二次創作小説(紙ほか)

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日 ( No.154 )
日時: 2015/08/23 16:49
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「---------------え」

 完全に不意を突かれた。とても巨大な大口が自分の背後を狙って開かれたことを、クレセントは直感で感じた。しかし。鉄槌は既に振り上げきってしまっており、もう回避運動をとることは出来なかった。


「鉄槌を離せ、クレセントーっ!!」


 次の瞬間、ノゾムの声が聞こえた。思わず、それに従って自らの動きを束縛する重い鉄槌を手放す。
 そして、ノゾムの身体が自分の横からぬっ、と飛び出た。
 自分の胴が突き飛ばされて、そのまま地面に倒される。上には、激しく息を切らしたノゾムがのっかかっていた。
 突如現れた何者かの大顎は、モノの見事にクレセントの重く、そして硬い鉄槌にガブリ。同時に、何かが割れる音が響き、悲鳴とも取れる咆哮を上げた。

「-----------バカ」
「るっせぇ!! 危なかったんだぞ!!」
「うるさい、こっちの台詞だよっ! 重いから早くどいてってば!」
「あ、ああ、悪かったな」

 起き上がったクレセントは、現れた大顎-----------いや、龍の大きな首を一瞥する。
 
「その鉄槌の噛み心地はどう? 水文明の技術を総結集して作った超合金だから、触れた歯は漏れなく折れたでしょ。後で洗って返してね」

 ノゾムも改めて敵を見た。確かに、歯が全部折れている。その姿には見覚えがあった。

「《不吉の悪魔龍 テンザン》か……何でこんな奴がこんな所に」
「ひょんぎょれぇぇぇぇー!! ひょくも、ひょれひゃまのひゃひょ……!!」
「ごめん、全然聞きとれないわ、入れ歯入れて出直してきやがれ」
「あー、もうこのままだとアレなんで、歯、再生させてあげますね」

 ニャンクスが近寄り、丸薬を放った。すると、テンザンの歯がみるみる再生していく。

「って、ニャンクス!! 何で敵に塩送るような真似しやがった!!」
「し、仕方ないじゃないですかー! あのままだと、何言ってるのか分からないですし」
「ま、面と向かった状態なら流石に決闘空間に引きずり込めば倒せるしー」
「げほっ、げほっ、畜生……」

 テンザンは咳き込むと、急に生えてきた歯に戸惑いが隠せないようだったが。

「おのれ、折角この世界の人間共を不幸のズンドコ、いやどん底に叩き落してやろうと思ったのに」
「折角歯ァ生やしてやったのにこれだよ、もうとっとと決闘空間に引きずり込んで殺っちまうかコイツ」
「せーよ!! お前に、世界の人間共を不幸にしたい俺の気持ちが分かってたまるかよ!!」
「知らねぇよ!! 知ってたまるかよ、このテロリスト共!!」

 テンザンは、がるる、と低く唸るとそのまま前へ進み出た。それが合図だった。

「クレセント、行くぞ!」
「うん!」

 デッキケースからデッキを取り出し、目の前の敵に突きつける。そして、叫んだ。



「決闘空間解放!!」



 ***


「オレのターン! 《一撃奪取 マイパッド》でコスト軽減し、《アクア鳥人 ロココ》召喚!」
「俺様のターン、《ジャスミン》を召喚し、自爆。そして、ターン終了!!」

 序盤は互いに準備をし、いつ攻め込むか機会を伺っていた。
 そして、次のノゾムのターン。一気に盤面が動いた。

「オレは《マイパッド》と《ロココ》でコストを2軽減し、《術英雄 チュレンテンホウ》を召喚! ターンエンドだぜ!」
『守りの要のカードだね。波に乗ってきたよ!』
「ああ!」

 これにより、テンザンは下手に攻撃すればノゾムの手札にあるであろうS・トリガー呪文でクリーチャーをバウンスされてしまうようになってしまった。
 が、しかし。

「俺様のターン、《解体人形 ジェニー》召喚!」
「げっ、あのカードって------------」
「効果でお前の手札を見るぜ! 《スパイラル・ゲート》を墓地へ! どうやら、守りの要とやらはその1枚だけのようだな-------------!!」
「あ、あははは……」
『そうだ、闇にはハンデスがあるんだった……』
「ターンエンドだ」

 その守りはかなりぺらっぺらであったことは言うまでもなかった。手札が悪い。

「くそっ、オレのターン! 《エナジー・ライト》で2枚ドローする!」

 そういい、山札を引いたものの。
 -----------って、《スペルブック・チャージャー》と《アクア・ハルカス》かよ! これじゃ、牽制にしかなってねぇか!
 仕方がなく、ターンを終えたのだった。

(ぐふふ、このクソガキめ。俺様に勝負を挑んだが最期、俺様の前では主人公補正も強運も全て、無力化される! 恐らくお前は、今後除去呪文を握ることはない!! まさかこの俺に運まで握られているとは夢にも思うまい!)

 読者に説明していくスタイルである。
 余裕の笑みを浮かべたテンザンは、ついに動き出した。

「行け! 俺様の分身! 4マナで、《不吉の悪魔龍 テンザン》召喚!!」



不吉の悪魔龍 テンザン VR 闇文明 (4)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 13000
T・ブレイカー
このクリーチャーは、可能なら毎ターン攻撃する。
このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から13枚を墓地に置く。



 テンザンは不吉の悪魔。必ず攻撃しなければならない上に、攻撃すれば山札から13枚を墓地に置かなければならない。
 2度目の攻撃をした瞬間、計算上ではどう足掻いても山札は無くなる。
 しかし。コスト4でパワー13000のT・ブレイカーという凶悪極まりないスペックを持つこともお忘れなく。

「ターン終了!!」

 しかも、ノゾムは未だに除去呪文が引けていない。

「オレのターン! ……くそっ! 《ν・龍覇 メタルアベンジャー R》をコスト軽減して召喚! 効果で1枚をドロー! そして、《龍波動空母 エビデゴラス》をバトルゾーンに!」
「無理矢理引こうってか、無駄無駄無駄ァ!! 俺のターン! 《サイバー・N・ワールド》召喚!」


サイバー・N・ワールド SR 水文明 (6)
クリーチャー:サイバー・コマンド 6000
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、各プレイヤーは自身の手札と墓地のカードをすべて山札に加えてシャッフルする。その後、それぞれ、5枚カードを引く。
W・ブレイカー 


「効果で、俺とお前は手札と墓地のカードをそれぞれデッキに混ぜてシャッフルし、5枚ドローしなければならない」

 ----------チャ、チャンス! これで呪文を引ければ!
 そう淡い期待を抱いたノゾムであったが、手札に来たのは------------