二次創作小説(紙ほか)
- 短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日 ( No.153 )
- 日時: 2015/08/26 07:51
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
----------市街地、海戸一区。
「おのれっ!! これは明らかにおかしい!! クリーチャーの仕業だ!!」
「単に運が悪いだけだろー? 俺もだけど」
ぎりぎりぎりっ、と歯軋りをしながら、レンは歩いていた。尻には野良犬、両手には野良猫、足に鼠取りが噛みついていた。痛い。
が、しかし。今回に限っては彼のみがこんな目に遭った訳では無い。隣を歩いているヒナタも殆ど同じ状況である。もう一度言おう、痛い。
白陽の協力と気合で、ようやくそれを振り払った彼らはともかく、あてもなく歩いていた。
主に、レンが一連の不運な出来事をクリーチャーの所為にしようとしているからである。
「ええい! 妖○ウォッチだとか、トレジャーガ○ストみたいなモノは無いのか!」
「前者はともかく、後者を知ってる人いんのか、懐かしすぎだろ」
「誰が僕をこんな目に遭わせたのか、見つけ次第始末してくれる!」
「巻き添え食らった俺のことはどうでもいいのね」
『しかし、姿が見えないのは痛いな。敵はやり手だ、気配まで消している。せめて、おおまかな位置が分かれば炙り出せるのだが』
「アホか、白陽。レンの不運は元々だ、何の所為でも無い。つまりこれはクリーチャーの所為じゃあない」
『ということだそうだ、良かったな黒鳥レン』
「何だと貴様」
「それ以上はいけない。それ以上続けると、レンは不幸の化身と人間の中間の生物になって、永遠にマンホールの下の世界を彷徨うことになり、浄化されたいと思っても作者に存在を忘れられてしまうので、そのうち考えるのをやめてしまうぞ?」
「おい貴様ら覚えとけ」
レンの苛立ちがピークに達したそのときであった。
突如、スマホに着信が入った。
画面を見ると、誰からかは直ぐに分かった。
「------------武闘先輩?」
怪訝そうな顔で、ヒナタは仕方なく応対する。無視したら、どうなるかは目に見えていた。
変な実験に付き合わされるか、しばかれるかのどっちかである。
『おーう、出たかヒナタ』
「何の用すか。切って良いですか」
『いやさ、実は丁度今、クリーチャーの反応をうちのレーダーが捕らえてだな』
「クリーチャー!?」
まさか、とヒナタは思った。肩に置かれているレンの手に、めっさ力がはいっていて痛かった。全部聞かれていたか。
「ヒナタ覚えてろ、後で滅す」と目で言っている。
「で、一体どこなんですか!?」
『んあ? 海戸一区の上空だ。レーダーが補足した限り、翼のある龍型クリーチャーみてーだが、まるで何かを尾行しているかのようにゆっくり移動してるんだ。しかもあいつ、クリーチャーにも見えないようにステルスしていやがる。だから、上空で動いてるってことしか分からん。位置を特定してーが、どうにかして炙り出せないものか』
「……そいつ、片付けちゃって構いませんね?」
『出来るモンなら、な。騒ぎになる前にやってくれた方が良いが、アテがあるのか?』
「一応」
『そうか、頼む』
ピッ、と音と共に通話はきられた。
***
人通りのない場所に移動したヒナタは、着いてきたレンの頭の上に白陽のカードを乗せる。
「おい貴様、どういうつもりだこれは」
「黙ってみてろ」
そして、言った。
「白陽。実体化すると同時に、槍をそのままレンの上に真っ直ぐ投げろ」
『承知した。実体化したら感づかれるやもしれん。一瞬でやる』
次の瞬間。
実体化した白陽は、たんっ、とレンの頭を踏み台に、そのまま跳び上がり、槍を一直線に真上へ投げる。
同時に、「不幸だっ!」という声と共にレンも地面へ叩き付けられたが。
収穫は確かにあった。当たりはしなかったが、それに驚いた”何か”は姿を現す。
「見えたっ! 僅かにだが、小さい影が!」
「間違いない、クリーチャーだ!」
「ふ、不幸だ……ぐふっ」
同時に、それが急降下してくるのが分かる。落ちてきた槍を手に取り、白陽は身構えた。
