二次創作小説(紙ほか)
- 短編5:恋情パラレル ( No.157 )
- 日時: 2015/09/28 20:03
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
「あーあー! もう、”オーロラ様”なんか大っっっ嫌いっ!! うるさいし、やたらしっかりしてるし! あたし達は妖精なんだよ? 悪戯の1つや2つやったって良いじゃないのよぉーっ!!」
「……それは流石に、あんたが悪いと思う。あんな化物呼び出すとか」
「うるさいうるさいうるさいーっ! 最近のオーロラ様、ずぅぅぅっとしかめっつらしてたから、あたしが気を利かせて、ちょっと景気づけにびっくりさせてやろうかと思ってたのに!」
「……はぁ。それで怒られて拗ねて飛び出して来たんだ……どっからどう考えてもあんたが悪いでしょ」
「良いもん、良いもん、良いもーん! あたしは人間界で好き勝手してやるんだからっ!」
「それに付き合わされるあたしは一体……」
ふよふよ、と2つの光の弾が漂うように空中を彷徨っていた。それらは、地上を見下ろすようにしてしばらく眺めていたが、ぴたり、と静止した。
「ふぅーん?」
まるで品定めでもするかのように、地上の1つの目標に視界を合わせると、”彼女”は悪戯っ子のように笑った。
「あの子とか良いじゃない? ”内に秘めてるラブパワー”が押さえ込まれてて、可愛そう」
「あのしかめっつら……オーロラ様に似てる」
「良いじゃん、良いじゃーん! あたし達の力で、恋のパワーを最大出力まで上げたら……どうなるだろうね? あの、いかにもツンケンしてる顔がぶっ壊れるのが、楽しみ楽しみ楽しみ〜!」
「嫌だよ、最近人間界にもおっかないクリーチャーを従えた人間がいるって……あたしはやらな---------」
「あ、この間美味しそうなアイスクリーム屋さん見つけたんだけど」
「やる。何でもやる。あたしがんばる」
「とにかく、あの子をつけてみましょ? ね?」
1つの光は、自分が見定めた少女に向かって追うようについていく。
この姿ならば、誰にも感づかれない、気づかれない。
「で? どうするの、もしも厄介なことになったら」
「あんたは相変わらず心配性ねー? 何のための召喚術だと思ってるのよ! あたし達2人が組めば最強、でしょ?」
「まぁ、そうだけども……」
それじゃ、と片方の光は勢いよく飛んでいく。
「悪戯といこうかしら!」
「待っててば……」
***
「火を入れても良いかもしれないわね……。準緑単とか」
『それも良いですけど、コトハ様ー? これとかも面白いですよ』
「そうね。この間、星目先輩も使っていたしね」
カードショップの一角で、如月コトハはデッキを組んでいた。ニャンクスも一緒だ。
----------ヒナタの奴……また強くなっていたわね……あたしだって負けてらんないんだから!
ただ問題が1つあるとすれば。
「……おい、レン。何分経った?」
「一時間だ。これは長丁場になりそうだな」
「とっくに長丁場なんだよ……考えすぎなんだ、コイツ」
「貴様が考え無しなだけだ」
友人2人-----------暁ヒナタと黒鳥レンを早一時間の間、待たせていたことであろうか。
----------さあ、後はこれで----------
コトハがデッキに、最後のカードを押し込んだそのときだった。彼女の頭の上に、光のようなものが降りた。しかし。コトハやニャンクスを初めとした誰も、何が起こったのか気づかなかった------------
***
「……クリーチャー? またか?」
いつもの武闘ビルにて。武闘フジはPCに向かいながら、タブレットで会話をしていた。PCには、某艦船ゲームの画面が移っていた。
「最近は多いな。やはり、向こうで馬鹿でかい戦争が起こっている影響もあるのだろうが。しかし、こちらから介入することは許されていない。向こうのことは向こうで解決するとのことだが……こうも侵入クリーチャーが多いとなるとだな」
はぁ、と彼はため息をついた。連日のクリーチャー事件に頭を悩ませているのである。
「まぁ、良い。面白いから、放っておく」
いや違う。この色々危ない現状をどう楽しむか考えているのだ。やっぱりこの男は天災であった。
***
通算5度目の試合。今回、ヒナタとコトハはこの近辺にあるカフェの名物スイーツを巡って対決をしていたのだった。
勝った方が、負けた方に奢って貰うという、如何にもといった勝負であった。
コトハは、大のスイーツ好きだ。そしてそれは、ヒナタも同じであった。
しかし、特に彼女は月1度の限定販売品であるこのパフェに命すら賭けているのである。幾らヒナタが相手といえど、いや相手がヒナタだからこそ退くつもりは更々無かった。
ただでさえ値段の張るこのパフェを奢って貰える。こんな2つの意味で美味しい勝負、受けないわけが無かったし、負ける気等毛頭無かった。
「出来たわよ! 今度こそギッタンギッタンにしてやるわ!」
「此処まで2勝2敗……つーか連戦の途中でデッキ変えるとか」
「あんたにゃ言われたくないわよ!」
「チッ、バレたか」
いつも通り、不敵な笑みを浮かべるヒナタ。
いつも通り、気難しそうなしかめっ面を浮かべるコトハ。
テーブルにカードを並べ、2人は向かい合う。
「全く、好い加減にしろ……」
関係ないのに付き合わされているレンが呆れてたように言うも、がうっ、と吠えるように2人は食って掛かった。
「うるせぇーっ! お前にボルバルザーク・紫電・パフェの何が分かる!!」
「そうよ!! あんたには分からないでしょうね!!」
「何でこの街には、微妙なネーミングのスイーツがありふれているんだ、おかしい!!」
レンの至極全うな突っ込みを無視し、早速コトハは最初のカードをマナに置き、ゲームを進めてしまう。
----------絶対、負けないわよ、ヒナタ……!!
そう強く念じ、彼の顔を見た。それ自体は、何気ない普段どおりの動作だった。
しかし。今回ばかりは違った。
-----------可愛そうに。こんなに熱い感情が押さえ込まれてるなんて。
-----------今、あたし達が解き放ってあげるから。
「!?」
何かの声が聞こえたような気がした。
そして次の瞬間、コトハは突如、胸が燃えるような感覚に襲われた---------------