二次創作小説(紙ほか)

短編5:恋情パラレル ( No.159 )
日時: 2016/08/28 09:59
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

一目惚れの呪い 無色 (5)
呪(い)文
この呪いがかかった直後に最初に見た相手に好意を抱く。さらに、その好意に”素直”になる。つまり、時間が経つごとにどんどん隠せなくなっていく。
ツンツン気質な人は、頭がパンクして倒れることがある。しかし、次第にふらふらと立ち上がるので、身内は安心することができる。
最終的に理性が抑え切れなくなって、イベントシーン突入☆ なんてこともある。


「イベントシーンって何!? めっさアバウトにゃ!! 此処までアバウトなのは初めてにゃ!?」

 
補足:最悪は発禁になる。


「何の話にゃぁぁぁーっ!!」


 大人の話である。そしてこの小説の話である。
 ニャンクスは、魔方陣に映ったコトハの病魔の正体である”一目惚れの呪い”の効果を見ていた。
 が、しかし。このとおり、てきとーなことしか書いていなかったのだった。今までこんなことは無かったというのに。
 そもそも、こんな呪いを見るのは彼女も初めてだったのだ。
 赤面しながら、ヒナタの名前を連呼している主人の姿を見るのは堪えられない。さっさと終わらせてしまえ、とマナを使って製薬能力を発動する。
 アスクレピオニスの魔方陣により、マナは自分の思ったとおりの薬を作り出す。いつの間にか寝息をすやすや、と立てている主人を垣間見ながら、ニャンクスは集中して作業を進めていった。
 ----------これで-----------いける! 火のマナを2つ、水のマナを3つ、光のマナを1つ-------------!
 これで、終わらせられる。そう思ったときだった。


 ぱりんっ!


「にゃあ!?」

 窓が割れる音がした。思わず振り向く。見れば、窓に開いた穴から何かが伸びてくる。
 少し遅れて、それがニャンクスの体に絡みついた。手足が縛られ、製薬をそのままやめざるを得なくなってしまう。
 見れば、それは蔓のようなもの-----------いや、蔓そのものだった。しかも、彼女の記憶では、これはクリーチャーの生息する世界にしか存在しない植物である。

「だーめだよー、邪魔なんかしちゃあ」

 声が聞こえた。それも、少女の声だ。
 振り向けば、そこには少女の姿があった。それも2人。しかし両方共、民族的な衣装を身にまとっており、頭身こそ高いが普通の人間よりもその背丈は非常に小さい。目と鼻は仮面のようなもので覆われており、表情の全てを読むことはできない。
 所謂、”スノーフェアリー”と呼ばれるクリーチャー達であった。

「だ、誰にゃあ! 早く呪いを解かないと-----------」
「あらー? それは聞き捨てなら無いかなー? だってその呪いをその子にかけたのあたし達だもん」
「残念だけど、此処でお終い。恋の邪魔者には退場して貰う」
「愛を阻むものにはお仕置きあるのみー!」
「にゃぁぁぁーっ!! お前達は、何者にゃぁぁぁーっ!!」

 叫んだニャンクスの必死さを嗚呼哀れと言わんばかりの眼差しを向けたのが仮面の上からでも分かった。

「しっかたないなー。教えてあげるよ。あたしは愛妖精のミル! ぴっちぴちの、お茶目なスノーフェアリーでーす!」
「あたしは恋妖精のメル。この子の悪さに嫌々付き合ってる」
「もー、メルー。そんなこと言わないのー! あたし達は2人合わせて、《愛恋妖精 ミルメル》って名前でコンビ組んでるの!ふっふーん、よろしくー!」
「よろしくじゃにゃぁぁぁーい!! さっさと解くにゃぁぁぁーっ!! さもないと痛い目を-----------」 
「うるさいなー」
「どうする」
「そんなの、決まってるじゃん! 黙らせる! 力づくで!」
「……やな予感」
「でもでもー、こいつ結構強そうだしー? 今のうちにいじめておかないと、損ってもんでしょ!」

 今度は、ニャンクスの首に蔓が巻き付いた。
 驚いた表情が、次の瞬間には悶絶した苦しそうな表情に変わる。
 思い切り、蔓が首を締め上げたのだ。悲鳴をあげようにも喉が潰れて上手く声が出ない。

「にゃぎいいいいい!?」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ、死なない程度に締めるだけだから!」
「……もし死んだら」
「大丈夫だってー、そのときは運が悪かったと諦めるだけよ!」
「えげつない……」
「事実……こいつ、結構強いみたいだからね? あんたみたいな奴じゃないと、こんなことしないんだよ? 本当よ?」
「ぎ、ぎいいいい!! ……」

 声にならない悲鳴がしばらく続いていたが、そこで蔓が緩まった。
 げほっ、げほっ、と咳き込み、肺の中に新鮮な空気が入ってくるのを身に染みて感じたニャンクスだったが、それだけでは終わらなかった。

「相当、今ので弱ったみたいだねー? あたし達のペット、
《ラブ・エルフィン》ちゃんの養分吸収能力で、あんたのパワーはもう限りなく0に近いはずよ」
「こんなことをして……ゲホッ、許されると-------------!!」
「暴れないでね? 今度は勢い余って殺しちゃうかも」
「こいつ、どうする」
「そうねー。どっかにくくっちゃおうか!」
「賛成」
「にゃぎぃぃぃ……!!」

 最早、身体に力が入らない。そのまま、ニャンクスは意識を闇に落とした-------------


 ***


「------------というのが、お前が鎧龍の時計台の針に括り付けられるまでの経緯か、ニャンクス」
「れんしゃまぁぁぁ〜!! 怖かったですよぅぅぅ〜!!」

 泣きながら、ニャンクスはレンに抱き着いた。
 現在、昨日のいっけんから一夜明けて早朝。日直で早く鎧龍に登校してきたレンが、時計台の時計のど真ん中に括り付けられたニャンクスを発見した次第であった。

「全く、どう助けてやるものかと難儀したぞ。僕にはヒナタやノゾムのようにクリーチャーがいないからな。まあ、良かったよ。時計の整備のために、時計本体に窓がついていたからな」
「うえええん、レン様、恩にきりますにゃあああ、この恩は臓器を売ってでも、いや体を売ってでもお返ししますにゃぁぁぁ」
「重い!! 重すぎるから!! 誰もそんなこと求めてないから!! 貴様にこれ以上の災難と苦痛は求めてないから!!」
「ふにゃああああ、レンしゃまああああ、僕は昨日、貴方のお顔を引っかいてしまいましたにゃああああ、なのに助けてくださるなんてえええ」
「あー、そんなこともあったが」
「だから臓器か身体を----------」
「良いから!! いちいち重いから!!」
「レンしゃまああああ」
「よしよし、怖かったな……はぁ」

 -----------まさか猫のお守りまですることになるとはな……まあ、良いか。

「しかし、コトハが大変なことになっていたとは。これは、早めに手を打たねばまずいぞ。おいニャンクス。今から、例の呪いに対する特効薬は作れないのか?」
「……」
「わかった!! わかったから泣くな!! 休んでていいから!!」
「……しばらく抱き着いてていいですにゃぁ?」
「……構わん」

 面倒なことに巻き込まれた、とレンは常々感じていた。しかし、コトハは不本意な好意をヒナタに抱いてしまっているため、色々と面倒なことになりかねない。 
 呪いの性質上、例の馬鹿ップルの片割れの兎以上に重症化しかねない。
 -----------挙句、イベントシーンって……まずい。色々な意味でまずい。
 この事態をとめられるのは自分だけだ、とレンは不本意ながら使命感を抱いていたのだった。