影はどんどん大きくなり、とうとうその全貌が見える。
それは、黒い身体に刃のような羽根を生やした悪魔龍だった。
「出てきやがったな……あれは《不吉の悪魔龍 テンザン》か」
「成る程、何故だか知らんが黒鳥レンに付き纏っていたのか」
向こうも、クリーチャーの姿を目に留めると、口をようやく開いた。
「チィッ……折角、不幸にしたら面白そうなカモを見つけたから、デッキの中に潜りこんでいたのによぉ。後、面白いから付きまとっていたのに、まさかクリーチャーを味方につけている人間がいるとはな」
「まさかアレか。貴様、僕のデッキに入っていた《テンザン》か!! 最近、見当たらないと思ったら--------------おのれ、よくもこの僕を!! 久々に当たったレアカードかと思ったらハズレだったのか!!」
「そうだ!! パックの中に潜り込んでいたのさ!」
「……ぐっ、この間パックを開けたら6枚あったから道理でおかしいと思った……」
「気付けよ。色々突っ込みてぇよ、こちとら」
つまり、この間の短編2は伏線だったことになる。
「おいテメェ。やるならレン以外の人間にしてやれ、あいつは素のままでも十分不運だ」
「殺すぞヒナタ」
「何だとテメェ」
言い合いながらも、2人はきっちりとテンザンに視線を向けていた。
「ふーむ……クリーチャー……成る程、この世界にもいるとは」
「御託は良い! とっとと大人しくクリーチャー界に帰れ!」
「嫌だね! 俺は此処で一生、人間共のマイナスエネルギーをすい続けるんだ! 俺様の能力で不幸にしてやる、ぎゃはははは……む?」
が、次の瞬間。テンザンは白陽を見るなり、あからさまな嫌悪感を見せる。
「な、何だテメェ……!! ドラゴンの俺様が此処までビビるのは初めてだぜぇ……てめぇ、ドラゴンへの対抗能力を持っているのか!!」
「そんなわけはないだろう、御伽噺じゃあるまいに」
「ねーよ、あってたまるか!!」
----------どうやら、この狐と正面からやりあっても、勝てそうにはないようだなぁ、悔しいが。
どうやら、白陽のドラゴンを封じる能力を本能的に感じ取ったようであった。
そして、じりじり、と後退しながら、ぶつぶつと呟き出した。
------------……感じる……実体化したクリーチャーの反応が……!! それも2匹……!! ぎゃははは、面白い!! 一体、この世界に何が起こってるのか、直々に見に行くとするか!
バリン、と音がしたかと思うと、空間が割れる。
そこから、テンザンはそこに出来た穴を潜り、そのまま閉じる穴と共に姿を消した。
「何だ? どうしたというのだ」
「……逃げていった?」
「とりあえず、私も索敵を試みる。奴が何処に逃げたのかは、それで分かるはずだ--------------」
***
「の〜ぞ〜むぅぅぅぅーっ!!」
その頃。海戸3区公園にて。ノゾムは、地面が抉れた理由がすぐに分かった。
目の前に、鬼のような形相をしたクレセントが立っていたからである。それも、鉄槌を掲げた、戦闘態勢の。服装こそ、いつもの黒インナーに半ズボンというものだったが、明らかに殺気立っている。
「あ、あ……クレセント」
「クレセント様……? そ、その、落ち着いて---------」
「ノゾムの馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁっ!! 大っ嫌い!! やけに遅いと思ったら、ニャンクスちゃんとデート!? 逢引!? 相棒のあたしのお願いをガン無視して!? いいもん!! あたしには白陽がいるもん!! 変なクリーチャーの気配もしたから、心配になって来たのにぃぃぃぃーっ!!」
時計を見ると出発してからかなり時間が経っている。しかも、ニャンクスという自分以外のクリーチャーと話していた所為で、彼女は怒っている、と流石のノゾムも理解できた。
「はにゃにゃー!? やばいですよぅ!! 沈静の薬を作らないと---------!!」
「ち、違う! 今帰ろうとしたところだ、ちゃんとアイスも-------------!!」
「問答無用!!」
そういって、彼女が鉄槌を振り上げたそのときだった。
-------------クレセントの背後の空間が割れた------------!!