二次創作小説(紙ほか)

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日 ( No.155 )
日時: 2015/08/23 16:04
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

  現実は非情すぎた。いや、何かがおかしい。
  ----------何……だと!?
 引いた5枚のカードは、《エマージェンシー・タイフーン》×4枚に《ブレイン・チャージャー》という体たらくである。

(ぎゃはははは、驚いてやがる! 大方、普通ならありえない”引き”をしたんだろうな! そして俺様にはコンボパーツが全て揃った! 勝った! 第三部完!!)

 そして、叫んだテンザンは、そのまま攻勢に出る。

「俺様でシールドをT・ブレイク!! 効果で俺の山札の上から13枚を墓地へ!」

 次の瞬間、テンザンの放ったブレスで、一気にシールドのカードが3枚、粉々に吹き飛んだ。
 同時に、テンザンの山札の上から13枚が墓地に置かれる。次に攻撃すれば、テンザンは負けるが、恐らくなんらかの方法で敗北を回避してくるのは目に見えていた。

「ぜ、全部トリガーじゃねぇ……!!」
「ぎゃははは、ザマァ見やがれってんだ!!」

 しかも、此処まで除去呪文も1枚も来ていない。

『おかしいよ、ノゾム! こんなに引きが悪いなんて----------』
「----------昔、じいちゃんが言っていた」

 ノゾムはふと、呟いた。

「テンザン! てめぇが何をしたのかは大体想像できるが---------俺はこの手札を運の所為にしようとは思わない!! 運が悪い人間っつーのは、大抵何でも人の所為にしてしまう奴だ。運が悪いなんて現象なんざ、本来ありえねぇんだ!!」
「はっ、何を言い出すかと思えば!! 精神論で、俺様を倒せると思っているのかぁ?」
「倒してやるさ!! 世の中の99%は論理と計算、理屈で解決できる。じゃあ、解決できねぇ残りの1%はどうするか。その答えは!!」

 にやり、とノゾムはいつものように豪胆に、大胆に笑った。



「”根性”と”気合”で”笑い飛ばし”て、どうにかするっきゃねぇだろうが!!」


 
 ぐっ、と拳を握り締めたノゾムはカードを引く。そして、《エビデゴラス》の効果でもう1枚。案の定、思ったようなカードは引けなかったが------------

『ノゾム、どうするのさ!?』
「俺の手札にある《エマージェンシー・タイフーン》が勝利への方程式を解くための鍵となる! これを使わせて貰うぜ! 呪文、《エマージェンシー・タイフーン》!」



エマージェンシー・タイフーン C 水文明 (2)
呪文
S・トリガー
カードを2枚まで引き、その後、自分の手札を1枚捨てる。



 カードを2枚引き、1枚捨てるという効果を持つ《エマージェンシー・タイフーン》。しかし、手札を交換するだけではなく、これを唱えると言う事が重要だったのだ。

「効果で《クロック》を墓地に! 《チュレンテンホウ》のマナ武装は使えないが、数はまだある! もう1回、《エマージェンシー・タイフーン》だ!」
「……まさか」
「オレはさらに2枚引いて、《スペルブック・チャージャー》を墓地へ! このとき!! 《エビデゴラス》の龍解条件は満たされたぜ!」

 このターンの間に、カードを合計5枚引いたとき、《エビデゴラス》は龍の姿と成る。
 光と共に、空母の姿が変形し、水晶龍の王を象った。


「弱き者の盾となれ! そして未来へ羽ばたけ、蒼き龍王よ! 最後の龍解を成し遂げろ!! 《最終龍理 Q.E.D+》ッ!!」


 現れた水晶龍の王は、咆哮し、突貫する。

「いけ! 《Q.E.D+》でシールドをW・ブレイク!」
「ぐあっ!?」

 シールドが2枚、割られる。しかし。流れはそう簡単に引き寄せられるものではなかった。

「バカめっ!! と言って差し上げようか!! 《地獄門 デス・ゲート》!! 《メタルアベンジャーR》を破壊!!」
「なっ!? 此処でトリガーするかよ!?」
「それだけじゃあない! 効果で、墓地より《封魔妖 スーパー・クズトレイン》をバトルゾーンへ!」


封魔妖スーパー・クズトレイン R 闇文明 (5)
クリーチャー:ヘドリアン/グランド・デビル 5000
他のクリーチャーが破壊された時、カードを1枚引いてもよい。


 墓地に大量にカードを送り込んだため、テンザンの墓地戦略の幅は最大限に大きくなっていた。
 さらに、それだけではない。相手の運気を吸い尽くすという性質上、相手が不運であればあるほど、テンザンの運気は逆に上昇していくのである。

「さらに、2枚目のS・トリガー、《インフェルノ・サイン》で《復讐 チェーンソー》を墓地より復活させる!!」

 本来、テンザンは次のターンに手札の《復活と激突の呪印》でこれを復活させるつもりだった。しかし。嬉しい誤算であった。
 自身の効果で山札を削る前に《サイバー・N・ワールド》で手札を増やしたのは------------

「《チェーンソー》の効果発動! 俺の手札5枚を全て墓地へ置き、その数だけお前は自分のクリーチャーを選んで破壊しなければならない!」

 ----------《チェーンソー》の効果を最大限に使うためだったのだ。

「は、5体を破壊、だとぉ!? くそっ!! 決められると思ったのに!! 《Q.E.D+》を龍回避させて、《メタルアベンジャーR》と《マイパッド》と《ロココ》-------------って全滅じゃねぇか!!」
『本当、モノの見事に全滅したね……』
「それだけじゃあない! 同時に、お前のクリーチャーが4体破壊されたので、《クズトレイン》の効果で4枚ドロー!!」

 完全にやられた。自分のターンなのに、相手にターンを完全に握られた気分であった。
 そして、ノゾムに降りかかる災厄はこのままでは終わらなかった。

「俺のターン! まず、バトルゾーンにある《テンザン》と《ジェニー》を破壊!!」
「--------な!?」

 自らのクリーチャーを自ら破壊するという行為に驚きを隠せない。そんな能力を持つクリーチャーは、テンザンの場にはいなかったはずだ、とバトルゾーンを見渡すが------------

「どこを見ているんだ? 俺様の切札は、墓地にあるんだよ、墓地になぁぁぁ!!」

 叫んだテンザンの墓地から、1体の血に塗れた屍龍が這いずり出るようにして現れる--------------



「これで自滅の心配は無くなった!! 蘇れ!! 《偽りの名 ドレッド・ブラッド》!!」