味ですか?」
「あら。知らない? 鎧龍サマートーナメント。チームを組んで戦う大会よ」

 そういえば思い出した。来月、そういうイベントがあるらしいということは。しかし、いまいちチーム戦というものがピンと来なかったので、今の今まで流してはいたのだが。
 
「チームの編成条件は毎年変わるらしいからね。もしも敵同士になったときは、今度こそあんたに全力で勝つ! それだけなんだから!」
「-----------はい!! なら、オレは次も勝ちます!」
「生意気ねー。ヒナタからは聞いてたけど。ま、それくらい威勢が良いのが丁度いいかな? 本当なら、あんたみたいな奴とは何回でもやりたいんだけどねー、生憎こっちもそろそろ時間的にやばいから……」
「い、いや、すいません、邪魔してしまったようで……」
「あたしが誘ったんだから構わないわ。何であれ、次はあんたに勝つ! それだけよ!」

 デュエルを通し、2人の間にはまた、ライバル意識というものが芽生えたのだった。
 デュエリスト同士、己のデッキをぶつけ合うのが一番のコミュニケーションである。
 その本能か。再戦の誓いを交わした2人は、闘争心で胸が昂ぶっていたのだった。
 その後、コトハと別れたノゾムは、一通りデパートをクレセントと見て回り、そのまま今日という一日を終えたのだった。