二次創作小説(紙ほか)
- 短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日 ( No.156 )
- 日時: 2015/09/14 07:48
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
「俺の場には、《N・ワールド》、《チェーンソー》、《クズトレイン》という3体の攻撃可能クリーチャーがいる!! 《チュレンテンホウ》もトリガー運も無いお前に、この状況が打開できるわけがないだろうがぁぁぁーっ!!」
《N・ワールド》がビーム光線で、残るノゾムのシールドを薙ぎ払った。
シールドは残り0枚。最早、勝てる確立は絶望的だと思われた。
『ノゾム……ごめん。あたしがあんな酷い事を言ったから----------』
「あのなぁ、クレセント」
はっ、と彼女はもたれていた頭を上げた。
「オレは負けるのを人の所為にしやしねぇ」
そして、「まして-----------」と続けた。割られたシールドの1枚が、光の束となって集積していく。
彼の心の尽きない希望に、カードがとうとう答えたのか、それは分からない。しかし。一つだけ言えるのは。
「------------オレはこんな奴に負けやしねぇっ!! S・トリガー発動、《月光超技 ムーンサルトスタンプ》だ!!」
次の瞬間、激流によって《クズトレイン》と《ブラッドレイン》がテンザンの手札へ戻された。
さらに、天空より現れた鉄槌が《チェーンソー》に直撃し、そのままダウン、即ちフリーズ状態に。
「な、馬鹿なぁぁぁーっ!?」
「人間の世界にはこんな諺がある」
再び彼は笑みを浮かべた。
「”捨てる神ありゃ拾う神ある”ってな!!」
「お、おのれぇぇぇーい!!」
クレセント! とノゾムは彼女に呼びかけた。
「オレは、お前のことを大事に思っている! お前の孤独を少しでも癒すためにオレがいる! 今日みてーに我侭言ったって、良いんだ! お前はもっと、皆に甘えたって良いんだ!」
『ノ……ゾム?』
「さっきお前が怒ったのは、自分のことを忘れられたから、お前の中に孤独に怯える感情があったから! 違うか!?」
『-----------!』
「さっきも、お前の話をしていたんだ! オレは痛感したよ、パートナーのお前の気持ちがまだまだ理解できていなかったって!」
図星だった。勘違いだったとはいえ、1人が彼女は怖かったのだ。
だが、ノゾムは彼女が孤独だということは断じて認めなかった。
「オレは絶対に、お前を1人になんかにしねぇ! オレだけじゃねえ! 先輩達も、ホタルも、ハーシェルも、ニャンクスも------------そして白陽も!! 絶対、お前を1人になんかにしねぇ! オレはデュエリストで、お前はそのクリーチャーだ、2人で1つなんだ! だから、安心しろ!!」
『-----------うん!』
カードを迷わず引いた。
そこには------------
「オレのターン! 7マナで、《上弦の玉兎星 クレセント・ニハル》召喚! 効果で、超次元ゾーンより《月影機構 ルーン・ツールS》をバトルゾーンに!」
---------クレセントの姿があった。
「ごめんね、ノゾム。あたしは、貴方を、仲間を、皆を信じるから!」
「ああ!! ターン終了時に、《クレセント・ニハル》のマナ武装で《チェーンソー》をもう1回フリーズ!」
「く、くそっ!!」
悔しさに顔を歪ませるテンザン。しかし、こちらにはまだ沢山の手が残っているのだ。
「行け!! 《ドレッド・ブラッド》を召喚! ターン終了だ!」
「無駄だぜ! オレのターン! 呪文、《ストリーミング・シェイパー》で山札から4枚を捲り、それらが水のカードなら手札に加える!」
ノゾムの山札の上から4枚が表向きになった。しかし。ノゾムのデッキは、全て水のカードで構成されている。よって、どうなるかは明白であった。
全てがノゾムの手札へ加えられる。
「ラッキーっつーのは確かに長続きしないが、アンラッキーっつーのも長続きしねーもんだな、テンザン!」
「残念だったね。此処までだよ!」
「ターンの終わりに、俺の手札がお前の手札の枚数を上回っているため、《ルーン・ツールS》の効果で星芒武装だ!!」
次の瞬間、《ルーン・ツールS》の機械の身体が分解され、それが更にクレセントの身に纏われていく。
そして-----------
「《循環月影 クレセント・ベクトル》武装完了!!」
----------玉兎の武神は、戦場に立った。
「効果で、お前のクリーチャーを全てバウンスする!」
『砲門斉射、撃てぇぇぇーっ!!』
《クレセント・ベクトル》の全主砲から、ビーム砲が放たれる。次の瞬間、テンザンのクリーチャーは全て自らの手札に戻っていた。
が、テンザンは得意げに鼻を鳴らすと反論するように言う。
「馬鹿め!! 俺のターン、もう1回《チェーンソー》を召喚だ! 効果で、俺は自らの手札を全て捨て、お前はその数-----------いや、《クレセント・ベクトル》を破壊しなければならない!」
が、しかし。
「まだだ! 武装解除で《ルーン・ツールS》を超次元ゾーンに送って、下の《クレセント・ニハル》は生き残る!」
「な、何なんだ、そのクリーチャーはぁぁぁーっ!!」
スターダスト・クリーチャーは、バトルゾーンを離れるときの効果があるのだ。
それだけではなく、《クレセント・ニハル》はマナ武装で相手のクリーチャー2体をフリーズさせる能力がある。それも、自分のターンの終わりに。
つまり、最終的なロックは武装前の《クレセント・ニハル》の方が強いのだ。
「オレのターン、もう1回、《チュレンテンホウ》を召喚! ターンの終了時に、《チェーンソー》をフリーズ!」
「くっ、くそっ、小賢しい真似を! -----------まずい、手札がもう無い!?」
テンザンは、完全に自分が先走ったことを後悔した。さっき、《チェーンソー》の効果で全部捨ててしまったのだ。しかも、もう山札も残り少ない。考えてみれば、残り5枚しか無いではないか!
