二次創作小説(紙ほか)
- 短編5:恋情パラレル ( No.163 )
- 日時: 2015/09/18 07:51
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
***
一方。レンとニャンクスは、どうすれば良いか校庭で話していた。他の生徒もちらほらやってきており、余り人目につきたくは無い。
「しかしまずいな。手遅れになる前に何とかせねば。彼女のキャラにも関わってくるぞ」
「そうですにゃ。考えられる限りの最悪のパティーンは真面目堅物のコトハ様が、一瞬でクレセント様のようなデレデレキャラに」
「即落ち二コマのようだな」
まさにその通りである。
コトハとクレセントの性格は真逆のようなもの。
そのコトハがクレセントのようなキャラになるなど、考えられなかなった。
「正気に戻ったコトハが、全部覚えていたら余りの羞恥で発狂モンだな。恐らく、ヒナタを殺してから自分も死ぬ」
「……性格的に有り得るから反論できないですにゃ」
「まあ、流石に今のは冗談だが-------------どうしたものか」
「しかも問題は、仕掛けた側のクリーチャーですにゃ」
スノーフェアリーのミルとメル。そして、あのニャンクスが不意を突かれたとはいえ敗北した、ラブ・エルフィン。
とりあえず、妖精2人はひっ捕らえてお灸を据えてやる必要があるようだ。
大方まとまったところで、レンは思い出したように言った。
「ヒナタかコトハがいつやってきても良いように、バス停で待機しておかねば」
「……あ」
ニャンクスの顔がそこで引きつった。
「どうした。何かまずいことでもあったか」
「い、いや、そういえば-----------」
大時計をちらちら見ながらニャンクスの顔は青ざめていく。
「-----------僕、いつもコトハ様と、この時間帯のバスに乗るんでしたにゃ-----------」
沈黙。そして、レンがニャンクスの頭を思いっきり鷲づかみにした。
「何でそんな大事な事ばかり忘れるんだ貴様はぁぁぁーっ!!」
「ごめんにゃさあああい!!」
まずいことになった。それさえ知っていれば、さっさとバス停に駆けつけたものを。
「で、でも、結構準備に時間がかかって前後するときもありますにゃ」
「いや、それでもまずい! 話から察するに、あいつを公然大衆の前に晒すのはまずい! まして、ヒナタと巡り合ってしまったら-----------」
「----------おい、レン……」
ふと、そこでヒナタの声が聞こえ、レンは振り返った。良かった、彼が先に来てくれたか、と安堵したレンであったが----------直後、表情が凍りつく。
「ひーなーたー♪ にゃへへへへぇ……」
「どうにかしてくれねぇかコレ……」
多くの生徒の視線の中に。暁ヒナタと、その腕に蕩けたような表情ですがりつく如月コトハの姿があった。
物分りの良いレンとニャンクスは、間違いなくこれが最悪の状況であることを知っていた。
ああ、運命の神よ。そなたは馬鹿だ。とんでもねぇファッキン野郎だ。今すぐ辞職するがいい。
何故、今このタイミングでこの2人を引き合わせてしまったのか。
「……あれ、何でニャンクスがレンのところに居るんだ」
クリーチャーが見えるヒナタは怪訝な顔をする。
一方のレンは彼を睨み付け、静かに語りだす。
「おいヒナタ、まず1つ言おう。事情は何であれ、1つだけ言わせて貰う」
「何だ、こちとら周りの視線が重くて仕方がねぇんだ早く言え美学馬鹿」
ふぅ、と彼は息を吐き、言った。
「断じて!! 貴様にモテ期がやってきたとかそういうのではない、残念だったなリア充!!」
「間違っても、コトハ様は貴方等に好意など1mmも抱いていないのですにゃ、諦めるのですにゃ!!」
「醜い感情が見え隠れしてんだよ、分かりきってること言うんじゃねぇ!!」
ぐぎぎぎ、とメンチを切り、互いの胸倉を掴みあう戦いが発生した。ニャンクスも、毛を逆立ててヒナタを威嚇している。まあ、この2人が並んだらしょっちゅうではあるのだが。
何より驚きだったのは、ヒナタがコトハの異変に気付いていたということか。
「えへへぇ、ちゅーしてヒナタぁ……」
と、どっかの兎のようなことを抜かし出すコトハを手で押えつけ、ヒナタは不機嫌な顔で言った。
レンとニャンクスの顔は、更に険しくなる一方だが。
「おかしいって気付くわ、性格ブスのコトハが普通、1晩でこんなことになるわけねぇだろ」
現に今、性格ブスと罵られたにも関わらず、デレデレとした表情を崩していない。確かにおかしいと流石のヒナタでも気付くか。
「貴様ならばこの状況で迎合してそのまま考え付く限りの淫行に走ると思ったのだが。……全く、悉く僕の予想を裏切ってくれるな貴様は」
「お前俺を何だと思ってんの!?」
「醜い欲望の塊、グラサンかっこいいと思い込んでいる典型的な中二、そして唯一つの変わらない馬鹿だ」
「キレるぞレン、後グラサンは俺のトレードマークだ」
「それはこっちの台詞だ。人目も憚らずにいちゃいちゃと」
「好きでいちゃついてんじゃねぇぇぇーっ!!」
「まずは、誰もいない場所に行きますかにゃ」
次の瞬間、緑色のバリアのようなものがニャンクスを中心にして、ヒナタ達を覆うように広がった。
「……これは?」
「古流魔術の基本的なものの1つで、いわゆる”人避け”ですにゃ。周囲からの意識を誘導し、完全に意識から消えることができる代物ですにゃ」
やはりこいつはクリーチャーだ、ヒナタとレンは改めて思った。
「そういうのってよぉ、基本技能の1つなわけ?」
「僕のような非力なタイプのクリーチャーなら、基本身に付けていますにゃ。戦場では身を隠すことが重要だから、隠蔽率を上げるのは基本中の基本ですにゃ」
「流石だな。では、旧校舎の近くにでも行くか」
***
「やっぱり、ねぇ」
コトハに抱き着かれたまま、ヒナタは頷いた。此処は、余り人目の少ない体育倉庫の裏であった。
「呪いか。もうちょっと露骨じゃなかったら、危うく引っかかるところだったぜ」
「貴様な……!」
いきり立ったレンを抑えるように、彼は続ける。
「……アホか、冗談に決まってんだろ。コトハは仲間だ。俺ん中じゃそれ以上でもそれ以下でもねぇ。それでも大切な仲間だ」
「……ならば良いのだが」
「不本意な好意程よ、辛いものはねぇと思うがな。まして、俺みたいにデュエマ以外何も取り得の無い馬鹿を無理矢理好きになっても仕方ないと思うぜ」
「そうか」
------------全く、貴様も鈍感が過ぎるぞ。
当時、ヨミに取り込まれていたレンは直接知っているわけではないが、コトハは此処までで何度もヒナタに助けられてきている。特に、ヨミとの最初の戦いでは捕らえられてきたところを助けられたのだ。少しは彼への接し方が変わってきているのは、横から見てきたレンは知っていた。
------------ヒナタはまるで、異性の好意を避けているようにも見えるが---------
「------------邪魔」
刹那。酷く冷たいコトハの声が耳に入った--------------