「あ、あがががが-------------!! 俺のターン……《チェーンソー》でダイレクトアタック-------------」
「させねぇよ! 《チュレンテンホウ》の効果発動! 手札から《龍脈術 水霊の計》を唱えて、《チェーンソー》をお前の山札の一番下に! さらに、《チュレンテンホウ》のマナ武装7で《水霊の計》をもう1回使って、3枚ドロー!!」
「そ、そんな----------!!」
「俺のターン! 《メタルアベンジャーR》を召喚し、効果で《龍脈空船 トンナンシャーペ》をバトルゾーンに!」
現れたのは、亜空間をも越える強大なる龍の船であった。
「へっへーん、じいちゃんと同じカードだ、手に入れるのは苦労したぜ! そして、ターン終了!」
「ぐっ、おのれぇぇぇーっ!! 俺のターン……くっ、終了だ……」
「俺のターン!! ターンのはじめに、お前の墓地にあるカードが10枚以上あるため、《トンナンシャーぺ》を3D龍解!! 《亜空艦 ダイスーシドラ》!」
次の瞬間、飛行船は亜空をも越える強大な水晶龍へと昇華した----------
「そして、《ダイスーシドラ》でシールドをW・ブレイク! 効果で、お前の墓地にある《インフェルノ・サイン》を使わせて貰うぞ!」
「そ、そんな馬鹿な!!」
「復活しろ、《メタルアベンジャー》! 効果で《エビデゴラス》をバトルゾーンに!」
そして、シールドが叩き割られる。そして、後に続くように《チュレンテンホウ》も突貫した。
「これで、シールドは0枚だ!!」
「そんな、俺の不幸の力が負けるなんて---------------」
これまでだった。テンザンに、手は残されていなかった。
完全に、油断した。
「《上弦の玉兎星 クレセント・ニハル》でダイレクトアタック!!」
***
カードの姿に戻り、完全にクリーチャーとしての生命を終えた《テンザン》を拾って、ノゾムは溜息をついた。
「ったく、人騒がせなクリーチャーだったな」
「そうだね」
「ノゾム様! クレセント様!」
見ると、ニャンクスが心配そうな顔で駆け寄ってくる。
「はぁ、ご無事で何より……」
「ま、オレにかかればこの程度は何てこたぁねーって!」
「ならば良かった限り……はにゃにゃーっ!?」
腕時計をふと見たニャンクスは慌てた表情で買い物袋を持ち、すぐさま去ろうとする。
「あわわ、そろそろ帰らないとっ! コトハ様に怒られます〜!! 全くもう、こんな目に遭うなんて聞いてにゃいし〜!!」
「お、おう、悪かったな」
「そ、それでは〜!!」
そういって、彼女は駆けて行った。
それを見届けると、ノゾムは自分の隣に立っているクレセントに言った。
「オレらも帰るか」
「そだね」
それに彼女も短く答え、カードに戻り、ノゾムの手へ。
そのまま、帰路についたのだった。
***
陽はもうすぐ暮れそうだった。
「ごめん。迷惑かけて」
「ふん、言っただろ。お前はもっと我侭言って良いんだ。あんまり抱え込むな」
「……ありがとう」
そうだ、とノゾムは続けた。
「……アイス、沢山あるから。好きなだけ食って良いぞ」
「うん……ねぇ、ノゾム。もう1つだけ我侭良いかな?」
ん? と彼は怪訝な顔で返す。
「アイス、一緒に食べようよ。後、今度は皆も呼んで一緒に食べよ?」
「……そうだな」
ふぅ、と彼は息をついて立ち止まった。
「災厄な一日も、悪くはねーか」
そう、呟いて------------
***
その頃。ヒナタとレン、そして白陽は。
「おのれ、テンザンめ!! ぶっ殺、ぶっ殺」
「それよかよー、もうすぐ陽が暮れそうなんだが」
『おかしい、これだけ索敵して見つからないとは』
それは、すぐにノゾムとクレセントがテンザンをやっつけたからである。
「ともかく! 奴は闇のクリーチャーだ、夜になったら現れるやもしれん!! このまま探索を続けるぞ!」
「馬鹿か、テメェ!! 補導されるぞ、俺ら!!」
「うるさい、貴様も道連れだ!!」
「クッソ迷惑だ!!」
『やれやれ……これは時間がかかりそうだな』
※この後、フジから着信が入ってくるまで2人は延々と街中を探索し続けました。これが本当の骨折り損のくたびれ儲けです。気をつけましょう。
後、夜道を子供だけで歩くのはやめましょう。危険です。